銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!! 作:ギアっちょ
その時は唐突に訪れた。
今日はレイサと一緒にどこかへ行こうかなと思って、門の前で待ち合わせをして、レイサがやってきて私を見つけて駆け寄って来た時に。
「澪標ヒサギさん、ですね」
「……え?どちらさま?」
「ティーパーティーのものです。ナギサ様からこちらを預かっております」
と、整った口調で丁寧に、小綺麗に封をされた手紙を受け取り。
「それでは」
と去っていくティーパーティーの人と、入れ替わりでやってくるレイサ。
「お待たせしました!……あれ?ヒサギさんそれなんですか?」
「うん……ティーパーティーのナギサって人からの……私宛の…手紙らしい」
「ティーパーティーの!?そ、そんな凄い人からの手紙がなぜヒサギさんに……あっ!」
何か分かったように大きな声をあげて、嬉しそうな顔を近づけてくるレイサ。
「ほらヒサギさんよく報告せずに争いを鎮めるじゃないですか!この前だって大きなヘルメット団の抗争を正義実現委員会の出動より先に止めてましたし、感謝状とかじゃないんですか?」
「う、うん……」
もし感謝状だとして、それなら直々に手渡しして欲しいものだが……どうしようすごく嫌な予感がする。我ながらティーパーティーに目をつけられる要素は結構あると思っている。
「早く開けて見ましょうよ!」
期待の眼差しを向けてからレイサに急かされるまま、手紙の封を解いてしまった。中から出て来た手紙の内容は……
「……どうでした?」
「……すうぅぅ……」
「感謝状だった!!!!!!」
あの時はそう嘘をついたが、もちろん感謝状なんかではない。そもそも非公認の自警団に感謝状を送る行為が是とされることもないと思うけど。
内容はまあ、通告書みたいな感じで。
「補習授業部への入部を………勉強する部活って何だよ意味わかんないよ!!ふぬああああああ!!!」
学園生活の終わりを示唆していた……っていうのは大袈裟か。
まあそう、読んで字の如く補習授業部というのは、おバカな皆さんのために特別に部活を作りました!みなさんここで頑張って並レベルになる努力をしてくださいね!ということだった。
「そもそも私は授業ちゃんと出てるしテストだってちゃんと受けてるんだけど……?点数そんな極端に悪かった覚えも…多分ないしぃ!!?」
と、自室でベッドに突っ伏しながら絶叫。音漏れとか知ったこっちゃないね!
「てか自警団は非公認だから勝手に入れますってか……?いやそもそも掛け持ちっていいんだっけ……?ていうか部活って何々?」
というか本当に意味がわからない、私ちゃんとテスト受けたし………紙に書いてあった理由が名前の未記入や解答ミスによるテストの不受理のためって……
絶対書いたって意味わかんないって……お、横暴では……意味がわからん………
「くそっ……ティーパーティー…と呼ぶのも腹立たしい。茶しばき同好会めぇ……私のセカンドライフを邪魔すると言うのか…っ!」
せめて素行が悪いとかなら納得できたが、覚えのないくだらないミスで…?闇だよ闇を感じるよ茶しばき同好会真っ黒だよ腹黒だよ。
「かーっ!流石お嬢様学校サマですわ!!自分たちより知能の低いおバカさんたちを無理やりぶち込んで救済措置気取りってことですわね!?キーッッ!!!はぁっはぁっはぁっ」
叫びすぎて息が苦しくなって来たので、自分を落ち着ける意味でも深呼吸をする。
「すぅ…はあぁ……よし、落ち着きを取り戻したけどこの烈火のごとく燃えたぎる憎しみの炎は収まらない」
とりあえず落ち着け、私。別に勉強ができないってわけじゃないんだ、心当たりがないにしろ流石に茶しばき同好会に直談判しにいく度胸はない。あれでも生徒会だし……
「……それに、勉強すれば済む話だよな」
要するにその補習授業部でちゃんと好成績を収めればいいってわけだ。退学とか……そこまでにはならないだろうし、多分。ただの補習だよね、補習。………本当に覚えがないけど。
そうだ、ちょっと勉強するだけだ。大丈夫大丈夫……
「ふうぅ………よし」
早速明日から補習授業部の活動が始まる。勉強の範囲は……どのあたりだろうか?
