銃とか野蛮ですよね!というわけで銃捨てるね!!   作:ギアっちょ

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目を背ける

 プールに水が入った頃にはすっかり夜で、コハルも体力切れで今日はもうお開きにしようと、部屋に戻って寝る支度を進める。

 明日に備えて寝ようと、コハルだけがスヤスヤと寝息を立て始めた。

 

 そして続々と部屋を出ていく。最初にヒフミ、次にハナコ、アズサと……

 

「……寝るって言って私とコハル以外全員部屋の外行ったじゃん」

 

 私だけ寝れないのに布団の中に入ってるのバカみたいじゃん。寝ようって言ったじゃん、なんでみんな部屋出ていくの?夜更かしするの?合宿といえば夜更かしは醍醐味だよね、うん。

 

「……私も出るか」

 

 みんながなんでそんなに外に出たのかが分からないし……とりあえず見に行こうということで。

 部屋を出るとすぐにヒフミと先生の話している声が聞こえた。話している内容についてはよく聞こえなかったが……まあ部長なりの心労とかあるんだろうということで納得しておく。

 

 

 スマホを弄って自警団のメンバー間で共有される掲示板とか情報をとかを眺めたり、ニュースを見たり動画を見たりして適当に散策しているといつの間にかロビーまで戻ってきていて。

 

「……ヒサギまで」

「ふふ、アズサちゃんとの逢瀬を見られてしまいましたね」

「逢瀬…?」

「こら変態、そういうのは通じる相手だけにしなさい」

「はあい♡」

 

 話を聞くに、アズサは普通に寝れなかったらしく……ハナコは散歩?らしい。全裸で徘徊していなくてよかったと胸を撫で下ろす。

 

「前々から気になってましたけれど、やっぱりお二人って以前からの知り合いなんですよね?転校前からの関係とか?」

「まあそんなとこかな。アズサ、えっと……見張りだっけ。気が済んだら戻ってきなよ」

「分かってる、それじゃあ」

 

 私たちの話をさせられそうになったので、アズサをさっさと移動させる。聞かれるにしたって私の方が多分受け答え向いてるし。

 

「……ただの知り合いって感じではなさそうですけれど」

「知り合いは知り合いだよ、友達ってほど仲良かったわけじゃないしね」

「そうなんですか?私にはこう、お二人の間で特別な雰囲気を感じたのですが……」

「私たちのことなんかより大切なことがあるんだけど」

「…なんでしょう」

 

 やたらと詮索してくる、何か疑っているのだろうか。まあ今はどちらにせよ……

 

「一次試験の点数。アレ何?」

「何、とは?」

「真面目にやってないのくらい分かるってば」

「……ヒサギさんには敵いませんね」

 

 そう言ってロビーにあるソファの上に座ったハナコ。

 

「安心してください、コハルちゃんやアズサちゃんが合格しそうになったら、私もちゃんと合格点を取りますから」

「じゃなきゃ困るし……なんでそんなことしてんのか聞いてるんだけどさ。まあ答えたくないならいいや、隠し事はお互い様だし」

 

 手に持ったままのスマホをポケットに入れて、ハナコの隣へと座る。

 

「………ハナコの直感でいいんだけどさ」

「…奇遇ですね、多分私も同じことを考えていました」

「そう?じゃあ遠慮せずに話すけど」

 

 天井から吊り下がった、やたらと豪華なシャンデリアを眺めながら口を動かす。

 

「この補習授業部、ただの落ちこぼれの救済措置ではないよね」

「……でしょうね、にしては不審な点が多すぎます」

 

 どうやら本当に同じ考えだったらしい。正直、このメンツだとちゃんとこれについて話せそうなのがハナコくらいしかいなかった。

 

「集められたメンバーの異質さ……知っていますか?ヒフミちゃんって、ナギサさんのお気に入りなんですよ」

「…お気に入り?そういや私ナギサ名義で知らされたな…」

「おそらくヒフミさんが部長だというのもナギサさんから特命を受けた……いわばお目付役のような立場なのでしょう」

「……となると、先生も?」

「はい、おそらく」

 

 お目付役……お気に入りの生徒を使ってまで、落ちこぼれの生徒たちにこだわる理由とは一体何か。

 

「アズサちゃんは転校生。出身校も……正直予想はついていますけれど」

「……私もまあ多分似たようなもんだし」

 

 ハナコが私の方まで予想がついてる……というか、知ってるかどうかまでは分からないけれど。

 

「そして私も……目をつけられるには十分でしょう」

「となるとコハルは……本当になんでなんだろう?」

 

 単に成績悪いだけ?

 いやそもそも正義実現委員会で、ハスミさんにもよく懐いている。そこからの何かしらもあるかもしれないけれど……

 

「ただ成績が悪いメンバーが集められた、にしては少々異質な要素が揃っているとは思いませんか?」

「まあ、私なんて名前の未記入だのなんだの言われてここにぶち込まれてるからね」

「覚えがないなら……改竄でしょうか?」

「まあされるに値するくらいには怪しい自覚あるというか……」

 

 ここに来ての動向だけじゃない。多分澪標ヒサギという人物について疑念を持って調べれば調べるほど怪しさが増す。

 私が本当に澪標ヒサギなのかどうか、とか。

 

 もしそこまで分かってて疑われているのならまあ……ついでに改竄でもなんでもして一緒に補習授業部に入れてやれってなるのも分からなくはないというか。

 

 そこまでして私たちを集める理由……

 エデン条約締結の迫るこの時期に、わざわざシャーレの先生を使ってまで……そうまでする理由が、補習授業部に集められた私たちにはあるということ。

 

「……怪しい人物の炙り出し」

「…やはりそうなってしまいますよね」

「エデン条約に対して何かしらの不利益を働きかねない者をまとめて補習授業部として実質的な拘束状態にする……」

 

 邪魔だからここに詰めとけとか、そういう感じだろうか?

