筆が思ったより乗りが良いんだぃ!!!
というわけで8話です、どうぞ
「ふぅ…ついた」
そう一息つく。見回す限りハイテクなロボやドローン、いかにもな建物が建ち並んだ場所。そう、今俺がいるのはアビドスではなくミレニアムサイエンススクール、通称ミレニアム
ユメ先輩の助言の元、自分の武器を求めてミレニアムのエンジニア部を訪れている。と言っても俺は他校の生徒、此処に来るまでにわざわざ校内を回る手続きを済ませて最低限の荷物以外を預けている
「では私はここまでですので、後は節度を守ってご自由に、ここミレニアムでお過ごしくださいね」
案内してくれた少女が一礼をして帰っていく。そして俺はエンジニア部を目指して歩く。まぁ場所は聞いて地図も貰ったし迷うことはないだろう。そうしてあたりを物色しつつ目的地へと足を運ぶのだった
――――――――――
「すみませーん」
………
エンジニア部の部室に着いて俺は誰かいないかと声を掛ける。しかし声は返ってこない
というかここ本当に部室か?部室というより小さい工房のような感じなのだが。よく分からない機械があちこちに散らばり、散乱し、雑に積まれている。流石エンジニア部と言われるだけはあるなぁ、とその光景に謎に感心を持つ。そしてその時、音が聞こえた
「………ん?」
耳をすませば部屋の奥から作業音のようなものが聞こえてくる。どうやら誰も居ない訳じゃないらしい、作業に集中して聞こえてないのか?
普段の俺なら呼びに行くだろうが、今回は違う。俺はエンジニア部に武器を依頼しに来ている立場、それにまだエンジニア部の誰とも顔すら合わせていない初対面以下、そんな俺が部室に勝手に入って行くのは少し気が引ける。それに作業音が聞こえるということは明らかに作業中だろうし、その作業を途切れさせるのも何だか申し訳ない
「…待つか」
完成までは待たずとも、せめて今の作業が一区切りつくまでは待ってみようかと思い立ち、ちょっとした鉄の箱のようなものに座り込む
ギギギ…
「え」
いま下から音がした様な――
カチッ
そこで俺の意識は落ちた
――――――――――
「…きて、起きてくれ」
「………(何だ…声が………)」
「……ふむ、起きないな。仕方ない、ここは最近造ったこの対峙現実機ニュー・アウェーケニングを使うとしようか」
「…ん、んん…!」
「おや?」
いつの間にか横になっていた体を上げ、大きく背伸びをする。どうやらいつの間にか眠ってしまっていたようだ。ぼーっとする頭を働かせ、目を見開く
「うん、起きたようだね、おはよう…と言えばいいのかな」
「誰?」
「いやこっちのセリフだよ?」
この人、誰だ?俺はまだ離散する意識の中、考える。俺は何をしていたんだったか、確か武器が欲しくて、ユメ先輩に勧められて、ミレニアムに来て、それで………あ
「……寝ちゃってたのか俺」
「うん、そりゃもうぐっすりとね」
「すみません…」
頭を下げて謝罪する。思い出したわ、俺座ったら急に意識が遠くなって…それで、寝てたのか。目の前には見知らぬ少女が居た。紫の長い髪にミレニアムの制服、手には何故かスパナが握られている
「いやぁ……一仕事ついて、さて学食でも食べようかというところ……見知らぬ君が強制昏倒装置カムフトバル試作型の上で呑気に寝ているところを見つけた私が、わざわざカムフトバルの上から引き剥がして部室のソファーまで運んであげたんだからね?」
「強制昏倒装置カムフトバル試作型…?」
「あぁ、君が座って椅子代わりにしてた装置の名前さ」
俺そんな厳つい名前の装置に座ってたの?
気になった俺はその装置についての説明を目の前の少女に求めた。少女の説明によると、強制昏倒装置カムフトバル試作型というのは、以前とある少女からの依頼で造った装置で、どうやら触れた対象の意識を沈めて強制的に睡眠状態へと変える装置らしい。そんなものを部室の入り口付近にガラクタと一緒に捨て置かないでもらえないですか?
