ジークデン砦前の北天騎士団の陣にラムザ達がたどり着いたのは昼を少し過ぎた頃だった。今回は移動する人数がウィーグラフの一団が加わったために30人程度となったため、さすがにホバークラフトでの移動は厳しいだろうということで、いつもの(レビテガとヘイスガの併用での)移動だった。
サジは自分まだやれますとか言ってたが、場合によってはすぐにジークデン砦のゴラグロス一派と戦闘になる可能性もあったためラムザ達から引き留められていた。ウィーグラフの一団の何名かが少し残念そうな顔をしていたが、彼らも生きていれば乗れる機会はあるかもしれないので強く生きて欲しい。
ラムザ達を出迎えたザルバッグは、ラムザがウィーグラフと和解している可能性は予想していたが、まさか彼らの一団を連れてくるとは思っていなかったらしく非常に驚いていた。傍らに居たエルムドアはサジに目線で君の策かと問いかけていたが、サジが同じく目線で自分ではなくラムザが決めたと返し、エルムドアは面白そうに笑みを浮かべてラムザを見ていた。
エルムドアの視線に気づいたラムザは彼の笑みの理由がわからず若干戸惑いながら会釈をすると、ザルバッグに対して経緯の報告を行った。その過程でティータの無事な姿を見せると、
「ティータ! よくぞ無事で居てくれた…!」
と感極まった様子でティータを抱きしめるザルバッグとちょっと恥ずかしそうにするティータという場面もあった。なお、その光景を見て平民出身のハイラル兄妹がベオルブで本当に大事にされていることを知ったミルウーダは複雑そうな表情を浮かべていたが、ひとつ息を吐くと頭を振って元の表情に戻していた。
彼女からすれば貴族とは平民を人間扱いしていないと思っていたところに、
その後、
通常ならば、貴族の口約束など信じられないとウィーグラフ側が反応するところだっだだろうが、それぞれが自身や家族をウィーグラフの手を借りて助けられている事を理由としている事と、その提案をしてきた貴族がどちらもウィーグラフが敬意を払うに値すると考えている人だった事、あとはウィーグラフ達がこの場に来ると決めていた時点で話し合いに応じる気だった事もあって話がまとまることとなった。
これを以て、ウィーグラフの一団こそが
そして、ウィーグラフ達の沙汰が決まりいよいよジークデン砦攻略の話に移るのだったが、
「つまり、ウィーグラフ殿を筆頭に
「ザルバッグ殿が私を信用できないのは承知の上です」
「ウィーグラフ殿を信用していないわけでは無い。だがな…」
ウィーグラフは身から出た錆なので、一番危険な先陣は骸旅団から出すと言い出したのだ。それに対し、ザルバッグは一番危険な役目を北天騎士団ではなく骸旅団に押し付けることに難色を示していた。それは彼の中の正義と貴族としての矜持、その両方が承服しかねるものだからだ。そこにザルバッグの頭を悩ませる
「ならば、私も先陣に加わらせてもらおうか。何、今度は遅れはとらんよ。"銀髪鬼"と鴎国から恐れられた名に恥じぬ働きを見せてあげよう」
「いやいや、"侯爵"が先陣を切っちゃまずいでしょう! 何を考えてるんですか! アルガス、君の主君が暴走しているんだけど!?」
「…オレは侯爵様に従うまでだ」
「遠い目をして考える事を放棄しないで!? 家臣の進言だって時には主君に必要なんだよ!?」
エルムドアが先陣の誉は譲れないと言い出し、思いっきり突っ込みを入れるサジだった。サジは後に控えているアルガスに矛先を向けるが、アルガスは諦めの境地に至っているようでエルムドアに翻意を促す気は無いようだ。
「完全にヤる気になっている侯爵様をオレが止められるとでも思うのか?」
「…エルムドア侯はそんなにやる気になってるの?」
「侯爵様の笑顔にうすら寒いものを感じることが何度もあったな…」
そんなアルガスの言い分にOh…としか返せなくなるサジ。ザルバッグとしては、絶妙な立ち位置に居るサジにもう少し頑張ってエルムドアを説得して欲しかったところではあったが、
「ウィーグラフ殿も一緒に出るのだし、私も突入部隊として出撃するので構わないかな、ザルバッグ殿」
