星を愛した人形の追憶   作:ばぐひら/Baguhira

5 / 13
描写が難しいです




4話 歓迎パーティー

「はい!それでは新入生の郭雲 エル君で〜す!そして私はここアビドスで生徒会長をしている梔子 ユメです!」

 

 

ユメ先輩が俺の方を組みながら元気よく俺の自己紹介と、何故だか自身の自己紹介を行う

 

ヘルメット団撃退後、ユメ先輩が少し前から準備を進めていたという俺の歓迎パーティーを開くこととなり、皆でアビドスの空き教室へと集まっていた。いつにも増して元気だな先輩

 

 

「先輩のことは知ってるから別に紹介無くても良くないか?」

 

「そのほうが雰囲気出るじゃん!」

 

 

どうやら先輩は雰囲気を大事にするタイプのようだ(いらない情報)

 

 

「…それじゃあ私ですね、私は小鳥遊 ホシノです。一応よろしくはしておきます」

 

「あー、おう」

 

 

そっけない態度で自己紹介をされた。目つきも鋭いし、警戒が見て取れる。俺なんかした?さっそく嫌われてないですかコレ?

 

そんな俺の不安を感じ取ったのか、先輩が俺に耳打ちする

 

 

「ホシノちゃんはちょーっと素直じゃないところがあるだけだよ、だからあんまり気にしないであげてね?」

 

「なるほどツンデレ属性持ちか、理解」

 

 

ツンデレは貴重だ、今どき絶滅危惧種だろうと思っていたがそうか…実際いるもんなんだな

 

 

「誰がツンデレですか!初対面で案外グイグイきますね貴方!?」

 

「だってこっちはあそこにいる先輩にアンタのこと何度も聞かされてるんですもん、聞いてないのに自慢げに」

 

「ユメ先輩???」

 

 

ホシノがユメ先輩の方へ勢いよく振り返り、先輩は少し肩を“ビクッ”とさせた。そりゃ(自分の知らないところで自分の先輩が自分の事を自分の知らない人に何度も自慢げに話したと聞いたら)そう(いう反応が普通)だ。俺がホシノの立場だった場合、俺だってそうする。プライバシーも何もあったもんじゃない

 

 

「先輩、少し向こうでお話しましょう」

 

「エルくん助けて〜!!!」

 

 

ユメ先輩がホシノに追われ、涙目になりながらながらこちらに接近してくる

 

 

「あ、こっち来ないでもらって」

 

「ひぃん!」

 

 

それを俺は華麗に回避、無慈悲にも言葉で突き放す

 

俺を巻き込むな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなこんなあったけど改めまして………記念すべき三人目の在校生の存在を祝って〜!!」

 

「誤魔化そうとしてる…?」

 

「いつもこうなんですよ」

 

「細かいことは良いの!かんぱ〜い!!」

 

 

ユメ先輩が元気よくそう言い放ち、各々が持っていた飲み物どうしをぶつけ合わせる。飲み会とかでよく見るやつだなとか薄っぺらい事を思ったが、そもそも飲み会を経験したことが無いから詳しくは知らない

 

お話()が終わって戻ってきたユメ先輩とホシノ、二人のお話()は何を話したのか俺は知らない。二人して部屋の外に行ったもんだから――連行とも言う――追いかけたほうがいいのかとも思ったが、ホシノに「そこに居といて」と言われたもんだから一人寂しく空き教室で数十分くらい待っていたのだ。今回俺主役らしいんだけど扱い雑くね?とも思った

 

まあそのことはさておき。俺の手にはエナドリ、ホシノはいちごオレ、ユメ先輩は缶コーヒーが握られていた。ホシノがいちごオレを飲むことも意外だったが、それよりももっと意外だったのがユメ先輩だ。アンタ絶対甘い系のやつ飲むと思ってたのに、まさかのコーヒー?予想の斜め上を上限突破していったぞ

 

その俺の困惑気味な様子に気がついたのか、ホシノが寄ってきて静かに耳打ちする

 

 

「先輩のあれは見栄ですよ見栄、「コーヒー飲めるってかっこよくない!?」とか思ってるんですよきっと」

 

 

