仕事に稽古、ビジュアル撮影、ついでに積みプラ消化等等していたので遅れました!……嘘です。いえ嘘じゃないんですけど話が上手く書けなくて筆が止まったりしてました……。
そんな嘆きの魚津が送る第7話、です。
『昨日の十二時五十分頃発生した瑠彦警察署が何者かに襲撃され、警察官七十六名の死傷者を出た事件についてどう思われますか?電倉大学教授、
『よろしくお願いします。まず状況証拠から言って複数犯による犯行、テロリズムといってもいいでしょうね。火器の使用された形跡が残されていて、爆発物の使用痕も調査報告にあります。現場に残されていたというヘドロが犯人たちに繋がる重要な証拠としても報告されているようでこちらも成分調査が進められています。犯人たちの目的こそ声明が出されていないものの、警察署を狙ったことからも金銭が目当てという線は薄いと——』
テレビから流れる物騒な話。
僕らがUA倶楽部に加入した翌日に起こった事件。
日本で起こったとは俄かに信じがたいテロ行為。『こちらの世界』においては特に規模の大きい犯罪に入るだろう。
グループトークで倶楽部の仲間とこの話題について話すと、異能持ちが関わっている可能性は考えられると志村さんが言った。どうやら野次馬に行っていたらしく、警察署の被害はニュースにあった通り銃火器 爆発物が使用された形跡があったそうだ。
[グループ:UA倶楽部!]
志村>あとな、緑谷が撃退したヘドロもそこで死んでたらしい
IZUKU>警察署に彼が居たんですか?!
志村>夜にほとんど全裸に傷だらけで倒れていたところを補導されたらしくてな。聴取中だったらしい
八百万百>こちらに関しては私の情報筋から得られた情報ですわ。信憑性は高いかと。
飛田>お金持ちの力って凄いねぇ
志村>詳しい話はアジトでやるぞ。眠い
八百万百>また伊口さんと夜通しゲームしたんですのね……。
༒SpinneR ༒>スピナーだ!……少々LoLが、な
志村>そうだLoLが悪い
八百万百>お説教です。
志村>げっ
༒SpinneR ༒>なにっ!?
IZUKU>ご愁傷様です
トガ>ごしゅーしょーさまです!
飛田>かなりシリアスな話だったハズだよね??
真面目な話に締まらないこの感じ。クラブって付けたのは正しかったかもしれない。口田くんのなかよし集会は中々どうして一番的確に彼らを表す言葉だった。……今は僕らもその一員だけど。
「モモちゃん強いですねー。つよつよです」
「お母さん味が強いよね」
「モモちゃんママ!いいです!カァイイ!」
昼休みの終わり頃。いつものように被身子ちゃんは別クラスから僕の席にきて引っ付いている。周りの視線はもう慣れた。というか皆、先生も含めていつのまにか生優しい感じの目をするようになっている。いや慣れないでよ。特に先生。余談だが、被身子ちゃんのクラスで僕はトガちゃん係なる呼ばれ方をしているらしい。
(それにしても最近の被身子ちゃんはなんだか、こう。前に比べて距離が近いような……?)
気のせいかは分からないが、あの一件以降彼女の距離感がもう一段近付いたような気がするし、ほんのり顔も紅いような……。
「?どうかしましたかイズクくん。予鈴、鳴っちゃいましたよ」
「えっ。あ、もうこんな時間か。ごめんねボーッとしちゃって」
「イズクくんは優しいので事件に心痛めてるんでしょう。トガは誇らしくもあり心配でもあります」
コロコロと表情を変える彼女。
確かに事件が気になって仕方がない。失った筈の危機感知が耳鳴りのように遠く響く感じがする。これが嫌な予感、虫の知らせというやつなのだろうか。
「それじゃあ惜しいですがトガはクラスに戻ります。また放課後ね、イズクくん!」
「うん、また」
手を振って小走りで自分の教室へ戻る被身子ちゃんを見送って、ごそごそと次の授業の準備をする。
「好かれてんねぇモテ男が」
隣の席から話し掛けられる。
そちらに目をやれば、小太りのクラスメイトが座っている。
「そりゃ、十年近く一緒なんだ。もう兄妹みたいなものだよ翼君」
「兄妹ねぇ……。渡我さんも可哀想になぁ」
「?被身子ちゃんに何かあったの。ねぇ教えて」
「そこまで溺愛しててなんで、って近い近い!目が怖いよ緑谷!」
「あ、ごめん」
