イヴァリースでどう生きていけるのか   作:かにしぐれ

5 / 30
魔法都市ガリランド chapter1開始

魔法都市ガリランド。ここは王立魔法院や貴族子弟のための士官アカデミーなどの多数の教育機関がある学術都市である。そのためイヴァリースの中でも治安の良い都市ではあるが、最近世間を騒がせている盗賊集団である【骸旅団】と士官アカデミー生達との戦闘が発生していた。

 

「そこまでだ、骸旅団! おとなしく投降しろ!」

 

士官アカデミー生のリーダーと思われる、長い金髪を束ねた端正な顔立ちの青年が、骸旅団特有の緑の装束を着た集団に呼び掛けていた。

 

「なんだ、ガキどもじゃねぇか! くくッ、ツイてるぜ! いいか、野郎ども。このガキどもを倒せばいいんだ! そうすりゃ逃げることができるぞ!」

 

「気にするこたぁねぇ! 一人残らず殺っちまうぞッ!!」

 

しかし、追手が正規の騎士団ではなくアカデミー生だと知った骸旅団は、彼らを嘲笑うと武器を構え応戦する。

 

しばらくの間、剣戟と断末魔があたりに響き渡ったが、勝利したのはアカデミー生達だった。

ここに居た【骸旅団】の中に、かつて隣国との戦争の第一線で戦っていた【骸騎士団】の構成員が混ざっていたら結果は変わっていただろう。

だが、【骸騎士団】の団長ウィーグラフが【骸旅団】を結成した初期の頃ならともかく、有象無象を取り込んで巨大な組織となってしまった現在の【骸旅団】では、そのほとんどが盗賊崩れの()()()()である。

まだ若いとはいえ、訓練をしているアカデミー生達とならず者の集団では、どちらが敗れるかなど火を見るよりも明らかだろう。

 

当初はアカデミー生を返り討ちにする予定だった骸旅団の一派は、その半数がアカデミー生達に討ち取られたところで逃走を選択する。

 

「クソッ! 苦労知らずのガキどもが! お前ら、逃げるぞ!」

 

その一派を従えていた頭目は、戦況が芳しくないのを見て歯ぎしりしながらも、アカデミー生達にある程度の手傷は負わせたことや裏路地などの知識のアドバンテージを考えれば逃げ切れると判断し、まだ動ける仲間に指示を出す。

 

「待てッ!」

 

アカデミー生のリーダーは逃げ出した骸旅団を追いかけて走り出してしまう。それに気づいた彼の副官である茶髪の青年は彼に叫ぶ。

 

「ラムザ、気をつけろ! むやみに前に出すぎるなよ!」

 

ラムザと呼ばれたアカデミー生のリーダーは、副官の青年に対して叫び返す。

 

「侮るな、ディリータ! 僕だってベオルブ家の一員だッ!!」

 

このやり取りを聞いた骸旅団一派の頭目は、相手がイヴァリースにおいて高名な貴族であるベオルブ家だと知り、食いしばっていた口と拳にさらに力が入る。貴族のガキどもに俺たちの苦しみの何がわかるのかと。

 

 

そんな追走劇を続けていると、この辺りでは見慣れない、だが身綺麗な装いの異国人の青年が頭目の進行方向でこちらを見て固まっていた。これは千載一遇のチャンスだと頭目はその青年に向かって駆け寄ると同時に羽交い絞めにして、首筋にナイフを突きつけた。

 

普通なら見ず知らずの他人を人質に取ったところで意味は無いが、相手は戦闘中に漏れ聞こえてきた会話からして、ぬるま湯につかって育ってきた甘ちゃんの集団である。ならば無関係の民だろうと目の前で人質とされたら、()()()()()()()()という選択などできないだろうと頭目は判断していた。

 

その頭目の予想通り、今まで追ってきたアカデミー生達は足を止めてしまう。ラムザと呼ばれていたリーダーは無関係な人質を解放しろだとか言ってきたが、頭目からすればガリランドの外にあるアジトに撤退するまでこの()()()()()を解放する気など無かった。追手を鈍らせる肉盾として使えるし、身なりからして色々と金になりそうなこの異国の青年はまさに自身に降り注いだ幸運だと、この瞬間まで頭目は考えていた。

 

一方で、ラムザらアカデミー生達は焦っていた。彼らは頭目が甘ちゃんと評したように、この状況において骸旅団を取り逃がして功績を逃すかもしれないということは一切考えておらず、ただ犠牲になってしまいそうな目の前の異国の青年をどう救出するかを考えていた。

 

彼らの教師を務めた騎士達なら、人質ごと骸旅団を攻撃した後に人質に治療を施せば良いだろう(その際に人質が助からなくても仕方がない)という結論になるのだが、まだ若い彼らにはその判断を下せずにいた。

 

緊迫した状況の中で、

 

「あの~、ラムザ・・・さん? 私の事は無視して賊を討った方が良いですよ?」

 

