過去の魔女   作:蕾-RAI-

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 芽生は【夜】の魔女として覚醒した。
 そして、【花】の魔女である花が銃で撃たれてしまい、芽生はデュラタンと共に隣街の〈異世界の街〉に向かって行った。


異世界の魔女:怪物の英雄

 まだ世界が平和だった時の話、私達が初めて出会って何度か集まるようになった日。

「みんなはそれぞれ違う街にすんでるんでしょ?そこでなにしてるの?」

 私の問いにみんなはなんて回答しようか迷っていたけど、瀬界ちゃんだけはさっと片手を上げて

「ぼくは両親がお医者さんだからそれのお手伝いしてる。」

「えー!!そうなの!?」

「うん。」

 みんなそのことに驚いて、興味津々に質問をしていたことを昨日のことのように覚えている。

 もうそんな日が来ないと思うと少し、悲しいけど。

(そんなことより、まずは花ちゃんが優先…)

 すぐに関係のなことを考えることをやめて、一度周りを見える山の方へ着陸する。

「っ…最悪な風景だ…」

 瀬界ちゃんが言っていた「名前の通り、本に出てくる異世界の街に似たところだよ。とっても綺麗なんだ。」と教えてくれていたものとは全く違うものになっていた。

 まるで、世界の終わりのようだった。

「だめだ、見つからない…」

 私はポケットからスマホを取り出して瀬界ちゃんに電話してみた。

 けれど、繋がることはなかった。

「この街の病院…」

 電話することは諦めて、この街にある病院を調べてみた。

 少し遅いけれど検索結果が表示されて一番上に[[[rb:夜河 > よるかわ]]総合病院]という名前と場所が表示される。

「よかった…近くだ」

 スマホの電源を落として、ポケットにしまうともう一度飛び出した。

 直進でだいたい5分、目的の夜河総合病院に到着した。

 この病院は少し森の中だったおかげなのかまだ被害が出ていなかった。

 芽生の背中に装備された機械が溶けて、アゲラムが姿を現すとデュラタンから花を受け取る。

「よい、しょっと…」

 花を背負って、病院の扉に向かっていく。

 

〜〜〜

 

 中に入ると明かりは少ししか点いておらず、受付には誰もいない。

 だが、目の前の通路には沢山の人がいて怯えていたが空人ではないことを察すると、みんな安心して息を吐いていた。多分この街の住民が避難してきたんだと思う。

「あの、医者の人は…?」

 私は近くの人に聞いてみた。だけど、その人ではなく別の方から質問の返答がきた。

「今は別の人の診断しているからいないんだ。芽生ちゃん。」

「この声…」

 奥からコツン、コツンと足音が響くと暗闇から右目が前髪で隠れた白髪の少女が現れる。彼女が夜河瀬界だ。

「瀬界ちゃん!!お願い、花ちゃんがっ!!」

「え。少し見せて?」

 瀬界は急いで芽生のもとに駆け寄ると、背負われた花の身体を見る。

「少し危ないかも…ちょっとこっちに来て。ボクの部屋に移動しよう。」

「わ、わかった!」

 芽生は瀬界の後について行く。長い廊下を歩き、右に曲がる。壁側にはたくさんの人達が座っている。

 全員、帰る場所がないんだろうなと感じてしまった。

 しばらくすると、一つの扉の前で立ち止まった。

「ここ。」

 そういって瀬界ちゃんはポケットから鍵を取り出して、ドアノブに挿し込む。そのまま右に捻って鍵を開けると鍵を抜いて、ポケットに戻しながらドアノブを捻って押す。

 

