銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!!   作:ギアっちょ

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疑問

「何度病室送りになれば気が済むんですかぁ〜!?」

「名誉の負傷さッ!」

「元気そうで何よりですよ!もうっ!!」

 

 レイサにドヤされてる。

 

「動いちゃダメな状態なのに動いて戦闘して、そしてまた気を失って運ばれてくるって……」

「いやあはっはっは、なんか勢いに乗っちゃって」

「勢いに乗ったら銃身こんなになるんですか!?」

 

 レイサが指差した先には、まるで破裂したかのようにバレル部分が裂けている私の銃があった。

 

「なんかバナナみたいだね、ははっ」

「あっ差し入れバナナがよかったですか?」

「なんで?」

 

 急に現れたあのよく分からん赤くてデカいの……何かしようとしていた先生を止めて私が無理やりアレでぶち抜いて倒したけれど、その時破裂してしまったらしく、そのまま一緒に私とトリニティの保健室に運び込まれた。

 

「とにかく!しばらく絶対安静ですよ!!」

「へい…」

「連絡よこされて急いで向かったら気を失われて、心配しつつも自分にできることをって思ってたらベッド抜け出してまたどっか行って……こっちの身にもなってくださいよ、全く」

 

 レイサに怒られる前に先にハナコがやってきて、私に不満を垂れてきた。………じゃあみんなもっと先生にも怒ってよ!あの人の方が重傷なんですけど!!

 

「……ごめん、レイサ」

「あっ……いつもレイサちゃんなのに」

「えっ?あっ、あ〜………じゃあこれからもレイサで」

「え?あっ、はい。……はい?」

 

 元の澪標ヒサギが後輩にちゃんを付けて呼ぶ人だったから……なんか真似した方がいいのかなって、そんな変な考えでそうなっていた。そもそも性根は暗めなくせに無理やり明るく振る舞ってたし……

 

「………」

「……な、なんです?じっと見て」

「いやあ……かわいいなって」

「頭おかしくなりました?」

「元からおかしいからどうだろう」

 

 真っ直ぐ慕ってくれる相手なんて、そりゃあ可愛いもんだと思う。彼女にとって私がどういう存在だったのかは分からないけれど……

 

「……やりたいことは、やれたんですか?」

「え?」

「どうしてもやりたいことがあったから、無理したんですよね?多分…」

「………」

 

 やりたいことっていうのは、レイサが言っているのは銃を使わない世界を作るってそういうことだろうが……

 

「…まあ、そうだね」

 

 言いたいことは言ってやったし、もしかしたら……と思うところはあった。アツコが……気づいたように見えたから。

 けれどそうやって逃げようとした先に、スクワッドに逃げる場所はあるのだろうか。逃げられるのだろうか。

 

「まあ満足はしたよ、あとはなるようになれというか……心残りはあるけれど、やり残したことはもうないかな」

「そうですか……よかったです、ヒサギさんなんだかずっと……息苦しそうに?してたから…」

「………」

 

 なんとまあ、よく見ている。

 

「……フフッ」

「ど、どうしました?」

「いや……別になんてことないんだけど」

 

 失踪した澪標ヒサギを探す生徒はいなかった。仮にも生徒会長だったのに、だ。それだけでも澪標ヒサギという人物の周囲との関わりが察せられる。

 それに比べて、今の私は。

 

「なんか、楽しいなあって」

 

 困ったように見てくるレイサの顔を見て、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局エデン条約は有耶無耶に。まあ両学園の生徒会長が襲撃されて会場までミサイルぶち込まれた状態で締結できるわけないだろってのはそうなんだけど……

 

「結局今まで通りかあ」

「いいじゃないですか、悪化はしてないんですし」

「いやあ……」

 

 いずれにしても、アリウスはいつか対処しなければならない問題としてゲヘナ……は知らんけど、少なくともトリニティには認識されたとは思う。これからどうなるかは……分からないけれど。

 なんかあのミサイルとか通常じゃありえない性能だったらしいし、アリウスの全容が知れないというか……

 

「ハナコは……最近どうなの?」

「まあシスターフッドに時々足を運んではいますが……それ以外はいつも通りです。たまにコハルちゃんとあんなことやこんなことをするくらいですかね」

「そっか」

「……突っ込まないんですか?」

「いい加減めんどくさいなって」

 