「…こちらとしては、侯爵殿に危険が及ぶような事は避けたいのですがね」
「戦場に出ると決めた時点で、どこに居ても危険なのは変わりないだろう。ならば、実力の確かな者と一緒に居る方が安全と言えるのではないかね?」
「……。ウィーグラフ殿。こういうわけだが、侯爵殿をよろしく頼む」
サジを含め、この場に居た全員がエルムドアの屁理屈に突っ込みを入れたい気持ちでいっぱいだったが、一番エルムドアを引き留めたいであろうザルバッグが苦い顔で折れるのを見て、自分たちが来るまで何度も似たようなやり取りがあり、そのたびにエルムドアが一歩も引かなかったのであろうことを察した。
ザルバッグから申し訳なさそうにエルムドアを頼まれたウィーグラフは、非常に味わい深い表情をしながらもザルバッグからの"お願い"を承ったのだった。これで作戦会議は終わりかと思われたが、ここでラムザが声を上げる。
「兄さん、僕も、僕たちも作戦に参加します」
「何? まさかラムザもジークデン砦に入るというのか? だが…」
「突入作戦の邪魔になるのでしたら、砦の包囲役でも構いません。どうか、僕たちも参加させて下さい」
「何故この作戦に参加しようと言うのだ? お前たちはティータを救出した時点で充分な働きをした。このままイグーロスに帰還しても良いのだぞ?」
ジークデン砦の攻略作戦に参加させて欲しいとザルバッグに掛け合うラムザ。その発言に対してラムザの部隊の面々も同意するように首肯するので、ザルバッグはこれをラムザの独断ではなくラムザの部隊の総意だと受け取り、なぜ作戦に参加しようとするのかを問いかける。
「それが僕たち…いや、僕の責任だからです」
「責任だと?」
聞き返すザルバッグに対し、ラムザは一度ウィーグラフの方を見た後に答える。
「ウィーグラフを、彼らをここに連れてきたのは僕です。これから、かつての仲間を斬り捨てさせる事になるとわかっていて連れてきたんです。だから、僕は彼らと共に戦う! それが無理でも、最後まで見届けなければならないんだ!」
ザルバッグを真っ直ぐに見てはっきりと告げるラムザに対し、ザルバッグは目を瞑って考え込んだ後、
「…わかった。お前たちの参加を許可しよう。配置は先鋒ではなく、侯爵殿やウィーグラフ殿の退路の確保だ。よいな?」
「ありがとうございます!」
「まったく、仁義のために無茶をしようとする所まで父上に似なくて良いのだが…」
「おや、私の時とは反応が違い過ぎるのではないかな?」
「それとこれとは話が別です! 侯爵殿はもう少しご自愛ください!」
ラムザに対して苦笑するザルバッグを見て、やや不服そうにザルバッグに文句を言うエルムドア。それに対してさすがにこれまで溜め込んだものが漏れたのか声を荒げて反論するザルバッグだったが、エルムドアは朗らかに笑って流すのだった。
ジークデン砦への突入は夕暮れ時を待って開始された。あまり時間をかけてもゴラグロスたちが迎撃の準備を整えてしまうだろうということで、今日中にケリをつけてしまおうという作戦だった。
砦は当然のように入り口の門は閉鎖されており、敵の侵入を拒んでいたのだが
「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め。始源の炎蘇らん! フレア!」
サジの本邦初公開となる攻撃魔法により破壊され、そこからエルムドアを先頭にウィーグラフ率いる骸旅団で構成される一団がサジの補助魔法*2を掛けられて突入していった。
…そう、エルムドアが先頭なのである。ウィーグラフよりも先に行ってしまったのである。後にエルムドアは自分の"刀魂解放"は味方を巻き込むが、ウィーグラフの"聖剣技"は味方を巻き込まないから自分が先行して敵を蹴散らす方が効率的だなどと供述していたが、出撃前に言っていた屁理屈はどうしたと言いたくなる所業である。この事を知ったラーグ公より後日苦言を呈されたエルムドアだったが、はたしてそれがどれ程効いていたかは不明である。
一方、ラムザ達はウィーグラフ達の後に続いてジークデン砦の中に入った後は、その場で部隊を展開して退路の確保に務めていた。砦の奥の方からは剣戟の音が響いてきていたが、ラムザ達が抑えている砦の入り口に襲撃してくる
