銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!!   作:ギアっちょ

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バラし屋

「神眼…っていう通り名、知ってる?」

「聞いたことがあるような……」

 

 ゲヘナの風紀委員長、ヒナがアコへと唐突に問いかける。

 

「一年くらい前に居たとされる生徒。全部の銃弾を見切って、戦場の全てを見通す……そんな特殊な眼の持ち主だったと言われている」

「そんなことあり得るんですか?」

「さあ……」

 

 あり得ない、と言いたげなアコに机に立ててまとめた書類を手渡すヒナ。

 

「都市伝説、みたいな扱いだった。諜報部隊が情報の真偽を確認する前に現れなくなって……それっきりだった」

「……委員長は、何故今それを?」

 

 書類を受け取り、唐突にそんな都市伝説を語り出したヒナを不思議に思うアコ。その質問に、窓の外を覗きながら答える。

 

「…さっきの報告書、うちの生徒がよその自治区で暴れた時。銃を全てバラバラに分解されていたってあった」

「あぁ……誰がやったのかも不明で……まさか」

「憶測にすぎないけれど」

 

 その神眼がやったのではないか、ヒナはそう言いたいのだと察するアコ。

 

「供述によればやったのは一人、戦闘後ではなく戦闘中に銃を分解されて無力化されたと。……銃撃を掻い潜りながらそんな器用なことができると思う?」

「………調べておきます」

「あくまで私の憶測だから、程々にね」

「了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いてっ……」

 

 これだからこの世界は嫌いなんだ。すぐ怪我するし……怪我するのはいいけどその理由が爆発だの鉛玉だのっていうのが気に入らない。乙女の柔肌を何だと思ってるんだ。

 その乙女が率先して銃持って暴れてるんだからどうしようもないなホント。

 

「視えても身体が追いつくわけじゃないってのがなあ……」

 

 そもそも全部見えるから怖いところもあるし……みんな、一回目の前に飛んでくる銃弾を視認してみたらいいと思う。ほんとに怖いから、怪我で済むとかそういう話じゃないから。

 素早く目に向かって飛んでくる物体とか、何かしらの拷問でありそうだと思う。

 

「救護騎士団の世話にはなりたくないもんなぁ…」

 

 でも見つかったら無理やり保健室に連行されるし……

 

「…傷が治るまで帰らないようにしよっと」

 

 私が無力化したヘルメット団たちはみんな呆れて帰るか、拳で戦い始めるか、正実に確保されるかと言ったところ。まあ拳でやり始めることは少ないはず。

 たまに私が仲介して和平交渉させて穏便にことが済むこともあるけれど……そうやって話を聞いてくれる人は少ない。みんな話聞かない。ちょっとメガホンで平和を訴えて武器バラしてるだけなのに、どうしてそんなに話を聞いてくれないんだろうか。

 

「……たまにはどっか遠く行くかあ」

 

 丈の長いスカートで足の傷を隠し、それ以外のところは上着を羽織って誤魔化す。顔には当たらないようにしてるから、服だけちゃんと着てたら傷だらけってバレることもない。

 救護騎士団には少しでも痛がるところ見せたら「救護」を喰らうハメになるので近寄らないようにする。

 

 

 列車に乗ってどこか……降りたことのない場所へ行ってみる。

 このキヴォトス、一部企業がやっていることもあるけれど鉄道に関してはハイランダーという学園が取り仕切っている。インフラまで子供にやらせてるんだから理解に苦しむ。

 まあ学園運営を生徒にやらせてるんだから今更か。

 

「D.U.……」

 

 連邦生徒会と……シャーレもあるんだったっけ。

 そういえば来たことがなかったなと降りてみる。街並みは整っていて、トリニティとはまた違った街並み……どちらかといえばミレニアム、あれに似ている。

 

 ここは特定の学園が自治しているわけではなく、どちらかといえば連邦生徒会の管轄。まあだからと言って争いがないわけじゃないけど……

 