そう言われ、嫌に納得してしまう。確かにユメ先輩ならそんなこと考えてそうだな…と。コーヒーの缶を開けてコップに注いでいたユメ先輩が視界に入る。ちなみにきちんとミルクと砂糖も混ぜ合わせている

 

 

「でも私の予想だと………」

 

「うぇッ!なにこれ全然甘く無いじゃん!!」

 

「………ご覧の通り、あれすら飲めないです」

 

 

“べー”と舌を出して眉を八の字にするユメ先輩。よかった俺の想像通りの先輩だ。謎の安堵感を覚えつつ、俺もホシノも各自飲み物をコップに注ぎ、口へ運ぶ。ん、久々だけど案外いけるな

 

ホシノはそんな情けない姿をしている先輩を思ってか、あらかじめ用意していたのであろう傍に置いてあったリンゴジュースを手に取ると、ユメ先輩へ手渡す。先輩はあからさまに嬉しそうな表情になったかと思うと、勢いよくホシノを抱きしめる

 

 

「ありがと〜!ホシノちゃ〜ん!!!」

 

「んぐッ!ちょユメ先pもごもごもご!?

 

 

ホシノの顔面へダイレクトにユメ先輩のたわわが押し付けられる。ホシノが何かを伝えようとするが上手く声が出せず、身長差もありなかなか振りほどけ無い。そんなホシノの状況なぞ露知らず、抱きつく力を強める先輩

 

あ、ホシノの手がぴくぴくと痙攣しだした。そろそろ不味いか

 

 

「ユメ先輩、そろそろ離してあげたらどうですか〜ホシノ窒息してますよ〜」

 

「うぇ!?ご、ごめんねホシノちゃん〜!!!」

 

はぁ、はぁ、はぁ………いいんです、大丈夫ですよ先輩」

 

 

慌てて抱きつくのをやめ、謝罪をするユメ先輩と、ぜぇぜぇと息を切らし、顔色がすぐれないホシノ。俺はそんなホシノに小さな声で謝罪をする

 

 

「すまんホシノ、止めるのが少し遅くなった」

 

「いえ、いいんです。それよりも………貴方も覚悟しといてくださいね、ユメ先輩と関わると必ず起こる逃げられない災害のようなものですので、必然的に貴方も味わうことになります」

 

「マジか……」

 

「生き残るコツは少し上か下を向いて、手を使うなどして気道を確保することです。空いた腕や足で危険を伝えることも行うと尚良いですね…今のは急で反応できませんでしたが」

 

 

そんな悪意ゼロで降りかかる災害についての説明を受け、少し身構えてしまう。ホシノの表情を見て決してふざけているわけではないとひしひしと伝わり、なんとも言えない気持ちになった。ホシノよ、強く生きろ

 

そんなこんなで始まった歓迎パーティー、場所はアビドス校舎の空き教室。ユメ先輩が大量のお菓子を持ってきた。チョコやらグミやら飴玉やら、ガムやクッキーなどと、幅広い種類を用意されていた。どこからこんな物を用意できるだけのお金があるのかとホシノが先輩を問い詰めると、ユメ先輩いわく「今日は少し奮発しちゃった」とのこと。アビドスは借金がえげつないほどあると聞いていたので少し申し訳ない

 

 

「まあまあエルくんは気にしないでもいーの!なんてったって今日の主役はエルくんなんだから!」

 

「………いや、でも――」

 

「まーだうじうじ言ってんですか?ここまでされたら遠慮するほうが失礼でしょうに」

 

 

呆れた様子でそう言うホシノ。その隣で表情がみるみる暗くなっていくユメ先輩。なにやら「あはは…そうだよね」と呟き、顔を俯かせる。分かった、いや分かったから。だからそんな顔しないでください先輩、なんかこう………すっごく心にきて罪悪感が増しちゃうからお願いだから

 

 

「……………ん?あれユメ先輩、それ飲まないんですか?」

 

「え?………あー…もういいかなー、なんて」

 

 

俺が指さした場所には、先程ユメ先輩が飲もうとしていたコーヒー入りのコップが置かれていた。一口しか口をつけておらず、まだまだ中身が残っている

 

 

「エル、先輩は飲まないんじゃなく“飲めない”んですよ」

 

「ちょっとホシノちゃん?こういうのは先輩の顔を立てるものだよ?」

 