「ウィーグラフやエルムドア侯は大丈夫だろうか…?」
「サジが補助魔法をいっぱい掛けていたから大丈夫だろう。いや、エルムドア侯は何かあったら本当にマズいんだけどな」
「多分大丈夫でしょ。リレイズもかけたから保険もバッチリだし。…あと、
「その時のエルムドア侯は、なんていうか、その、すごかったよね…」
「『わかった。サジ殿に魔法を掛け直して貰ってからもう一度出撃ということだね』とか言ってたからな…」
「これにはさすがの俺もキレちまったよ…」
「サジは『それ以上の作戦行動は許可できないって意味ですよ! こっちは侯爵の身を
その時の事を思い出して遠い目になってしまうラムザ達。
「エルムドア侯についていくアルガスも大変だよな…」
「主君が死地に赴くのなら、アルガスも行かなきゃならないからね。…大丈夫、アルガスにはこっそり『ブレイブ』も掛けておいたから」
「それってギュスタヴとの一騎打ちの時にアルガスに掛けてたっていう魔法?」
「そうそう。あの魔法は力が上がると同時にちょーっぴり勇敢になってしまう効果もあってねぇ。…今のエルムドア侯爵には掛けられんのよね」
無茶をする主君について行かなくてはならないアルガスを心配するディリータに、サジはアルガスには
そんなわけでやや緊張感が緩んできたラムザ達だったが、サジがあることに気が付く。それは、砦内のいたるところに置いてある樽の存在である。ジークデン砦は骸旅団の拠点として利用されていたのだから、物資が至る所にあってもおかしくはない。おかしくはないのだが、サジには何かが引っかかった。
そして、サジはその違和感の正体に気が付く。樽が通路に一定間隔で配置されているのである。サジは急いで近くの部屋の扉を開けて中を確認すると、そこは最低限の物しか無かった。続けて隣、その隣と扉を開けて中を確認するも、そこも空室だった。
「おかしい…」
「サジ、どうしたんだ?」
「物資を部屋の中じゃなくて通路に置いているんだ」
「それは部屋の中がいっぱいだから…ではないんだね」
物資をどこかの部屋の中に置くのではなく、わざわざ廊下に並べているのは確かにおかしい。その異様さにラムザとディリータも気が付く。
サジはこの状況でようやく、嫌な予感の正体に思い至る。原作では、ジークデン砦は自爆しているのだ。サジが樽の蓋を取ると、そこにはぎっしりと火薬が詰まっていた。
「これは不味い…!」
「これは、まさか火薬か!」
「ゴラグロスの奴ら、砦ごと自爆する気なのか!?」
ここにきてラムザとディリータもゴラグロスの思惑に気が付く。
「ラムザ、悪いけどこのまま待機していてくれ。俺が侯爵とウィーグラフに今すぐ撤退するように伝えてくる」
「いや、僕らも行った方が!」
「駄目だ。大勢で動いたら奴らの策に気づいた事を勘付かれるかもしれない。そうしたら、奴らの自爆が決行されるだろうね」
「サジの補助魔法による
「ディリータの言う通りだ。大丈夫、いざとなったら俺はテレポも使えるから。だから俺が行くよ」
「…わかった。必ずみんなを連れてきてくれ!」
「あぁ、任された!」
ラムザに託されて行動を開始するサジ。エルムドアやウィーグラフが居るであろう砦の奥へ駆け出し、ラムザ達から姿が見えなくなったところで
「これは緊急事態だからね。…『ダテレポ』」
ひとり呟くと、光に包まれる。そして、狙い通り戦闘中のエルムドア達がいる場所のすぐ近くの通路へ転移して再び駆けだすと、そこでは丁度エルムドアがゴラグロスの一派を蹴散らしたところだった。
「刀に宿りし幾千の、亡霊の呼びて、いざ抜かん! 村正! …これでここも全滅させたが、まだゴラグロスの姿が見えないな」
「それに、妙にこちらへの迎撃も散発的だ。…まるで奥へ誘い込まれているようだな」
「けれど兄さん、ゴラグロスについて行った団員もそんなに多くは無いでしょう? 奥で私たちを囲むにしても数は少ないんじゃないかしら?」
「あぁ。だからこそ、何か嫌な予感がするのだが…」
ウィーグラフ達がこの状況を訝しんでいると、通路からサジが駆け寄る。
