星を愛した人形の追憶   作:ばぐひら/Baguhira

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12話 黒い風

 

「……重い」

 

「そう言わないでくれ、君くらいしか頼れないんだ」

 

「………白石も少しは持ってくれね?」

 

「すまないエル、私の筋力と体力的に無理だ」

 

「貧弱すぎじゃねぇかな白石さんや…!」

 

 

しかし正直言って俺もこの重量はかなりキツイので、白石に少しくらいは持って欲しい。男として女性に荷物を持たせるのはどうかとは思うけれど

 

そんな俺をよそに白石は何食わぬ顔で隣を歩く。コノヤロあからさまに楽してやがる……負担俺に全部放り投げて!

 

突然だが、俺は現在ミレニアムにいる

 

特に理由らしい理由も無いのだが、強いて言えば白石に会うためだ。それは白石の発明品なる作品達を見るため。理由は面白そうだったから

 

前回は目も当てられない作品達を目にしている俺ではあるが、それでも白石の腕には目を見張るものがあるのは素人目でも分かる。伊達にマイスターと呼ばれていない、と言うことだ。銃というカテゴライズだけでアレなので、彼女の作品全てと見れば相当な問題作品共(目を惹く作品達)が眠っているのだろうか、そう考えると少し身震いする

 

流石はミレニアム………いや、これはミレニアムと言うよりエンジニア部……より詳しく限定すれば白石がヤバいのか。流石のミレニアムでもここまでの者はそうそういないだろう。聞くところの、俺と同じ1年で頭脳面で頭角を現している2人とか、ミレニアムにそぐわないヤンキーっ子とかくらいか?

 

 

「………あの、これあとどのくらい運べば」

 

「後100m先くらい?」

 

「………なぁ白石も少しは」

 

「すまない、正確に言えば97m弱だ」

 

「話すり替えないでくれないか?それとどっちも然程変わんねぇよ」

 

 

遠い、この重さの荷物抱えてその距離は潰れる

 

そんな俺と白石は今何をしているのか、それはとある機械の持ち運びである。と言っても白石の私物なんですけどね。でもそこは機械、落としたりでもしたら大変なことになるのは間違いないし、ぱっと見ただけでなんか高そう。少なくとも貧困アビドスに通う俺じゃ買うのも憚られるくらいの値段はしそうだ

 

 

「そいや白石、俺が今運んでるこれってなんなんだ?」

 

「あぁ…それかい?それは私が昔造った変観則定機の試作型さ。今力を入れている発明の細かい動作確認に必要でね、でも残念ながらそんな測定機は無い。そこで昔造ったこれを思い出したのさ、これ単体では未だ使い物にならないだろうけれど、これを元手に改良すれば良いものが造れそうだ。その為の参考資料…とういうわけだ」

 

 

聞いておいてなんだがよく分からなかった。白石の発明に携わっているわけでもないので分かるわけがないのだが、まぁ、新しい発明に役立てよう、ということらしい

 

 

「これは局所的に査定段階を踏んで内部構造を可視化できる装置なんだ、これほど私たちエンジニアの手を助けるものはないと自負しているよ。なんて言ったって分解せずとも内部まで見れるんだ、それも対象に一切の影響を与えずに、労力を使わずに。これほど素晴らしいものはあるだろうか?いいやないだろうと断言しよう。少なくとも当時の私はそう感じていた」

 

「当時は?」

 

「エル、君はどう感じた?この装置を見て、客観的でもいい」

 

 

そう白石に問われ、少し考える。詳しいことは分からないが、それでも聞いている感じ凄い発明なのは素人目でも分かった

 

そう、凄い発明なのだ

 

 

「ん?」

 

「おや、気がついたかな」

 

 

そこで違和感を覚える。白石は凄い腕のエンジニアだ、それもマイスターという称号をたった1年生で与えられるくらいには

 

