銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!!   作:ギアっちょ

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かくしごと

 

 第一次学力試験の結果発表時、教室はざわついていた……というより、先生が苦い顔をして、ヒフミが慌てふためいていた。

 

 理由はアズサ32点、コハル11点、ハナコ……2点。

 そう難しかったわけでもない内容で、合格点の60点に遠く及ばない悲惨な結果だったため。

 

「………」

 

 正直この結果は分かっていた、私自身76点とヒフミとそう変わらないけれど合格ラインは超えている。ということで合格者は澪標ヒサギと阿慈谷ヒフミの二名となる。

 

 結果は分かっていた、というのは………テストが早く解き終わったので、目を使って他の人の解答を見てみたところ……書き換えたりはしてないのでカンニングではないという暴論を自分に言い聞かせつつ。

 

 コハルは普通に全然できてないし、アズサは努力してるのは伝わるけど合格までは程遠いし。

 ハナコは理由はわからないけれど、明らかに手を抜いているし。ハナコだけが不合格ならあの変態にキレてたかもしれないけど……コハルとアズサもこうなので、まあ仕方ないかという結論になった。

 

 でも手を抜いてる理由は気になる……全員に迷惑かかるんだけども。

 

「ヒフミ!?しっかり……!」

 

 あ、気絶した、可哀想に……

 私は全員答案用紙先に見てひと足先に絶望したから平気である。

 

「……うーん」

 

 どうやら第一次試験に落ちると勉強合宿に突入するらしく……つまりトリニティの本校舎から離れ、誰にも使われていない廃校舎……別館?みたいなところに寝泊まりさせられるのだそうだ。

 その間の学園生活、どうするの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「体操着、制服、勉強道具、その他諸々………」

 

 まあ、なってしまったものは仕方ない。いい加減私も諦めがついてきた。人から避けられることの多い生活だったもので、近い距離で集団勉強をするということもまあ意外と、そこそこ楽しいなと思ってきていたところだ。

 

「……合宿だと本格的に自警団の活動できないなあ」

 

 目薬に、包帯とか塗り薬……

 

「……この銃どうしようか」

 

 以前寂れた学園から持ち出してきたあの人のスペアの狙撃銃。持ち歩きはせず自室に飾って置いてたんだけど……

 

「…持っていくか」

 

 もちろん勉強するだけだし撃つ予定もないけれど、部屋にいつまでも置いたままにするのもなんだかいたたまれない。

 

「さて……」

 

 何故合宿なんてさせられるのだろうか?使われていない別館とはいえ、たかが5人のためにそこまでする理由は?

 アズサは何故トリニティに?コハルは普通に成績不振として……ハナコは、なんで手を抜くのか。

 

「とりあえずメッセージ送っとかないと……諸事情で1週間ほど学園を離れます、連絡はいつでも取れるのでご心配なく……とかでいっか」

 

 とりあえずコハルにはちゃんと勉強教えるとして……アズサは本人の頑張り次第。それとハナコが何を考えているのかも……

 

「くぁ〜、だるいなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…雑草むしりとかまでする必要ある?」

 

 一人でそうぼやく。

 まあ確かに草生い茂ってるけども、勉強するだけならせいぜい校舎内までで、外の手入れまでする必要ないと思うんだけど……

 

「…あっアズサ、それ根っこ残ってる」

「えっ。……ああすまない」

 

 私が完全に詳しく事情を聞くつもりがないと分かったのか、アズサもようやく自然体で過ごし始めてきた。ハナコは品のない話を繰り返すが、いちいちコハルが話を拾って怒るためそれが逆にハナコを喜ばせてしまっている。

 

「使われていないとは聞いていたけれど、建物に目立った損壊もない。……こっちは平和なんだな」

「平和っちゃあ平和かな……」

 

 私がそう返すと周囲をキョロキョロとし、他のみんなが離れたところにいるのを確認してアズサが私の方に寄ってくる。

 

「まさかヒサギもここにいるなんて、いなくなって心配していた」

「まああんなところいつまでも居てられないし……アズサこそ、他の……いやいい、なんでもない」

「……そうか」

 

 アズサがどうやって転校してきたのかどうかは、気になる。本当のこと言うと私だってなんで手続きが通ったのかよく分からなくて……経歴もぼかしたしそもそもの問題として私自身……

 

 ……まあ、アズサは以前より心なしか楽しそうに見える、特にヒフミと仲がいいようで。

 

「テストの件はすまない、精一杯頑張る」

「気にしないでって、点数で言うとコハルの方が問題だし……」

 

 またハナコに怒鳴っている声がする、相性いいんだなあ、あの二人……

 

「ラストっと。まあこんなもんでいいでしょ、他のところやってくる」

「分かった」

 

 草むしりするだけなのに銃を携帯していたり、兵器を持ち込んできたりとなんかあの頃が全然抜けていないようだけど……それはそれで周囲に受け入れられていて何より。

 

 正義実現委員会相手にゲリラ戦仕掛けたって聞いた時は流石に飲み物吹いたけど。

 

「あっヒサギ、よければこっち手伝ってくれる?」

「はーい」

 

 先生に呼ばれて手伝う。どうやら成人男性のくせに体力がそこまでないらしく、他のところより明らかに作業が遅れていた。まあヘイローついてるだけで銃弾にも耐えられるようになるし、そんなもんかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……楽しそうでいいなあ」

