銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!! 作:ギアっちょ
トリニティ自警団、トリニティ非公認の部活であり、治安維持組織。非公認なのは正義実現委員会がいるからだろうけれど……何故自警団というものが始まったのかは知らない。
トリニティ自体いくつかの学校が集まって出来たと聞いたので、昔のそれぞれの治安維持組織が統合しきれずに溢れた結果だったのかなあ、と思ったり。
私が正義実現委員会に入らなかったのは、いくつか理由がある。と言ってもそのほとんどを占めるのが『自由にやりづらいから』だ。
噂では正義実現委員会からのスカウトを断った、となっているみたいだけど、別に断ったわけじゃない。
入って、すぐ辞めただけ。
「あ……こんにちは、ヒサギさん」
「ん、あどうもハスミさん」
と、そんなことを考えていると私をスカウトしてきた当の本人と鉢合わせてしまった。正直こっちも面と向かって話すのは申し訳ないので、適当に会釈して早々に退散する。
「もしお時間があればお茶でもどうでしょうか」
どうしようお茶誘われちゃった!ちゃんとした友達いないからちょっと嬉しい。でも……
「すみません、今日はその………なんか用事が出来る気がするので」
「……素直に断ってくれてもいいんですよ?」
「誘ってくれたのは嬉しいんだけど……本当に嬉しかったんですよ?ありがとうございますほんと」
「そうですか……ではまたの機会に」
「ハイ、またの機会に」
結局断る。話してると申し訳ない気持ちになってくるから。
私が正義実現委員会を辞めた理由は簡単で、銃を使わずに制圧することをよしとされなかったから。だから勢いで辞めて、自警団あるんじゃ〜ん!となり、自警団となった。
彼女的には、私がドタドタ足を踏み鳴らしながら委員長に「辞めまァす!!」と叫んで辞めていったのが相当ショックだったらしく……以来何かと私に声をかけてくる。
衝動的によく分からない辞め方をしたのがいけなかったらしい、つまり私が悪いってわけ。
まあ実際のところ、トリニティは何故か政治的な面も持ち合わせており、その道具として正義実現委員会が使われることもあるようで……それを知る前に辞めたけど、遅かれ早かれだったのかなとも思う。
まあ言ってはなんだが、根本的にトリニティの風土に私が合っていないという問題が出てくる。正直私にとってあまり居心地のいい学園とは言えない。
まあろくに友達もいないし、むしろ周囲から距離を取られるようなことしてる私が悪いんだけども。
「……あ」
そういえばハスミさん、あのシャーレってのと臨時で合同作戦したとか何とか聞いたな……せっかくだったらその話聞けばよかったな。
「…まあいっか」
走る閃光弾という人物がいる。
……間違えた。守月スズミという人物がいる。私やレイサと同じトリニティ自警団であり、一応の同級生に当たる。
目潰しの悪魔と、私は一時期呼んでいた、今は普通にスズミ呼び。
その名の通りスタングレネードを使いまくるのが特徴……武器を使わない私とスタングレネードを投げまくるスズミで、どちらの方が戦法的にヤバいのか一時期議論になったことがあるらしい。
結果、私の方が意味わからんと5分で決着がついたのだそうだ、不服ぅ。
ちなみに、個人的には親近感を感じている。
「スズミってなんでスタングレネードばっか投げるの?」
と聞いたら。
「その方が怪我をする人が少ないからです」
と帰ってきた。
銃のない世界を作りたい私としては、この世界でそんな言葉が聞けたことにとても感動して………感化されて私もスタングレネード投げてみたんだけど、銃を乱射されて大変なことになったので以来使っていない。
それはともかく、優しい人だなと思う。自警団でも中核的存在で、何かと頼りにされている。
「音楽の趣味は独特だけど……」
最初は避けてたけど、30分くらい聞かされると段々癖になって来た。癖になってくるのが怖くて聴くのを辞めた。
関わること自体はそんなにない、私が避けているから。何故かって会うと説教を喰らう。
何故銃を使わないんですかとか、最低限自分の身は守ってくださいとか。
「いい人なんだけどなあ」
