銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!! 作:ギアっちょ
「ごめん遅れたっ」
「大丈夫、そこまで待っていない」
「あっそう?」
エデン条約調印式の日、みんなでファミレスに集まることになっていた。調印が行われる会場からは少し離れているけれど近いことには近い。学園を挙げての式ということで一般生徒は休みとなり、一部の生徒たちは調印式に駆り出されることになる。
「こっち空いてますよ、ヒサギさん♡」
「わあありがと〜、ふんっ」
「やんっ、激しいっ♡」
扇情的な身振りも表情で手招きしたので勢いよく座り込んでやった。
「これで全員揃いましたねっ。補習授業部の卒業パーティーを始めましょうかっ!」
正確に言えば卒業というか、補習授業部の解体はまだなんだけどせっかくエデン条約のおかげで学園が休みなので、今このタイミングでお祝いしようとそういう話らしい。
まあ実際ハナコも忙しそうだったし、ヒフミとアズサは何故か海へ行くしで集まる機会がなかったのは事実。
「ヒサギさんはさっきまで自警団活動していたんですか?」
「うん、そのせいで遅れたんだけどさ」
本来なら正義実現委員会も調印式の警備に当てられていたはずなんだけど、コハルの役職はそう言うんじゃないし、そもそも今はまだ補習授業部の所属だから参加しなくて済んだ……ってところかな。
「………エデン条約かあ」
「気になりますか?やっぱり」
「まあ……そりゃあね」
トリニティのティーパーティーのナギサはともかくとして……ゲヘナの万魔殿の羽沼マコトはあまりいい話を……いや、全くと言っていいほど聞かない。
そんなのがトリニティと平和条約を締結しようと言うのが、ちょっと想像つかないというか………評判とは違って平和を愛する心をやさしい人物なのかもしれないけれども。
「先生も条約で忙しいみたいですしね……」
補習授業部の顧問である先生も呼べたらよかったのにと、ハナコが残念そうに呟く。忙しいどころか連邦生徒会の代わりに出席するとかそんなんじゃなかったっけ?違った?
まあいいか。
「あれ、アズサちゃんそのぬいぐるみまだ持ってたんですか?」
「うん。大事な物だから、やっぱり持ち歩かないと」
「そ、そこまでしたか……」
ヒフミもアズサの話す声に反応してそっちを見てみると、以前ヒフミがアズサにプレゼントしたペロロのぬいぐるみが話題にあがっていた。
この世界だといつ爆撃に巻き込まれるか分からないから、私なら大切なものは安全な場所にしまっておきたいかな……
「今度ぜひ一緒にお店とかにも……そうだヒサギさんも結局一緒に行けてませんよね!一緒にいかがですか?」
「私?あ〜……予定が合えばそうさせてもらおうかな」
「今度ペロロ様の冒険アニメも公開されますし、それも三人一緒……いや、五人一緒に見ましょう!」
「ちょっと!私まで巻き込まないでくれる!?」
コハルが遺憾の意を示している。自分が好きなものをみんなにも興味を持ってもらいたいというヒフミの気持ちはよくわかる。
というかアニメ……メディアミックスまでちゃんと話しているのかモモフレンズ……
「仲間たちと力を合わせて悪を打ち砕き、共に苦難を乗り越え、最後にはみんな笑顔で終わるというそのエンディングがすごい感動的だそうで……」
……ん?
公開前なのにエンディングが知れ渡ってるの?ヒフミそれリークとか踏んでない?大丈夫?