 

「……もし、トリニティに裏切り者がいるとして」

「物騒な仮定だなあ……」

「ヒサギさんから見て、私たちの中に裏切り者がいるとしたら、誰がそうだと思いますか?」

 

 酷な質問をしてくる。

 でもその目はやたらと真っ直ぐと私を見つめていて、なんだかバツが悪くて目を逸らしてしまった。

 

「……私が裏切り者って可能性は考えないの?」

「信頼してるんです、お互い様ですよ」

「…そりゃどうも」

 

 正直ここまで来れば答えは決まっているような者だ。

 私でもハナコでもない、ヒフミの可能性が捨てきれないわけじゃないけれど………コハルなんて、一番あり得ないだろう。

 

 となると残るは……

 

「アズサ……か」

「信じたくないという気持ちは察しますが……どうしても、話せませんか?アズサさんとのこと」

 

 ハナコ自身、その可能性を否定したいのだろう。数日間とはいえともに過ごした仲間で、それなりに交友も深めている。けれど……

 

「仮定でそこまで話す気にはなれないかなあって」

「………あなたのその眼でも、見通すことは出来ませんか?」

「……私が出来るのは、あくまで()()()に関する事だけだよ。真実を見抜く目なんてそんな都合のいいものはないし………てか私この眼のこと話した事ないよね?」

「調べましたので」

 

 すぅぐそうやって……

 ……調べたって、どこまでだろうか。

 

「……覗き見は趣味じゃないんだよ」

「…そうですか。そろそろ戻りましょうか、私も話し疲れてしまいました」

「そうだね」

 

 戻りながら眼を使ってアズサのことを追おうとしたが、辞めた。アズサがどういう経緯でトリニティにやってきたのか、それは分からないけれど……楽しそうに過ごしているその表情を、疑いたくはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後も補習授業部での生活は続く。

 模試を受けて、相変わらずなハナコを呆れた目で見つめたり……

 

 

「か、可愛い…!!」

 

 あのアズサが、モモフレンズとかいうよく分からないぬいぐるみ群に目を輝かせているのを見てほろりと泣いて、先生から差し出されたハンカチで涙を拭ったり。

 

 休憩しつつ一日中勉強する、それでもなんだかんだで楽しかった。

 

「コハルすごい頑張ってるじゃん……」

「はい!ヒサギ先輩は安定してて流石です!」

「先輩はよして欲しいんだけど……」

「ふふっ、随分と慕われているみたいですね、ヒサギさん」

 

 ぐんぐん伸びていくコハルの、ヒフミが考えた模擬試験の結果について話しているとハナコが割り込んできた。

 

「ちょ!あんたみたいなのがヒサギ先輩に近づかないで!!」

「あらあら……でもコハルちゃん、私とヒサギさんは何度も星の輝く夜に隣り合って愛について語り合った蜜月の関係なんですよ♡」

「う、うそ…そんなの嘘よ……そ、そんなわけないですよね、先輩…?」

「うん、嘘。全くの嘘、こいつホラ吹き」

「ハナコあんた嘘つくなんて最低ね!!」

「あらあら……」

 

 また二人でわいわいし出したのでアズサの方へ行ってみる。モモフレンズのぬいぐるみに夢中なようでやる気を漲らせており……ヒフミがそれを見て嬉しそうにしている。

 

「やっほ、調子良さそうじゃん」

「あっ、ヒサギさんもよろしければどうですか?ずっと好成績なので好きなのを選んでいいですよ」

「…………どれも良くて選べないな〜」

「分かる、私も既にとても悩んでいる」

 

 ごめんね、二人とも。私にはそのぬいぐるみの良さがあまり分からない……置くところに困るなって感情しか湧かないんだ……

 

「……この調子なら、第二次試験はなんとか行けそうかもね」

「はい!あ、あとはハナコちゃんなんですけど……」

「…まあその時になったらめちゃくちゃ勉強できるようになるんじゃない?」

「ですかね……」

 

 そうやって今後のことを語ったり。

 

 その後コハルのカバンからいかがわしい本が出てきて、押収品を間違えて持ってきてしまったというので先生と一緒にトリニティまで戻ったりしていた。

 

「コハルちゃんも意外と……♡」

「……ほどほどにね?」

 

 そんな風に、まあなんだかんだで時間は過ぎていく。

 

 

 

 

 

 毎晩毎晩、見回りと称してどこかへ行くアズサ。最初はあそこにいた頃の癖が抜けていないのかと思っていたけれど、昨日気になって眼で追ってみた。

 アズサも私の眼のことは知っているはずだけど……千里眼みたいな使い方もできることは知らないと思う。

 

 そうしたら、アズサはこの別館を出て、どこか別の場所へ行っているのが分かって……その先は視るのがなんだか怖くなって、目を閉じた。本当に罠を仕掛けたり見張をしているのも知っているけど……

 やっぱり寝れないんだろうか。

 

 

 

 その少し後、シスターフッドのマリーという生徒から聞いた話で、虐められていた生徒を助けて、そこから色々あって正義実現委員会と交戦する羽目になってしまったと聞いた。

 

 他人にそこまでしてあげられる彼女が。

 ぬいぐるみを抱いて嬉しそうに笑う彼女が。

 友達と一緒に笑っている彼女が、エデン条約を、トリニティをめちゃくちゃにしようとしているだなんて。

 

 そんなことは、やっぱり到底思えなかった。

 

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