銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!! 作:ギアっちょ
「——ではあらためて私たちの指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね」
「『あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ』……とのことです♡」
「……っ!?ま、まさか、ということは……!?」
銃弾がナギサの身体に撃ち込まれ、気絶する。
「………やりすぎでは?」
銃弾を使ったことより、ハナコがえぐいことやってたのにビビる。
「何言ってるんですか、私たちはこの人に試験会場ごと爆破されたんですよ?ヒサギさんもアズサちゃんも怪我して……むしろ足りないくらいです!」
いやだからって……まるで本当に裏切り者みたいに振る舞ったり、ヒフミとの間に軋轢産みそうことするのは……
「今のうちにナギサさんの身体にあんなことやこんなことしても許されるくらいです、いやむしろ私たち以外誰もいない今が絶好のチャンス!さあヒサギさん、ナギサさんの胸を揉——」
「二人とも、運ぶのを手伝ってほしい……」
「あ、ごめんなさいアズサちゃん。ヒサギさんは眼で周囲を確認してくださいね」
「……はいよ」
ハナコ……怒らせないようにしよ、怖い。
「ここまでは順調……アズサちゃんの手腕のおかげですね」
「これでアリウスにも偽の情報が流れるはず」
「袋に詰められる生徒会……」
茶しばき同好会だのなんだの言ってきたけれど………気絶する直前にあんな爆弾投げられたのには同情する。
「守るって言ってやることが人攫いとは……」
「これが一番確実なんですよ、真のトリニティの裏切り者を炙り出すためにも……」
真の裏切り者……ハナコはそれがいるという。ティーパーティーの殺害目論むとか相当な野郎だなあと……
確証はないからと私たちには明かしてくれないけれど。
「……ところでハナコ、さっきのあのセリフ…」
「アズサちゃんまで?」
「いや、必要だったのかと……」
「ヒフミちゃんの分までショックを受けてもらおうかと思ったのですが……やりすぎだったでしょうか」
「………」
「………」
分かる、分かるぞアズサ、口に出さずとも分かる。
なんか怖いよな、この変態。
「まあ、全てが終われば誤解は解けるでしょう」
「だといいけど……」
「…じゃあここで一旦別れよう、私は時間を稼ぐから二人はそのうちに」
アズサ、この時のために塹壕とか罠とかを建物の周りに仕掛けまくっていたらしく……修繕作業大変だろうなあと、呑気なことを考えたりしてしまった。
「お気をつけて」
「任せて、ゲリラ戦は私の十八番だから」
「本当にそんなことができるの?」
「はい。まあ負担は相当でしょうけど……一回までなら支障はないはず」
「……なら、お願いするね」
アズサとハナコが体育館までアリウス生徒たちを誘き寄せる。アズサの仕掛けた罠で多くのアリウス生徒を戦闘不能にして数を減らして……残ったのを私たちが全員で叩く。
「銃を撃たなくても出来ることってこのくらいですから……」
「大丈夫、気持ちだけでも嬉しいよ」
「……どうも」
アズサたちが来るまでの短い時間で、先生に作戦の相談をする。
ほどなくしてアズサとハナコがやってきて、それを追うようにアリウス兵たちが体育館へと入ってくる。
「なるほど、待ち伏せというわけか。だがたった四人で何が出来る?何分持たせられる?」
「ごめん、思ったより数が残った」
確かに少々多い……けど、多分なんとかなる、というかなんとかする。
「……なんだ?」
ゆっくりと前に出て、眼を開く。私を怪しんだアリウス生徒たちが一斉に銃口をこちらに向けてくる。
「すぅ……はぁ……」
神眼、その眼の名称は様々であり、これまで観測されてきた神眼の数だけ呼び方があるという。義眼とか、天眼とか千里眼とか。
ただ目が良いから神眼なんじゃない。
視る事象を掌握するからこそ、神眼なんだと。
「
私の視界内にいたアリウス生徒全員の視界が、それぞれの間で入れ替わる。今の彼女たちには自分の立ち位置が急に変わったように見えているのかも知れない。
「行くよみんな!」
その隙を逃さず私を除いた補習授業部が攻撃を仕掛ける。視界が入れ替わって混乱しているアリウス生徒たちは私が力を使った10秒間、ろくな抵抗もできずに次々と倒れていく。
「……っ〜!限界あとよろしく!」
「ありがとうヒサギ下がっててっ」
10秒間、ただ撃たれるだけで混乱して味方を撃ち始めたアリウス生徒たちが先生率いる補習授業部に完全に制圧されるのには、そう時間はかからなかった。
「あうぅ……先生の指揮とヒサギさんの眼があって助かりました……」
「ヒサギ先輩さっきの何!?どうやったの!?」
「フフッ……ズルした」
他者の視覚にまで干渉するこの眼……使うと代わりに目と頭がすごく痛くなる、てか疲れる。
「これで最初の難所を超えましたね。コハルちゃんが連絡してくれたので、ナギサさんが襲われたという情報を得た正義実現委員会もじきにここへ来るでしょう」
「増援もしばらくは来ないはず。あとは待っていれば……っ!」
