イヴァリースでどう生きていけるのか   作:かにしぐれ

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chapter1最終話の直前ですが、箸休め回です。


閑話 風車小屋その後とよもやま話

「しかし、私の下に残ったのはこれだけか」

 

ゴラグロスが仲間を連れてジークデン砦へ向かってしまった後、小屋に戻ったウィーグラフはそうつぶやいた。

 

「元々、私が背負えるのはこれくらいだったということだ。私が己の器を理解せずに行動した結果、今の骸旅団の窮状を招いたのだ」

 

「兄さん…。いいえ、違うわ。私が、私たちが兄さんに甘えていたからよ。私たちがもっとしっかりしていれば…」

 

自嘲するウィーグラフに対して、ミルウーダはウィーグラフ一人の責任ではないと訴える。

 

「だが、ゴラグロスが勝手な行動をしたのも私が骸旅団の方針をはっきりと示していなかったせいだ」

 

「ゴラグロスは兄さんに相談してから行動するべきだったわ。彼は兄さんが貴族を憎んでいると思ってたみたいだけど…そうではないんでしょう?」

 

「あぁ。…まさか、私がそのように見られているとはな。だが、それも当然か。掲げた理想が"腐った貴族に正義の鉄槌を"だったからな」

 

「ウィーグラフさんとしては"()()()"貴族が対象のつもりだったのに、団員には貴族全てを敵としていると伝わっちゃってたんですね」

 

「私としては"貴族の意識を変えさせる"よりわかりやすく、貴族が嫌いな団員にも受け入れやすいと考えていたんだが…」

 

「思いっきり裏目に出ましたね…」

 

「まさか私自身が貴族全てを憎んでいると思われていたとはな」

 

原作の知識があるサジからすると、ゲームの中では実際に玉砕覚悟で貴族を一人でも道連れにと言っていたウィーグラフの姿も記憶にあるため、エルムドアやザルバッグに一定の敬意を払う彼とどちらが本心なのかと疑っていた部分もあった。だが、前者の過激な発言は骸旅団の終わりを理解していたが故の自暴自棄な精神状態で出た発言であり、平時なら比較的平穏に変革を促していきたかったのがウィーグラフの本心のようだ。

 

「私は貴族が嫌いだわ。だけど、意地を張ってるだけじゃ何も変わらないわよね。…兄さんが勘違いされるような言動を続けたのも、私たちのような団員を纏めるためだったんでしょう?」

 

「…そういう面があったのは否定しない」

 

「あと、貴族から仕官の勧誘があったというのは本当なの?」

 

「…その話をしたのはラムザ、いやサジ、君か?」

 

「なんでそこで俺なんです!? …ここに居ない人を挙げるのもなんですが、アルガスが戦闘中に言ったんですよ」

 

「彼が? しかし何故…」

 

「戦闘中にアルガスとミルウーダが口論になりまして…」

 

その時の顛末を簡単に語るサジ。アルガスの発言についてはそのままだと刺激が強い言葉だったためニュアンスを伝えるのみではあったが、ウィーグラフはアルガスの気性からなんとなく推察しているようで苦笑していた。

 

「アルガスはギュスタヴと刺し違える覚悟だったからな。気性の激しい所のある彼なら確かに言いそうだ。しかし、私は随分彼から評価されていたのだな?」

 

「あいつ、口だけでは無かったのね…。でも、確かに私も気になるわ。なんであいつは兄さんを平民のくせにって見下さなかったのかしら」

 

「やっぱり"聖剣技"が使える所ですかね。"聖剣技"は強さの次元が違うし、使い手が限られているのも特別視される動機になりますよね」

 

サジがウィーグラフの戦い方を実際に見た感想を交えながら聖剣技について言及すると、

 

「ダイスダーグ兄さんは"聖剣技"と"剛剣技"が使えるけど、ザルバッグ兄さんは使えないんだよね。代わりに"破壊魔剣"が使えるけれど」

 

「ザルバッグ卿は"聖騎士"の称号を持っているけど"聖剣技"は使えないんだよな。…教会の洗礼を受ければ使えるわけでもないのか?」

 

「僕もよくわからないんだよね。昔、"聖剣技"の適性が無いとかでダイスダーグ兄さん相手にちょっと拗ねてるザルバッグ兄さんは見たことがあるんだけど…」

 

「拗ねるんだ、あの人…」

 

「…ザルバッグ殿の意外な一面だな」

 

話が聖剣技についてにシフトしていった。ベオルブ家の内情が少し暴露されたがそこはご愛敬である。

 

「私の"聖剣技"は戦場で見たバルバネス殿やシドルファス殿の技を見様見真似で身に着けたものだからな。正式な型ではないと思うのだが…」

 

「適性が無ければ使えない剣技を見ただけで真似できるのは、おかしいんですよ」

 

「君にだけは"おかしい"と言われたくないな」

 

「何ですとぉ!」

 

サジの抗議を笑って流すウィーグラフだったが、

 

「ところで、君が乗ってきた陸上を走る船は一体何なんだ?」

 

「あれは古代の機械ですね。俺が発掘したものの一つです。動力が壊れているので魔法で無理やり動かしているんですが」

 

「あの大きさの物を一人の魔力でか? やっぱり君の方がおかしいじゃないか?」

 

「ぐぬぬぬ…」

 

ウィーグラフからカウンターを決められて言い返せなくなるサジだった。

 

 


 

 

①ウィーグラフの直属部隊について

 

 

「ウィーグラフさんの部下って、女性が多くないですか?」

 

「そうか? …確かに、言われてみればそうかもしれんな」

 

