ギュスタヴ一派が拠点にしている"砂ネズミの穴ぐら"に向かうラムザ一行。今回も足場の悪い砂地を歩くことになるため、前回同様にサジによって『レビテガ』と『ヘイスガ』の補助魔法を掛けた行軍となったのだが
「サジ、君は魔道士だったのか」
「魔道士というよりは、"魔法使い"の方が正しいかな。メインはこっちだしね」
今回初めてサジの魔法を見るウィーグラフは少々面食らっているようだった。それに対して、サジはあくまで銃の方が主軸だと答えていたが
「いや、これだけ魔法を使っておいてそれは無いだろう」
「僕たちは剣士だけど、アカデミーで魔法についても習っているからね? サジの魔法が高度なものだってことはわかってるんだよ」
「えっ、そうだったの?」
「戦場に魔道士が居ることだってあるんだから当然だろ。時魔法とかある程度修練を積んだ黒魔道士じゃないと使えない魔法じゃねぇか」
「アルガスの言う通りだ。まだ俺たちには見せていないが、サジが黒魔法が使えるのもわかってるぞ」
「つまり、サジは僕たちから見たら立派な魔道士なんだよ」
ディリータを筆頭にラムザやアルガスからも突っ込まれてしまうのだった。
サジとしては、自身の習得している魔法、特に攻撃魔法についてはこの時代では失伝しているものや
尤も、先ほどから披露している『レビテガ』はこの時代では一人を対象とする『レビテト』しか無いため失伝魔法になってしまうのだが、本人は似たような魔法が存在してるし補助魔法だから地味だしヨシッと安易に考えていた。魔法に詳しい人に見られたら一発でアウトなので、全然ヨシッではないのである。
「いや~、まぁ、その、ね? 一応黒と時と白は使えますです、はい…」
今後の戦闘などを考えると自身の手札を隠しておく事の方が問題だと判断したサジは、観念して使える魔法の種類を自白した。なお、具体的に何が使えるのかは言ってないあたり、まだ無駄な悪あがきをしているのだが。
「やっぱり…ってちょっと待って。白魔法も使えるの?」
「回復と補助なら任せておけ! 次の戦闘は補助魔法モリモリにする?」
「今までとは違って骸騎士団の頃からのメンバーも居るって話だからな。こっちにはウィーグラフが居るとはいえ、保険を掛けるに越したことはないな」
「ラムザもディリータも突っ込まないけど、お前それで平民って言い張るのは無理があるだろ…」
「俺の国の政治体系的には貴族はもういないから平民って言ったら平民なんですぅ! 家紋とかも無いから元貴族でもないですぅ!」
「"家紋"の存在を知ってる平民はおかしいんだよ! お前絶対東国のドラ息子か何かだろ!」
カンカン照りの砂漠の行軍は普通なら過酷な行程となるのだが、『レビテガ』により地面から少し浮くため砂に足を取られることもなく、また砂の熱さからも逃れて歩けるため、賑やかな進軍になっていた。そんなラムザ達を横目に、ウィーグラフはただ静かに前を見据えていた。
昼過ぎの少し眠くなる時間帯に差し掛かった時、"砂ネズミの穴ぐら"の入り口で周囲を警戒している骸旅団の団員は気だるげに会話をしていた。
「…おい、聞いたか? 北天騎士団が本格的に動き出すらしいぜ」
「ああ、聞いたよ。…オレたちはいったいどうなるんだ?」
「殺される前に足を洗ってどこかへ逃げるしかないな」
「ウィーグラフに従っても死ぬだけだしな」
「ああ、そのとおりだ。ギュスタヴの計画どおりに侯爵の身代金さえ手に入ればこんな生活ともおさらばさ…」
ギュスタヴに着いた骸旅団達は、どうやらお金を貰ったらどこかで静かに暮らそうとしているようだった。その
「た、たいへんだッ!! 北天騎士団のヤツラだッ!! しかもなんか光って浮いてるッ!!」
「いや光って浮いてるって何…って本当に光って浮いてるッ!!」
「驚いてる場合かッ! 相手に魔道士も居るってことだろッ! すぐに弓使いの応援を呼んで来いッ!!」
「ちょっと待てッ! 奴らの先頭にウィーグラフが居るぞ!!」
「何で北天騎士団とウィーグラフが一緒に居るんだよ!!」
「そんなのオレが知るかよッ! いや、目的は一つしかねぇな。 ギュスタヴに伝えろッ! ウィーグラフが粛清に来やがったってなッ!」
「クソッタレッ! こうなったら総力戦だッ!! こんなところで死んでたまるかよッ!!」
かくして、骸旅団はウィーグラフを含むラムザ一行との戦闘に入った。
原作では、ウィーグラフは穏当に"砂ネズミの穴ぐら"に入った後で団員の粛清を開始してギュスタヴを追い詰めていたため、ウィーグラフから遅れて到着したラムザ達は外の少数の見張りだけを相手にするだけで終わっていた。
だが、今回は最初から
では、本来より苦戦することになったかと言うと…
「命脈は無常にして惜しむるべからず…葬る! 不動無明剣!」
「敵の数は多い…多いはずなんだけど…」
「ホワイトナイト*1の称号は伊達じゃないってことか。彼が敵じゃなくて良かったな」
「気を抜くんじゃねぇぞラムザ、ディリータ! 賊どもはまだまだ居るんだからな!」
「ガッチガチに魔法で固めたから大丈夫だとは思うけど、油断はしないでよねっ…そこッ!」
「建物の上の敵はサジに任せるしかないね。僕たちはウィーグラフが討ち漏らした地上の敵を優先して狙っていこう!」
ウィーグラフ無双によって優位に進めていた。メタ的な話にはなるが、ヘイスト付きの聖剣技が使えるユニットという
陽が傾きだした頃にはギュスタヴに着いた骸旅団員も片が付いたのだが、
「…ギュスタヴが居ない」
「まさか逃げられたんじゃないだろうな」
「いや、"砂ネズミの穴ぐら"には他の出入り口は無いはずだ。おそらくは中に居る侯爵殿を人質に取って我々から逃げるつもりなのだろう」
「なッ! じゃあ侯爵様の身が危ないじゃねぇか!」
そう叫ぶとアルガスは"砂ネズミの穴ぐら"の中へ入って行ってしまう。
「彼をこのまま放っておくわけにはいかないな。私たちも急ごう」
そういうとウィーグラフもアルガスに続いたので、ラムザとディリータもお互いの顔を見合わせて頷くと、"砂ネズミの穴ぐら"の中へ入っていった。
(さて、本来の流れからかなり変わってはいるけれど…ここが一つの勝負どころかな)
おそらく、本来ならウィーグラフだけが聞くであろう今回のエルムドア侯爵誘拐の黒幕について、ラムザ達もその場で聞くことになるだろう。幸か不幸か、エルムドア侯爵は気を失っているようでその話を聞いていたわけではなかったようだったが、既に流れが変わってきてしまっている以上楽観はできない。
(なんでダイスダーグ卿じゃなくて自分が悩まなきゃいけないんだろうね。まぁ、ここでラムザとウィーグラフが決裂しちゃうと原作通りの流れに戻りそうだし、どうフォローしたものか…)
サジはこの後どう動くべきかを考えながらラムザ達の後に続いた。
(無事に終わったら、ダイスダーグ卿にちょっとした嫌がらせでもしようかなホント…)
勝手に苦労を背負い込んでいてコレなので、サジも大概な奴なのである。