 中に入るとほとんど真っ白な部屋で、勉強用の机と椅子が右側にあって、左側には大きな本棚に大量の本が入れられている。

「花ちゃんはこっちのベットに寝かせて。」

 芽生は瀬界の言われたとおりに、ベットの上に降ろす。

「弾丸で貫かれた感じか…脈はまだある…心臓じゃなくてよかった。」

 ボソボソと花の身体の状態を見ながらつぶやく瀬界。その顔は少しの焦りが見えていた。

「コノ娘、空人にヤられたんでしょ?」

 突然、部屋から2人以外の声が響き渡り芽生は部屋の周りを見渡し始めた。

「あ、いい忘れてた。あそこ。」

「え?」

 瀬界が指を指した場所に顔を向けると、植木鉢のところに変な植物がいる。

「ナニみてんのよ」

「うわ、植物が喋ってる…」

 声に合わせて中心部がパクパクと動いている気持ち悪さに、芽生は少し嫌な目をするのを軽く笑う瀬界。

「あれは【アモネス】。急に出てきたからボクが名前つけて植えておいたの。」

 少し雑さを感じる経緯に少し引き気味になる芽生だった。

「瀬界、ソノ娘達は魔女だから傷の修復は勝手にされるわよ。」

「だからなに?例えそうでも、ある程度処置はしなきゃダメ。」

 瀬界は、花たちが魔女であることにも驚くことはなく救急箱から包帯などを取り出して傷を塞ぐ。

「よし、ひとまず傷は塞いだ。あとは花ちゃんが起きるだけ。」

「はぁ〜、ありがとう瀬界ちゃん!」

「いいよ、それよりも少し手伝って欲しいんだ。今ここに避難してきてる人たちにどこか怪我してる場所がないかとか。」

「わかった!任せて!」

 その後、瀬界はクローゼットから白衣を2着取り出すと1着を芽生に渡す。そしてその白衣を二人は着る。

「アモネス、ちゃんと様子見ててよ。」

「わかりましたヨ。」

 少し不満げな返しだったが、なにも言わずに芽生の手を掴んで部屋から出ていった。

 

〜〜〜

 

「足が少し…」

「足ですね…わかりました。」

 二人は避難してきた人たちの話を聞いていた。

「…ひとまずは、これで終わりかな。休憩しよう芽生ちゃん。」

 大体30分して全員を見終わった二人はまた部屋に戻ろうとしていたが、突然瀬界の足が止まった。

「どうしたの?瀬界ちゃん」

「あの子、なにしてるのかなって。」

 瀬界が見ている場所を、芽生も見る。

 一つの病室に、窓から見える景色をじっと眺めている一人の子供が居た。

「ごめん、ちょっと話してくるね。」

「あ、うん」

 瀬界は子供のもとに向かい、隣に立つ。

 子供は瀬界に気づき右を向く。

「なにしてるの?」

 瀬界は少し優しい口調で子供に聞く。

 けれど、子供はなにも言わずにまた景色を見始めた。

「変わっちゃったね、この街。」

 瀬界も同じように景色を見る。

 いつもなら本に出てくるような異世界のような街が、今では完全に破壊されて黒い煙が登っている。

「ボクさ、この街が好きなんだ。毎日読んでる本の世界と似てるから。」

「…ぼくも、すき」

 子供から返答が来たことに驚き、また子供の方を見る瀬界。

 そして、優しい笑みを浮かべた。

「キミを好きなんだね。この街。」

「うん!」

 瀬界はしゃがみ、少年の目線に合わせるとそのまま優しく頭を撫でた。

「そっか〜本当に好きなんだね〜」

 最初は固かった表情から柔らかい表情に変わり、二人は笑顔になっていた。

 

 その後、瀬界と芽生は部屋に戻って花の様子を見ていた。

「眠っている。」

 花はすやすやと寝息をたてて眠っていた。

 魔女への覚醒、そして大切なモノをなくした。そこからずっと休んでいなかった。だから今は寝ているのだろう。

 もちろん、同じような体験をした芽生も疲れているだろう。

「芽生ちゃんも休んだら?魔女に覚醒してから休んでないでしょ?」

「そうしようかな…、あ。瀬界ちゃん」

「なに?」

 芽生は瀬界に一つ疑問を投げかける。

「どうして、アタシたちが魔女だってわかってたのに驚かなかったの?」

「あの時かな、花の街で塔を見つけた後。」

 瀬界は本棚から一冊の本を取り出して、椅子に座ると1ページずつ開いていく。

「家に帰った後に、一度だけボクが持っているすべての本を読み漁った。」

 瀬界はあるページで止めると芽生にそのページを見せつけた。

「ん?」

「そうしたら!似たような絵があったんだよ!!」

 そのページには、花の街で見た塔と夜の街で見つけた塔と同じ物が描かれていた。それ以外にも、あと3つ。

 少し興奮気味の瀬界はまだ止まらない。次のページを開く。

「この塔には魔女が眠っていて、ボクたちのそれぞれの街を覆う結界にエネルギーを送り続けていたんだよ!凄くない!!?」

 パンパンとそのページを叩く。

「わかっているなら、魔女の力を受け取りなさいヨ。」

 部屋の奥からアネモスの声が響きわたる。

「だから、ボクは受け取る気はないってば。」

 感情任せで強く本を閉じて、アネモスを数秒睨みつけた後ため息をついて芽生の方を見た。

「あ…眠ってる。」

 いつの間にか、すやすやと座りながら眠っていた。

 