レイサは……面白いから関わってみた。向こうも友達少ないらしくて私が勝手な親近感を抱き距離を詰めてみた。まず初めに思ったのが「声が大きい」だった。
よく通る声で喋る、そして指摘すると小さくなる。
戦いぶりを見てみたことがあるけど、ショットガンなのもあるんだろうけどやたらと正面から突っ込んで突破しているのが多くて……危なっかしいんだけど、不思議とそれで何とかしてしまう能力がある。
個人的には自警団活動してる時にテンションが上がり、自分のことをスーパースターとか名乗り出すのがとても面白いと思う。感化されて私も同じように平和の求道者とか名乗ったら、その後話を聞いてもらえずにあり得ないくらい苦労したので以来名乗っていない。
「多分、一番仲のいい相手」
とまあ、街のベンチに座り自分の交友関係を確かめてみたわけだけど。
困った、たったの二人しか連絡先を知っている相手がいないぞ。しかもスズミとはろくにやり取りしないし……
これでも人並みに青春を楽しみたいという想いはあるんだ、私。無理そうだけど。
そもそも私が基本トリニティで『変な奴』として浸透してしまっているのでどうしようもない。友達なんて出来るはずもない。
「
シャーレ……正式名称【連邦捜査部S.C.H.A.L.E】
色々調べてみたけど、端的に言ってしまえば何でも解決してくれる便利屋。学園の垣根を越えて戦力を集めて、学園の垣根を越えて問題解決に当たることができる。
詳しいことは知らないけれど、連邦生徒会と関わっているということもあり、それができるだけの権利を有しているらしい。
「この先生ってのがどこの誰かは知らないけど……ちょっと権力持たせすぎじゃない?」
権力の一極集中っていうのは、その組織が暴走した場合誰にも手がつけられかねないということでもあるし。その組織が麻痺した場合立て直しが困難を極めかねない、ということでもある。
随分とその先生という大人の善性に期待しているな、と感じる。危ないというか何というか……
「癪に触るなあ……」
顔も声も知らない相手にこんな感情抱いてちゃいけないんだけども。
「…パトロールでも行くかあ」
そう呟いて、拳銃型のモデルガンを持って歩き出した。
一説によれば、銃を携帯していない生徒というのは全裸で道を歩く変態より珍しいのだそうで。あんな変態よりも格下扱いをされるのは不服なので、こうして弾の出ない見た目だけ精巧な銃を携帯しているというわけ。
実際に活動するときは鞄の中にしまう。武器を持っているってだけで攻撃されるかもっていう警戒心を相手に与えてしまうから……
道を歩くときだけ、こうやって持つようにしている。
「いつもの道回ればいいかなあ」
決まった巡回の道筋は作っていない。正直私のはパトロールと称して散歩をしているだけに等しい。争いを見かけたら仲裁しに行くけれど……そう何度も遭遇するものでもないし。
「今日も平和でありますように……と」
そう呟いて私は歩き出した。
「澪標ヒサギ、ですか……」
幾人かの生徒を選定して、それが如何なる者なのかを見極める。トリニティに害するものなのか、否かを。
二年生時にトリニティ総合学園に転校、以前所属していた学園はトリニティ自治区外の小さな学園となっている。
入学してすぐに射撃訓練で好成績を収め、その優秀さを認められた各派閥から勧誘を受けている。しかし彼女はその全てを蹴り……いえ、正義実現委員会だけは勧誘を受け入れて、そのあとすぐに脱退している。
「そのあとはトリニティ自警団へ……やり方が合わなかったのでしょうか」
射撃訓練の成績の良さに反して、彼女の自警団活動では一切の射撃が確認されていない。これは正義実現委員会での初任務の時と同様……
それなのに彼女が担当した事件ではその多くが穏便な解決に……そうでなくとも収束には導いている。
「……方法は、敵勢力全員の無力化……報告書はもう少し正確に書いていただきたいものですね」
その後もいくつもの報告書に目を通したけれど、彼女が無害であるという保証をしてくれる材料は残念なことに見つからなかった。周囲からの印象も『変』というのばかり……
「詳しい経歴も不明、何を考えているのかも不透明、銃を使わないという怪しさ……」
ティーパーティーがひとり、桐藤ナギサは澪標ヒサギの書類を枚数の少ない山へと選り分けた。