眼を使っていなかったせいで気づかなかったが、すでに体育館の周りには多くのアリウス生徒がいて、戦闘を終えたばかりだというのにゾロゾロと大量に入り込んできた。
「これだけの生徒が公然とトリニティの敷地内に…!?」
「正義実現委員会が動く気配がない…?」
「——それは仕方ないよ」
ヒフミとハナコの疑問に答える声が聞こえる。
「……なんだ、あいつ」
この空間にいる生徒の中で一人だけ、異質な輪っかを戴く人物がいた。それはもはや光輪ですらなく……星を思わせるような、何か。
「だってこの人たちはこれから、トリニティの公的な武力集団になるんだから」
「ミカ…?」
「やっ、久しぶり先生。また会えて嬉しいな」
ヘイローだけじゃない、なんというかこう……初めてツルギさんを見た時のような、そんな感覚。そもそもの
「…ヒサギ?」
「まだ一回は行けます、合図を」
さっきと同じように混交を使う用意をしておく。最悪私も引き金を引いたとしても、あいつだけは……
「ティーパーティーの権限を使って可能な限り厄介者は排除したから、正義実現委員会も、それ以外も」
ミカ……聖園ミカ。
ごめん、見れば分かる化け物がいるとは聞いてない。
「ナギちゃんを襲う時に邪魔なんてされたら、困っちゃうもんね」
「……君が本当の、トリニティの裏切り者」
「正解!というわけで早くナギちゃんをどこへやったか教えてくれる?私も時間がなくってさ。まあここにいる全員を消し飛ばしてから、ゆっくり探しても良いんだけど……それは面倒でしょ?」
今の言葉が本気なら、こっちも撃ちたくないとか言ってる場合じゃなくなる。出来ること全部やらないと、やられる。
「どうして……?」
「聞きたいの?先生がそういうなら仕方ないな〜。それはね………ゲヘナが嫌いだからだよ。心から……心の底から、嫌いだから。ナギちゃんがゲヘナなんかとエデン条約なんて変なことするからさあ」
……自分の好き嫌いのためだけに、友人の命を奪おうとした?
「ゲヘナのあんな、ツノが生えたやつらなんかと平和条約なんて、冗談にも程があると思わない?考えるだけでゾッとしちゃうよ」
ああこいつ、ダメだ。
ゲヘナの雰囲気とか荒っぽいところが気に食わないならまだ分かる。だがこいつが今理由に挙げたのは、ただの見た目だ、身体的特徴だ。
自分だって翼が生えているくせに、そこで差別して……そんなことのために、こんなことをして。
「なんだってあんな奴ら信用できるんだろうね?裏切られるに決まってるじゃんね。ナギちゃんもそんな都合のいい話現実にないってそろそろ理解してほしいよね。私たちはこういう、ドロドロした世界の住人だって、そろそろわかってくれてもいい頃なのにね」
ああ、私こいつのこと嫌いだ。
「アリウスのみんなはね、同じゲヘナを憎む仲間なの。だから提案したの、一緒にゲヘナとエデン条約を結ぼうとする悪党たちをやっつけない?って。アリウスには次期ティーパーティーのホストとなる私の下についてもらう、そういう約束」
「アリウスは最初から、トリニティのクーデターの道具だった……?」
「うん?……うん、確かにこれはクーデターとも言えるかもね」
初めて心の底から理解できない相手を見た。同じ人の形をしているのに、どうしてこうも……こうなにも。
「あぁ、あなたのことは分かるよ、白洲アズサ。あなたが私にとって大事な存在であることは変わらない、今までも、これからも」
「……」
「だってあなたにはこれからナギちゃんを襲った犯人になってもらわないといけないからね」
何がそんなに楽しいのか、気持ちのいい笑顔でそう言い放つ。
「スケープゴートって言った方が良いかな?罪を被る生贄としての存在がいてこそ、みんながぐっすり安心して眠れるの。世の中って、そういうものじゃな———」
銃声が周囲に響き渡る。天井からポロポロと削れ落ちた屋根が落ちてくる。
「……どこ狙ってるの?というか、あなた誰だっけ」
「……全部、本気で言ってる?」
心底理解できなくて、これ以上聞きたくなくて。
そう言ってしまった。
「ゲヘナが嫌いだから……それだけのために友達を傷つけようとして、他者を利用して、全部押し付けて…自分の快不快のためだけに…?」
「……嘘つく必要、ある?」
「そうやって自分の周り全部傷つけて………お前に何が残る?そうした先で、何がしたい?」
認めたくなかった、心の底から言っているなんて思いたくなかった。こんなこと考える奴がいるなんて……
「……私は、ゲヘナをキヴォトスから消し去りたい。それだけだよ」
ああもう、こいつ嫌いだ本当に。
「穏健派を追いやって、その先をアリウスで埋めて。新しい連合になったり、新しい公議会を開いて、新たな武力集団を得て再編されたトリニティが、ゲヘナに全面戦争を仕掛ける。そう、これが私の計画!」
「……っ!」
「わっ、びっくりしたー……」
先生が、圧を放つ。そんなことできたんだってくらいの……私たちまで驚くくらいの。
「先生、そんなに怖い眼もできるんだね……うん、先生がすごく怒ってることはよく分かった。ごめんね、説明も何だか急いじゃったし、雑だったよね?」
「……先生、もういいよ、始めよう」
何言っても無駄というか、価値観が違う。何をどうしたら、こうも歪んでしまうのだろうか。
全く、分からない。