瀬界は椅子から立ち上がると、そのまま本棚に向かう。

手に持っていた1冊の本を開いているスペースに戻した。

その後、一度ため息を吐く。

魔女というものは、偉大な存在だ。危なかった世界を守り抜いた英雄のようなもの。

だから、そんな英雄達と並べるような器を持っていないから瀬界は魔女の力を受け取ろうとしない。

 

結界が崩壊を始めた時、警報で外に出た瀬界は唖然とした表情で見つめていた。

完全に破壊した後、5つの街に光り輝くなにかが勢いよく落下していく。

至るところで爆発が起こり、強い風が瀬界の長い髪をなびかせる

直後に、心臓がドクンと強く鳴り瀬界の頭の中に空人から逃げる異世界の街の人々、殺される人々の映像と叫び声が頭の中で流れ出した。

突然のことで困惑し、耳を両手で塞ぎながら感情任せに強く、叫んだ。

その声は誰にも届かないまま、瀬界は地面に膝から倒れて涙を流した。

 

無気力となった瀬界の元に、突然地面から植物が生えた。

その植物は瀬界の顔を見ると煽るように笑う。

その後、彼女に一つ持ちかけた。

魔女の力を受け取れば、街の人々を守れるぞ、と。

だが、瀬界はそれを拒絶した。

その理由は前髪に隠れた右目だった。

 

瀬界の片目は他の人とは違い、オッドアイだった。

黒い瞳とは違い、右目は白色だった。

そのせいなのか、街の人々からは避けられてばかりだった。

まるで、怪物のような扱いだったため瀬界は右目を隠し始めた。

いつしか、瀬界自身も自分のことを怪物として扱うことが多くなった。

 

だから彼女は魔女の力を受け取ろうとしないのだ。

 

自分のような「怪物」が魔女達のような「英雄」になれるわけがないと。

 

 

 色々思い出すと、少しの時間だけで沢山なことが起きている。今の時間は20時近く。

 流石に向こうも休憩は必須だろう。

「外に、少し行こう…」

 二人が起きないようにゆっくり歩き、ドアを開けて閉める。

 スマホを取り出して、明かりを点ける。避難してきた人たちも寝ているだろうと思い明るさを最低にして廊下を歩く。

「あ。」

 病院の外に出ると、地面に体育座りしている夕方頃に話した子供がぽつりといた。

「こんな真っ暗な中、なにしてるのかな。少年。」

「あ…さっきのおねぇちゃん」

 ボクは少年の隣に座ると上を見上げた。

 見えるのは、結界で見ていた夜空ではなく浮島。

 その浮島は空人たちの住む、空の街。

「星、みえないね」

「うん。あっちも、みえない」

 少年が指さす方向は、街だった。

 いつもなら建物の光で綺麗だったはずなのに、今は真っ暗。光っている場所は全くなかった。

「…そうだね。」

 寂しく、瀬界は呟いた。

 そんな時だった。空から流れ星のようなものがみえた。

「流れ星!!」

 少年は嬉しそうに立ち上がり、キラキラとした瞳で見つめる。

 

――だが、瀬界は逆だった。

 