けれども、今まで俺が見てきた発明品達は、凄いは凄いが何処か抜けていたり凄いけれど馬鹿だったりと、一癖も二癖もあるものばかりだ。だからこそ、そこが引っ掛かった

 

 

「そう、この装置は凄いんだ。よく分からなくとも“ただ凄い装置”。つまるところね、この時期の私は浪漫を知らなかったんだ」

 

「あー、うん」

 

 

そうだ、そう言われてスッと頭に入り込んだ

 

白石ウタハは重度の浪漫中毒者だ、少なくとも俺はそう認識している。失礼な物言いだが事実だし、彼女本人も肯定するだろう。この機械に違和感があったのは“あの白石ウタハが浪漫を然程感じないまともで普通に凄い発明をした”からだ。言葉にまとめると凄いな

 

 

「私は浪漫が好きだし愛している。しかしね、実は私が浪漫を知ったのは半年前なんだ」

 

「半年の熱量か?あれが」

 

「好きに年月は関係ないだろう、時間をかけたから好きなんじゃなく、好きだから好きなんだ。そこにそれ以外の理由は要らないさ」

 

「白石がすげぇいい事言ってる…?妙だな」

 

「私に対して相変わらず、何処となく辛辣だよね君」

 

 

 

 

 

「……うん、そこ。そこに置いてくれ」

 

「んしょっ…と」

 

 

いや、流石に重かった。俺は白石に指定された場所に機械を置き一息つく。結局最後の最後まで白石は手伝いを一切しなかった、ということはここにハッキリさせておく

 

俺が機械を置くと、白石がその機械の外殻を分解し始める。その手には様々な工具が握られており、迷いのない手つきでなにやらカチャカチャとしている

 

 

「………うん、動力部に使ってた蓄電式バッテリーも問題なく稼働するし、装甲に埃や傷が目立つが比較的に中は無傷だ。これなら問題ないかな」

 

「お、それならよかったよ。これで持ってきた意味ありませんでしたとか言われたら流石にキレるからな俺」

 

 

そうして白石はそのまま作業に入る。俺は特にすることも無いので、そこら辺に適当に突っ立って置く

 

何故座らないのかって?それは少し抵抗が…*1

 

そうして10分程が経っただろうか、白石は一息つき此方に向かってくる

 

 

「すまないね、君のことを思考の隅に追いやっていて全く気が付かなかったよ」

 

「いやまぁ良いんだけどさそれは」

 

「そうかい?なら良いのだが………あぁそうだ、今だから聞くが前に渡したアレはどうだい?」

 

「アレ?あーこの銃の事か?」

 

 

俺は側に置いてあるRed Shu Summer(レッド・シュウ・サマー)を指さす

 

 

「そうそう、それ。使い心地はどうだい?」

 

「使い心地ねぇ……実は実戦で撃ったこと数える程度しか無くてな、それでも使いやすいのは分かる。それに気に入ってるんだよこれ」

 

 

そう言って壁に立て掛けている愛銃を手に取る。銃を使って短期間だが、やっぱりショットガンは使いやすいのだ。ホシノもショットガンを選ぶわけだ、近接広範囲に拡散するからある程度狙いを定めるだけでだいたい当たる。それに火力が高い

 

 

「ふふ、そう言ってくれると此方としても嬉しいよ。まぁまだ改造半ばだったのが尚の事、口惜しいところではあるけれど」

 

「要らねぇよ」

 

「そうかい…?残念だ……………あ、そうだ。突然だけれど、君に渡したいものがあるんだった。このまま忘れているところだった」

 

 

そう軽口を挟んでいると、白石は少し待っててくれと席を外す。そこで数分程待つと、白石が二対のスナイパーライフルを担いで来る

 

 

「んしょ…!……ふぅ、なかなか重量が………」

 

「これは……」

 

「忘れてないだろう?あの時君が欲しがった奴さ」

 

 

3mはあるその巨大な銃身、並の狙撃銃を上回る圧倒的サイズ感。馬鹿みたいだがそれでいて夢が詰まったこれは…

 

 

「装弾数100発、連射可能なフルオート、連射速度は並のサブマシンガンに次ぐ驚異の毎分800発の弾丸を撃つその速度、戦車の装甲を容易く貫く火力!!!」

 

「なんか前より強化されてる!?」

 

 

化け物な銃が更に化け物に進化してやがる……!!!

