イヴァリースでどう生きていけるのか   作:かにしぐれ

18 / 30
イグーロス城~飛翔~魔法都市ガリランド

ミルウーダ達を連れてイグーロスへ帰還したラムザ一行に待っていたのは、ベオルブ邸襲撃の情報だった。ミルウーダ達はアカデミー生たちに任せてベオルブ邸へと急行したラムザとディリータ、サジ、アルガスの4人はベッドで臥せっているダイスダーグと対面する。そこで骸旅団の拠点を落としたことを労われるのだが、ラムザはティータが骸旅団に攫われたことへの対応についてダイスダーグに尋ねた。すると、

 

「…やつらの本拠地であるジークデン砦に、ザルバッグが総攻撃をかける」

 

「そ、そんな…!!」

 

骸旅団の殲滅を優先するかのようなダイスダーグに、ラムザは驚きの声を上げ、ディリータも思わず身を乗り出す。

 

「骸旅団はもうガタガタだ。逃げている者も数十人しかいない。頭目のウィーグラフは未だに捕らえていないが、それも時間の問題だろう…」

 

「ティータを……ティータを見殺しにするんですか?」

 

なおも骸旅団について語るダイスダーグに対し、ラムザは静かながらも語気を強めて尋ねる。すると、ダイスダーグは穏やかな顔で、

 

「心配するな。手は打ってある。ティータの身柄を取り戻すまでは総攻撃などはせん。絶対にな…。実の妹のように想っているティータを見殺しになどするものか…」

 

そうラムザとディリータを安心させるように言うのだった。

 

ダイスダーグと面会した後、ディリータが耐え切れずに走りだそうとしたので、

 

「どこに行こうとしてるんだ、ディリータ」

 

サジがディリータを引き留めた。すると、ディリータがサジに向かって叫ぶ。

 

「ティータがッ! たった一人の妹が攫われたんだぞッ! 早く探しにいかないとッ!!」

 

「落ち着けって。手がかりなら俺たちは既にあるだろう? どうせティータちゃんを攫った奴らもウィーグラフの所に合流するはずだ」

 

そうサジに言われて落ち着きを少し取り戻す。場が落ち着いたところで、ダイスダーグ卿の部屋から遅れて出てきたアルガスが合流した。

 

「オレもそっちを手伝ってはやりたいんだが、オレは侯爵様についていかないといけないからな。ここで一旦お別れだ」

 

先ほどのダイスダーグのお見舞いにはエルムドア侯爵も滞在中のイグーロス城から来ていたのだ。ラムザ達より遅れて部屋から出てきたのも、今後に動きについての話し合いをしていたからのようだった。

 

「アルガスは元々ランベリーの騎士だからそうだよね。今までありがとう、アルガス」

 

「いや、ラムザ達が居なければ侯爵様は助けられなかったし、…オレも死んでただろうからな。ま、どうせすぐにまた会う事になるけどな」

 

「? どういうことだ、アルガス」

 

「侯爵様が、ダイスダーグ卿の代わりにジークデン砦攻略作戦に参加することになったんだ」

 

「「なんだって!?」」

 

「…だからエルムドア侯爵が居たのか」

 

アルガスから思わぬ情報が入り驚くラムザとディリータ。一方、サジは原作ならこの場に居なかったはずのエルムドア侯爵が居る理由がわかり納得していた。

 

「エルムドア侯爵は前々から骸旅団への作戦に参加したがってたもんねぇ。今回は状況も状況だし、ベオルブ側も断らなかったのかな」

 

「あぁ。侯爵様もようやくこれで少しは恩に報いることができるって言ってたぜ。その時の侯爵様の笑顔が何故かすごく怖かったけどな…」

 

やや遠い目をしながらエルムドア侯爵について語るアルガス。しかし、アルガスは頭を振ると

 

「いや、それよりも本題だ。奴らの砦にイグーロスから最短で向かうルートは警戒線が貼られていて迂闊には近づけないそうだ。裏から回るルートじゃないと厳しいみたいだぜ」

 

