イヴァリースでどう生きていけるのか   作:かにしぐれ

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さらばオーボンヌ修道院

サジがオーボンヌ修道院の居候となってから、数日が経った。

元々、サジは手持ちのお金も無い状況でお世話になり続けるのは迷惑だろうと翌日には街へ行こうとしていたが、シモンによって()()()()()の検証のためにと引き留められたことでありがたく修道院でお世話になっていた。

 

ただ、毎日シモンが今夢中になっている書物【ゲルモニーク聖典】の検証に付き合わされていたため、それなりに忙しい毎日ではあった。

なにせ、サジが通ってきたという廃都市は【ゲルモニーク聖典】にも書かれている【ミュロンド】という名の都市ではないかということで、シモンは年甲斐もなく知識欲を刺激されて興奮していたのだ。

 

シモンによると、その都市【ミュロンド】はグレバドス教において非常に重要な人物である「聖アジョラ」に所縁のある土地であり、グレバドス教の最大派閥であるミュロンド派の本拠地である聖地ミュロンドとも関係のあるというのである。

 

聖書によれば、昔ミュロンドの王が召喚した魔神を聖アジョラが討伐した話や、聖アジョラの死後に天変地異がミュロンドを襲って現在の小さな島しか残らなかった話などが伝えられているが、【ゲルモニーク聖典】には全く別の話が書かれているとのことで、一体どちらが真実なのかをシモンは検証しているのだと、テンションがぶち上げあそばされている状態でサジに語った。

 

品の良い老司祭様といった雰囲気のシモンの尋常では無い様子にサジは若干引きつつも、シモンの考察と自身が実際に見てきた廃都市の様子を擦り合わせていくこと数日、廃都市は【ミュロンド】でほぼ確定だということと、【ゲルモニーク聖典】の内容も()()真実である可能性が高いとの結論が出た。

 

尤も、【ゲルモニーク聖典】に記されていた()()()()()に関してはシモンは懐疑的であり、サジもその部分に関しては()()()()()を取り続けていたため、実際に起こった説明ができない出来事を()()()()()()だとしたのだろうとシモンは結論づけていた。

 

そして、【ゲルモニーク聖典】の検証にひと段落ついたところで、ようやく落ち着いたシモンは己の罪深さに改めて向き合うこととなった。【ゲルモニーク聖典】の内容が真実だとすれば、聖アジョラはただの一人の野心家だった人間であり、グレバドス教が謳うような聖人ではない。さらに言えば、教えを広めるための聖書の内容も嘘であるということになる。そんな教会の異端審問官として、シモンは数多の異端者を処断してきたのである。

自身の罪、そして教会の罪についてぽつぽつと語り、悩み始めたシモンに対して、サジは言った。

 

「聖書に書かれていた物語が嘘だったとして、一体何が問題となるのか」

 

「宗教において大事なのは、聖書の物語ではなく、()()()()()()()()()()()を語った部分ではないのか」

 

「人としてあるべき姿、()()を広めようとしても、ただ善き人であれというだけでは()()()()()()()()素質のある人にしか届かない。だから()()()()()()がどうしても必要になる」

 

「だから、聖書の物語が本当の事でなかったとしても、伝えようとしたものが()()()()であれば何も問題がないはず」

 

それでもシモンの懺悔は止まらない。グレバドス教は結局のところイヴァリースでの権威を強めるために教えを広めていただけであり、道徳など建前でしかなかったと言う。

だが、サジはそれでも、と言う。

 

「建前だろうと、掲げていたものは間違っていたものじゃない。だったら、建前を本当にしてしまえばいい」

 

その言葉にシモンはハッとして顔を上げると、

 

「まぁ、まずは”汝の隣人を愛せよ”あたりを身の回りの人に実践するくらいでいいと思いますけどね」

 

といたずらっぽく笑うサジと目が合った。

 

神学者シモンの胸の内のに抱えるものは決して消えることはないだろう。しかし、この時に少しだけ軽くなったのもまた事実である・・・といいですね。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「いや~、しかし地上に出て最初に会う人物がまさかシモン先生だとはねぇ」

 

死にそうな目に、いや()()()()が何度か発動したから何度も死ぬ目に遭いながらたどり着いた先がオーボンヌ修道院の地下だとは思わなかったね。

クリスタルグランデ経由で死都ミュロンドに到着してしまったと()()()と遭遇して思い知った時はもう立ち尽くすしか無かったし。

あそこが飛空艇の墓場ですかそうですか。残骸とはいえ飛空艇が見たいとそれっぽい影を見つけて突撃したのが間違いだったんですねわかります。

 

あれだけ長い時間を彷徨ってもお腹も空かないしのども乾かなかったから、知らない間に無限沸きする奴ら*1と同じアンデッドになってしまったかと思ったけれど、オーボンヌ修道院では普通にご飯を食べることができたので一安心だ。

 

もっとも、今の私は()()()となっているのだろうし、普通の人間からは卒業しちゃってるんだろうなぁ・・・

 

まぁ、ただの平和な世界の一般人のままだったら生きていけなかっただろうからヨシッ! ということで、魔法都市ガリランドにまずは向かいましょうか。

シモン先生や修道院に来た商人から聞いた話から今がFFTの原作でいうchapter1の開始前、ちょうどエルムドア侯爵が攫われる前っぽいことがわかったので、ラムザ君を見に行こう。

 

さぁ、日の当たる世界での冒険の始まりだ!

 

*1
クリスタルグランデでよく沸くライフフォビトンのこと。”トン”なのはFF12でもこの標記なので仕方ないですね。

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