 

 

「漸く完成したのさ、それに伴って少し性能を強化したけどね」

 

「少しってレベルじゃねぇよ馬鹿野郎明らかにやり過ぎだ」

 

「ただその代わり、銃身が更にデカくなってしまってね……あ、それとここのボタンは自爆ボタンだから気をつけてね」

 

「要らん機能付け加えるな!?」

 

 

おい白石なんだその勝ち誇ったかの様な顔は。これこそが浪漫?喧しいわ

 

使わないからな、と白石に伝えると、ショックを受けた表情をしていた。当たり前だろ

 

 

「まぁまぁ、兎に角だ。完成したからこれを君に渡そうかなって思ってね」

 

 

白石はそう言い放ち、二対の化け物スナイパーライフルを差し出す

 

 

「………ごめん、完成したのは嬉しいし、俺も受け取りたいんだが……また後で受け取ることはできないか」

 

「おや、どうしてだい?」

 

「いや……折角貰ったコイツ(ショットガン)も満足に使えてないからさ、ならもう少し使いたいんだよ。愛着もあるし」

 

 

そうして白石の誘いを断った。白石はどこか残念そうだったが、「1つの武器を極める…それもまた浪漫…か」とどこか納得した様子で頷いた

 

 

「それなら待ってるさ、君が受け取りに来るまで保管しておく。私としても最高傑作に等しいんだ、できれば他ならない君自身の手で使ってもらいたいからね。いつでも受け取りに来るといい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クックックッ……初めまして、郭雲エルさん」

 

 

ミレニアムからアビドスへの帰宅途中、知らない大人に声を掛けられる。黒スーツを着こなしたそれは、黒い、とても人とは思えない風貌をしていた

 

 

「あ、どうも?」

 

「私のことはどうか黒服と……私自身も気に入っていますので」

 

 

黒スーツだから黒服って事か。安直というかなんというか…

 

「ええ、実は少しお話が御座いまして…悪い話ではありませんので、是非聞くだけでも……と」

 

「話…」

 

 

正直、この人めっちゃ怪しい。それで胡散臭い

 

 

「遠慮しておきますね」

 

 

知らない人についてかない。駄目、絶対。ということで申し訳ないが黒服さんには断りを入れて通り過ぎる。怪しい大人に騙されて着いてくのはユメ先輩だけでいいんだ、それに着いてったら着いてったでホシノに苦笑される

 

 

「そうですか……クックック、まぁ今回はいいでしょう。ではまた何処かで………」

 

「……………また来るのかねあの人」

 

 

去り際に吐いた言葉に、近いうちにまた会うのかなと思う。それも偶然じゃなく必然で

 

ああいう大人って居るんだよなやっぱり。ユメ先輩とかホシノとかにも知らせとくか。ホシノは兎も角ユメ先輩はのこのこ着いていきそうだし

 

 

「………ん?俺あの人に自分の名前言ったか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが、かの…いや、郭雲エルですか」

 

 

黒服は一人部屋の一室で笑う。コンピューターが設置されており、画面に郭雲エルの写真が映し出されている。そしてもう一つ、巨大な機械の様な怪物が、もう片方のコンピューターに写し出される

 

 

「現在のアレは以前と比べ活発です。それも一重にカイザー理事のお宝探しのせいでしょうけど、そんな怒れるビナーの進行経路を………クックック……」

 

 

コンピューターに、地図が表示される

 

 

「小鳥遊ホシノさんには断られ続けていますが……郭雲エルさん、貴方は…いえ、貴方を私は…………………クックック!」

 

*1
(8話参照)





黒服<曇らせの波動を受信しました
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