イヴァリースでどう生きていけるのか   作:かにしぐれ

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幕間2 平穏だった日々

ジークデン砦の決戦から3か月後、ラムザ達は士官アカデミーを無事に卒業した。魔法都市ガリランドに正式に赴任となるまでの約一か月間について卒業生たちには休暇が言い渡されたのだが、イグーロスへ帰郷するラムザやディリータと一緒に何故かサジの姿もそこにあった。

 

当初は、サジは魔法都市ガリランドに残る予定だった。そして、ひと月分の空き時間があることから機工都市ゴーグまで足を延ばそうかと考えていたところ、いつの間にかラムザの手によりイグーロスへ連行されることになっていた。

 

その手際の良さから、サジはイグーロス行の馬車(チョコボ車)の中で呆然としていた*1が、どうでも良い犠牲である。

 

この面子でイグーロスに帰郷となると当然ベオルブ邸へ滞在することになるわけで、サジもベオルブ邸で過ごすことになった。当初は家族水入らずの場所に自分が入るのはおかしいのではと遠慮していたサジだったが、ダイスダーグから家族を救ってくれた恩人に礼をしないのはベオルブの面子に関わると言われたので断るのを諦めたのだった。

 

そうして一週間も経つ頃には、サジもベオルブ邸で過ごすことにも慣れてきた。ラムザやディリータと一緒に領地経営についての知識を学び、イグーロスに居る北天騎士団の訓練に付き合い(に銃を乱射し)、料理の味がいまいち単調だからと自分で料理をつくるなど、そこそこ充実した日々を過ごしていた。

 

また、ある日サジは手持ちのトレジャーハントしたお宝を売ろうとダイスダーグに相談したところ、相談した翌日にその話をどこから聞きつけたのかラーグ公が現れて色々と購入していくといった事件も起きた。

 

聖アジョラの時代か、あるいはもっと前の時代の遺物だったため、サジはいくつかは教会に渡るようにしたいとダイスダーグに相談していたのだがラーグ公がそのほとんどを買い占めてしまったのだ。これにはサジも苦笑いし、ダイスダーグの眉間に皺が寄った。

 

サジが放出した遺物を全てを買い占めようとしていたラーグ公だったが、()()()()()()()()()()()()()渋々いくつかの品物を諦めて教会への寄贈に回すことになった。その際、魔力で動く!光る!音が鳴る!と3拍子揃った軍用飛空艇の小型模型だけは頑として譲らない姿勢を見せていたのが印象的だった。

 

サジが教会へ寄贈しようとした理由は、これからイヴァリースで活動するにあたって教会より異端者認定をされないためだった。身も蓋もない言い方をすれば賄賂である。ダイスダーグはそこまで気を回す必要は無いと考えてはいたが、ベオルブとしても教会と良い関係を築くことはメリットしかないため、サジの提案に乗ることにしたのだった。後に彼の親友のせいで教会への贈り物選びに難航することになったわけだが。

 

なお、サジは教会と()()()()()()()をすることで、教会内に居るルカヴィ*2勢力が自分やラムザに迂闊に手を出せないようにけん制するつもりだった。今後、サジは自分が表舞台で活動するにあたって一番の障害となるのは原作でも歴史の裏で暗躍し続けていた()()()()()()()()()だと考えていた。なぜなら、ルカヴィ達は()()()()()()()()大規模な戦争を起こそうとしているのに対し、サジはできる限り戦争の規模を小さくするために動くつもりだからだ。

 

そうなれば、ルカヴィ達と真っ向から対立する動きを見せる自分を排除しようとするのは明白である。実際、原作でもルカヴィ勢力は自身に従わない勢力を様々な手段で闇に葬ってきていた。その原作でも行使してきた手段の中で、実行されると一番厄介だとサジが考えていたのが、【教会による異端者認定】である。

 

この異端者認定は、原作において主人公のラムザが実際にやられたもので、これのせいでラムザは歴史の表舞台に二度と立てなくなったのである。尤も、原作ではベオルブ家から出奔して傭兵活動をしていたため、教会の勢力に追われる以外特にデメリットが無いように見えていたが、それはあくまでもアンダーグラウンドな世界で活動していたからその程度の影響で済んだ話だ。

 

これが表舞台で活動している身だと教会による異端者認定はとんでもなく重いものになる。なにせ、この時代のイヴァリースにおいて異端者認定は社会的な死を意味するのだ。この方法をルカヴィ勢力に持ち出されるとサジは身動きが取れなくなるだけでなく、ベオルブ家やラーグ公にまで被害が及ぶ可能性が出てくる。

 

