異世界転生したけど中堅冒険者してるだけ   作:わさび醤油1910

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人生初小説です


第1話

俺は死んだ。

 

そして、生まれ変わった。

 

魔法やダンジョンが存在する世界に。

 

俺は異世界転生したんだ。

 

異世界転生———死んだあと、前世の記憶を保ったまま、別の世界で生まれ変わること。

 

ライトノベルではお馴染みの展開。

 

ライトノベルの主人公たちは、異世界転生したあと、圧倒的な力で敵を蹴散らす。

 

俺はその光景に憧れていた。

 

異世界転生したいま、その憧れは実現するかもしれない……

 

いや、実現してみせようじゃあないか!!

 

俺の人生の目標は、俺TUEEEすることだ!!

 

***

 

俺TUEEEするために、子供のころから魔法と剣の訓練をはじめた。

 

俺が魔法をつかうと、両親は

 

「シューは天才だ!」

 

と褒めてくれた。

 

ちなみにシューとは、今世での俺の名前である。

 

両親は聖職者で、ちいさな教会を運営していた。

 

教会には子供たちがよくあつまる。

 

俺はその子供たちと遊ぶのが日課だった。

 

俺が魔法で手から水を噴射してみせると、子供たちは

 

「すげーーッ!!」

 

と叫びながら水につっこんでいった。

 

そして俺に尊敬のまなざしをむける。

 

「もしかしてシューちゃんって神?」

 

「まぁ……それほどでも、あるかな?」

 

もっと言え、照れるぞ。

 

子供たちからは尊敬のまなざしをあつめ、大人たちからは天才といわれる———

 

理想の毎日が続いていた。

 

だから、俺は天狗になっていた。

 

でも、そのながい鼻はおもいっきりへし折られることになる。

 

ある日、いつものように子供たちに魔法で水シャワーをあびせていたときのこと。

 

ひとりの少女がはなしかけてきた。

 

「そのまほーのやりかたおしえて」

 

はじめて出会う少女だった。

 

「いいよ。でもすぐにできるようになるものじゃないぜ? 何日か練習しないとな」

 

「わかった、おしえて」

 

魔法は一朝一夕で習得できるものではない。

 

何日も練習しなければいけないのだ。

 

俺だってこの水魔法を習得するのに1週間かかった。

 

だから、この少女もすぐに魔法をつかえるようにはならない———

 

そう思っていたのだが……

 

「———っていう感じで魔法をつかうんだ。最初は難しいかもしれないけど、だんだんできるように———」

 

「できた」

 

「ッ!?」

 

つぎの瞬間、俺は川のなかにいた。

 

いや、ちがう。

 

少女がうみだした大量の水に押し流されているのだ。

 

(なんちゅー魔法の威力だッ!?)

 

しばらくして水はやんだ。

 

俺は地面に尻餅をついていた。

 

あたりを見渡す。

 

だいぶ流されたみたいだ。

 

遠くはなれたところに少女がみえる。

 

少女は満足げにほほえんでいた。

 

俺は立ち上がり、少女のもとへもどる。

 

「おまえ、本当に魔法つかうのはじめてなのか?」

 

「うん」

 

「マジかぁ……」

 

「ほかのまほーも、おしえて」

 

「まあいいけど……てかお前、名前は?」

 

「マーリン」

 

「マーリンか。俺はシューだ、よろしく」

 

「ん」

 

「マーリンの魔法でおぼれるところだったぜ……」

 

「ごめんなさい」

 

その日から、マーリンはよく教会に来るようになった。

 

そのたびに魔法を教えた。

 

すると、マーリンは即座に習得し、俺以上の威力で発動するのだった。

 

ある日、ある子供が

 

「マーリンの魔法にくらべると、シューの魔法ってふつーだな」

 

とつぶやいた。

 

その言葉は俺を悲しくさせた。

 

くそぅ……くそぅ……!!

 

こんな天才がこの世界には存在するのか……

 

俺、本当に俺TUEEEできるのか?