「皆今すぐ撤退して。早く砦から出ないとマズい事になる」
「どういうことだね」
その場に居る全員に撤退するよう伝えるサジに、エルムドアはその理由を尋ねた。
「砦の至る所に火薬が置かれているんです。丁度あんな感じで」
サジはそう言うと、周囲に置かれている樽に指をさす。
「まさか、ゴラグロスは私たちを巻き込んで自爆する気なのかッ!」
「そのまさかです。なので、今すぐ撤退を!」
「くっ、ゴラグロス…! お前を信じてついてきた団員の命すら捨てるのかッ!」
ゴラグロスの意図を察して驚愕するエルムドアに、団員や己の命すら捨てようとしているゴラグロスに激昂するウィーグラフだった。
一刻を争う事態のためウィーグラフは他のエリアに居る仲間にも聞こえるように号令を掛けて撤退を始める。当然、その声にゴラグロスも自身の捨て身の策が見抜かれたことを知る。
「気づかれたか。だが、もう遅い! オレ達の命を掛けて、一人でも多くのクソ貴族共を葬ってやる…! そしてウィーグラフ、悪いがお前も道連れだ…!」
砦の奥で待ち構えていたゴラグロスは、ウィーグラフ達が自分の元へと来ないことを悟ると自身の周りの樽に火を放つ。樽の中の火薬は爆発を起こし、そして周囲の火薬にも連鎖していく。
「爆発が始まったか!」
その爆発の振動は撤退中のウィーグラフ達にも伝わる。もはや時間が無いと砦の入り口まで駆けていくが、後方より爆炎が迫ってくる。
「たくさん火薬があったとはいえ、なんでこんなに火の回りが早いの!?」
「爆発の音からして、複数の場所で起爆しているようだ! ゴラグロスの自爆を合図に他の団員も自爆したのだろう!」
爆炎の勢いが火薬の量の比じゃないと愚痴るサジに、ウィーグラフは苦い顔で答える。
「あとは、火薬だけでなくボムの欠片でも入っていたのだろう。厄介なものだな!」
さらにエルムドアが自身の考察を補足する。現代知識や原作知識があろうともイヴァリースの常識を全て知ってるわけでは無いサジからすると、その情報はありがたいものではあったが状況が状況なだけに喜べない。
「なるほど、それで爆発が増幅されているわけですね! でもそれをこんな形で知りたくはなかったですねぇ!!」
「文句を言ってる場合か! サジ、何か爆発を抑える魔法でも無いのかッ!?」
「いくつかあるよ!! でもこの規模を相手にだと、逃げる片手間では無理だねぇ!!」
「クソッ! こんなところでオレも侯爵様も死んでたまるかッ!!」
並走するアルガスが何か手は無いかとサジに聞くも、サジは
そして、ついにサジが破壊した砦の入り口が見えてくる。ラムザ達はこの爆発の中でも待ってくれていたようで、サジの姿を見ると声を掛けてくる。
「サジ! みんな無事だったんだね!」
「ラムザ! なんでまだここで待ってるの!?」
「爆発が聞こえてすぐにゴラグロスについて行った団員がここに押し寄せてきたんだ!」
「おそらく入り口を崩落させて閉じ込めるつもりだったんだろう!!」
サジの疑問にラムザとディリータが答える。どうやら、ラムザ達までサジと一緒に奥に向かっていたら全員この砦と運命を共にすることになっていたらしい。サジは一歩間違えればあり得た惨劇に戦慄した。
爆炎に包まれるジークデン砦より、突入部隊は全員生還する。ジークデン砦攻略作戦は、ここに成功となった。
未だに爆発を続けるジークデン砦を、少し離れた位置から見つめるラムザ達。そこにザルバッグが走ってやってくる。遅れて北天騎士団の数名が走ってくるあたり、ラムザ達が砦から出てくるのを見て居ても立っても居られなったのだろう。
「全員無事かッ!?」
「御覧の通り、皆無事だ。勿論幽霊では無いぞ。 足もちゃんとついているだろう?」
ザルバッグに対して、いつもの調子で答えるエルムドア。それを聞いて脱力するザルバッグだった。…家族に加えて自身より格上の貴族まで死ぬかもしれなかった彼の胃は限界かもしれない。
そんな中、サジが険しい顔を崩さない。もう全てが終わったはずなのにと不思議に思いラムザがサジに問いかける。
「サジ、どうしたんだ? 何か気になることでもあるのかい?」