「ああそうだ、しばらく自警団活動できないのもレイサたちに伝えないと……」
この自警団が私が唯一、やりたくてやってることって言えることだったんだけどなあ……ままならないものだ。
「諸事情でしばらく活動できないので、よろしくお願いします……と」
レイサと……一応スズミさんにも送っておくか。他はまあ自警団に知り合いとかいないし特に気にしなくていいと思う。
「はああぁ……」
エデン条約ももうすぐというこの時期に、こんなことをやっている余裕が今のトリニティにあるのだろうか……別に内部事情に何も詳しくないから知らないけど。
というか他の補習授業部のメンバーってどんな感じなんだろう……まあお嬢様学校とは言ったって色んなのがいるし……部活って言うくらいなんだからそれなりの人数いたりするのだろうか。
私の時間、他より少ないっていうのになあ……
「……がんばるかあ」
これもまあ、青春の1ページになるだろう、きっと。
「……誰も来ないんだけど?」
おかしい、確かに知らされた部室はこの教室のはず。日にちは……間違えてないし、誰もいないなんてことある?多分部活というからには部長とかいるはずと思うんだけど……うーん。
もうしばらく待って来ないようなら一旦教室を出てみようかと、そう思った時扉が開いた。
「あ、ようやく…………」
思考が止まった。
多分彼女らが補習授業部のメンバーなのだろう。数えて四人…と、見たことのない人間が一人。
「あ、ここにいたんですね」
真面目そうな、黄色の光輪を持つ生徒が私のことを見てそう言った。他の三人も、私の顔を見て、それぞれ別の表情をする。……1人ガスマスクをしているけど。
何故かスク水姿で入って来た浦和ハナコ。
正義実現委員会にいた時お互いに顔を見たことある、確か名前が……コハル、だったっけ。
それと、もうひとり。
「………」
「………」
「…?あの、どうかしましたか?」
ガスマスクの少女と目が合う。顔は見えないけれど見覚えがある、間違えようもないそのヘイローに、私は見覚えがある。
頭をブンブンと振ってもう一人の、トリニティの生徒ではない人間を見る。
「……貴方は」
ヘイローを持たない、人間。
背が高くスーツを着て、優しい眼差しでこちらを見つめている。その人間は男性で………大人で。
「あ、こちらが補習授業部の顧問をしていただくシャーレの先生です。澪標ヒサギさん」
「………そっか」
目が合い、にっこりと笑いかけてくるその
「これで全員揃いましたね」
この取り仕切っている彼女に関しては覚えがないが……ハナコは何故か嬉しそうな目でこちらを見ているし、コハルは驚いた表情をしていて。
ガスマスクの彼女は……そのヘイローを持つ少女は。
じっと私を見つめたまま、動かなかった。
……どういう巡り合わせだろうか、これ。
澪標ヒサギ。
解答欄のズレや名前の未記入など、少し可哀想なミスが続いて受理されないテストが複数あり補習授業部への加入が決定されたと、ヒフミからは聞いていた。
「よろしくね、ヒサギ」
「……どうも」
少し警戒されているようで……というより怪しまれているかな、これは。黄色の瞳にえんじ色の肩くらいまでかかる髪をしていて、どこか……普通の生徒とは違うものを感じる。
「それでは改めまして……補習授業部の部長をさせていただく阿慈谷ヒフミです、よろしくお願いします」
「浦和ハナコです♡」
「し、下江コハル…」
「………白洲アズサだ」
「澪標ヒサギ、よろしく」
それぞれが自己紹介を終えたあと、前に出て自分も自己紹介する。
「改めまして、私たちの顧問をしてくださるシャーレの先生です」
「よろしくね、みんな」
総勢五人……ただの成績不振で集められたはずだけど、中々濃そうなメンツが集まったなと感じる。ヒフミはアビドスの時に会い、ハナコは…いきなり水着姿で、コハルのことも少し分かったけれどヒサギに関してはまだよく分からない。
「——というわけで、普段の授業の後の放課後にここに集まり勉強をする……あくまでも部活ですので、そういった感じになります」
私がみんなのことを見ている間にヒフミが説明を進める。
「目標は、これから行われる特別学力試験で私たちが『全員同時に合格』すること。先生も手伝ってくれますので…み、みんなで頑張って落第を免れましょう……!」