「こっちはこっちでそれなりに平和そうだなあ」

 

 そもそも争いばっかりだと修繕が間に合わなくて廃墟だらけになったりするから……ゲヘナとかゲヘナとか、あとゲヘナとか。みんな爆発物まで持ち出すもんだからたまったもんじゃないだろう。

 

「あ、お巡りさん。……ヴァルキューレ、ね」

 

 ヴァルキューレ警察学校、評判はあまりよろしくない。やれ弱いだの遅いだのしょぼいだの、世間からは言われたい放題だけど、D.U.に来るの自体初めてな私にはよくわからない。

 まあよその学園の自治区には簡単に手出しできないらしいし、それぞれの学園に治安維持組織があるあたりそうなんだろうなという感じはするんだけど。

 

 そもそもなんでこんなに学園があるんだろうか、全部ひっくるめて一つの巨大な学園としてなら諸問題がそもそも起こらずに済むと思うのに……まあ銃の携帯が常識の世界に言うことじゃないか。

 

「待ちなさい!!」

「ん?」

 

 何かを呼び止める声。

 そっちの方を向く前に誰かに首に手を回されて、側頭部に何かを突きつけられる。

 

「こいつがどうなってもいいのかぁ!?」

「くっ、人質とは卑怯な……」

 

 なるほど、どうやら人質とは私らしい。

 銃を撃っても大した怪我にはならない世界で、銃で脅して人質にする行為にそこまでの効力があるとは思えないけど……

 

「たかが万引きでそこまでやりますか!?」

「うるせぇ!ごたごた言ってると撃っちまうぞ!!」

 

 で、その万引き犯を追いかけているのが目の前のヴァルキューレさん。まさか人質を取られるとは思っていなかったらしく、こちらに銃口を向けているけど焦っているのが見て取れる。

 

「近寄るんじゃねえ!!」

 

 ジリジリと距離を詰めてくるヴァルキューレさんに怒り、威嚇射撃をそこら中にする万引き犯。拳銃一丁でどうにかなるものでもないので大人しく自首して欲しい。

 

「くっ、このままでは他の市民にまで……やむを得ません、発砲します!!」

「は?」

「はぁ!?」

 

 思わずでかい声が出てしまった。

 いやだって、撃つって……この状況で撃つって

 

 想像驚いているうちに引き金は引かれた。万引き犯を捉えていた銃口は、なぜか撃つ直前に私の方を向き、そこから真っ直ぐ銃弾が飛んできた。銃口から真っ直ぐ銃弾が発射されたんだから、もちろん当たるのは銃口の先で。

 

 で、銃口の先には何故か私がいるわけで。

 私の眉間へ真っ直ぐ突き進んでくる銃弾を、私は首を抑えられたままじっと見つめて、ずっと見つめて………額にヒットした。

 

「いっづぅっ………」

「あぁっ、またやってしまいました……」

「下手くそ!あほ!バカ!どこ狙ってんだこの野郎!」

 

 暴れて文句も言いたくなる、人質に弾当たるとかこんな世界じゃなかったらとんでもないことになってたところだ。そもそもこんな世界じゃなかったら誤射の可能性あるのに引き金引きはしないだろうけど。

 

「す、すみませんッ!今朝の訓練では当たってたんですけど……」

「知るかぁ!!」

「お、おい暴れるんじゃ——」

「お前のせいで避けらんなかったろ!!」

「ぐぶっ」

 

 暴れた勢いそのままに後ろのやつの顔面に裏拳を喰らわせる。

 

「や、野郎!……あ、あれ」

 

 激昂して私に撃とうとするけれど、その手に握られているのはスライドやバレルの抜け落ちた、撃たない拳銃。

 

「な、なんだこ——」

 

 戸惑っているそいつの腕を掴んでそのまま背負い投げ。アスファルトに思いっきり叩きつけてやった。

 