因みに試作型と付いている理由は、あのカムフトバルは名前の通り試作型で、欠点や改善点が数多く見つかった不良品らしい。まぁその欠陥が見つかったと同時に依頼者の少女が「やっぱいいです」と断りを入れたらしくそのまま開発は中止、結果として中途半端に産まれたのがコイツだとか
「……いや言いたいことは色々あるけどさ、取り敢えず言わせて?……………技術力半端ないな」
「だろう?これは私の受け持ちでね、本当なら完成まで持っていきたかったのだが予算の関係で断念を余儀なくされたのさ」
「え、待って普通に凄くない?」
フンス、と胸を張る少女。え、コイツ造ったの君?びっくり何だけど。エンジニア部って言えど凄くない?
「そう言えば…名前ってまだ聞いてないな。今更だけど、俺は郭雲 エル」
「おや、そういえばまだだね。私の自己紹介をしていなかった…私は白石 ウタハ。ここエンジニア部所属のマイスターだ、よろしく頼むよエル」
そう言って互いに自己紹介をした。白石 ウタハか………って待って?今なんて言った?
「…え?マイスター?」
「うん?そうだけれど」
――――――――――
「…ほう、それで武器が欲しいと」
「そうなんだよ…いや、そうです」
「今更わざわざ取り繕わなくても結構だよ?どうかさっきの様に気楽に接して欲しい」
「えーと………あー、うん、ならお言葉に甘える」
「そうしてくれ」
白石に事の経緯を説明した。俺はバチクソに弱っちいからそれ相応の武器を持つことで自衛を図りたい、と。白石は俺の話を聞いた後、少し考え込み始めた。それと丁寧語は辞めとけと言われた
少しして突然、白石が立ち上がり何処かへ歩いたかと思えば、いくつかを手にとって戻って来る
「取り敢えず、私の発明品達だ。この中から気になったものがあったら伝えて欲しい。一応拳銃の種類だけ持ってきたよ」
どうやら白石の発明品のようだ。大小様々な各々の形が違う銃が立ち並び、一つ一つが目を引くような物ばかりだ
……悪い意味で
「なぁ白石」
「なんだい?」
「これなんだ?」
「これかい?これは火力と意外性の方向性を重視した拳銃なんだけどね、引き金を引くと銃弾ではなく小型吸引爆弾を高速で射出するんだ!それにこの部分からは防犯用の唐辛子スプレーが付いている」
「これは?」
「スモークグレネードとフラッシュバン機能を無理やり拳銃に取り付けた試作型だね。銃口からは敵を撹乱するための煙と敵の視界を奪う閃光の2種類を自身で選んで射出できる。ただ難点として攻撃性能は皆無だし、煙と閃光の相性が果てしなく悪いって事かな?」
「……これは?」
「戦車をも貫ける貫通力が売りの二丁拳銃だ。ただ貫通力の代わりに装弾数が一発になったし、火力が高すぎて拳銃だと狙いが全く定まらなければ、1回撃つたびに銃身がショートして再射撃の為に10分開けなければならないし、付いてる8倍スコープは最早なんで付いてるかもわからない」
「………………これ…」
「懐中電灯機能を取り付けた電子マネー決済可能な拳銃。ただし上限は1万クレジットだし懐中電灯は数分つければ電池切れで使えなくなるし、この2つの機能付けたせいで本来の拳銃の機能がおおよそ半分になってしまったけれどね!」
……………
「馬鹿だ!頭良いのに馬鹿な奴がここに居る!!」
こう叫んでしまった俺は悪くないと思う。だってさっきから碌なのが無いんだから!何故拳銃にそれを付けるのか意味が分からない機能が付いていたり、もはや拳銃が二の次になってたりしてるんだ?でも正直、それを造れた技術力は流石としか言いようがない。ホントに。技術力は確かなのに……色々と残念だ
「ふむ……どうやらお気に召さなかったようだね」
「そりゃそうだろ!それならもうちょい実用性あるやつ見せてくれないかなぁ!?」
「ふむ、困ったな……さて他には何があっただろうか………正直なところ、一番いけそうな奴らをピックアップしていたのだが」
「ウソだろ???」
