僕のヒーローヒストリア   作:透亜九郎

14 / 18
13話です!

よろしく!おねがい!します!

ラブコメと戦闘シーンが拙い!!!


Re:No.013 戦局を変える熱

 

 その真紅の騎士は、赤熱する殺意を轟音と共に受け止めた。

 

 能無の剛力を真正面から受けたにも関わらず、掲げた左の盾は欠けることなく、騎士は揺らがずただそこに在った。

 右に携えた長剣がゆらりと閃く。能無は危険を感じたのか身を翻そうとするも既に遅く。先程まで死をばら撒いていた銃身はするりと両断されていた。

 

「Ga……?!」

 

 感情があるのか定かではない能無であったが、確かにその瞬間困惑するような唸りを鳴らした。

 その隙を突くように騎士は能無の刃を盾でかちあげ、空いた胸に足を踏み込ませて蹴り飛ばした。巨体はわずかに残っていた教室の壁をぶち抜き隣の教室へと吹き飛んだ。

 

 悠然と佇む真紅の騎士。

 出久の滲んだ視界の中にその姿がやけにはっきりと映った。

 

「こうするのは二回目ですね」

 

 聞こえたのは女の声。聞き慣れた、日常の声。

 

「ひ、みこちゃん……?」

 

 出久の弱々しい声が彼女の名を呼ぶ。

 それをきっかけに真紅は溶けて、甲冑の中からは見慣れた被身子の姿が現れた。

 彼女の周囲には溶けた鎧だった真紅が漂っている。それは彼女の両手首から流れ、繋がっていた。

 

「はい、貴方の被身子です。なぁんて」

 

 おどけた風に舌を出してはにかむ彼女。

 

「なんで」

 

 出久の口から漏れたそのたったひとことには様々な感情がぐちゃぐちゃに混ざる。今にも泣き出しそうな表情(かお)をして出久は被身子に言う。

 

「僕は、君を結局巻き込んで。遠ざけようと、守ろうと……。もう失いたくないのに、だから……っ。皆も守れなかった、さっきまで僕を気にかけてくれていた友達だって……。僕が、僕のせいで。僕が彼らを、皆を殺し——」

 

 途中から譫言のように言葉を並べて、ただ自身の無力を呪い赦しを乞う出久の言葉は唐突に遮られた。

 ——被身子の唇によって。

 

「ん……ちゅ」

 

 出久の顔を慈しむように両手で挟んで、被身子は優しい口付けをした。

 その衝撃で徐々に正気を取り戻した出久の目が丸く見開かれていく。当然のように彼のクソナード面がパニックを起こしかけたが、ゼロ距離にある被身子の顔に息を呑むほど見惚れて、逆に落ち着いてしまう。

 

「ぷはっ」

「な、ななななななにを」

「宣戦布告、です」

 

 そう告げた被身子は両手で挟んだ出久の頬を引き寄せてコツンと額と額を合わせる。そして距離にして数センチも無い両目をしっかりと合わせた。

 

「イズクくんの中には、知らないたくさんの大切がある。きっと特別な大切も……。あなたはそのたくさんの大切(過去)を抱えて今を生きてる。だから、宣戦布告です」

「えっと、その……?」

「大好きです、愛しています。だから、あなたの膨大な過去と特別を向けられてる誰かに挑みます。そして今の()()()()の未来と特別を勝ち取ります。それが私からあなたへ贈る宣戦布告(ラブレター)です。受け取って、くれますか?」

 

 力強く、真っ直ぐで純粋な熱を持った告白だった。

 それを正面から受けた出久にも、確かにその熱は伝わり広がっていく。

 元いた世界でも、一般的価値観から見れば歪んでいたとはいえトガヒミコから告白されたことを思い出す。そして今この瞬間、こちらの被身子からも想いをぶつけられた。それがなんだか運命的なものに思えて、つい笑ってしまう。

 それに不満そうな顔をした被身子の頭を出久は右手で抱いた。

 

「——受け取るよ。被身子ちゃんからの挑戦(告白)。話すよ、僕のこと。受け取って、くれるかな」

「——ッ!はいっ!よろこんで!!んっ」

 

 表情を輝かせて、感無量といった風の被身子は二度目のキスをする。

 出久はそれを今度はしっかりと受け入れた。先程は呆然として感じ取れなかった柔らかな感触と香り。そして、血の味。

 

(あぁ、彼女もきっと特別なんだ。今も……昔も)

 

 

「んで?くっだらねぇラブコメ終わったかよ」

 

 綻んだ空気を勝己が再び引き裂いた。

 立ち上がった二人は互いを庇うように背を合わせて身を構える。

 

「ひとつ、いいかな。かっちゃん」

 

 先程までの絶望した顔は既になく。落ち着き払った出久が苛立ちを隠そうとしない勝己に問い掛ける。

 