 

ちょっと自信なくなってきた……

 

***

 

ライトノベルで異世界転生した主人公は、冒険者になって活躍するのが鉄板だ。

 

その活躍に俺は憧れていた。

 

だから、俺は14歳のときに故郷をはなれ、首都に移住。

 

そして、冒険者をはじめた。

 

現在は18歳。

 

冒険者の仕事にも慣れてきたところだ。

 

この世界にはダンジョンがある。

 

ダンジョンにはお宝が眠っているが、同時にモンスターがはびこっている。

 

ダンジョンを探索して、モンスターを倒し、お宝を持ち帰るのが冒険者の仕事だ。

 

そして、ダンジョンの管理や、冒険者の仕事の斡旋などをおこなう組織が冒険者ギルドである。

 

冒険者ギルドの建物は、首都の中央に位置しており、ヨーロッパの宮殿のような外見をしている。

 

建物の内部に足をふみいれると、広大な空間が広がっており、天井を見上げると豪奢なシャンデリアがいくつも吊り下げられていた。

 

そして無数の冒険者たちが行き交い、熱気が充満している。

 

部屋の奥にはカウンターが一列に並んでおり、冒険者たちが長蛇の列をなしていた。

 

まるで空港のチェックインカウンターのようだ。

 

俺もその列に並んでいた。

 

そして、俺の横には筋骨隆々のおじさんが一緒に並んでいる。

 

このおじさんは、俺の冒険者仲間だ。

 

今日はおじさんと一緒にダンジョンを探索する。

 

俺はおじさんに話しかける。

 

「今日はダンジョン探索のあと酒場に行こうぜ」

 

「ええのぉ。おじさんはビールをたんと飲みたいのぉ」

 

おじさんは俺が冒険者になったばかりのころに出会い、冒険者の基礎技術を教えてくれたひとだ。

 

それから仲良くなり、いまでは同じアパートの同じ部屋に住んでいる。

 

いわゆるルームシェアだ。

 

やがて列が進み、俺とおじさんの番になる。

 

カウンターにいるギルド職員にダンジョンの入場手続きをしてもらう。

 

その後、職員の案内によってギルドの奥深くにある部屋に連れて行かれた。

 

部屋の中央には巨大な門が設置されており、その表面には複雑な魔法陣が刻み込まれている。

 

職員が手を触れると、魔法陣がほのかに光を放ち、門の向こうに地下通路があらわれた。

 

この門は、ダンジョンと冒険者ギルドを繋ぐ転移装置なのだ。

 

俺とおじさんは門をくぐり、ダンジョンにはいった。

 

ダンジョンは地下にある古代遺跡のような構造をしていた。

 

壁はところどころひび割れている。

 

柱がいくつもたちならび、天井を支えていた。

 

カタカタカタ!!

 

通路を進むと、骨が擦れる音が聞こえてきた。

 

やがて、闇のなかから骸骨のモンスター『スケルトン』が3体あらわれる。

 

3体のスケルトンはそれぞれ、女子制服の制服、きわどい水着、短いスカートを履いていた。

 

でも、骨だけの姿であるため、それらはぶかぶかでほとんどずれ落ちていた。

 

俺とおじさんは協力しながらモンスターを倒す。

 

そのあとも何度かスケルトンがあらわれたが、問題なく倒していく。

 

それにしても———

 

「このダンジョンのスケルトンって、なんで女物の服ばっか着てるんだ?」

 

「そういうテーマのダンジョンなんじゃろ」

 

ダンジョンは、なんらかのテーマにもとづいて作られる。

 

たとえば、城をテーマにしたダンジョンでは、兵士のようなモンスターが出現し、王冠などの宝物が置かれている。

 

では、このダンジョンは一体、どんなテーマを元に作られているのだろう。

 

それはまだよくわからない。

 

さらに奥へ進むと、学校の化学室のような部屋を見つけた。

 

長方形の机がならび、その上にさまざまな道具が置かれている。

 

「おー、金目のものありそうじゃん」

 

「そうだのぉ。楽しみじゃ」

 

部屋にモンスターがいないことを確認したあと、俺たちはアイテムの回収をはじめた。

 

しばらくして、俺は机の上に置かれた小瓶をみつける。

 

(ん? なんだこれ)

 

小瓶にはハートマークの装飾がほどこされており、なかには赤い液体がはいっていた。

 

(持ち帰ったあと詳しく調べるとするか)

 

俺はハートの小瓶をリュックにしまい、探検を続けた———

 

***

 

ダンジョンからもどったあと、俺とおじさんは酒場に来ていた。

 

俺はフルーツジュースがはいったジョッキを片手に、ぼやくようにつぶやく。

 

