歴史からも忘れ去られた魔石の廃坑の最奥で、その存在は微睡んでいた。
遥か昔、一度だけ神を気取る上位者【オキューリア】に選ばれた人間の一行がこの地に足を踏み入れた事はあったが、この地の静寂が乱されたのはその一回が最初で最後のはずだった。
【オキューリア】がこの世界に干渉する術を失い、【オキューリア】によって創られた世界の守護者達も別の時空へと身を隠した今となっては、この地に何者かが訪れることなどあり得なかった。
故に、【オキューリア】によって世界の守護者すべてを統括するものとして創造され、そしてその力の凄まじさから【オキューリア】によって魔石鉱の奥底へと封印された彼の存在【ゾディアーク】は永遠に微睡むはずだったのである。
「お邪魔するわょ・・・お邪魔しま~す」
一人の馬鹿者がエントリーするまでは。
挨拶は大事。古事記にもそう書かれている。というわけで、元気に挨拶しつつ【ゾディアーク】が待つエリアに侵入を果たした。
正直なところ、FF12で【ゾディアーク】と戦った時のように、開幕全体即死*1が飛んできて即死亡からの現実で起床を決めるつもりだったのだが、羽の生えた豪華な装飾の蛇という見た目をしている【ゾディアーク】はこちらの様子を伺っているだけで、攻撃を仕掛けてはこなかった。
ここで「えいっ、えいっ。・・・怒った?」とかやれば殴り返してくるだろうが、流石にそこまで愚かな真似をする気にもなれなかったので、【ゾディアーク】の目の前で座り込み、
「初めまして。星宮 沙慈(ほしみや さじ)と申します。よろしくお願いします」
と自己紹介をしてみた。自己紹介も大事。古事記にもそう書かれている(2回目)。
洞窟に自分の声が反響し、その反響が消えかけて日本語じゃ伝わらなかったかなと思い始めた頃、頭の中に何かが反響するような感覚が走り、そして
「えっ、あぁ、はい。私はこの世界の人間ではありませんね」
「何者と言われましても、一般人ですとしか・・・。多分、その辺の生き物にも余裕で負けるくらいか弱い人間ですよ」
「何故あなたのことを知っているかですか。それはちょっと長くなるんですが・・・」
言葉が明確に聞こえたわけでも無いのに、なぜか相手の意思みたいなものがダイレクトに伝わるので、それを元に目の前の【ゾディアーク】と会話をしていた。
傍から見れば、羽の生えた蛇に向かって一方的に喋っている狂人に見えるだろうけど、周りに人などいないので何も問題はない。無いったら無いのだ。
そんな風にして自分の持つFF12やらFFTやらの知識を話したり、逆に【ゾディアーク】の方からも「少し前に我の力の破片を通して触れる魔道士が現れたので、戯れに力を与えてやったら暗いダンジョンの底で延々と魔法の修練ばかりしててつまらない」とかいう話を聞けたりした。
その魔道士、もしかしなくてもFFTのディープダンジョンの最奥で会えるエリディブスなんじゃないかとか思ったけれど、【ゾディアーク】本人が名前を覚えていなかったので何とも言えないところだった。99%エリディブスさんだろうけどね。
そんなこんなで会話を続けているうちに、ひょっとして【ゾディアーク】はかなり暇を持て余しているのではないかと思うようになったので、ついうっかり
「もういっそのこと、外に出てみます? 私もここから外に出たいですし、一緒に行きませんか?」
なんて口を滑らしたのがきっと運の尽きだったのだろう。しばらくした後に【ゾディアーク】から思考が送られてきて、
「それもいいかもしれない、と。ところで、どうやってここから外に出るつもりですか? 上の岩盤を全部ぶち抜いてとかだと、瓦礫で私が死んでしまうので、できれば避けてほしいのですけれど・・・」
「直接空間をワープできる? それなら安全ですね。すぐに行きましょう。いや~、これで私もまた外の空気を吸えますね!」
「そのキラキラした空間から外に出れるんですね。じゃあ行きましょう行きましょう! 怖くはないのかですって? 男は度胸!なんでもチャレンジですよ!」
・・・この時の自分は無事に外に出られると信じて浮かれていたわけだが、数秒後には愕然とすることになる。何故なら
「うわ~、きれいなところですね~。あたりいちめんクリスタルだぁ~。・・・ここってもしかしなくても例の場所じゃないですかやだー!」
クリスタルで構成されたFF12の迷宮ダンジョン、クリスタル・グランデ*2に出てしまったからである。