()()()()?」

 

 その言葉に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする勝己。

 掛けられた問いを反芻して呑み込み、そして——嗤った。その貌は出久に知る刺々しかった勝己でさえすることのなかった悪鬼の相。人を見下すそれではない。人に害なす者が浮かべる悪意だった。そう、かつての死柄木弔やAFOのようなドス黒い笑顔。

 

「は、ッハハっ。ギャははははははははははははははッ!そうかそうかよォ、クソナード!やっぱりそうだよなぁ?!」

「うん。やっぱり、そうなんだね」

「なンだよつまんねぇ。白けちまうぜ全くよぉ。ま、いいさ。これも?オサナナジミの成長と思やぁ感無量ってやつだろうよ、ナァ?!」

 

 感情の起伏が乱高下する“彼”が、もはや誰に向かって話しているのかすら分からない。唯一伝わってくるのは底知れない黒々とした悪意だけだった。

 

「あぁ、答えてやるよ俺が一体ダレなのかナンなのか。俺はあそこで寝てる械人能無の派生のひとつエヴォリュート。個体名“Nitro”。ニトロって呼んでくれや。なぁ?デク」

 

 勝己……否。ニトロと名乗った械人は嘲るように出久へ言葉を掛ける。

 出久は、自分の知る勝己ではないとはっきり示されたことに安堵しながらもどこか複雑な気持ちを抱えてながらも、放たれた看過できない単語に反応する。

 

「お前がかっちゃんでないのはなんとなくわかってた……。だけどニトロ。なんで君がそれを、“デク”を知ってる?!」

「全部教えちゃつまらんだろが。てめぇのちっぽけな頭で考えなクソデク。ボーナスタイムはここまでだ。寝てねぇでそろそろ起きろよジュールぅ!さもなきゃ俺がぶっ殺すぞ!」

 

 ジュールと呼ばれたそれ。吹き飛ばされた械人能無はがらがらと身体に積もった瓦礫を落としながら起き上がる。

 

()()()()()。全力でコイツら殺せ。俺は帰る」

「なっ、待て!」

「Plus Ultra、なんだろ?まずコイツ倒してから来やがれ。期待しねぇで待っててやるよデク」

「GruuuuGraahhhhhhhhhh!!」

「クソっ!」

「今はコイツ、倒しましょう!イズクくん!」

「——ッ、うん!」

「ハッ、精々キバれや」

 

 そう言ってニトロは去っていった。

 次の瞬間には、能無が未だ健在の右腕のブレードを赤熱させて二人目掛けて振り下ろした。

 当たる寸前で二人は散って躱し、言葉を交わす。

 

「行くよ!被身子ちゃん!」

「はい!イズクくん!”My Fair Lady”、紅騎士(クリムゾンナイト)!」

 

 被身子の手首にある傷痕から伸びる真紅は、再び甲冑を象り被身子に纏い同じく真紅に輝く剣を振るって能無に立ち向かう。

 しかしニトロの命令により加減の枷が外れた能無の剛腕から放たれる暴威に、被身子は劣勢を強いられる。

 

「バーストッ!」

 

 紫炎を炸裂させた拳で、能無の腕を横合いから殴りつけて攻撃を逸らしながら小回りを活かして出久もサポートしつつ攻めるも火力が足りない。

 技量という点では出久が圧倒的であるものの決定的に出力の差で圧されている。

 

 それもそのはず。二人が知る由もないが、械人能無“Joule(ジュール)”のコンセプトは『一方的な暴力』である。左腕の機関銃で面を制圧、右腕のヒートブレードで防御を焼き切る。どちらも通用しなければ、基本スペックに物を言わせてただ力任せに体躯を振るって圧倒的に殺す。それがこのジュールに与えられた、“武器”であった。

 右腕のブレードは未だ健在。斜め切断された左腕の機関銃は、鋼鉄の槍となって命と殺りにくる。ジュールの周囲はまさに暴風域となり、近付くもの全てを破砕する嵐となっている。

 

 唸りを上げて振るわれる純粋な暴力に二人は思考を切り替える。

 

「被身子ちゃん!」

「はい!“穿てる狩人(ロビン・ザ・スカウト)”」

 

 被身子の言葉に反応して真紅の甲冑が溶けてそのカタチを変え身体に纏う。

 先の尖ったサファリハット、口元を隠すスカーフに胸当て。ローブを羽織って弓に矢を番える。その姿はまさしく狩人だった。

 

「いって!」

 

 掛け声と共に放たれた矢はその姿を分かち、紅の雨となって能無に降り注ぐ。

 小賢しいと言わんばかりに、腕を振るって矢の雨を払う能無。その大ぶりな動作で胸元が開いた。その隙目掛けて二の矢が飛来し突き刺さる。能無の行動を読んだ二段構えの射撃。しかしその矢は、胸部プレートにこそ刺さったものの肉までは達していない。