どこか緊張感の無い声でそんなことを言い出す異国の青年に、両陣営は困惑する。人質が助けてと言うのならともかく、無視しろとはいったいどういうことなのかと。

 

「駄目だッ! 僕たちは騎士として民を見捨てるような行動をするわけには・・・ッ!!」

 

そんな申し入れは受け入れられないとラムザは返答するも、副官のディリータからのハンドサインを見てようやく異国の青年の腰にぶら下がっている()()に気づく。そのせいで中途半端なところで言葉が途切れてしまったが、

 

「てめぇ! おとなしく黙ってやがれッてんだ!」

 

骸旅団の頭目も人質が肉盾としても役に立たなくなるかもしれない状況に焦っていたため、幸いにしてラムザの挙動にまで気が回らなかったようだった。

 

 

「あんまり良くないナイフですね。良くない。実に良くない。武器のお手入れ、足りてますか?」

 

「こいつッ! 甞めやがって! 痛い目見ねぇとわからねぇか!」

 

 

何故か挑発を続ける青年だったが、その手は自身の腰にある銃に伸びていた。首を締めあげられ、ナイフを首筋に強く押し当てられている状況でも冷静に反撃しようとしている人質の青年の姿を見て、ラムザ達は落ち着きを取り戻す。

 

 

「ディリータ」

 

「わかってる。彼が仕掛けると同時に動くぞ」

 

 

貴族としての教育の賜物か、あの人質の青年の武器である銃がどのようなものかはラムザもディリータも知っていた。青年が銃を発砲した音を合図に一気に仕掛ける算段を立てていたが、この後予想外の展開が待っていた・・・

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「いや~、先ほどは助かったよ。ありがとう」

 

「いや、僕たちはほとんど何もしてなかったんだけど・・・」

 

「あの場にいた賊は全部アンタが倒してただろう・・・」

 

ところ変わってガリオンヌの士官アカデミー前で、ラムザとディリータは、骸旅団から助けた青年と話していた。もっとも、彼らは青年を()()()かどうかについては大いに疑問があるようだったが。

 

「それって銃・・・だよな? なんか色々変だけど」

 

「あぁ、これは魔法銃だからね。トレジャーハントでゲットした古代の遺物だよ」

 

その原因が、青年自身にあった。あの後、銃を手にした青年は銃口を骸旅団の頭目の脇腹に当てて引き金を引いたのだが、銃の発砲音が響くことはなかった。ただ、一瞬だけ頭目の身体が光った次の瞬間には崩れ落ちるように倒れたため、骸旅団の面々はもちろんのこと、ラムザ達アカデミー生も何が起こったのか分からずに固まってしまっていた。

 

その間に、自由になった青年は次々と骸旅団を撃ち抜き、気が付けば骸旅団は全滅していた。

それからサジと名乗った青年はその場の流れでラムザ達アカデミー生と行動を共にして士官アカデミーまでやってきてしまったのだった。

 

サジはラムザ達を一目見ようとは思っていたがその旅路に参加しようとは考えていなかったため、ラムザやディリータから聞かれたことに対して深く考えずに答えてしまっていた。

 

「古代の遺物!? それって貴重なものじゃないか!」

 

「貴重なものだろうねぇ。使用者の魔力を撃ち出すから弾が要らないし、整備してなくてもご覧の通りだから使い勝手が良くてずっと使っているんだけどね」

 

「便利だからで使い倒すようなものじゃないだろう・・・」

 

「まさか、他にも貴重な物を持ったりするんじゃ・・・」

 

「いくつかはドーターで売って路銀にしたねぇ」

 

「売ったの!?」

 

「ラムザ、こいつは多分そういうのに無頓着な奴だ。諦めろ」

 

いちいち大きなリアクションを取ってくれるラムザの相手をするのが楽しくなってきたのもあり、サジは日が暮れてくるまでラムザやディリータと話し込んでしまった。そして翌日。

 

 

「なんで俺はここに居るんだろうねぇ・・・」

 

「なんでって、君もイグーロスまで行くのなら僕たちも帰るところだったから丁度いいって昨日話したじゃないか」

 

「それはそうなんだけど、なんか俺まで北天騎士団みたいじゃない?」

 

元々イグーロスへ帰還予定だったアカデミー生達の一行の中に、サジの姿があった。

 

「安心しろサジ。お前みたいな恰好の騎士なんていないから、間違われることはないさ」

 

「むしろ、護衛されている商人? とかに見えるだろうね」

 

「そこで商人に疑問形が入るのはなーぜなぜ。いや、俺は旅人だから別にいいんだけどね?」

 

昨日の骸旅団の一件以降、何故かラムザ達と打ち解けてしまったために同行が決まってしまったサジ。

どうしてこうなったと内心思いつつ、このまま行けるところまで同行するのも一興かと思い直してイグーロスまで進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。