しかし、ルカヴィ勢力が教会の力を使おうとする場合は正規の手段に則るしかないという弱点がある。ルカヴィ勢力は教会で一定の権力を持つ者たちではあるがその数は少数、そして教会のトップである教皇はそこに含まれてはいない。

 

つまり、教会と懇ろになっていればルカヴィ勢力が異端者認定を持ち出すことを封じられるのだ。それがサジの狙いだった。もちろん、それでもルカヴィ勢力が教会で異端者認定に反対する人々を排除するという強硬手段を取ってくる可能性もあるが、その時は()()()()を持ち出せばいいとサジは考えていた。尤も、この方法は今後のサジの自由が一切なくなる可能性があるため、できれば切りたくない切り札ではあるのだが。

 

この先の未来を原作から変えるために動いていたサジだったが、イグーロスに居る間に済ませたい用事としてダイスダーグの地雷の解除があった。原作では、父親殺しだけでなく親友殺しもダイスダーグはやってしまう。その動機はベオルブ家を今よりも偉大なものにするためだったらしいのだが、その考えに至った理由が原作でも描写がされていないため、サジは対処が考え付かずに困っていた。

 

現状では、サジの目から見てもラーグ公とダイスダーグの関係は良好だ。ラーグ公の無茶にダイスダーグが振り回されてはいるのだが、二人のやり取りからは長年の信頼がにじみ出ているのだ。だからこそ、何故ダイスダーグがラーグ公を暗殺することにしたのかがわからなかった。ルカヴィ勢力がダイスダーグに接触した時に唆した可能性は大いにあるのだが、それだけでダイスダーグは親友を殺すことを決意するなどサジには考えられなかった。

 

となると、ダイスダーグが闇落ちする根本的な原因は父親であるバルバネスとの関係にある可能性が高いのだが、そうなってしまうと父親殺しは既に起きてしまっているためサジにはどうしようもなくなってしまう。だが何もしなければダイスダーグが原作のようにラーグ公を暗殺し、その果てにルカヴィ化してしまう予感だけは強く感じていたため、サジは毎晩頭を悩ませていた。

 

そんな感じでイグーロスでの生活が3週間目となったある日、サジはラムザとディリータの二人と一緒に天騎士バルバネスの墓参りへ行くことになった。二人の新たな門出の報告をバルバネスにするのが目的だったようだが、サジには別の目的があった。

 

「(バルバネスの墓からモスフングス*3が生えてきてしまったら、原作のような()()()()になるだろう。ならば、ここに埋まっている遺体を魔法で燃やしてしまおうか)」

 

そう、ダイスダーグの父親殺しの証拠隠滅である。ルカヴィ勢力がダイスダーグがバルバネスを毒殺したと確信したのも、おそらくダイスダーグを取り込むのにあたって色々と調査をしていた折にバルバネスの墓からモスフングスが生えていたのを見つけたことが原因だろうとサジは考えた。故に、証拠そのものを消し炭にしてしまえば当面は大丈夫だろうという大胆過ぎる発想だった。

 

そうして、バルバネスの墓までたどり着いたとき、サジは墓のある場所を思わず二度見してしまう。

 

「サジ、どうしたんだい? 急に何もない所を見つめているけれど」

 

「いや、なんでもない。なんでもないよ…」

 

「まさか、バルバネス様が見える…なんて言わないよな?」

 

「ソンナコトアルワケナイヨー」

 

「やめてよね!? サジが言うと冗談に聞こえないんだけどっ!?」

 

「ダイジョウブダイジョウブ。ソンナコトアルワケナイカラダイジョウブダヨ」

 

「じゃあさっきから何で棒読みなんだよっ!?」

 

ラムザやディリータから問い詰められるが、サジは冷や汗をかきながら適当に返すしかできなくなっていた。なぜなら、サジの視線の先にはラムザが年老いたらこうなるかなと思うような姿の老人が居たからだ。そして、どうやらその姿はラムザとディリータには見えていないらしい。

 

これは、もしかして勝手に遺体を燃やそうとしたのを察知して天騎士バルバネスが化けて出たのではとサジは推察し冷や汗が止まらない。ただの墓参りのはずがとんでもない事になってしまうのだった…

*1
俗に言うポルナレフ状態。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ…。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

*2
FF12では闇の異形者と呼ばれる12柱の存在。神の如き力を持ってイヴァリース世界を作ったオキューリアという種族によって、イヴァリースを運営管理するために作られたが、オキューリアに反旗を翻した。光の異形者と呼ばれる存在も12柱存在し、オキューリアは光と闇の併せて24柱の異形者によって世界を管理するつもりだった。なんか番外個体が1柱いるんですよね…

*3
FFTにおいては遺体からしか生えない毒キノコ。原作では色々あった末にバルバネスの墓からこれが生えているのをザルバッグが確認したことから悲劇に繋がった。

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