「くっ…! 急がなきゃならないのに裏から回り込むしかないのかッ…!」

 

ダイスダーグ、ザルバッグ、エルムドア侯爵の3名が話し合っていた内容をラムザ達に伝えた。それを聞いたディリータは頭を掻きむしっていたが

 

「…ウィーグラフの奴ならおまえの妹も悪いようにはしねぇだろう。きっと大丈夫だ」

 

「…あぁ、そうだな。ありがとう、アルガス。」

 

原作ではここで完全に決裂していたアルガスとラムザ達だったが、ここではそうはならず、アルガスはディリータを気遣うような言葉を掛けていた。その光景を見て、ならばこの先の未来も変えられるはずだとサジは心の中で決意を新たにするのだった。

 

 


 

 

「空を自由に飛んでみたいと思いませんか?」

 

「…いきなり何を言ってるんだ?」

 

それは唐突にサジが言い出したことから始まった。ミルウーダ達のもとへ戻ったラムザ達は、彼女らよりウィーグラフが居る拠点へのルートを聞き出していた。ウィーグラフはどうやらジークデン砦ではなく、そこから南に位置するフォボハム平原の風車小屋が建ち並ぶ場所に居るとのことで、魔法都市ガリランドより北上するルートでそこまで向かうことになったのだが、

 

「空を飛ぶ…っていっても、そんな魔法があるの?」

 

「いや、残念ながら浮く魔法は有っても飛行する魔法は無いんだよね」

 

サジが妙なことを言い出したのである。ラムザはそんな便利な魔法があるのかと聞くがそんな魔法は無いと言い切るサジ。そんな彼に周囲は困惑していたが、サジはそんな周りの反応などお構いなしに虚空より()()()()を取り出した。その()は現代知識で言えばホバークラフトと呼ばれるものだった。

 

「とはいえ、テストも無しに高高度を飛ぶのは危ないのでそれは後々のお楽しみということで、今回は()()で低空を飛んでいこうと思います」

 

()()…って、もう何から突っ込めばいいんだ」

 

「これは船、かな? 見たことのない形だけれど…」

 

「これもトレジャーハントのお宝だよ。前に一回動かしたから、動作は保証するよ。…正直、これを動かすのは滅茶苦茶疲れるんだけど、今回は速度が大事だから頑張るよ」

 

このホバークラフトはどうやらサジが持っているお宝の一つらしいということで、とりあえず納得して話を進めるラムザとディリータ。明らかに大きすぎる物体を虚空より取り出したことについては今回は緊急事態ということもありスルーすることに決めたようだ。なお、サジの奇行を初めて見るミルウーダ達は非常に驚いていたが、アカデミー生たちはその様子を見て自分たちもそんな時期があったなぁと遠い目をしていた。

 

「機工都市ゴーグで発掘される()()みたいなものか? だが、疲れるとは一体?」

 

「こいつはね、()()を俺の魔力で無理やり動かさなくちゃならないんだよね。こんな大きなものを人の魔力だけで動かせるはずが無いから何か仕組みがあるはずなんだけど…」

 

ディリータがホバークラフトを見つつサジに引っかかったことを尋ねると、サジは困ったように笑いながら頭を掻く。

 

「おいおい、本当に大丈夫なのか?」

 

「イグーロスからガリランドまでなら道中も平坦だし、多分いけるよ。大丈夫、エーテルの貯蔵は充分だ…!」

 

「まぁ、サジが大丈夫というのなら、とりあえず乗ってみようか」

 

その様子に不安を覚えるディリータだったが、ラムザがさっさとホバークラフトに乗ってしまったため仕方がなくディリータも乗り込むのだった。その後、未だに驚きから戻ってこられないミルウーダ達も乗せてサジはホバークラフトを発進させたのだが、

 

「うわー! すっごく速いよ!」

 

「こんな大きなものが動くなんて信じられないな…」

 

その速さに喜ぶラムザと、未だにその現実が受け入れ切れていないディリータ。

 

「何、…その、何なの!? 本当に何なの彼はッ!?」

 