それとも原作があるタイプのやつなのか……いやそれなら……もう考えるのはよそう。
「フフッ、ヒフミちゃんはそういったハッピーエンドが好きなんですか?」
「は、はい、そうですね。やっぱり普通すぎますかね……?」
「……悪いとは言わないけど、ちょっとありきたりじゃない?最終的にはみんなで仲良く大団円とか」
ヒフミの言葉にコハルがそう返す。
「私も、ハッピーエンドはよく分からないな。頑張ったところで、いくら理想を掲げたとしても世界はそうそう変わらない。……それがこの世界の真実だと思うから」
「あうぅ……みんなダーク寄りなんですね……ひ、ヒサギさんはどうですか…?」
こっちにまで話が回ってきた。特に争っているわけでもないが、劣勢になったヒフミが私の方をじっと見つめている。
「……私は好きだよ?ハッピーエンド」
「で、ですよね!やっぱり暗いのはどうしても苦手で……」
私の言葉にヒフミが安心したように呟く。
「まあ物語として絶対に大団円になるっていうのがつまらないってのも分かるけどさ。物語の登場人物たちに幸せになってほしいって思うのは自然なことだと思うし……」
「まあ、それはそうかも……」
私の続けた言葉に、さっきヒフミにありきたりと言ったコハルがそう漏らす。
「現実はそう上手くはいかないとしても……だとしたらなおさら、物語の中でくらい大団円を望みたいかなあ、私は」
「おぉ………凄くちゃんとした理由ですね…」
……はっ、しんみりした雰囲気を出しすぎた。
「それにさ!モモフレンズの物語でバッドエンドなんか別に見たかないでしょ?」
「それはそうだな、間違いない」
「ですよね!ペロロ様ですもんね!」
何が「ですもんね!」なのかいまいち理解できないけれど、そういうことだ。
もし自分たちを物語の登場人物だと考えたら、バッドエンドなんてゴメンだし。だったら理想を追い求め続けるしかないだろう。
「……ちなみに、私はヒロインが目を蕩けさせて、涎を垂らしながら許しを請うタイプのエンディングが好きです♡」
「ばっ、バカじゃないの!?そんなエンディングあるの!?」
「うーん、結構あると思いますが……」
ジャンルが違うだろそれ。
「……でも、そうだな。みんな幸せな方がいい……確かに、ヒフミの言うことも少し分かる気がする。それにヒフミが好きなら良いものに違いないから」
「あっ………アズサちゃああああんっ!!」
「うわっ」
仲良いなあ……
ハッピーエンドを望む想いを、綺麗事だと打ち捨ててはいけない。それを捨てたらきっと、全てが虚しくなってしまうから。
「……このままエデン条約が無事に終われば、先生とゆっくり話したいですね」
「……先生、ここにいればよかったのに」
ついこの前私だけシャーレに言ってたのは黙っておくか……言っても何にもならないか、別に。
「そうですね……今先生は古聖堂にいらっしゃるのでしょうか」
何事もなければいいけど。
ずっと妙な胸騒ぎが消えない。
「もう先輩その時凄かったんだから!弾丸を最小限の動きで避けて敵に直進していって、武器を使えなくしてどんどん制圧していって!」
「あぁ、実際にヒサギの身のこなしはなかなかのものだった」
「ヒサギさんの眼も特別ですしね」
「へ、へぇ〜……やっぱり自警団してるだけあって腕が立つんですね…」
なんで私褒められ始めたの?どういう話の流れだっけ?
「先輩が本気出したら私たち四人でかかっても手も足も出ないわよ!」
「コハルはなんで勝手に大口叩くの……?」
「いや、眼がいいだけならいくらでもやりようはある、意識外を狙うやり方で……」
「真面目に攻略法考えないでくれない?アズサ」
「ヒサギさん消耗激しいのでスタミナ切れ待つのも手ですよ、アズサちゃん」
「何攻略法吹き込んでんのハナコ」
そもそもそんな状況になったら真っ先に逃げるよ、私。戦いたくないもん、降伏が許されるなら降伏する。
「つまり——…っ!」
「……アズサちゃん!?」
窓の外を見ていたアズサが、急に何かに迫られるように席を立って外へと出ていってしまった。
「……ちょっ、アズサ待って!」
街の上空を高速で飛んでいくその
街中の大型ディスプレイ。
そこではクロノススクールの生中継が行われており、ほどなくして……通信が途絶えた。
地響きの後に、大きな大きな音。
まるで連鎖するかのような爆音が遠くからここまで飛んできて……街がざわめく。普段の戦闘音とは比べ物にならないほどの大きな爆発音。
さっき飛んだいたのは、巡航ミサイル。眼を使っていなかったから飛んでくるのに気づかなかったけれど、あれは……
「ヒサギさんっ!」
少し経ってハナコが私を呼ぶ声が聞こえた。
「アズサちゃんは!?」
「……遠くに行った、この混乱具合じゃ追いつけない」
「そんな……」
ヒフミが不安そうな声を漏らす。コハルも古聖堂にいた正義実現委員会の先輩たちの心配を……
「ここで散らばってしまうのは危険です!状況が把握できるまでは動くのは得策ではありません!」
「で、ですがアズサちゃんが……」
ハナコの静止は尤も。
「アズサちゃんも正義実現委員会も少なくとも自分の身は守れます!今はそれよりも——ヒサギさん!ダメです!」
何も言わずに離れようとした私を、ハナコがより強く静止する。
「おそらくゲヘナもトリニティも緊張状態……銃を撃たずにどうにかなる状態ではありません!今はここで——」
「心配しないで、ハナコ。撃つならとっくに聖園ミカの顔面に鉛玉ぶち込んでるよ」
「ならなおのこと…!!」
振り返る。
三人とも心配そうな表情で私のことを見ていて……近づいて、語りかける。
「アズサを追いかける。ついでに正義実現委員会のみんなの状況も確認してきて……先生も心配だし。行くよ、ごめん」
「先輩っ……」
「……大丈夫だって」
そこまで言った私を、ハナコは止めなかった。
人混みの少ない道を選んで、エデン条約の会場へ……ミサイルが着弾したその場所、古聖堂へと駆けて行く。
「……ああ、もうっ」
どうしてこうも上手くいかないのかな、ヒサギ。