目の前でのラムザ達
ベオルブ家は身内にかなり優しいというか甘いのである。あの親友で幼馴染のラーグ公を正面から暗殺したダイスダーグ卿ですら、出奔したラムザにお目付け役のガフガリオンを用意しており、ギリギリまでベオルブ家に帰ってくるのなら全てを不問にしようとしていたし、chapter4でザルバッグ卿が謀反を起こした時も北天騎士団への命令は「ザルバッグが乱心したので捕らえろ」で「殺せ」とは言わなかったあたり、これはもうそういう血筋なのだと思われる。(尤も、ダイスダーグ卿は父親である天騎士バルバネスを暗殺しているのではあるが)
サジとしてはアルガスと共に中庭の木に扮していたかったが、ここでもラムザによってザルバッグ卿に紹介されてしまったので、仕方がなく挨拶をする羽目になった。その流れでアルガスも紹介されていたが、彼としては本来なら会うことも難しかったであろう人との繋がりを得られたので緊張しつつも高揚している様子だった。
その後、ザルバッグ卿がこれから盗賊討伐だからとこの場を去ろうとしたところで一度足を止め、
「…骸旅団から身代金の要求があった」
とラムザに声をかけた。
その言葉に、今まで静かにしていたアルガスも思わず「何だって!?」と聞き返してまうが、ザルバッグ卿はそのまま言葉を続けた。
「…どうも腑に落ちないことがある。骸旅団は反貴族を掲げるアナーキストだが、貴族やそれに仕える者たち以外には手を出さない義賊だという。そんなやつらが金目当てで侯爵殿を誘拐したとは考えにくいな」
「ばかな! やつらはただのならず者だ!」
「・・・どうして、そう思われるのですか?」
骸旅団に同僚を皆殺しにされているアルガスは、ともすれば骸旅団に対して肯定的とも取れるザルバッグ卿の言葉に激昂していたが、サジは何故ザルバッグ卿がそう考えたのかを問いかけた。
「情報収集のために放った“草”の一人が定期連絡の時間を過ぎても戻ってこない。大事に巻き込まれたと考えられるが“草”ごときに捜索隊を出す必要はないと重臣の方々はおっしゃるのだ」
「どこで消息を絶ったんですか?」
ラムザもサジに続いてザルバッグ卿に問いかけると、
「ガリオンヌの東、ドーターという名の貿易都市だ」
とあっさりと場所を教えるザルバッグ卿はそれに続けて
「…城の警護なんぞ、退屈だぞ。そう思わんか?」
とニヤリと笑いながら言うと、今度こそ盗賊討伐に向けて出発するのだった。
その言葉を受けてさっそくドーターへと出発しようと動き始めるラムザ達を見ながらサジは、このザルバッグ卿の
(ま、どっちでもいいか。どのみちドーターへ行くのは確定事項だしね)
「さぁ、行こうぜ、サジ、アルガス」
「うぇーい」
「なんだその気が抜ける返事は! もう少しシャキッとしろ!」
「アルガスは肩に力が入りすぎなんだよ。今からそんなんじゃ持たないよ?」
「サジとアルガスを足して割れば丁度よさそうだがな。ほら、行くぞ」
まったくお前はとか騒がしく去っていくディリータ達3人と、その様子をクスクスと笑いながらついていくティータ。その後ろでは、ラムザとアルマが何やら会話をしていたようだったが、そこに自分が踏み入るのもおかしいのでスルーをサジは決め込んでいた。だが、ディリータの横で笑っているティータについて、何か自分ができる事はないかと考え、
「あ、そうそうティータちゃんや」
「? 何でしょうか、サジさん」
「お嬢さんにはこれをあげよう」
そう言うと腰のポーチからエアロガの魔片とバニシガの魔片を取り出してティータに渡した。
「綺麗…。これは?」
「ささやかなお守りだよ。片方は後でアルマちゃんに渡しておいてね」
「いいのか? 俺はあまりこういう物には詳しくは無いけど、これって高価なものだったりしないか?」
「いいのいいの。まだいっぱいあるから貰っておいてよ。返品は受け付けないのでよろしくぅ!」
そんなやり取りをする兄のディリータとサジをティータは交互に見ていたが、
「…わかった。じゃあありがたく頂いておくよ」
とディリータが頷いたので、結局受け取ることにしたようだった。
「ありがとうございます。サジさん」
「どういたしまして。もし大変なことになったら、そのキラキラした石を持って祈ると、何かいいことがあるかも?」
「いい事って、何でそんな適当なんだよ」
「それはその時のお楽しみってね。安全性は確認してるから安心してね」
そう言ってバチコーンとウィンクをかますサジにため息をつくディリータ。それを尻目にサジは、
(これで少しは運命を変えられるといいんだけど)
などと考えているのだった。
コラプス(FF12最高威力の魔法)の魔片じゃないからヨシッ!の精神で渡してます。
どうしてケアルラの魔片にしなかったんですか・・・?