イヴァリースでどう生きていけるのか   作:かにしぐれ

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幕間 元骸旅団、北天騎士団となる

王都ルザリアにある北天騎士団の詰所にて、元骸旅団の団員が北天騎士団の正式装備に袖を通していた。

 

「まさか、俺がもう一度この鎧を着る事になるとはな…」

 

その元骸旅団の団員の内の一人、ラウルという名の青年は元々は北天騎士団に所属していた騎士だった。だが、自身が所属している部隊の隊長と折り合いが悪く、先の戦争で隊長の作戦行動に異を唱えたことを理由に骸騎士団に左遷されたという過去があった。

 

北天騎士団から骸騎士団へ左遷された騎士はギュスタヴ等、戦地での略奪や強姦などの問題行動が原因の人物も多かった一方で、本人には何も問題が無いが騎士団内部の政治力学によって左遷された人物も少なからず居た。

 

そんな経緯があるものだから、元骸騎士団の団員に貴族嫌いな人が多かったのは必然と言えるだろう。ラウルもその一人だったため、複雑そうな顔をしていた。

 

「なんだラウル、難しい顔をして。…古巣の嫌な事でも思い出したか?」

 

「まぁ、そんなところだ。決して嫌な事ばかりではなかったんだけどな…」

 

元団員(北天騎士団からの左遷組ではない)から話しかけられて、ラウルは曖昧に返答する。北天騎士団時代でも仲が良かった騎士は居た。正確に言えば、隊長とは折り合いが悪くともそれ以外に問題は無く、ラウルは北天騎士団の中では上手くやっていけていたのだ。

 

だからこそ、ラウルは不安だった。かつての同期の騎士は自分を仲間として受け入れてくれるのか、それとも一度は賊に落ちてしまった者として白い目で見られてしまうのか。そのラウルの悩みは数秒後には無駄になることになる。

 

元骸旅団が集められていた控室に、3人の北天騎士団の騎士が入室してくる。まだ自分たちの就任式の時間では無いのに我らが団長であるウィーグラフがザルバッグの下から戻ってくる前に騎士が来たため、ラウルをはじめ骸旅団の団員は訝しんでいた。だが、ラウルが入室してきた騎士が誰なのかに気づくと同時に、その騎士達もラウルに気が付き、

 

「ラウル! やっぱりお前も居たか!」

 

「だから言ったじゃないか。()()()()()()の中にラウルが居ないはずが無いって」

 

「そういうお前もラウルが本当に居るか不安だったからついてきたくせに…」

 

「なにおう!」

 

騒がしくしつつもラウルに声を掛けてきた。

 

「お前ら、どうして…」

 

「どうしても何も、()()()()()の一部が北天騎士団に入るって話を聞いてな」

 

「それで、騎士団に入るってんならラウルが戻ってくるんじゃないかってコイツが飛び出してきちゃったワケよ」

 

「どうせこの後の任命式で顔を合わせるんだから、わざわざ控室に突撃する必要はなかったと思うんだけどな…」

 

その騎士達、真面目そうな騎士と皮肉屋っぽい騎士、ちょっと陰気な騎士の3人はラウルのかつての同期だった。ラウルが骸騎士団に左遷されてからは、元の部隊とは違う戦場に配置されたこともあり顔を合わせる機会が無かったため、数年ぶりの再会だった。

 

「ラウル、お前が無事で、本当によかった…!」

 

「あぁ。俺も色々あったが、案外なんとかなるもんだなと今実感しているよ。だが、お前らは何故ここに? イグーロスの方の部隊だったよな?」

 

「あのクソ隊長殿におかれましては、誉ある転身の先駆けとなろうとしたところで流れ矢に当たって名誉の戦死を遂げられたのさ。それで、その後なんやかんやあってザルバッグ卿の直属の部隊に俺たちは配属されたってワケ」

 

「…さすがにそれは不味いのでは? あの隊長も部下から恨みを買っていたとは思うが」

 

「いやいや、()()()()()じゃないよ。鴎国の連中に囲まれかけた時、我先に逃げようとしたところで相手の矢が刺さっちゃっただけだから…」

 

かつての同期から自分を左遷した隊長のあんまりな最期を聞き、微妙な表情を浮かべるラウル。恨みが無いわけでは無いが、その情けない最期には哀れみにも似た感情しか湧いてこなかった。その後は元骸旅団の団員も交えて他愛もない雑談をしていたが、

 

「そろそろ時間だな。俺たちも戻らねば」

 

「じゃあ、また後でな」

 

「元骸騎士団の人たちも良い人そうで安心したよ…」

 

北天騎士団の3人はそう言うと去っていった。

 

「ラウル、結構慕われてたんじゃないか」

 

ラウルの同期の3人が去った後、骸旅団の元団員はニヤニヤと笑いながら言った。

 

「そうだな。…そうだったんだな」

 

対して、ラウルはそうつぶやくと一度目を瞑り俯いた後、顔を上げる。その表情にはもう、不安の色は見えなかった。

 

「しかし、俺たちは北天騎士団の奴らにはもっと嫌われるかと思ってたんだがな」

 

「王都ルザリアに居る部隊はザルバッグ卿が直接率いているからな。ギュスタヴみたいな不良騎士は居ないというのもあると思うが…」

 

「ギュスタヴか…。俺、今だから言うけれど、あいつの事あんまり好きじゃなかったんだよなぁ」

 

再び雑談を始めた元団員の男たちの会話に、近くで聞いていた女の元団員達も頷く。

 

「確かに、剣の腕はウィーグラフ団長の次くらいには強かったけど、ねぇ?」

 

「私はあの人がとにかく怖かったです…。骸騎士団に志願した友達と一緒に居た時に強引に()()()()事があったので。その時、団長が助けてくれなかったらどうなってたことか…」

 

「あなたは白魔法の才があったから衛生兵としての志願だったわね。か弱い女の子が相手でもギュスタヴの奴はお構いなしだったものね」

 

「アタシらみたいな剣士相手じゃ力で押し倒すのが面倒だからって、力の弱そうな魔道士の娘を狙うなんてホント最低な奴だったわ」

 

先ほどの騎士達の来訪のおかげで緊張がほぐれたのか、あたりが元団員達の会話で騒がしくなる。

 

「ま、ラウルのお友達のおかげで俺らも不安は無くなったわ」

 

そう言ってラウルの肩をたたく同僚に対して、ラウルも

 

「そう思うんだったら、今晩一杯くらい奢ってくれてもいいんだぞ?」

 

と笑いながら返すのだった。

 

 

なお、余談になるがラウルと同期だった騎士たちは退室した後で、元の骸旅団の連中、なんか女の方が多くないかと疑問に思ったとかなんとか。彼らの疑問もその通りで、北天騎士団に合流する元骸旅団は全部で20名となるのだが、その内15名は女性だったりする。

 

その女性比率の多さからラムザの所に正式配属となるまでの間に王都ルザリアの北天騎士団においてちょっとした恋の攻防戦が発生したとかしなかったとかあるのだが、個人のプライバシーの保護のためその話は割愛させていただこう。

 

ただ、涙をのんだ北天騎士団の騎士は多く(涙をのむことにはならなかった者も居る)、ウィーグラフへの一方的な恨みつらみを募らせる者が増えたとだけは報告させていただく。

 

 

 

 

 

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