 

ただ飲めないだけらしい。ほんとになんで買ってきたんだ?ホシノもコーヒーは飲まないらしいし…誰も飲まないのはもったいないな

 

 

「なら俺がもらいますね」

 

 

そう言ってコップを手に取り口に運ぶ………甘ッ!?どんだけ砂糖とミルク入れたんだよ、もう味の原型無いぞコレ。ってかコレも飲めなかったのかユメ先輩は甘党すぎないか?そんなんでなんでコーヒー飲めると思ったんだか

 

 

「………」

 

 

突然、ユメ先輩が顔を伏せうずくまる

 

 

「え?ど、どうかしました?」

 

「貴方…マジですか」

 

 

ホシノが「コイツマジか」とでも言いたげな表情を向けてくる。なんぞや、俺なにかしたか?

 

そうしてユメ先輩が再び起動するまで、数十分かかったのだった

 

 

――そんなこんなで皆で用意されたお菓子を食べ進め、軽く雑談を交えながら時間が流れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!それでは新入生の郭雲 エル君で〜す!そして私はここアビドスで生徒会長をしている梔子 ユメです!」

 

 

そうユメ先輩の紹介をされた時、私の目の前には彼が立っていた。そう“彼”だ、見た目や背格好では判断出来ないが、このギヴォトスでは珍しい男子生徒。先程ヘルメット団との戦闘で、見ず知らずの私を助けてくれた生徒。聞けば彼は最近先輩が通い始めた“柴関ラーメン”と呼ばれるラーメン屋のバイトらしく、そこで知り合ったんだとか

 

彼に初めて会った時、私は警戒していた。しょうがないだろう、このアビドスには最早優しさなんて残っちゃいない。“良心”、“人助け”、“誰かのため”なんて言葉はとうの昔に破り捨てられたのだから。ユメ先輩のような人間は稀、いや、アビドス(ここ)ではユメ先輩の方が異端と捉えられるだろう。そんな場所だ

 

だからこそ、警戒した。ユメ先輩は心を許していたようだが関係ない、先輩はよく騙される。だから私がしっかりしないと

 

でも、そんな考えは徐々に覆されていった

 

私を助けたのもそうだが、歓迎パーティーという名目で彼の行動や仕草を観察し、彼の思惑を暴こうとした。しかし特にコレと言った怪しい部分は見つけられず、見れば見るほど、知れば知るほど“彼は善人だ”という事実を嫌でも理解した

 

気づけば私も気を許し、彼への警戒を解いていってしまっていた。信用できる人なんじゃないかと思ってしまった

 

 

「………ユメ先輩以来ですよ、信じれるんじゃないかと思えた人は」

 

 

だから………――と、私はその先の言葉を続かせず口を閉ざし、上を見上げたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「して、進展はあるか黒服よ」

 

「そう慌てないでくださいマエストロ、私も出来うる限りを用いているのですよ」

 

「しかしな、貴殿ならばもう何かしらを掴んでいるのだろう?」

 

 

暗い一室、黒いスーツ姿の大人とスーツを携えた木人形が対談をしていた。明かりはなく、日は落ちた時間帯。マエストロと呼ばれた人形は黒スーツの彼、黒服と呼ばれた者の回答を急かす

 

黒服、マエストロ、彼らはゲマトリアと呼ばれる外から来た大人たちの組織に属する者たち。未知を探求する“探求者”であり“求道者”でもある

 

しかし、二人の姿からはどこか焦りに似たものを感じ取れる

 

 

「まぁ…ええ、と言っても無いよりマシといった具合ですがね」

 

「だが情報があると無いとでは違う」

 

「………それもそうですね」

 

 

黒服は口を開き、自身の掴んだ情報をマエストロへと伝える

 

 

「かの者は消えましたが、私は最後の痕跡を辿ることに成功しました」

 

「して、その場所とは?」

 

 

一息おいて告げる

 

 

「アビドス………正確にはアビドス砂漠ですよ」

 




ホシノ「怪しい…」(警戒)

ホシノ「あや……しい………?」(疑惑)

ホシノ「怪しくない」(信用)

黒服&マエストロ「不味い………」(焦燥)


ちなみに、エルが飲んだコーヒーは飲みかけです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。