士郎、アーチャー短編   作:晃晃

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凜との最後の会話を書きたくてつい、書きました。いやあ、つい最近までずっとFGOやっておりまして、小説書くのが億劫なんよ。ダメな作者ですw許してくだせぇ


追憶2

「士郎!なんでまたここに来たのよ!」

 

遠坂の家の前まで来てしまった。門は固く閉じられていた。本人が今家の中にいるのか、それとも庭にいるのかはっきりしなかった。ただ彼女の怒りだけはこの門前でも感じることができた。

 

 

凜がマジ切れしている。もう、俺には言い返す余地もない。なんでまた凜に会いに来たかというと、俺には勇気が無かった。そう、勇気が。

 

「いや、その、遠坂の顔が見たくなって…」

 

これで通用するだろうか?遠坂と別れてもう半年は経っていた。ロンドンの時計塔へ行くと噂で聞いていたのだが、まだ家に残っている。

 

「おーい、遠坂無視するなよ。もちろん要件はあるって。そういえば、遠坂ってさ時計塔に行くんじゃなかったのか?」

 

 

シーーンと沈黙が続く。これはまた無視か。最後くらい遠坂と話をしておきたかった。

 

「明日にさ、海外へ行くんだ。でもまだその覚悟が決まらないと言うか、腹をくくる勇気がないんだ。」

 

もう無理だったか。俺が遠坂に会えるなど高望みに過ぎなかった。けど、一度くらい顔は見たかった。そう心に言い聞かせ、家から離れる。夕暮れの夕焼けが寂しく見えた。

 

「遠坂、」とこぼしたとき、

 

ありもしない聞きなれた彼女の声が聞こえた。

 

「士郎!待ちなさい。」

 

 

 

振り向くと、涙ぐんだ彼女が門前に立っていた。袖は濡れていて、先の話で泣いていたのだろうか?

 

「遠坂、、泣いてる、か??」

 

こぼれた大粒の涙があふれる。視線を感じたのか、彼女は涙を見せないように後ろを向き、

 

「泣いてなんか、泣いてなんか...」

 

彼女は口ごもるように言う。

 

「とお、さか?」

 

「泣いてなんかない!」

 

さっきの涙とは裏腹にそれを書き消すかのように、叫ぶ。夕日の光が門に差し込み、遠坂を照らす。どうやら涙をすべてふき取ったようだ。

 

すぐに彼女に門を開けられ、俺は引っ張られ、

 

「ちょ、遠坂、襟引っ張るな!痛い!」

 

「少しは黙りなさい!へっぽこ士郎。」

 

先の涙はどこへ行ったのか。俺は強引に屋敷へと連れられた。

 

 

 

「で、遠坂はどうしてまだ冬木にいるんだ?」

 

屋敷の中は、以前よりもかなり整理されている。やっぱり時計塔に行く準備なのだろう。積まれた段ボールの隙間から、埃を被った写真立てが顔を出していた。

 

「時計塔に行くのは延期になったのよ。時計塔でちょっといざこざがあってね。それで今は冬木にいたほうが安全ってことよ。」

 

時計塔のことはよく分からないが、遠坂が言うならそうなのだろう。席に着いた。いつもの紅茶が出されることもなかった。

 

部屋は少し埃っぽく、遠坂が普段使っていない場所。窓から夕日がさしこみ、どこかこの部屋のなつかしさがある。

 

「あ、あの写真って真ん中にいるのが遠坂か?」

 

遠坂家の家族写真。俺は、確か聖杯戦争の最初、遠坂の家に来た時に初めて見たやつか。もう、あれから三年もあったのか。

 

と、風化していく思い出に浸っていた。あの時は、遠坂と一応共闘だったんだよな。

 

「遠坂は、聖杯戦争が終わって何か変わったこととかあるか?」

 

先程からこちらが質問ばかりしている。遠坂は後ろにうつむき、椅子にもたれている。返事はない。俺はそんなに嫌われていたのか。もう嫌われてると自覚しても意味はない。彼女は俺という人間が理解できない、真っ当な人なんだから。

 

「なんでこんなに私が怒っているか分かる?」

 

彼女は小さくつぶやいた。少し嫌な予感がした。これって、ずっと説教かなにかが続くんじゃないか?

