イヴァリースでどう生きていけるのか   作:かにしぐれ

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ウィーグラフの受難/ベオルブ邸襲撃

魔法都市ガリランドの北側に位置するフォボハム平原、そこに点在する風車小屋にてウィーグラフは召集した骸旅団の団員達を待っていた。

 

「…団員達の大半は既に討たれたか」

 

「はい。北天騎士団が我々の殲滅に本腰を上げたようです」

 

「こちらに合流できた者たちが居るだけでも幸運、ということか」

 

ウィーグラフは風車小屋に戻ってきてからすぐにイヴァリース各地の骸旅団へ召集命令をだしたのだが、それとほぼ同時期に北天騎士団も骸旅団殲滅作戦を開始したため、無事に風車小屋までたどり着けた団員は少ないようだった。

 

「(私は遅かったのか…? いや、彼らと出会わなければそもそも団員達を呼び戻そうとはしなかっただろう。今無事に戻ってこれた団員すら、失っていたかもしれないのか…)」

 

無言で考え込んでしまうウィーグラフの下へミルウーダの部隊の斥候が単独で来たとの報告が入ったため、ウィーグラフはすぐにその斥候自身の下へ呼んだ。

 

「どうしたっ! ミルウーダに何かあったのかッ!」

 

「我々の部隊は北天騎士団により強襲され、壊滅しました…」

 

「くっ…! ミルウーダ…!」

 

最も恐れていた報告を受けて、拳を握り締めるウィーグラフ。だが、斥候から思いもよらない報告を受ける。

 

「ですが、我らの部隊は全員無事です。現在は襲撃してきた北天騎士団の捕虜となっております」

 

「…なんだと? 全員が…無事?」

 

「はい。戦闘で死亡した団員も蘇生された上で捕縛されました」

 

骸旅団を賊として討伐しに来たにしてはあり得ない報告を受けて、困惑するウィーグラフ。だが、ウィーグラフはある可能性に思い当る。

 

「その北天騎士団はどういう集団だった?」

 

「どうやら、ベオルブの末弟が率いる集団のようでした。…それと、以前団長と共闘したことがあるとも」

 

「!! そうか、彼らだったか!」

 

ミルウーダの部隊と戦ったのがラムザ達だったとわかり、ひとまず安堵するウィーグラフ。その様子を見て、斥候もラムザ達が言っていたことが本当だと確信する。どうやら、自分たちが騙された可能性は無いらしい。

 

「それで、彼らは何と?」

 

「捕虜を返すために交渉がしたいとの事ですが…」

 

「ふむ…」

 

さすがにラムザ達も立場がある以上、タダでミルウーダ達を返すわけにはいかないのだろうとはウィーグラフもわかっていた。こちらから彼らに提示できる対価は何があるだろうかと思案していると、

 

「団長! 大変ですッ!」

 

「何があった!」

 

「ゴラグロスがベオルブ邸を襲撃したようです! 襲撃は成功! ダイスダーグを負傷させ、ベオルブ家の子女と思われる娘を誘拐してこちらに向かっているとのこと!」

 

「何…だとッ…!」

 

ウィーグラフにとって最悪の報告が飛び込んできた。思わず顔を見合わせるウィーグラフとミルウーダの部隊の斥候。

 

「おまえはすぐにミルウーダの下へ戻れ! 彼らと何としてでも接触して伝えろッ! ベオルブの娘は()()()()()()()()()()()()()()となッ!」

 

「了解ッ!」

 

切羽詰まった様子でウィーグラフは指示を出し、斥候は時間が少しでも惜しいとばかりにサジから受け取った魔片を同時に砕くとウィーグラフ達の目の前に光って浮きながら走り去っていった。そのあまりにも非常識な光景にウィーグラフ以外の団員はあっけにとられている中、ウィーグラフはギュスタヴの後釜として副団長に任命する予定だったゴラグロスの早速の()()()()への対処を考え、頭を抱えるのだった。

 

 


 

時は少し戻りイグーロスのベオルブ邸。そこでは、ゴラグロス率いる骸旅団による襲撃を受けていた。北天騎士団のほとんどが骸旅団の拠点の襲撃で出払っており、残りはイグーロス城の警備のための人員を割いていたため、その時のベオルブ邸には最低限の人数の警備しか居なかった。そこにゴラグロス率いる骸旅団がなだれ込んだため、帰宅していたダイスダーグとザルバッグと少数の騎士で応戦していたが苦戦していた。

 

突如として実家が戦場となってしまったラムザの妹のアルマとディリータの妹のティータは、館の一室に身を隠していた。本来ならば彼女たちだけで逃げるということは不可能のはずだったが、サジから渡された魔片のうち、アルマに渡っていたバニシガの魔片がアルマの意思に反応したのか発動しアルマとティータの姿を消したおかげで、二人揃って逃げることができたのだ。尤も、意図せず魔片が発動したため、繋いだ手の感触のみ残してお互いの姿が急に見えなくなったことに最初は混乱していたのだが。