サジが原作の時から気になっていたウィーグラフの部隊がほぼ女性で構成されている件についてウィーグラフに聞いてみたところ、彼自身も首を傾げていた。それを見て、サジはウィーグラフが"英雄色好む"というタイプではなく、()()()()の類である可能性に思い至り目線をミルウーダに向けると、ミルウーダは静かに首を横に振った。ウィーグラフは()()()()確定のようだ。

 

「ウィーグラフさん、女性に刺されるような真似だけはしないで下さいね?」

 

「何故だ!? 私は決して女性に不誠実な事はしないぞ!?」

 

「ミルウーダさん、判定をどうぞ」

 

「ノーコメントでお願いするわ」

 

「ミルウーダ!?」

 

実の妹からもそう思われている事を暗に示されて衝撃を受けるウィーグラフ。

 

「…兄さんの周りなら規律が保たれているというのが大きな理由ではあると思うわ。ギュスタヴとか、()()()()()()()()団員が居たのも事実だもの」

 

「女性の団員にとって安心できるのは、ウィーグラフさんの周囲だったって事ですかね。あとは同じ女性のミルウーダさんの部隊もそんな感じっぽいですね」

 

「そうね。私の部隊も女性の方が多かったわ。特に、非力な魔道士の女性は私の部隊にしかいないわね」

 

そのあとに、ミルウーダがフォローを入れたため、ほっと胸をなでおろすウィーグラフだったが…

 

「でも、兄さんに対しての()()()()()()()を骸騎士団の頃から私が受けてきたのも事実だわ」

 

「なんの話だ? まさか私が女性に対して何か失礼をしてしまっていたのか?」

 

「あはははは…。まぁ、ウィーグラフさんは紳士的で男前だもんね。…ウィーグラフさんに沼ってる人は朴念仁なところも可愛いとか思ってそうだけど」

 

「…そこもノーコメントでお願いするわ」

 

案の定なクソボケ発言をするウィーグラフに呆れるサジ。そのサジが小声でつぶやいた部分をミルウーダは拾って、事実上の肯定を示すとため息をつくのだった。

 

なお、骸旅団(元骸騎士団)の男の団員のコメントをいくつか抜粋させていただく。

 

「団長は憧れではあるんだが、どうして女性関係はああなのか」

「骸旅団には意外と女性も居るけれど、出会いが発生しません。団長のせいです」

「女性を独占する団長を許すな(血涙)」

「団長…好きだぁ…」

「そんな事より団長、妹さんを俺に下さい」

 

 


 

 

②サジの持ち物について

 

 

それは、ラムザの何気ない一言から始まった。

 

「そういえば、サジって他にどんなものを持ってるの?」

 

「ティータに渡していた魔片といい、あの陸上を走る船といい、色々持ってそうだよな」

 

ディリータも気になっていたようで、何本目かのエリクサーを飲んでいるサジに目を向ける。すると、サジは虚空からエリクサーの瓶をいくつか取り出すと机の上にコトコトと並べ始めた。

 

5(ファイブ)エリクサー」

 

「いきなり何!? 訳が分からないよ!?」

 

「そもそも、あと5本どころじゃないくらいは持っているんじゃないか?」

 

突然の奇行に突っ込むラムザに対して、冷静に指摘するディリータ。そんな彼らに対しサジは言う。

 

「まぁ、冗談は置いといて。何を持ってると言われても、何を出すか結構迷うところなんだよねぇ…」

 

どうやら、何を見せたら良いのかわからず困っているようだった。

 

「そうだな、例えば君が乗ってきた()みたいなものは他にあるのかね?」

 

そこにウィーグラフも加わって質問してきた。その質問に対しサジはうーんと唸った後、

 

「小型の飛空艇ならあるよ」

 

「飛空艇…って聖アジョラが生きていた時代に空を飛んでたっていうあの飛空艇!?」

 

「うん。多分、その時代の物だと思うよ。動かないんだけどね」

 

とんでもない爆弾を落としてきた。ラムザが声を上げて驚くも、他の面々も似たような反応だった。

 

「それは…どうしても動かせないのかい?」

 

「流石に無理ですねぇ。乗ってきた船ことホバークラフトなら地表を走るものだからまだしも、空を飛ぶものとなると…」

 

「やっぱりサジでも厳しいの?」

 

「ラムザ、そもそもあの船くらいの大きさの物を一人の魔力で動かしてる方がおかしいんだ」

 

「飛ばせはするだろうけど、安全性が確保できないから絶対やらないよ」

 

「飛ばせるのかよっ!?」

 

やってやれなくはないというサジに思いっきり突っ込みを入れるディリータ。そんなディリータを尻目に、サジは虚空より飛空石を取りだして机の上に置いた。

 

「その石は一体?」

 

「これは飛空石って言って飛空艇の動力に使うものらしいんだけど、どう使えばいいかよくわからなくってね」

 

「綺麗…」

 

ラムザが飛空石について聞くと、サジはこれが飛空艇を動かすのに必要なものだと答えた。その一方で、ティータは飛空石の輝きに見惚れていた。

 

「そういった代物なら、やはりゴーグに持ち込むのが一番だろうな」

 

「機工都市ゴーグかぁ。行くのならドーターから船でウォージリスを通るルートになるのかな。…遠いなぁ」

 

ウィーグラフから提案があったが、その旅程を考えて遠い目をするサジ。

 

「ま、機会があればゴーグに行くのは有りだね。空を飛ぶのはロマンだし、飛空艇はやっぱり使えるようにしたいね」

 

「空を飛ぶのってどんな感じなんだろうね。僕もちょっと楽しみかな」

 

「…いや、まず聖アジョラの時代の遺物を持ってる事がおかしくないか? それを指摘しなくていいのか? 俺がおかしいのか!?」

 

暢気なラムザやサジに対し、一人葛藤するディリータだった。

 

 

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