「なんか、俺って冒険者として活躍できてない気がするんだよなぁ」

 

すると横に座っているおじさんがのんびりと答えた。

 

「そんなことないべ。シューくんはもうB級冒険者だ。活躍してるど」

 

冒険者はC級、B級、A級、S級の4つの等級にわけられる。

 

現在の俺の等級であるB級は、冒険者としての基礎的な技術をみにつけた者にあたえられる。

 

B級にあがるには8年ほどかかるといわれている。

 

でも、俺はわずか4年でB級にあがることができた。

 

子供のころから魔法や剣などの訓練をしたおかげである。

 

それは誇れる実績のはずなのだが———

 

「でもマーリンはA級冒険者だぜ?」

 

俺が首都へ上京したとき、マーリンも一緒に上京した。

 

マーリンは俺と同時期に冒険者になり、その後、いくつもの難関ダンジョンの攻略。

 

またたくまにA級冒険者に昇級。

 

しかも、国の魔法研究の中心地といわれているマホロ魔法学院に入学し、優秀な研究成果をあげた。

 

国の未来を担う逸材として注目を集めている。

 

俺はため息とともにぼやく。

 

「なんだか夢が遠のいている気がするぜ……」

 

圧倒的な力で敵を蹴散らし、みんなから尊敬と羨望のまなざしをあつめる———

 

転生直後に決めたはずの人生の目標。

 

それが最近は揺らぎつつある。

 

自分の近くにマーリンというチート能力を持った人物がいて自信喪失したのもある。

 

いまの中堅冒険者としての生活に満足感を覚えている自分もいるのだ。

 

横から「すぅー、すぅー」と静かな寝息が聞こえた。

 

横を見ると、おじさんが頭をうつむけて寝ていた。

 

(俺も眠くなってきたな……)

 

俺はフルーツジュースを飲み干すと、おっさんを背負って帰途に着いた。

 

***

 

アパートに到着すると、おっさんをベッドに寝かせてやる。

 

「ふんがぁ」と寝言を呟いているが気にしない。

 

俺はテーブルの上にリュックをおいて、今日のダンジョンの戦利品を整理しはじめた。

 

ハートの模様がはいった小瓶を手に持つ。

 

中で赤い液体がゆれた。

 

回復のポーションも、赤い色の液体だ。

 

これも回復のポーションなのかな?

 

そんなことを考えていると、不意に大きなあくびがでた。

 

(眠さが限界だ……)

 

気づけば、まぶたがずっしりと重い。

 

(整理は明日やろう……)

 

俺はハートの小瓶を机のうえに置いたあと、ベッドにいった。

 

布団にくるまり、今日のダンジョン探索を思い返す。

 

(今日のダンジョン探索も楽しかったな)

 

そんなことをぼんやりと思いながら、俺は泥のように眠りに落ちた。

 

***

 

翌朝。

 

俺は誰かに体を揺さぶられて目を覚ました。

 

「うー……まだねむい……」

 

抵抗を試みるが

 

「起きるべッ!! 大変だなことがおきたべッ!!」

 

と耳元で叫ばれ、無理やりおこされる。

 

ちょっと不機嫌になりながら、仕方なく目を開ける。

 

すると、そこにはかわいい少女がいた。

 

…………いや、誰さん??

 

この部屋には、俺とおじさんしか住んでいない。

 

このかわいい少女はいったい誰だ。

 

「えーと……どちら様ですか?」

 

「わしはおじさんだべ!!」

 

「え?」

 

「朝起きたらこんな姿になってたんだべ!!」

 

おじさんはことの顛末を説明する。

 

どうやら、おじさんは二日酔で朝目覚めたときには体調が最悪だったらしい。

 

そこで回復のポーションを飲もうとして、テーブルの上に置いてあったポーションを飲んだ。

 

しかし、それは回復のポーションではなく、昨日のダンジョン探索で見つけたハートの小瓶だったのだ。

 

結果。

 

おじさんはかわいい少女になった。

 

ぶかぶかの服を着た少女が

 

「どうすればいいんだべぇ? どうすればいいんだべぇ??」

 

とあたふたしていた。

 

俺はハートマークの模様のある小瓶をもって

 

「……とりあえず、これの正体を調べよう」

 

と答えるのだった。




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