 ハナコがコハルのこと大好きなのはよく知ってるし……可愛がってるんだなあって思う。

 

「……そういうヒサギさんはどうなんです?」

「何もないよ〜?というかみんなそうじゃない?あんなことあったけど……セイアさんはティーパーティーに復帰したし、聖園ミカも代わりがいないからって一応あそこに席がまだあるし……」

「まあ言われて見れば確かにそうかもしれませんね、不思議なくらい」

 

 結局これは変化を起こすための騒動じゃなくて、日常へと戻るための騒動だったんだと。

 

「身体はもういいんですか?それと眼」

「全然へーきへーき。元々ぶっ倒れたのも全部ただの疲労だし……」

「何度も気を失うほど疲労するまで頑張ることをおかしいと思って欲しいんですが…」

「自分まだまだ働けますっ」

 

 二人して噴水に腰掛けながらそうやって他愛のない話をする。

 トリニティでも名の知れた変態二人がこうやって真っ昼間に並んでいるのだから、それなりにヒソヒソされているのが視える。まあ今更なので気にも留めないけれど。

 

 そもそも名の知れたとはいうけれど、本当に生徒数が掃いて捨てるほど多いので知らない人の方が多いだろう。興味がなかったらティーパーティーとかの分派もよく分からないし。

 現に私もよく分かんないし。

 

「……補習授業部ってもう解散したんだよなあ」

「恋しいですか?」

「まあ……ちょっぴり」

 

 余計なことばっかり考えてた気がするけど……それでもやっぱり、誰かも一緒に何かをするっていうのは楽しかった。

 

「まあ、変わらずにはいられないしね。あいつらも変わってくれたらいいんだけど……」

「アリウススクワッド、ですか」

「別にスクワッドだけの話でもないんだけど……みんなだよ、みんな」

 

 他の奴らに面識なんてないから、頭の中に浮かんでくるのはサオリたちの顔ばっかりだけど。にしたってサオリ以外とはさほど言葉も交わさなかったし……

 

「アズサちゃんも気にしていたようです。詳しくは聞きませんが……色々あったみたいですね」

「アズサほどじゃないよ。……私は勝手に気にかけてるだけ」

 

 時間がないからって、見ないふりをして私だけが抜け出して、トリニティでのうのうと生きてきた。向こうにそれほど仲間意識があったかどうかも疑問だけれど……

 

「あーあ!な〜んか余計なことばっかり考えてるなあ」

「フフッ、そうですか?悩むことも生きる上で必要なことだと思いますよ」

「いやもうほんと……変なこと勝手に抱え込んでばっかだし」

「なら……」

 

 悪寒がする。

 

「私と楽しいこと……してみませんか♡」

「うわぁねっとり言うなっ。……擦り寄ってくるなっ!」

「一緒に全部忘れてしまいましょう♡」

「ひぇ」

 

 なんかいつもより一層気迫がすごい、なんだこいつ。

 

「真っ昼間からお前…」

「日の光に照らされながら絡み合う肢体……興奮しませんか♡」

「しませんッ」

 

 というかお前は私と何をしたがってるんだ……やめろ近づくな。……近づくなって!!

 

「まあ冗談はさておき」

「冗談で人を本気で焦らさないで?」

 

 立ち上がって逃げていたのを、また同じハナコの隣に座る。

 

「こうやって貴方と話せることができるようになってよかったって、そう思っているんですよ、私」

「え、まだ冗談言ってる?」

「違います。……きっと貴方はまた、機会があれば彼女たちを……アリウススクワッドを追うんだろうなと」

 

 まあそりゃあ……機会があればね?