「……全員?」
ヒサギが疑問の声を上げる。
「えっと、全員合格するのが条件だと……」
「勝手に集めて連帯責任……?何を……あ、ごめん続けて?」
「は、はい……特別学力試験は3回あって、それに一回でも全員で合格したらその時点で補習授業部は解散だと……」
大人しく聞いている他の三人と比べて、ヒサギだけが顎に手を当てて何かを思考している様子を見せる。
「先生は主に…スケジュールの調整や色んな補習をしていただければ」
「うん、任せて」
「えっと、他に何か質問があれば……」
みんなの方を見ると、アズサが何やらソワソワとしている。どうやらヒサギの方を見ているようだけれど……
「アズサちゃん、どうかしましたか?」
「……えっ、いや何でもない。つまり各自のリタイアを防ぐために私たちは集められた。サボタージュするつもりもない、よろしく頼む」
「そ、そうですね、頑張りましょう!」
アズサとヒサギは知り合いなのだろうか?しかしヒサギの方は変わらずに顎に手を当ててうんうんと唸っている。
「アズサちゃんは転校してからあまり時間が経ってないんですよね?これから学園に慣れてみんなで頑張ればきっと大丈夫です!」
「あら、白洲さんはトリニティに転校して来られたのですか?珍しいですね」
ハナコが気になったように口を開く。でも転校といえば確か……
「ヒサギさんもここへ転校して来たんですよ、もしかしたら話が合うかも知れませんね」
「………そう、だな。よろしく頼む」
「…ん〜、まあ頑張ろうね」
明らかにアズサの態度がぎこちない。ヒサギは適当に流しているように見えるけれど……何かあるのだろうか。
「……もちろん!私たちとも仲良くしてくださいね?そうだ、アズサちゃんって呼んでもいいですか?」
「あ、あぁ、別に構わないが……」
「では……アズサちゃんにヒフミちゃん、それとコハルちゃんに……ヒサギさん。一人だけさん付けなのもちょっと不思議な感じですが……私たちは補習授業部の仲間ということで」
ぎこちないアズサを見てか、上手く話をまとめていくハナコ。ヒサギだけ呼び方が違うのは、やはり知り合いなのだろうか…?
「………うぅ」
何か、変な空気が流れている。
コハルは何か居心地が悪そうだし、アズサもどこかソワソワとしている。ハナコは平常通りに見えるけれど……
ヒサギも、今何を考えているのだろうか。
「え、えっと……」
「今日は顔合わせってことだったから、もう解散にしようか。それでいいよね?ヒフミ」
「は、はい!それでは皆さん、明日からよろしくお願いします…!」
「あ、あの!」
「……ん?コハル?」
初日は特に何もせず終わりなのかと、少し肩透かしを食らった気分になってまあとりあえず帰ろうかとしたところ、コハルに呼び止められる。
「ヒサギ……先輩」
「先輩はいいよ……変に畏まらなくてもいいし、敬語じゃなくていいし」
「そう言われても……」
私が転校して来たのは2年になってからだけど、それなりに前。コハルの方が先にトリニティにいたし、先に正義実現委員会にいたのもコハルだ。学年以外で先輩と呼ばれる道理もない。
「そ、その……最近、どうですか?」
「どうも何も……まさかこんな部活に入部させられるとは…」
「そ、そうですよね……」
……堅い、態度が堅い。
「あの時のこと気にしてるならコハルは関係ないよ。……今は自警団で楽しくやってるからさ」
「そ、そうですか……」
「……正実の制服、ちょっと様になってきたんじゃない?」
「ほ、ほんと!?」
慕われるようなことは何もしていないんだけど……申し訳なさそうにされ続けるのも困るので、なんとか態度を和らげさせる。
「えへへ……」
「その制服に恥じないように、一緒に頑張ろうね」
「は、はい!それじゃあ私戻ります!明日からまたよろしくお願いします!」
「は〜い、ばいばーい」
……尊敬の眼差しが痛い。
コハルな、一緒に補習授業部に入ったってことは、お前と私はほぼ同レベルで変わらないってことなんだ……
去っていく背中を眺めながらそんなことを思い………聞き耳を立てていた人物に話しかける。
「それで、何の用です?先生」
「……少し、話がしたくて」
「…なら部室の中で話しましょうか」
私も気になってたしと、その大人と一緒に部屋の中へと戻って行った。