イヴァリースでどう生きていけるのか   作:かにしぐれ

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貿易都市ドーターにて

ラムザ達との集合場所に現れたサジは、一人の騎士風の男を連れてきていた。骸旅団に詳しく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()についても知っていたので連れてきたとのことだったが、その男の正体が大問題だった。

 

骸旅団団長ウィーグラフ。今イヴァリースを騒がせている骸旅団の親玉である。そんな人物がいきなり目の前に現れたのだから、ラムザ達としてもたまったものではない。

 

「まぁまぁ、落ち着いて。このウィーグラフ(仮)さんの話をまずは聞いてほしいんだけど」

 

「仮も何も、そいつは間違いなくウィーグラフ本人だぞ。…厄介なことになったな」

 

「サジ、よくやった! ここでコイツを倒せばいいんだなッ!!」

 

頭を抱えるディリータと、剣に手をかけるアルガス。一触即発の空気の中、

 

「サジ、僕たちのことはどこまで話したの?」

 

「エルムドア侯爵救出の話と、ベオルブ家の所縁の一行だってことは話したよ。そうしたら、一度そちらのリーダーに会わせて欲しいってウィーさんに言われてね」

 

ラムザが意外にも冷静にサジに事の経緯を確認していた。

 

「ラムザ、何を悠長に話してるんだ! コイツが骸旅団の首魁なんだろう! コイツをここで殺せば骸旅団は壊滅させられるってのに!」

 

「そうだね。だけど殺される可能性もあるのに一人でここに来た理由を知りたいんだ」

 

「理由ってそんなものどうだってッ!!」

 

「少し落ち着けよアルガス。ここでウィーグラフを倒したら、エルムドア侯爵の居場所がわからなくなるだろう? まずは話を聞こう」

 

「くッ…!」

 

ディリータがアルガスを宥めて場が少し落ち着いたところで、ウィーグラフがラムザに話しかける。

 

「君がリーダーかね?」

 

「あぁ、そうだ。僕はラムザ。ベオルブ家の名を継ぐものだ」

 

「そうか。君がベオルブ家の3男か…」

 

そう言うと、お互いに真っすぐ視線を交わすラムザとウィーグラフ。

 

「まだ青いが、バルバネス殿の面影を感じる面構えだな」

 

「父上の事を知っているのか?」

 

「あぁ。先の戦争では君の兄、ザルバッグ殿もそうだが共に戦場に立つこともあったからな」

 

ウィーグラフは穏やかにそう言うと静かに首を振り、

 

「今はそのような話をしている場合ではないな。まずは、私が知っていることを伝えよう」

 

そうして、ウィーグラフがなぜ単独でドーターに来ているのかを語り始めた。

 

今回のエルムドア侯爵誘拐は骸旅団副団長のギュスタヴによる犯行であること。だが、それは骸旅団団長である自分の指示によるものではなくギュスタヴの独断であるということ。勝手な行動を取ったギュスタヴを問い詰めるべくギュスタヴの行方を団員に尋ねるも、中々情報が入ってこないことから骸旅団の団員の一定数がギュスタヴ側に着いてしまったことを察したこと。そして、誰がギュスタヴ側かわからないため、周囲の人間に気づかれないうちに一人で拠点を抜け出してギュスタヴ一派の潜伏先を探しに出たということ。

 

そこまで話したところで、黙って聞いていたアルガスがいよいよ我慢しきれなくなって爆発する。

 

「さっきから聞いてりゃ副団長の奴のせいだとか言ってるが、テメェが部下の手綱をちゃんと握ってないのが原因じゃねぇか!!」

 

そう言うや否や、アルガスはウィーグラフに詰め寄り胸倉をつかむと

 

「テメェがちゃんとしてないせいで侯爵様は誘拐されたし、……オレの同僚(アイツら)だってみんな殺されたんだッ!!!」

 

そう叫びつつウィーグラフの顔面を思いっきり殴りつけた。

 

アルガスのあまりの剣幕にラムザもディリータも、そしてサジも動けずにいた。

あたりにアルガスの荒い呼吸音しかしない時間がしばらく続いた後、

 

「…すまなかった」

 

「クソッ どうして。クソッ クソッ…!」

 

ウィーグラフの謝罪とアルガスの慟哭が路地に反響するのだった。

 

 

 

アルガスが落ち着いた後、再びウィーグラフは話を続けた。ウィーグラフ単独で各地の拠点に居る骸旅団の団員に直接尋ねていった結果、ドーターに行けばギュスタヴ一派の手がかりがあることを突き止めたということ。そして、今日の夕暮れ時、つまりこれからドーターの拠点に居る骸旅団の団員に尋問しに行くとのことだった。

 

「これからその団員にギュスタヴの事を聞きに行くんですね?」

 

「あぁ。…そこに居るのがギュスタヴ派の人間なら、多少手荒な事になるだろうが」

 

「一人で行くのは危険では? 僕たちも一緒に…」

 

「いや、ここは私一人で行かせてもらおう。…ここにいる団員が黒だと決まっているわけではないからな」

 

その言葉に、違和感を感じたサジはウィーグラフに問いかける。

 

「ここの団員はってことは、ギュスタヴに着いている団員達はどうするつもりですか?」

 

「君たち北天騎士団と一緒に居たということが伝われば、ただでさえ取れていない団の統率がもっと取れなくなるだろうからな」

 

そう自嘲するように笑いながら話すウィーグラフ。だが、その目は覚悟が決まっている人の目をしていた。

 

「…つまり、全員粛清するってことですね」

 

「そうだ。それが私ができる責任の取り方だろう」

 

改めて問うサジに対してウィーグラフは低い声で今度は毅然と告げる

先ほどのアルガスとは違い静かな態度ではあったが、その身から滲み出る殺気はアルガスの比ではなく、ラムザ達は強い寒気を感じたのだった。

 

「…では行ってくる」

 

そう言い残すと路地裏に消えていくウィーグラフ。その姿が見えなくなってしばらくして

 

「あれが50年戦争で活躍した英雄の殺気か…。もし彼がヤる気だったらこっちが危なかったかもしれないぞ、アルガス」

 

「チッ…。腐っても英雄ってワケか」

 

ディリータが肩をすくめながら軽口を言うと、不機嫌そうにアルガスは返す。

 

「多少は気が済んだかな、アルガス」

 

「あんなんじゃ足りねぇよ。だけどな…」

 

サジの問いかけに対してアルガスは自身の拳を見つつ

 

「これ以上アイツを殴ってもしょうがねぇなって思ってな。クソッ…。まぁ、残りはギュスタヴって奴にぶつけるさ」

 

そう言って空を見上げるのだった。

 

 

そして翌日、ウィーグラフは再びラムザ達の元へ現れ、ギュスタヴ達はゼグラス砂漠にある“砂ネズミの穴ぐら”と呼ばれる拠点に潜んでおり、そこにエルムドア侯爵もいるはずという情報を持ってきた。

ラムザ一行は骸旅団団長という新たな同行者を加えて、エルムドア侯爵救出のために“砂ネズミの穴ぐら”へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

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