そこにやっと正気を取り戻したミルウーダが突っ込みを入れていた。

 

「あはははは…。(サジ)(サジ)だと思うしかないよ?」

 

「サジは()()()()()以外はまともだからな。実際、俺たちもよく助けられてるし…」

 

それに対して擁護のようでいまいち擁護になり切れていない返答を返すラムザ達。そんな中でサジはというと、

 

「うおおおおおおお!! 持ってくれよ、俺の体ァ!!!」

 

『エアロガ』を維持して無理やりホバークラフトを起動させているため、もはや命を燃やす勢いで操舵しているのだった…

 

結局、ラムザ達は昼前にイグーロスを出発してその日の夕方にはガリランド付近にたどり着いてしまった。さすがにホバークラフトでガリランドに乗り付けるのは騒ぎになるだろうということで、ガリランドが見えてきたあたりから徒歩で向かうとこにしたのだが、サジは生まれたての小鹿のようにプルプルとしていて立っているのもやっとだった。ラムザはそんな彼を心配して声を掛ける。

 

「燃え尽きたぜ…真っ白にな…」

 

「サジ、本当に大丈夫?」

 

「『ヘイスガ』と『レビテガ』は魔片で発動させるから大丈夫だよ」

 

「いや、そういうことじゃなくてだな…」

 

どうもラムザの心配が伝わってなさそうなサジに頭を抱えるディリータだったが、

 

「今は俺の事よりも、ティータちゃんの方が優先でしょ? どうせ今日はガリランドで一泊するんだから俺は大丈夫だって」

 

「…なら、肩を貸してやるからこっちに来い」

 

どうやらサジはディリータとティータの方を優先して無理をしようとしているようだった。それに気づいたディリータは、サジに肩を貸して歩き始める。

 

「いやぁなんだか悪いね」

 

「…お前に無理をさせてしまったんだから、これくらいはさせてくれ」

 

「無理ってほどの無理ではないんだけど…ありがとね、ディリータ」

 

そんなディリータとサジの姿を見ていたミルウーダはポツリとつぶやく。

 

「平民上がりの人間のために、あんなになるまで頑張る貴族も居るのね…」

 

ガリランドまでの移動中に今回のベオルブ邸襲撃の件と、それに伴い攫われたというティータについての話をする中でディリータが平民だったこともラムザ達はミルウーダに話していた。その話を思い出して漏れた言葉だったのだろうが、

 

「ミルウーダ。それなんだけど、サジは自分は貴族じゃないって言い張ってるんだよね…」

 

「…あれで平民だとでも言うつもりなの? 自分の国じゃないからバレないとでも思ってるのかしら?」

 

サジの言い分をサクッと斬って捨てるミルウーダに、そう思うよねと同意の笑いをこぼすラムザ。

 

「本当に、ここは妙な貴族ばかりね」

 

「それってもしかして僕も入ってるのか!?」

 

「ふふっ、ご想像にお任せするわ」

 

()()()()としてサジと同じ扱いをされる事に遺憾の意を示そうとするラムザだったが、ミルウーダはそれを軽くあしらうと歩いて行ってしまった。ラムザはしばらく何かを言いたげにミルウーダを見ていたが、ため息をつくと自身もガリランドへと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 




※設定補足コーナー

本編で語るのは冗長になりそうなので、ここで少しだけ補足させていただきます。

サジの所有している「お宝」には、小型の飛空艇with飛空石もあったりします。今回取り出したホバークラフトと共に死都となっていた場所で拾ったものですが、空を飛ぶものなので修理しないで乗ってみる気にはなれなかった模様。
機工都市ゴーグに飛空石と一緒に持ち込めば、修理できるかもしれませんね。

あと今更ですが、サジはゲームのインベントリのようなアイテムを収納できる技能をオーボンヌ修道院にたどり着くまでに習得させられています。その他にもいろいろあったのですが、ラムザ達の今後の方が優先されるため割愛させていただきます。ただ、とっくの昔に彼は一般「人」ではなくなっているのです…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。