「はい!それではこれより、第四回アビドス廃校対策会議をはじめま〜す!」
「お〜」
「なんか反応が思ってたのと違う!」
しらんがな
時計の針が午前7時を指した頃。俺とホシノは生徒会室へと集められていた。理由は今先輩が言った事が答えだろう、聞いて字のごとく、アビドスの現状を脱するための会議
ってか第四回?この会議恒例化したの以外に最近だなもしかしなくともだけど
ということで、少し狭めの教室に俺、ホシノ、ユメ先輩の3人が集まっている。ホシノは何やら黒板に向かってチョークを構えているので、書記役をしてくれるようだ。ユメ先輩は司会進行って感じかな
「はい!じゃあ意見ある人ー」
「はい、少し良いですかユメ先輩」
「ホシノちゃん!なにかな〜なにかな〜」
「今回は細かいことは一旦置いておいて、今回は借金返済の解決案を出し合ってみませんか?今回はエルも居ることですし、いつもと違った意見が出てくるかもしれません」
「んーそうだなぁ…前回は確か治安問題とヘルメット団襲撃問題、そのまま前回は弾薬の請求書諸々だったよねぇ…確かに、議案として丁度いいかも!」
ということで、今回の議案は“借金”に決まった。ホシノが黒板に〝借金返済の打開案〟と書き出す、そしてユメ先輩が元気よく手を挙げてアピールをする
「はいはい!私案あります!」
「えーじゃあはい、ユメ先輩」
「みんなでスクールアイドルやろー!!」
「…は?」
「ちょっと待てよユメ先輩待て待ってくれ」
なんかすごいこと言い出したぞこの司会役。ホシノは唖然とした表情でユメ先輩を凝視する
「えー良いと思わない?スクールアイドル!可愛いしお金を稼げるし一石二鳥!!エルくんはマネージャーに回ればいいし……どう!?」
「どう!?じゃ無いんですよ馬鹿先輩!」
「ひぃん!」
ほんとに何を言い出すんだこの先輩は?しかも本気で言ってきてるのが質悪い。見ろホシノの顔を、自分がそうなる未来を想像でもしたのか若干顔赤いぞ!
確かに、金稼ぎとしての案自体は悪いわけじゃない。ただ現実的じゃ無さすぎる、という事だ。アイドルを始める?どうやって始めるのかの知識も何一つない素人集団でどこまで行けるのか、人脈も実績も人材も場所もあれこれを買い揃える資金も何もかもが圧倒的に足りない。俺がマネージャーだとしても、実はエルくんが敏腕の凄腕マネージャーでしたーなんて事が無い限りは失敗する確率大だろう、まぁ例えそうだったとしても失敗する可能性の方が大きいだろうが
「えー!絶対行けると思ったのにぃー」
「何がですか…そもそもユメ先輩は分かりますけど私は駄目でしょう、あの…身体つきも、先輩みたいじゃありませんし…お胸の、方も……………………自分で言ってて悲しくなってきました」
「……いやー、ホシノは特定のマニアには受け良さそうだけどなぁ…それにホシノ可愛いし」
「…うへっ!?」
突如として赤面するホシノ。隣で立っていたユメ先輩が「あちゃー」と言わんばかりの顔でこちらを見ている
「な、な、かっ、かわっ……!なにを言ってるんですか急に!?」
「うえ?いやなにって…思ったこと言っただけだし…」
「あーこれは駄目だよ、これは。うん、やっぱりさ、エルくんってこうだよねぇー!分かってた、分かってたよ私は!」
なにやら騒ぎ始めたユメ先輩。なんだ、俺なにかしちゃったか?あー待てよ?思春期女子高生に可愛い発言はセクハラか?セクハラなのか?捉えようによってはセクハラにもなりかねないか……あ、そういうこと?だからなのか(全然違う的外れ)
「ん、こっコホン!今は会議の途中ですので!議論に戻りましょう!」
「言うほど議論してたか?始まったばっかりでそこまで議論らしい議論してないだろ」
「うるさいですねこのすけこまし!だいたい貴方のせいですからね!!」
「なんで俺急にディスられてるの?」
――仕切り直し――
「…えーと、他に案はある?」
「じゃあ…はい、良いですか?」
「お、エルくん!どうぞどうぞー!」
俺は挙手する。実は案が1つだけ唐突に浮かび上がってきたのだ、俺は自信を持って答える
「まずここアビドスの借金問題、その根本は生徒数の低下にあると思うんです。実際現在は俺とホシノ、先輩の3名しか居ない」
「まぁ確かにそうですが…」
「そこで!生徒数を解決できれば良いんじゃないかと考えたわけです!!」
「ほほう!で、その方法は!?」
「簡単です、他校の通学バスをバスジャックすればいい!!」
「「は?(え?)」」
2人が素っ頓狂な声を上げ此方を見てくる
「いや何言ってんですか貴方馬鹿じゃないですか!」
「駄目だよエルくん!流石にそれは駄目!」
「通学途中のバスをジャックして、転校の手続き諸々の契約書にサインしないとバスから降ろさない、そしたら1日で数十人単位の転入生たちが!」