被身子ちゃんが可哀想だなんて言うから、つい。何かあったのか。またいじめの標的にされたのかと考えてしまい、翼君に詰め寄ってしまった。
「近過ぎるとわからないものなのか……。なんにせよ緑谷、お前いつか刺されるぞ」
「えぇ?!」
急な傷害予告に驚いていると、ガラリと扉から先生が入ってきて、午後の授業が始まったのだった。
時間は過ぎて放課後。
UA倶楽部の名前が決まってから、アジトと呼ばれるようになったらしい廃病院へ僕と被身子ちゃんはやってきた。
基本的な集合場所である外来待合室へ着くとそこには、正座している
「なぁ、八百万よぉ……。緑谷と渡我も来たし、な?」
「そろそろ許してはくれまいか……。足の感覚がッ」
二人がこちらに気付き、助けを求めるような顔で懇願する。……正直巻き込まれたくないので目だけ逸らす。この辺り自分が歳をとってスレたなぁと思う。
「あら、おふたりとも。ご機嫌よう。はしたないところをお見せしてしまい恥ずかしいですわ」
「モモちゃんママ強いです!」
「ま、ママ?」
「「ぶっ!」」
被身子ちゃんの言葉に正座した二人が吹き出す。
直後、八百万さんの平手が二人の頭を直撃した。
なんだあれ、全く見えなかった。そういえば八百万さんは割と過激な人だというのを今更思い出す。昔、一人で雄英を飛び出した時にえげつない拘束具を使われたのが頭をよぎった。
「わぁ、大惨事になってるねぇ」
「……!!(汗)」
二人が頭にたんこぶを生やして床に沈んだ頃、飛田さんと口田くんがやって来た。
気付いた八百万さんは二人に挨拶をしてから、パンパンと手を打って場を仕切る。
「皆さん揃ったところでUA倶楽部ミーティング、始めますわよ!ほら、なに床で寝てるんです志村さん。部長の肩書きが泣いてますわよ」
床に沈めた張本人の言葉に釈然としない顔でのそりと起き上がる志村さん。これ以上余計なことを言わないでおいたのはきっと英断だろう。
「……つーか、八百万。部長ってなんだよ部長って。部活動じゃねぇんだぞ」
「倶楽部なのですからそのリーダーたる志村さんは部長でしょう?」
何か問題でも?といった風な八百万さんに志村さんはもう物言いを付けるのは諦めたようだ。
実質的に部長は八百万さんなのではないだろうかと思ったのはきっと僕だけじゃないはずだ。
「モモちゃんが部長みたいです」
「「あ、言っちゃうんだそれ」」
僕と飛田さんの声がハモった。
恐るべし被身子ちゃん。八百万さんとは違った方向に驚異的な純粋さだ。
「いえ、ヒーちゃんさん。違いますわ。この倶楽部の部長は志村さんをおいて他に居ません。なんといいましょうか。カリスマとでも言えばいいでしょうか、それが志村さんにはあるのです。ここに集まった皆さんならなんとなく分かるのでは?」
その通りだ、と思う。あちらでもこちらでも、
思わず頷く一同に、バツの悪そうな顔でボリボリと頭を掻く志村さん。その血色の悪い顔は普段よりも健康に見えた。
「はぁ……。んなこたぁさておいて、だ。本題に入るぞ。瑠彦警察署を襲った奴らについてだ」
その言葉にごくりと喉を鳴らしたのは誰だったか。
待合室に緊張が走った。
「まず基本的な情報として、犯人たちは昨日白昼堂々と凶行に及びましたわ。それに時間的には昼休みを終えて戻ってくる人達が多い時間帯。彼らは暴れ回り、十分後にパタリと撤退しました」
「八十人ぐらいやられちゃったんですよねー」
「正確には七十六人。とんでもない数だ。恐らくはその時警察署に居た、警察官以外の一般人も巻き添えを喰らっているだろう」
“個性”のない世界、いや。僕の居た世界でもスーパーヴィランと呼ばれるような犯罪者が起こす大規模な犯罪だ。
スピナーの言葉に、八百万さんが注釈をいれる。
それは不思議な話だった。
「それが、一般人の被害はゼロだったらしいのです」
「……なんだと?」
「それは死者がということかい?」
「いえ。軽傷者含め、です」
これだけ大規模な破壊活動をしておいて警察官以外の被害者はゼロという奇妙な事件。
しかし妙なことがある。
「八百万さん。そういえばニュースで犯行時の動画なんかについて触れてなかったけど、そういう情報は?」
そう。ニュースでは、事件が起こったことにその被害。事件に対するインタビューに考察なんかは報道されているが、目撃者の話がまるでないのだ。
僕の質問に彼女は苦々しい顔で答えた。