 

「遠坂はさ。俺の目指している夢、覚えてるか?」

 

「はい、そこ。質問を質問で返さない!」

 

「うっ…」

 

火に油を注いでしまったらしい。素直に応えればよかった――そう、心の底から思う。

 

「士郎、そういうところよ!」

 

遠坂の声が震えている。怒っているのに、どこか悲しげで――いや、それだけじゃない。

 

「頭にきた! もっと自分を大事にできないの? ずっと昔から言ってるじゃない!!」

 

言葉の勢いに、俺は息を呑んだ。確かに彼女はずっとそう言っていた。でも、なぜ今なんだ? なぜこんなにも感情を露わにする?

 

「士郎、もっと反省なさい!」

 

鋭く突き刺すような言葉。でもその向こうに、かすかな震えがあった。

怒りだけじゃない。きっと何かが引っかかっている。

 

……俺は遠坂のように、自分の光で人生を楽しんでいるわけじゃない。他人の幸せを願い続けた。それは間違っていないはずだ。だけど、俺はずっと彼女と何かがかみ合っていなかった。

 

もし、もっと彼女のことを知っていれば――

こんなふうに、彼女を怒らせることはなかったのかもしれない。

 

 

 

結局、その言われようで15分くらい一方的なお説教(感情)をぶちまけられてしまった。

 

「なあ、もう本題を話していいか?」

 

「ええ、言えるだけ言ったからどうぞ。」

 

ちょっと、息を付くかのように俺のターンが来る。そう、今日ここに来たのは確かに紛争地帯に行く前に遠坂に会いたかったのもあるが、何よりもその勇気、いや誰かに話し手おかないと俺の気が済まないと思ったからだ。俺は唾を飲み込んだ。

 

さっきの説教から一変し、遠坂家当主として堂々と座っていた。外はもう少しずつ暗くなって、部屋の明かりもすこし欲しくなってきたところ。

 

俺は大きく息を吸い込み、これからのことを話す。

 

「さっきも言ったように、俺は紛争地帯に行ってくる。今、そこでは戦闘が激しくなってる。多分、俺はここで動かないとどうにかしそうだ。それをしっかりと伝えに来たんだ。」

 

以外にも沈黙だった。そして、テーブルにあった紅茶を一口、彼女は落ち着きを取り戻すかのように、

 

「もう止めないわよ。士郎がそんなやつってのはもう分かってるし。ここで止めても、止まらない。でしょ、士郎?」

 

あっさりと。しかも、「止めはしない」と彼女に言われた。俺はてっきり猛反対を食らうかと思った。はーっとさっきまでの緊張感をため息ととめに出した。

 

「遠坂、止めないんだな。それは意外だった。もう少し説得がいるのかと焦ってたけど、少し拍子抜けだな。」

 

「士郎のことだもの、まだ本当にあなたのことが理解できたわけじゃないけど、最後くらいはせめて向き合わないとね。」

 

 

彼女は少し安堵の顔を浮かべて、もう一口紅茶を口に含む。しかし最後くらい俺に紅茶が出れていないのは、気がかりだった。

 

「ありがとう。遠坂、あっちでも頑張ってくる。」

 

「礼を言われるほどでもないわ。それに私は別に士郎の側に居れるわけじゃないから。」

 

安堵から、少し哀しそうなそんな表情だった。やはり寂しい、か。もっと遠坂と過ごせていたらどんな日々だっただろうと、感傷に浸る。そしてどれだけの時間かは分からないが、沈黙とそれを挟むかのように最後の会話が交わされる。

 

日が沈み、いつしか暗くなったころ、俺は遠坂の門を出ようとしていた。俺は赤いペンダントを握りしめこの場を去った。もう心残りは、ある。けれど、それに縛られるわけにはいかない。そしてそれは時間と共に風化する。彼女は今泣いているのかもしれない。けれど、俺自身を曲げることは許されない。ようやく、俺の理想が本当の意味で成就されるというのに。

 

「達者でな、凜。」

 

ゆっくりと足を進め、心の中で今までの後悔と決別する。

今朝、桜と藤ねぇに手紙を残しておいた。この二人には合わせる顔が無かった。藤ねぇは意地でも止めるだろうし、桜はどうするか見当もつかない。合うとここで自分の信念が薄まるかと思ったからだ。

 

俺は駅まで歩き、心の中で今まで大事でお世話になった人たちに最後の別れを告げた。




今思ったけど、士郎がちょっと凜を泣かせすぎなんだよなー
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