驚きの告発を聞いて驚く俺をよそに、白石はまたカチャカチャと銃を探し始めた。そしてあーでもない、こーでもないとしている。そんな時、俺はとある物が視界に入った
「……………あれは」
それは作業机に立て掛けるように二対、置かれていた。恐らくは2mと少しはあるであろう、とても巨大な銃身。全体的に見れば狙撃銃のような外見だが、それは余りにも大きかった。それは俺の目を惹いた
「なんだい?あれが良いのかい?」
「白石、あれなんだ?」
「あれはまだ試作段階でね、形と内部構造は出来上がってるんだが如何せん調整やら外装整備やらがまだ。だが確実に私が今まで造ってきたどの銃よりも……浪漫が詰まってる」
「浪漫?あれは…狙撃銃なのか?」
「あぁ。装弾数20発、連射可能なフルオート、連射速度は並のアサルトライフルに次ぐ速度、戦車の装甲を貫く火力」
「なんだそのバケモノ銃!?」
流石に驚愕する。それもうなんて兵器?全スナイパーに謝れと言いたくなるような代物。しかも話している時の白石の目は何故かキラキラしていた。なんでも浪漫だとか
何いってんだとしか言いようがない。しかし……今回ばかりは同意したい
「…かっけぇ」
カッコいいんだよ!なんだよこの銃馬鹿じゃないの?でもそこが良いんだよ!ぼくがかんがえたさいきょーのじゅうって感じがして好き、もしかしなくともこれが浪漫なのか?
俺の中の男心が燻られる一品、いや逸品
「なぁ白石、これにしてもいいか?」
「おやおや、そうとう気に入ってもらえたようだね?さては君も浪漫が分かる側と言うことかな?本来なら君に出会えた記念としてあげるくらいは良いかと了承したんだけどね………残念、これはまだ制作段階なんだ。流石にこの状態で人にあげることはできないな」
白石に至極当たり前なことを言われる。そりゃそうだ、完成もしてないやつをくれはしないだろう。だから今回は素直に引き下がるとする
「…………………そうか、残念だな」
「そう露骨に落ち込まないでおくれよ…」
うるさい、仕方ないとしても落ち込むくらい良いだろうが。すると白石はその近くに立て掛けてあった一つの赤く塗装された銃を手に取る
「アレは渡せないけれど、代わりにこれなんてどうだい?」
「これは…散弾銃?」
「そうだよ。レバー式ショットガン、これはまだ手を付けていないんだけどね、軽量化はしてあるのだけど」
白石からそのショットガンを受け取る。受け取った時に気づく、確かに言われた通りに軽い。改造手前ということもあり、なにも機能は付けられていなかったが、まぁ正直
「いいなこれ、軽いし俺でも扱いやすそうだ。これ名前は…?」
「それかい?それはRed Shu Summerというんだ、本来ならこの後火炎放射器でも取り付けようと思っていてね」
「いやホントに着けなくて結構」
「そうかい?残念だな」
残念がるな
でもそうか…Red Shu Summer、か。俺はネーミングセンスは無い方だが、こういうカッコいい名前はいいなと思う。シンプルにカッコいい
「ありがとう白石、これにするよ」
白石に感謝の意を伝える。なんやかんやあったが、ようやく自分の武器を持つことができたのだ。不思議と嬉しい気持ちが込み上げてくる
そうして、俺は新たな相棒を片手にアビドスへ戻るのであった
因みに白石とモモトークを交換した。俺のモモトークに四人目の登録者ができて嬉しい限りだ。あ、ボッチとか言うなよ?涙が出てくるから
・強制昏倒装置カムフトバル試作型
実は結構回路が不安定で、長い間点検もせずに放置されていたので下手したら二度と意識が戻らない可能性もあった。後日その事実に気づいたウタハによって即刻処分された
・対峙現実機ニュー・アウェーケニング
エルを起こすときに使おうとしていた発明品。対象の脳に微弱な電気信号を発信し脳波に干渉、強制的に脳を活性化させる機械。ちなみにそれで起きなかった場合は備え付けのハエ叩きで超高速往復ビンタを決めて物理的に起こそうとしてくる