 被身子に狙いを定めた能無が動く、その前に出久が降り立った。既に構えられた拳、その肘には紫炎の球が輝いている。輝きが炸裂して拳を射出させた。

 

「パイルっバンカー!!」

 

 放たれた拳は、刺さった矢を叩いた。矢はプレートを貫いて、能無の胸板に埋め込まれるように突き刺さり、勢いそのままに拳がプレートを砕いた。

 さしもの能無も呻いてその巨躯をよろめかせる。しかしながらその程度。地に両足は未だ付いたままだ。

 

「弾けて!」

 

 被身子が叫ぶ。

 すると能無は、矢が叩き込まれた部分を押さえて苦しみ出し蹲った。

 よく見てみると胸から無数の紅の棘が皮膚を突き破って出ていた。外からの攻撃が効かないなら内側から破壊する。ありきたりではあるがそれゆえに強力。この械人に対してもそれは有効だったようだ。

 

 

「ナイス!被身子ちゃん!」

「イズクくんに借りたマンガのおかげです!」

「え?!と、とりあえず畳み掛けるよ!僕のことは気にせず射って!」

「はい!いきます!」

 

 被身子は再び矢を番えて、絶え間ない矢の雨を能無に浴びせる。

 一応の復活を果たした能無が再び暴風域を作り出してそれを防ぐも、先程のダメージのせいか動きが鈍くなっている。

 それを感じとった出久は、能無の攻撃を弾く方向を狙い操作を試みる。被身子もまた出久の思惑を察して、能無の意識を集めるように矢を射る。

 そして、出久の攻撃で隙ができたなら被身子が渾身の一矢を、被身子によりできた隙は出久の一撃が、先の傷口に叩き込まれる。

 即興、それも片割れが初の戦闘で行われたそれとは思えないコンビネーションを発揮する二人。

 クロスレンジで常に能無からの攻撃を捌き、ミドルレンジから被身子の射撃支援。阿吽の呼吸で行われるそれは確かに、戦いの天秤を徐々に出久たちへと傾けていく。しかし。

 

「被身子ちゃん!あとどれだけ保つ?!」

「けっこーキツくなってきました……!」

「早く倒しきらないと……」

 

 被身子は異能に覚醒したばかり。その上で初めての戦闘、それも命のかかった最前線での死闘だ。彼女の体力と精神力はすでに枯渇しかけている。

 ここまで削れているものの未だ決定打に欠ける二人。

 出久は早期決着を目標に頭を回す。でなければこのバランスが崩され、戦況がひっくり返される可能性がまだある。そんな戦いは何度も経験した。だからこそそれを防ぐために、培ってきた経験を総動員して、手を打たなければならない。

 

 結論から言えば、もはやそれは手遅れだった。

 

 蓄積するダメージと、ふたりの連携に翻弄される能無の動きは酷く拙い。時を経るごとに力強さが失われ、思うように動けない苛立ちを感じさせるような身じろぎが多くなっている。そう——()()()

 

 ——改造されたこの身が子ども二人にいいように扱われているだと?

 

 重なった火種が、ついに爆発する。

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!」

 

 一瞬、身を捩った能無は未だ砕かれていない右腕を全力で振り抜いた。その一振りは降り注ぐ矢を全て薙ぎ払い、起こった風圧は側の出久を吹き飛ばすほどの力を持っていた。

 その衝撃でついに被身子の異能が解除されてしまう。それに気付いた出久が咄嗟に背に彼女を庇って立つ。

 強制的に仕切り直された二人は、再び仕掛けようと異能を発動させようとして異変に気付く。

 

 ——どるる、どるる

 

 地の底から響くような不吉な音色が空気を震わせる。

 そして次に聞こえたのは甲高く空を裂く高周波。これは、駆動音だろうか。それらの音は、全て能無の体内から発せられていた。

 右腕の殺意、死の刃が赤く染まる。

 赤く、赤く、そしてその赤はやがて橙へと変わり、白みを帯び始め、刀身の周囲の空気がその強烈な熱で揺らめいている。

 

 ぎょろり、と能無の光を映さない瞳が出久を捉えた。

 狙いを定めた能無は上体が後ろにそれるほど右腕を高く振りかぶり——

 

「ッ、イズクくんッ!!!!」

 

 被身子の叫びが出久に届いた時、既に能無は眼前で死を振り下ろしていた。

 




こいついつも死にかけてんな。


遅くなりましたがなんとか13話投稿です。
相変わらず仕事の休憩時間に書いてます。

ウチから言えることはもはや、お気に入り登録、感想、評価、ここすき等等よろしくお願い致しますとだけ……。
全て受け止めて、糧とするのだわ……。、
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。