「あれは…」

 何故かわかる、あれは流れ星なんかじゃない。あの光に包まれているのは…

「空人!?」

 そう気づいたときには遅かった。

「っ!!」

「わあぁっ!!」

 空人が奥の森に落ちたことで起きた強風が襲いかかる。

 少年が吹き飛ばされそうになると急いで手を掴んで抑え込む。

「どうしよう…」

 この場所には避難してきた人たちが大体100人は居る。それに加えて両親と花たちもいる。自分たちだけ逃げてもダメだ。

「中に逃げてて…」

「ぅ、うん…!」

 少年を中に避難させて、ボクは目の前を見続ける。

 数秒後、大きな音ともに目の前の木々が斜めに切り落とされたことで降りてきた空人が姿を現した。 

「デカい…」

 普通の一般男性と比べ物にならないほどの体格でその上に大剣を持っていた。

「お前たちに逃げ場など、ない。」

「…絶対にここから先には行かせない!!」

 瀬界は、何倍もの差がある男性の空人にむかって走り出す。

「話にならん。」

「ッ!ぁ…」

 足で蹴り飛ばされて壁に叩きつけられる。壁にはヒビが入っている。

「い、かせ…ないから!!」

 激痛の身体を強引に動かし、空人の足を捕まえる。

「邪魔だ!!」

「ぅっ!!」

 けれど、すぐに引き剥がされて扉の前に叩きつけられる。

「おねえちゃん!!」

 扉近くに居たのか、ボクのもとに少年が駆け寄る。

「なに、してるの!!早く逃げて!!」

「でも…!」

「ほお、ガキも居るのか。」

 空人は少年の服を指でつかみ、そのまま上に上げる。

 ジタバタと抵抗するが意味がない。

「このガキがどうなっても知らんぞ?オレならすぐに握り潰せる。」

「ッ……」

 瀬界はなにもできずにただ止まることしかできない。

「はっ、惨めだなァ!!」

 そう言って、片腕で瀬界を殴りつけた。

 扉を貫いて、廊下の壁に叩きつけられた。

 デカい音に避難していた人たちが起きると、空人が居たために全員混乱する。そして奥へと逃げていく。

「ッ……」

(もう、動けない…)

 身体がもう悲鳴を上げてしまい、全く動かせない。

「さて、まずは一人目だ。」

「!!」

 空人は手のひらに少年を置くと掴む。

「やめろォォォォォッ!!」

 瀬界は勢いよく叫ぶ。すると後ろからクジラのような生物が大きな口を開けながら空人を喰った。

 少年はそのまま地面に落下するが、芽生が現れて受け止める。

「瀬界ちゃん、今治すから」

「花ちゃん…」

 瀬界の目の前には眠っていた花が立っており、右腕を上げる。

 すると地面からまたクジラが現れると一瞬で姿が変わり、少し大きな花に変化する。その花から一滴だけ雫が落ちると瀬界の身体に染み込んだ。

「動く…痛くない…」

 強烈な痛みが居旬で消え、攻撃をくらう前の状態に戻っていた。

「まずいですよ。花様。」

「え?」

 突然、先程喰った空人の腕が動き出した。

 腕から身体が再生されていき、元の姿に完全に修復した。

「アァ…まさか後ろから来るとはなァ…」

 芽生は少年を奥に逃がす。2人は唾液を飲み込む。

 今までとは違う圧がこの場所に流れる。

「瀬界ちゃんも逃げて…」

「…」

 今の自分ではないもできないため、花の言われて通りに瀬界は廊下を右に曲がって行った。

 瀬界は廊下を走り、自分の部屋に入ると植木鉢のもとに向かって手に持つ。

「アネモス!お願い、ボクに魔女の力をッ!!」

「今のアナタに渡す気なんかないわヨ。」

 ずっと力を受け取れと言っていたアネモスは完全に拒絶した。

「なんで!?ずっと受け取ってって…!」

「でも、アナタは受け取らないって言ってたじゃない。ソレに…怪物が、英雄になれるわけないでショ。」

「!!」

 その言葉は、瀬界がずっと心のなかで呟いていたものだったため少し動揺する。

「アナタは、怪物だから英雄の力を受け取れないんでしょ?だったらそれでいいじゃない。」

「でも今は!!」

「何度でも言ってあげル、今のアナタに魔女の力なんか渡さないヨ。」

 また口を開いたときだった、近くで大きな音が聞こえたため外に出る。

 

