~No.431 Alt “one more”~
ワンフォーオールは完遂した。
オールフォーワンは既にない。
そして、僕の中にある残り火も……。
僕らは雄英を卒業。
早いもので月日は経って、僕は雄英の教師になった。
無個性に戻ってしまったけれど、次に繋ぐことはきっとできるから。
幼馴染の爆豪勝己——かっちゃんが方々に声を掛けてカンパを募り、僕のアーマーを作ってくれて。それをみんなからプレゼントされた時は嬉しかった。嬉しさが過ぎて、他に言葉が出ないぐらいに。今度は彼が差し伸べてくれた手を取って。
教師とヒーローの掛け持ち。恩師である相澤先生——イレイザーヘッドと同じ在り方ができるようになったことは、ある種の恩返しになるだろうか。
轟焦凍くん。今はエアコンヒーロー ショートとして活躍する学生時代からの友達であり仲間。彼がヒーロービルボードチャートJPでNo.2にランクアップした記念と銘打って、元A組のみんなが集まった同窓会。
それぞれが多忙を極め、中々一同に会する機会が得られなかった僕らが、久しぶりに全員揃い賑やかで楽しい時を過ごした。
……まぁ、ヴィラン発生の報告でみんな同時に飛び出したものだからそこで会はお開きにはなってしまったけれど。
それでも、またみんなでヒーロー活動ができたのはかけがえのない時間になった。
解散となった別れ際。「またな」かっちゃんからそう言ってくれる日が来るだなんて、中学生の自分に教えたら果たしてどんなリアクションをするだろうか。
明日からまた、みんなはそれぞれの日常に。それぞれの今に向かって歩き出す。だけど僕には——
(まだ、やらなきゃいけないことがある)
その為 僕は駆け出した。
夜を彩るネオンの下。喧騒の間をすり抜け駆ける。
今日やっと気が付いた。いや。本当はきっと。ずっと心に持っていたとても大切なこと。
まだカタチに出来ていない温かなソレを彼女に伝えるために駆ける。
そして彼女の姿を捉えて。
果たして偶然か、彼女はこちらを不意に振り返った。
自然、顔が綻ぶのを感じる。
「よかった!いた!」
“皆 特別”は誰も特別じゃない。
今日送迎してくれたかっちゃんが車の中で僕に言った事。
(あぁ、ホント。僕はクソナードのままだ)
言われてはじめて自覚した。
たしかに僕は——
「皆 尊敬してて。皆 特別で。好きなんだって」
皆は僕にないものを生まれつき持っていた。
僕のスタートライン、遥か前方に居た。
そんなすごい皆は、僕なんかにも優しくしてくれて。
「ずっと、そういうものだって思ってた」
だけど皆 そんな事、歯牙にもかけずに努力して。
傷付いて。励まし合って。助け合った。
「ンだけど……!今日……なんか」
皆 特別で。皆が好き。
だけどそれよりも別な。
緑谷出久としての特別を——
「麗日さんともっと、話したいって思った」
真っ直ぐに、彼女の大きくて綺麗なまんまるの目を見つめて伝える。
「これからも——もっと」
カタチのないこの特別に、名前を、輪郭を。
心の奥底で、確かな産声をあげた、この熱を。
「君と——……」
——パ キ リ
宙に、孔が空いた。
なんだ、これは。
身体が、意識が。
だれだ。僕を引っ張っている人は。
アーマーを展開するより早く。その抗えないほどのチカラに僕は引き寄せられる。
「ッ!デクくん!!」
僕の名を叫んで手を伸ばす麗日さん。けれど間に合わないことはなんとなく分かった。
そんな意識の中で僕は思い出した。
——ああ、そうだ。この名前は……
君のおかげで特別になったんだ。
「ありがとう。麗日さん」
伸ばされた手を掴めなかった僕は、そう言い遺して。
僕の記憶はそこで闇に沈んでいった。
* *
——拝啓、母さん。並び元A組の皆様に恩師たるヒーローその他の皆様。
お元気でしょうか。
きっと、急に居なくなった僕を心配していることかと思います。特に、目の前で居なくなってしまった麗日さんにおきましては、輪をかけて心配をさせてしまっているだろうこと、まこと慚愧の念に堪えません。
さて、そんな緑谷出久が今現在どうしているかというと……
「イズクくん!イズクくん!!ほら、ひよこさん達ですよ!カァイイねぇ!!」
「待って。待てコラ、ステイ!腕を引っ張るんじゃないよイタタタ、待てだよ、ヒミコちゃん」
かつてヴィランとして。林間合宿から最終決戦まで対峙した、トガヒミコ こと ヒミコちゃんの飼い主、もとい幼馴染をやっています。
いやホント、どうしてこうなった。
~Re:No.000 緑谷出久:バニシング~
「この火は、繋がる心と心が灯す——人の輝きだ」
続いたら奇跡