「はい確保ォ!早く!」

「えっあ、は、はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……」

「ノーコンさんなんかまだ用?」

「返す言葉もありません……ッ!」

 

 ものすごい勢いで頭を下げられ、風が私の顔にまで飛んできた。

 

「本官、中務キリノと言います。この度は本当に失礼を…」

「欠いてるのは礼節じゃなくて規約なり規範じゃないんですかあ?」

「申し訳ございません……ッ!!」

 

 まあ可哀想なのでこの辺にしておく、ちょっと悪いなって気もして来た。

 

「本官、なぜか犯人を狙って撃つといつも人質に当たってしまい…」

「何でそれで撃とうと思ったの…?」

「今朝はちゃんと狙えたので…」

 

 そもそもなんで人質にだけ器用に当てるの?私なんか眉間に直撃したんだけど?どういう才能?

 

「人質を狙うと犯人に当たるのですが、警察官として流石にそれはどうかと……」

「いみわかんない」

 

 まあこの世界には原理のよくわからないことしてくる人結構いるし……かくいう私も人のこと言えた道理ではないか。

 

「今回はその奥の手を使う前に貴方が自力で脱出してくれたので、何とか狙わずに済みました!」

「でも当たってんのよ、弾」

「失礼しました……っ!本官が不甲斐ないばっかりに……!」

「いやまあ、うん………これからも頑張ってね?」

「はい……」

 

 まあ、こうやって律儀に謝って来てくれるあたりしっかりしてる……いや誤射して謝りに来ないやつとか論外だな……

 

「ところで、貴方は一体……トリニティの生徒だとお見受けしますが」

「……これ名乗っといた方がいいやつ?」

「まあはい、一応始末書に書きたいので……」

「ん〜……トリニティ二年の澪標ヒサギ」

「みお……な、なんと?」

「……生徒証見せるね」

 

 財布から取り出して名前の字を見せると納得したように頷いて、私の名前を復唱した。

 

「凄いですね、あの一瞬で銃を分解するなんて……一体どうやって?」

「どうやって、って。普通にバラしただけで…整備用にする時のアレをやっただけだよ」

「な、なるほど……それにしても一瞬の隙をついてやるなんて…」

 

 あー……勢いそのままにやっちゃったけど、流石にちょっと目立っちゃったかな……

 

「……ねえ、誤射ついでに聞きたいことあるんだけどさ」

「な、なんでしょう?」

「シャーレって……どんなの?」

「どう…とは?」

 

 質問が曖昧すぎたかもしれない。

 

「まあその、キリノさんから見たらでいいんだけど」

「本官から、ですか……正直本官もよく分かっていないのですが……確か今はアビドス自治区の方へ行っているとか聞きましたけども」

「アビドス……」

 

 あの砂漠地帯に?あぁ、そういえば残ってる勢力がいるんだっけ。ならそこからの救援要請とか…かなあ?

 

「やっぱり気になりますか?超法規的機関ですから、もしかしたらトリニティの方にも影響あるかもしれませんしね」

「……そうかも」

 

 まあ会わないとその『先生』とやらのことも分からないだろうし……聞くならやっぱりハスミさんからだろうか。

 

「よければシャーレのあるビルまで案内しましょうか?」

「ん〜……それはいいかな。ありがと」

「そうですか……あっもうこんな時間……では、本官は戻って上官に誤射したのをこってり絞られてきます!!」

「頑張れ〜」

「はい!ヒサギさんもお気をつけて!」

 

 元気よくこちらに手を振って帰って行った。なんというか、模範的というか……人質に誤射したこと以外はとてもいいお巡りさんだと思う。

 

「……アビドスねぇ」

 

 あそこは確か……でも考えすぎかなあ?

 

「なんだっけ……暁の……ん〜?」

 

 覚えてないな。

 まあ私には関係ないことだし、もし何かあってもその『先生』とやらが解決してくれるでしょうきっと。

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