「ヒサギは行かないの?」

「あの人数で十分じゃないです?」

 

 水着に着替えてプールを掃除し始めた四人を見つめて、私は体操着でプールサイドからじっと見つめる。

 

「それに……あんまり濡れるの好きじゃないんで」

「私も疲れたし、隣で休憩させてもらおうかな」

「距離近くないですか?」

「…あはは」

 

 笑って誤魔化してそのまま隣に座るな。

 

「君のことはこの数日間色々聞いたよ、銃を持たずに自警団の活動してるって?」

「まあ、なくたって出来ますから」

「危ないよ?」

「……それは先生だって同じじゃないんですかね」

 

 誰だって銃を持っているけれど、この大人は持っていない。時々タブレットみたいな変なのを弄っているけれど……それだけ。

 

「ヘイローないんだから、銃弾喰らったら死んじゃいますよ」

「私は大丈夫。ちゃんと理由があるし……戦闘が起きても前には出ないから」

「……賢明なようで」

 

 向こうが私のことを調べたように、私も先生のことを調べた。

 やれゲヘナの生徒の足を舐めたとか、カイザーに喧嘩売ったとか。まあアビドスから離れたってことは、あの学園のことはひと段落ついたってことなんだろうな。学園が無くなってないってことは、先生はちゃんとアビドスを助けたってことなんだろう。

 

「君が銃を持たないのは、何か特別な理由でもあるのかな」

「……人を撃ちたくないだけですよ」

「持っているだけじゃ、ダメなの?」

「………」

 

 私のことを知ろうとしてわざわざ聞いているのか、それともただ単に分かっていないだけなのか。まあどちらでもいいかと、質問に答えることにする。

 

「銃を持つってことは、手段を持つってことです。何かあったらこれで相手を黙らせる、意見が対立すれば武力で制した方が勝つ。……持っているだけで、相手はその銃口を自分に向けてくるかもしれないと警戒する」

 

 もっとも、持っているのが当たり前の世界でそんな警戒があるのかどうかは分からないけれど。

 

「怖いんですよ。拳を握りしめなくたって、足を振り回さなくたって。ただ狙いを合わせて引き金を引くだけで、簡単に誰かを傷つけられる。いくらただの怪我で済むからって………銃は暴力の道具だ」

 

 大きい音が鳴る、硝煙の匂いがする。血の匂いがしないだけで、それは確かに銃だ。今まで何度も撃ってきたけれど、その認識は変わらないし変えちゃならない。

 

「私が銃を使わずに自警団活動をするのは、そうやって暴力をちらつかせなくたって解決できることがあるから。例え死ななくても相手に暴力を振るってほしくないから………先生も知ってると思いますけど、この世界本当にくだらない理由で引き金が引かれますからね」

 

 困ったら暴力に訴えられるなんて、相手を傷つければいいだなんて。

 

「そんなの野蛮じゃないですか。だから私は銃を捨てたんですよ」 

 

 この世界にとっての常識には、私には少し刺激が強かった。

 

「……君は」

「あそこの変態と並ぶくらい変なやつって言われてる理由が、これ。まあ他にもあるけど……」

「………優しいんだね、ヒサギは」

「んなこと言ったって絆されりゃしませんぜ?」

 

 おどけて返すと先生がフッと笑う。

 

「私はただ………自分の価値観を変えられないだけですよ」

「それを信念って言うんだよ」

「……だといいけど」

 

 少し自分のことを語りすぎた。正直私の方が先生について詳しく聞きたいことだらけなんだけど……

 

「でも、危険なことはやっぱりしてほしくないかな。……話し合いで解決しないことも、どうしたって出てくるからさ」

「分かってますよそのくらい。……信念というか、ただの我儘ですから」

「……それでも、辞めないんだね」

 

 なるほど、どうやらこんな私のことを案じてくれているらしい。みんなの先生と言うだけはある。

 

「無理なのは分かってるけど、それで辞めたら………こんな世界でもせめて私だけは……じゃないと…」

「……この話はもう終わりにしようか」

「……どうも」

 

 話すぎるとついつい感傷的になってしまう。もう過去の話なのに、頭の中にチラついて……

 

「……先生、ヘイローって見えてますか?」

「ん?頭の上の輪っかのこと?見えてるけど……それが?」

「……いえ別に、なんでも」

 

 先生という人物だけが、明らかにこの世界において異質。私がそう思っているだけなのか、そう見えているだけなのか……どちらにせよ、普通じゃないことは確かだと思う。

 

 私にしか視えないこともあるから。

 

「合宿に付き合ってくれるのはいいんですけど、シャーレの業務の方は大丈夫なんですか?」

「まあ……ね。こっちで出来る分はやっていくからなんとか」

「大変ですねぇ……」

 

 確かシャーレに当番として呼ばれて、作業手伝わされることもあるんだっけ。よその生徒呼ばなきゃいけないくらいならもっと根本的な改善を検討した方が……

 

「……あれ、プールに水入れ始めたね」

「………無理でしょ、夜になるんじゃ…」

「まあ、見守ろうか」

 

 ……ま、プール綺麗にしたら水入れたくなるか。

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