「それがまるでないのです。動画も目撃者も目撃情報さえも。まるで意図して隠されているように」
「……随分とキナ臭くなったじゃねぇか」
「それに緑谷さんが戦ったヘドロの異能持ちも殺害されたようで、被害者リストに名前が上がっていました。もし武装した犯罪者が押し寄せたとして、異能を発動せずに倒せるでしょうか」
不可思議な点がいくつも上がる。
情報が出される中で被身子ちゃんがポツリと呟いた。
「そもそもどうしてヘドロさんは異能使って脱走しなかったんですかね」
「異能にはその行使に条件が必要な場合がある。大方、その条件が満たせずに逃げそびれたのだろう」
「でもニュースではヘドロが残っていたという話もありました。ということは襲撃時点では使用していた可能性が高いです」
スピナーの意見に、僕は今朝のニュースを思い出して被身子ちゃんの発言を補強する。
「それじゃあ何か?異能を発動したアイツを殺せる武器が犯人たちにあると?」
「その可能性がある、というだけですが」
「あ!もしかして、犯人の中に異能持ちさんがいたんじゃないですか?!」
「ありえるな。だが……」
「残された痕跡、ですわね。あくまで火器による痕跡しか公表されていませんから断定とはいきませんわ」
「手詰まり、だねぇ……」
——結局それから二時間ほど話し合ったが、これ以上進展することはなかったのだった。
* *
「——それで、
「……はい。申し訳ございません会長」
「下がって構いません。引き続き異能者の捜索と保護を続けるように。それと、瑠彦署襲撃の捜査状況の共有もよろしくとお願いしますね」
「承知致しました。失礼します」
オフィスビルの一室。今しがた退室した部下から報告を受けた”会長”と呼ばれた女性は嘆息した。数日前に警察が確保した男、ヘドロの異能者が瑠彦警察署の襲撃の際に殺害されたという報告。
それは会長とその組織にとってはまるで想定外の出来事だった。ひとつであればまだ想定の範囲。そういったこともあるだろうと納得もできるが、今回起こった事態はいくつかの想定外が同時に一か所で発生したのだ。
一つ、瑠彦警察署への集団テロリズム。
二つ、保護した異能者の殺害。
三つ、犯人は異能者を殺害しうる手段を所持している。
加えて、不可解な点が余りに多い。
何故一般人の被害者がいない?何故目撃証言も動画記録も存在しない?そもそもの目的はなんだ?異能持ちの殺害——だったとして何故
「次の狙いは何処なの……?」
この犯行は明らかに計画的なものだ。
そして一般に公表していない、更にその中でもトップシークレットとされている”異能”。それに対抗しうる戦力を保持する勢力の存在。
それがこの一回で終わるとは考え難い。
局長は痛む頭を労るように、眉間を揉む。独りの部屋を重い沈黙が支配する。長考。対抗策は——実のところある。しかしこれを使用する事は非常に躊躇われる。あまりにもリスクが高い。
「……結局、現時点では静観するしかないというの……」
その決定を下す事は、今の彼女にはあまりにも荷が重過ぎるのだった。
* *
事件から少し時間は進んで、土曜日の昼下り。
出久と被身子はショッピングモールへと繰り出していた。
「キャンプ、楽しみだねぇイズクくん!」
「こら。走ったら他の人に迷惑でしょ!」
「はぁーい!あ、カァイイキーホルダー発見です!」
「あっ、言ったそばから……もう!」
あの日、UA倶楽部ミーティングでは最終的に「現時点では自分達にできる事は身の回りの警戒だけ」という結論に落ち着いた。異能持ちが関わった事件とはいえ、あくまで自分達は一般人。関わるべきではないという意見が若干一名を除いて一致したのだ。
ちなみにその一名は秀一だ。『力を持つ我々が動かずして——!』と息巻いていたが、百の”説得”によって渋々結論に納得した。
その後ミーティングは雑談へと移行。その中で中学生三年生である、出久、被身子、百、甲司の四人が受験を控えているという話から、遊ぶ時間も少なくなってくるという話になる。そこで被身子が言った。
「中学の思い出にみんなで遊びに行きたいです!」
それに、百が同調。甲司も恥ずかしそうではあったが乗り気であった。決まったとばかりにどこへ遊びに行くと盛り上がり、その中で百がぽつりとキャンプ……と口にした。