「花ちゃん!芽生ちゃん!!」

 部屋から出ると、二人がボロボロな状態で倒れている。

「はっ!魔女もこの程度か。さて、後はここにいる残った人間どもを…」

 その言葉に瀬界は我を忘れて手に持った植木鉢を落として走り出す。

「行かせるかァ!!」

 意味のない拳で、背中を殴る。

「まだやる気か。雑魚がァッ!!」

「ぅあっ!!」

 首を掴まれ、上に持ち上げられる。

「もういい、お前を先に殺してやる…!!」

「ァッ!!アァァァッ!!」

 瀬界は必死に抵抗するが、全く動く気配もない。

 どんどん首を締める力が強くなっていくばかり。

「おねえちゃんをはなせ!!」

「ぁあ?」

「しょう、ねん…!?」

 少年が空人に向けて蹴りを入れている。だが、力の差でまったく効いていない。

「このガキぃ!!」

 空人はボクを少年に向けて投げつける。

 二人はぶつかり、地面を少し滑る。

「少年!逃げろ!!」「いやだ!!」

「おねえちゃんは、ぼくがまもる!!」

 そういって少年はボクの前に立って両手を大きく広げる。

「ダメだよ!ボクみたいな…怪物なんかみすて」「おねえちゃんはヒーローだよ!!」

「ぇ…?」

 突然、少年から放たれた言葉に困惑する。

「おねえちゃんはかいぶつなんかじゃない!ヒーローだよ!!」

「!!」

 その言葉のおかげで、ボクの心のなにかに火がついた。

『今のアナタなら力を授けられるワ。』

 頭の中でアネモスの声が響くと同時に、瀬界の姿が変わる。

 白衣からブルゾンのオーバーサイズの黒い服へ、黒と白の目から黒から青に、白から薄い赤色に変化した。白髪にはアネモスが現れる。

「異世界の魔女、覚醒ね。」

 瀬界は、異世界の街の魔女に覚醒した。

「おねえちゃん…?」

 突然のことで困惑する少年の肩に手を置く。

「ありがとう、キミのおかげだよ。」

 何かをさっしたのか、少年は後ろに下がった。

「チッ、面倒なことになりやがったな…」

「ボクの街から、消えてもらうよ。空人!!」

 そう言って左腕を伸ばす。

 瀬界の手には剣が握られる、それを構えて走り出す。

「ぶっ殺す!!」

 空人も大剣を持ち、大きく振りかぶる。瀬界が範囲内にくると振り落とす。

 だが、瀬界は一瞬で壁に移動すると天井に走りながら相手の右腕を斬り落とす。

「ふざけんなァァァ!!」

 空人はもう片方の手で大剣を持つと、横に振る。

 すると瀬界の体は真っ二つに斬られた。だが、その体は白い煙となり部屋中を動き回ると背中に回り込み剣を振る、空人の背中には大きなキズがつけられた。

「ガッ…!」

 3歩、前に進ませる。直後――世界が変わる。

 

 

 床がみえない、ただ落ちていく世界へと移動する。

「なんだ、ここ…」

 困惑する中、光り輝くなにかが落ちてくる。

「魔女…」

 その光の正体は瀬界。彼女は勢いよく空人にぶつかると、壁にぶつかりながら軌道を変えて何度も攻撃していく。

「はぁっ!!」

 空人の上にとどまると、そのまま勢いよく落下し別の世界に連れて行く。

 

 

 今度は海のような世界。

 空人には宝石の渦が何度も襲いかかり、体勢を崩して地面に転がる。

「なんなんだ…!」

「これが、異世界の魔女様の力だぞ空人。」

 アモネスの声で前を見る。

 瀬界が両腕を伸ばすと、宝石の渦が止まって彼女のもとに動き始めた。

 そして全てがバラけると一つの縄のような状態になるとそれを振り回して勢いよく空人に叩きつける。

「はっ!」

 右足に巻き付け、持ち上げる。そして頭から地面に叩きつけながら瀬界は横に大きく回り引き戻す。

「さようなら。」

「くっ…がはッ…!」

 もう動けない空人に向けて縄を投げつける。

 足元から宝石は竜巻のように回り始めていく。そのままスピードは上がっていく。

「はぁ…!!はっ!」

 瀬界は光り輝く槍を手にすると勢いよく上空に投げ飛ばす。

 そして、閃光のような速さで渦の中にいる空人に直撃し異世界世界から現実世界に戻る。

「ぁ…、う…」

 空人の身体は一瞬で崩れ落ちた。

 

 騒がしさが消えたことで奥に逃げていた人たちが戻ってきた。

 その中には瀬界の両親がおり、駆け足で彼女の元へ向かい、抱きついた。

「よかった…無事で…」

「ほんとうに、よかったわ…」

「ちょっと、今泣かないでよ」

 今にも泣き出しそうな両親をなだめる。

「そんなことよりも、二人をお願い!」

 両親はボロボロな状態になった花たちのもとへ向かい、急いで脈などを図り始めた。

 

 あのあと二人は命に別状はなく、傷を塞いだあとベットで数時間寝ていると元気になった。

 

「「ありがとうございました!」」

 二人は瀬界と瀬界の両親に感謝の言葉を述べる。

「お父さん、お母さん。ボク行ってくるね。」

 そう言って、瀬界は花たちの隣に並ぶ。

「あぁ、元気でな。」

「あなたが娘でよかったわ。」

 両親には、自分が魔女であり、結界の犠牲となることを伝えている。少しは反対にはっていたけれど、怪物として扱われていた自分が英雄として人のために犠牲になれるならそれでいいと、思いを伝えると少し納得してくれた。

 わたし達は、ここから隣街の【風の街】に住む春ちゃんの元に向かうことにした。

瀬界ちゃんの話から、わたし達5人が入ったあの塔は自分たちが魔女になるからじゃないかと言っていたから。

それが正しいなら春ちゃんも、幸ちゃんも魔女に覚醒する。

 

花と瀬界はデュラタンに、芽生は単身装備夜翼で出発した。

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