 

「アルマ、どうしよう…」

 

「大丈夫よティータ。ダイスダーグ兄さんもザルバッグ兄さんも強いんだから。私たちは見つからなければ大丈夫よ」

 

逃げ込んだ別室で、骸旅団の襲撃に怯えるティータをアルマは宥めていた。だが、そんな彼女たちの耳に、骸旅団達の信じられない発言が聞こえてきた。

 

「ダイスダーグはやったぞッ! まだザルバッグは健在だがこれ以上の高望みは危険だッ! 撤退するぞッ!!」

 

「そんな…兄さん!?」

 

兄たちの無事を信じていたアルマは衝撃を受ける。そんなアルマの様子を見て今まで怯えていたティータがアルマに提案する。

 

「アルマ、急いでみんなの居る部屋に戻りましょう」

 

「!! でも…」

 

「骸旅団も撤退するようだし、…私も、もう大丈夫だから」

 

「…わかった! はやく私がダイスダーグ兄さんに回復魔法を掛けてあげないと…!」

 

かくして、アルマとティータは透明状態のままダイスダーグ達が応戦していた部屋へと急いだ。しかし、骸旅団はまだ撤退中だったようで、廊下の反対側から全力で走ってくる団員達を避けながらとなってしまった。それがいけなかったのだろう。廊下の曲がり角にて走ってくる団員とアルマたちは衝突してしまった。

 

「うわッ!! なんだ、子供ッ!?」

 

「きゃっ!! えっ、姿が見えてるの!?」

 

「丁度いい。さぁ、来るんだ!!」

 

それに伴い透明化も解除されてしまい、骸旅団に見つかってしまったアルマ達。骸旅団の団員はそんな彼女たちを人質として攫うと決めたようで、彼女たちの腕を引っ張って走り始めてしまった。そしてとうとう屋敷の入り口まで連れて来られてしまう。

 

「イヤッ! やめてッ、離してッ!!」

 

「早くしろッ!」

 

ティータが必死に抵抗するも、腕を引っ張る大の男の力には敵わず引きずられてしまう。

 

「痛いッ! 手を離してッ! 兄さんッ!!」

 

続いてアルマも引きずられてきたが、後ろを見るとザルバッグが駆けてくるのが見えたため、アルマはザルバッグに助けを求める。その直後、アルマを捕えていた団員はザルバッグによって切り伏せられるが、

 

「チッ、ここまでかッ!!」

 

ティータを捕えていた団員はその様子を見るとアルマを連れて行くのは無理だと判断して、ティータのみを連れてチョコボに騎乗し走り去ってしまった。

 

「大丈夫か、アルマ?」

 

「ええ、私は大丈夫。それよりティータが…!」

 

「ああ、わかっている」

 

ザルバッグはアルマに声を掛けるが、アルマはティータが連れ去られた方向を見てティータを心配する。ザルバッグも同じ方向を見て苦い顔をしていると、屋敷から手傷を負わされたダイスダーグが覚束ない足取りで出てくる。

 

「兄上ッ!!」

 

「わ、私は大丈夫だ…。アルマは…無事か……?」

 

ザルバッグが急いでダイスダーグに駆け寄るが、ダイスダーグはアルマの事を心配して無理やり外まで出てきたようだった。

 

「はい、なんともありません。ひどい怪我……」

 

「ま、まさか、ここを襲撃するとは…。私を狙ってきたか……」

 

「5人程やられました…。ティータもさらわれてしまいました」

 

アルマが無事な様子を見てダイスダーグは一旦安堵するも、ザルバッグより報告を受けると怒りの形相を浮かべて怒号を上げる。

 

「やつらを追え…。草の根を分けても捜し出せ…!」

 

「兄さん、もうそれ以上、しゃべらないで!」

 

「骸旅団め……」

 

その言葉を最後にダイスダーグは力尽きて倒れる。

 

「兄さん、兄さんッ、しっかりしてッ!」

 

「誰かッ! 誰かいないのかッ!!」

 

声を掛け続けるアルマとザルバッグの叫び声がむなしくあたりに響いていた。

 

結局、この後すぐに屋敷の中から応戦していた北天騎士団の面々が駆け付け自身の傷も省みずにダイスダーグを室内まで運び、その後のアルマの回復魔法によってダイスダーグは一命を取り留めた。だが、この事件によってザルバッグ率いる北天騎士団が骸旅団殲滅作戦についに本腰を入れ、骸旅団の軍事拠点として知られていたジークデン砦制圧作戦が開始されることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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