「いえ、その。実は私、アウトドアレジャーというものに今まで縁がなくて……。少し憧れてますの」
照れたように言った百に、被身子が目を輝かせてすぐさま同意。甲司も自然が好きということで前向き。出久も被身子が楽しそうだからという理由で賛成。キャンプへ行く事が決まった。
その様子を、弾柔郎は「青春っていいねぇ」と見守り、修一と転弧は興味なさげにゲームの話に興じていた。
「そうです!三人も一緒に行きましょう!」
話の矛先は被身子によって向きを変えた。被身子が言った三人。それはすなわちここにいる大人組を指していた。
それに対して弾柔郎は「私は遠慮するよ。青春の邪魔をしたくないのでね」と断り、残りの二人に至っては断りの言葉以前に明らかに面倒くさいといった顔をした。
被身子はそんな三人に続ける。
「えー、いいじゃないですかぁ。行きましょうよー。せっかくなので親睦会も兼ねましょーよぉ」
「親睦会!いいですわね!お二人が加入してUA倶楽部という素敵な名前まで付いたのです。是非皆で行きましょう」
「……!」コクコク
百が俄然やる気になって被身子を後押しし甲司もしきりに頷いた。出久はニコニコと笑顔で保護者のような笑みを浮かべていた。
その後も三者三様に断ろうとしたものの、弾柔郎は若さに負けて、転弧と修一は百の「お二人には協調性というものを学んでいただきますわ!」という
そして迎えた週末。その準備の為、現在に至る。
一通りの買い物を終えて、二人は手を繋いで雑踏を歩く。
大きな荷物は家に届くように手配したので、手提げ袋をいくつかそれぞれ腕に掛けて、手にはカフェでテイクアウトしたフラペチーノ。
「イズクくんとのデート、最高でした!」
「デート……。うん、そうだね楽しかった」
一瞬否定しかけた出久だったが、満面の笑みを顔を浮かべた被身子が眩しくて、同意を返すのみだった。
あの日改めて誓った、被身子を守るという意志。その想いが一層深まるのを出久は感じる。
「私、今すっごく幸せです」
そう言って、手をギュッと握る被身子にドキリとする出久。未だ麗日を想う出久にとって、彼の心はその言葉と行動に大いに揺らされて顔を赤らめるのだった。
その様子を道行く人は微笑ましげに見て、被身子は自慢げに。出久は少しの気恥ずかしさをその視線達に抱いた。
——見つけた。
「——ッ!」
瞬間、出久はバッと勢いよく振り返り、被身子を背に隠した。その急な行動に、被身子は驚いて手に持ったカップを落としてしまい、アスファルトに冷たいシミが黒く広がっていく。
「どうしました?イズクくん」
出久の尋常じゃない様子に、被身子は心配そうな顔で彼を覗き込む。その顔は強張り、顔色も悪く額には大きな汗の粒。そしてなにより目付きが、以前に見た戦っているときのそれ以上の鋭さをしていた。
被身子の声に出久は反応を返さずに目を動かして何かを探している。被身子は緊急性を感じ、息を潜めた。
それからどれだけ経ったか。
出久は大きく息を吐いて緊張させた神経を解いた。
実際には十秒程の出来事だったが、その時間は出久にとって無限にも等しいものだった。
「……ごめんね、被身子ちゃん。びっくりさせた」
「いえ……。何があったんですか?」
「それは……。いや、明日UAで話すよ。せっかくのデートなんだ。これ以上不安にさせたくない。それよりフラペチーノ溢しちゃったね。新しいの買いに行こうか」
「えっ、イズクくん——」
出久には珍しく、被身子に有無を言わせぬように少々強引に手を引いてその場を後にする。
先を歩く彼の首筋には、未だ多量の汗が浮かんでいた。
「ハッ。幸せそうじゃねェか」
——邂逅の時は、近い。
今話もお読み頂きありがとうございます。
ふと見てみればお気に入り登録が200を越えてまして、戦々恐々恐悦至極で生まれたての鹿みたいにプルプルしてます。
感想に評価も頂けて本当にありがとうございます。
もっと下さい(強欲な壺)という冗談はさておき、感謝感謝です。
例によってプロットもなく下書きもなく、最初からメモ帳で本番書きしているので次回もその次もお待たせするかと思いますが何卒ご愛顧のほどよろしくお願い致します。
ちなみに、Xのアカウントのほうでは主に徒然呟いたり、出演舞台の宣伝したりしてますです、はいー。
それではまた次回お会いしましょー。