 

「怖くないのですか?」

「何が?」

「自分は銃を持たないのに相手は躊躇せずに撃ってくることが」

「怖くないことある?それ」

 

 というか怖いから撃ちたくないって理由もあるわけで……

 いやでもついこの前は相手が明らかに人じゃないからって理由で凄いの撃っちゃったけど………

 

「でも私はそれでもどうにかなるくらいの力を……ありがたいことに持ってるからね。この自分のしょうもない拘りは………この世界でたった一人しかいないとしても、私だけは捨てちゃならないから」

 

 澪標ヒサギは、他の学園に対する憧れを常に抱いていた。ただ今ある学園を存続させることしかできなくて、させてもらえなくて……

 そんな彼女が最後に私に示して行ったのが、銃のない世界があればいいのにと……そういう望みだった。

 

「全ては虚しいかも知れないけれど、それを理由に諦めることはしない。………アズサは立派だなあって」

「……貴方も凄いですよ」

「それを言うならハナコだって」

「うふふっ」

「はははっ」

 

 私はしがらみから逃れつづけてきただけで……ハナコだって今向き合おうとしているんじゃないのか。エデン条約の時、向き合おうとしていたんじゃないのか。

 

「……これは、聞き流してくれて構わないんだけど」

「……なんですか?」

「この世界ってさ、やっぱりおかしいんだ」

 

 どうしても誰かに言いたくなって……ここにいるハナコを利用して、愚痴を吐かせてもらう。

 

「なんで子供が……生徒会長がそこで一番偉いのか。本来責任を持って、導いてくれるはずの大人がこの世界にはいない。結局みんなただの子供に過ぎないのに……」

 

 だからこそ、先生が特別で。

 

「本来負わなくていい責任を負わされている、そういう子供がたくさんいる。大人の手によって救われるべきなはずの子供たちが、大人を名乗る奴らの手によってどんどん不幸にされていく」

「………」

「こんなに生徒っていう子供が主体の世界なのに、何故か世界は私たちに中途半端に権利を持たせて、困らせて……明らかに認知の歪められた、作られた世界で……一体誰が、何のために」

 

 誰も疑問に思わない、私だけがこの世界からはみ出しているせいかも知れないけれど……

 ロボットとか犬とかにしか見えない奴らを大人と呼んで、一緒に暮らしている。私たちだけがこうして人の姿でいる理由は?何故親とかをほぼ認識していない?ヘイローとは一体何なのか………

 

 神秘とは、一体何なのか。

 

 明らかな歪みが無視され続けている。

 知らなくても困らないとしても……少なくとも私にとってはそれは気味が悪くて、おかしいと思えてしまう。

 

「だから……こんな理不尽な世界で、頑張って生きようとしているみんなには幸せになってほしいし……武器を持って傷つけ合うなんてこと、してほしく何かない」

「………」

「ナギサさんだってそうでしょ?やり方は過激だったかも知れないけれど……誰も信用できない中で、自分しか頼れない中で………エデン条約のために、トリニティのために出来ることをしようとした」

 

 もし責めるとすればそれは彼女が置かれた周囲の環境なんじゃないのか。少なくとも私は………今は、彼女を責める気にはなれない。

 

「本当はただの子供なのに、環境のせいで責任を負わざるを得ないのは……それはおかしいよ、絶対」

「………貴方は、そういう風に世界を見ているのですね」

「共感はしようとしてくれなくていいよ。私が意地張ってるだけなんだから」

 

 感情を切り離せずにいる、それだけ。頭では理性的な考えも浮かぶはずなのに………

 少なくともこの世界の理不尽と……私のせいで、澪標ヒサギという人間の人生は終わってしまった。私はそれを背負って、その想いまで背負って生きていかなければならない。

 

「貴方が…ヒサギさんがそうして悩むことは、貴方に取っての理不尽ではないのですか?」

「やりたくてやってるよ、半分くらいは。………今の私から変わりたくないしね」

 

 悩むことは、知識を得たが故の障害なんだって。悩めるだけ幸福だって、疑うことすらできずに不幸を黙って享受させられている奴らが大勢いるんだから。

 

「……けれど、私は貴方の何気なく過ごす時間も、好きですよ」

「………」

「それはきっとコハルちゃんだって……ヒフミちゃんやアズサちゃん、先生も………自警団の後輩の方だって、きっとそうなんです」

「どうだか」

 

 こんな話を聞かせている時点で、少なくともハナコには迷惑を……

 

「貴方がそうやって悩むのは、貴方が優しいからなんだって……私には伝わってきます。この世界がそういうものって理解していても拒もうとしてしまうのは、貴方が———」

「いいよ、もう。……ありがとね」

 

 こうやって、心が癒されるから。

 この世界のことが、嫌いになりきれない。

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