「馬鹿ですか貴方は!ただの犯罪じゃないですか!?」
「いいねぇどこの学園にする?ミレニアムとか?それともトリニティ?」
「先輩も乗るな!!」
「ひぃん!!」
「あっはは流石に冗談だって〜!ごめんごめん」
2人が慌てて止めてくるのですぐに冗談だと打ち明ける。2人が慌てた姿は見ていて楽しい、まぁホシノの場合は慌てるというより「何いってんだコイツ馬鹿か」という呆れの意味合いが強い気がしたが
え?流れに乗ってきた先輩の候補にゲヘナが無いって?いやゲヘナは流石に駄目でしょ、俺でも分かる。そんだけゲヘナは治安悪いってことでお察しだよね
「……はぁ、碌な候補出ませんね」
「仕方ない、ユメ先輩だもん」
「ちょっとエルくん?さりげなーく私のこと悪く言わないで?」
「と、まぁお巫山戯は此処までにして」
俺は1枚の紙を取り出して机に叩きつけ、ホシノと先輩の視線がその紙に集まる
「これは…」
「…指名手配書ですか?」
「正解」
先程よりマトモな案だと思ったのか、ホシノは聞き耳を立てた。なので俺は順序よく説明する
「指名手配されてる奴は、大抵の場合は犯罪者だ。ヴァルキューレが牢に入れるくらいにはな」
「まぁそのヴァルキューレですけど最近少しきな臭いですし、警備もザルで一人一人の戦闘能力がそこまでないので結構頻繁に脱走者も出てますけどね」
「お願い待ってなにそれ」
知らんかったんだけど。え、ヴァルキューレって此処で言う警察と同じだよね?嘘だろホシノがそんなボロクソいうくらいには駄目なの?
「ま、まぁ続けるぞ?指名手配されてる奴はヴァルキューレから懸賞金がかけられてる、それも相手によっては相当の額だし、一般的な奴でも結構もらえる」
「あー…つまり、適当な指名手配犯をとっ捕まえてヴァルキューレに連行し、懸賞金をもらってその懸賞金を借金返済にあてようって訳ですね」
「そう!それ!」
我ながら結構いい案じゃなかろうか。まぁその受取先があまり信用できないとたった今分かったわけだけど
「案自体は良いですね、指名手配犯はブラックマーケットにでも行けばボロボロ出てきそうですし、懸賞金も数集めれば結構行けそうです」
「え?でもだとしたらさ、誰がその指名手配犯を捕まえる?自分で言うのは何だけどさ、私は鈍臭いし強くないから…申し訳ないけど取り逃がす……いや逆に返り討ちにされそう………ごめんねぇ弱い先輩で。ひぃん」
「いやまぁ…確かに」
「安心して下さいよユメ先輩、もともと先輩に戦闘能力は期待してません!」
「エルくん!?」
「貴方結構ズバッといきますね…」
いやいやユメ先輩は無理でしょ、うん。先輩は弱いわけじゃないんだけど、普通に今回のは相性が良くない。そもそも先輩の武器って盾と拳銃だから、護るってのには特化してるけど、自分から攻める!ってのには不向き。それに先輩自身もそういうの苦手そうだし。先輩争いごと苦手だしなぁ
「まぁここは言い出しっぺである俺が――
「エル?貴方はまだ基礎戦闘能力が私の納得できる範囲じゃないので行かせませんよ?」
――あ、はい」
ちくしょう、無理だった
「というか貴方、まだ自分の武器すら持ってないじゃないですか。流石に行くにしてもそれくらいは揃えて下さいよ」
「でも俺にはこの拳銃が!」
「貴方使えないでしょうそれ、しかも安物だし」
「うぐっ」
図星すぎて、正論すぎて何も言い返せない……
そんな時ユメ先輩が俺に1つ提案をしてくる
「あ、じゃあ折角だしエンジニア部に依頼したら?」
「エンジニア部?」
「うん!ミレニアムの結構新し目の部活なんだけど、そこにマイスターって凄い人が居るらしいし!」
マイスター……確か名人とか巨匠って意味だっけか。そんな肩書持ってる学生いるんだな、スゲェ。それにミレニアムってあのミレニアムだろ?ギヴォトスの最先端技術が集まった技術者の学園。そこでマイスターなんて大層な呼び名ついてるって、どんな人なんだ?
ユメ先輩の話を聞いて、マイスターと呼ばれる人物に興味が湧いてきたところ。ホシノがチラリと時計を見る
「あれ、もうこんな時間ですか。すみませんが私はこの後用事があるので…」
「あ!ゴメンねホシノちゃん!じゃあ今回の会議は終わろうかな、意見も色々出たし」
「大半碌なのじゃなかったけどな」
「貴方がそれいいます?」
そうして、第四回のアビドス廃校対策会議は幕を閉じた。ホシノはどうやらガチで用事があるらしく、いそいそと準備をして何処かへ出かけていった
……武器か
俺はあまり気にしてはいなかったが、今回ホシノとユメ先輩が話題に出したことで少し興味が出てきた。今度時間を作って噂のミレニアムに行ってみようかな
次回、浪漫に出会う