「ここってほぼ山頂だったよね。あと、砦は崖に面して建設されているとか」
「えっ、うん。確かそうだけど…」
「爆発の振動とか吹き飛ぶ瓦礫が雪崩や土砂崩れを引き起こすかもしれないんだよ」
サジが険しい顔の理由を話すと、ラムザ達は一斉にサジの方を向く。
「…それでは、爆発が収まるまでは山下りしない方が良いのだな?」
「はい。しばらく待ってからイグーロスへ帰還した方が良いでしょう。だけど…」
ザルバッグからの提案を肯定するサジだが、その表情は晴れない。
「山崩れに麓の村などが巻き込まれる可能性があるのだな?」
「……やるしかないか」
そう言うウィーグラフに対して無言で首肯すると、覚悟を決めたように呟いてジークデン砦の方へ歩いていくサジ。
「サジ! 何をする気だ! 砦に近づいたら危険だよ!!」
自身を引き留めるラムザの声も無視してジークデン砦の目の前まで行くと、
「『アーダー*3』」
古い、呪文を唱えた。
ラムザ達からはその呪文は聞こえなかった。だがサジが何をしたのかをすぐに理解する。目の前で爆発し続けていたジークデン砦が、突然炎のドームに包まれた。そして、その炎のドームは輝きを増していき太陽の如き眩しさとなってラムザ達はいよいよ目を開けてはいられなくなる。
そうしてその場に居る全員が目を瞑っていると、ふと目の前から放たれていた熱と光が消える。そして目を開けると、ジークデン砦があった場所には
そのあまりにも現実離れした現象に、ラムザ達は唖然として誰も動けなかった。あたりに積もっていた雪もサジの魔法ですっかり蒸発してしまったようで、今は地肌が見えている。
まるで時が止まったかのような状況の中、サジが崩れ落ちる。
「サジ!!」
それを見てラムザとディリータはサジに駆け寄る。崩れ落ちてうつ伏せになっているサジはどうやらホバークラフトを動かした後に見せた疲労状態よりもさらにひどい状況のようで
「見ての通り動けません…*4」
などと言っていた。
とりあえず、最悪の事態では無いことにほっとしつつ、ラムザとディリータは肩を貸してサジを立たせる。サジはお礼を言うと、エリクサーを取り出してがぶ飲みし始めた。
その様子を見て他の面々も金縛りが解けたかのように動けるようになり、サジの周りに集まってくる。
「サジ、今のは一体…」
「あれは…まぁ、俺の全力です。無理やり魔法の規模を大きくしているので反動も大きいんですよね」
まだ驚愕が抜け切っていないザルバッグが問いかけると、サジはぐったりしながらも答える。
「それにしてもとんでもない魔法だな。まさか砦ごと燃やし尽くしてしまうとは…」
エルムドアもいつもの飄々とした様子は鳴りを潜めていた。それほどまでにサジの魔法は衝撃的だったのだ。
そんな空気の中、サジは砦の方を向いて黙とうを捧げた。そして、
「どうしても必要ならばやるけれども、人に向けて撃っていい魔法じゃないんです。こんなの、人らしい死に方じゃありませんから」
今まで誰も見たことが無い、どこか悲しそうな硬い表情で言うのだった。
「それが、今まで攻撃魔法を使わなかった理由かな?」
「こんなものに慣れてしまっては
エルムドアからの問いかけにも硬い表情のままサジは答える。その様子にラムザは口にしかけた言葉*5を引っ込め、代わりに
「あんまり無理はしないでよ。サジに倒れられたら僕も困るんだから」
と
「あぁ、そうだな。こうやって倒れる度に、サジに肩を貸さないといけなくなるからな」
ディリータもそれを察したようで、
「そうだね。俺はもっとゆるーく生きたいはずなんだけどね。どうして無茶をしてるんだろうねぇ…」
と笑うのだった。
運命はここで、大きく流れを変えた。もう、元の流れには戻らないだろう。
後はエピローグ的な話を投稿して正式にchapter1終了とさせていただきます。
その後は少々の幕間の話を経てchapter2の時間軸に移ります。
原作をカオスルートとするならば、ロウルート(ラムザがベオルブ家から出奔しないルート)を書きたいなと思ったので、拙いながらも二次創作を始めました。
つまり、この先は原作がほとんど使えない(使わないとは言っていない)んですよね…