【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】 作:『代行さん』
飯田天哉
「緑谷君のヒーローに関する知識は本当に目を見張るものがあるよ」
緑谷出久
「そんなことないよ」
飯田天哉
「緑谷君なら…」
???
『来る』
緑谷出久
「来る?」
抑揚のないその声がした直後、アイ・エキスポの"いち"施設で大爆発が起き、黒煙を上げた。それは緑谷出久がアイ・アイランドに入国して数時間後のことだった。
◆◇◆◇◆
緑谷出久は惚けていた。
夏休みが終盤に差し掛かった頃、窓の外を流れる雲に目もくれず、只々飛行機内部の天井を眺めていた。時々視線を外し、辺りを見回しても広い船内にただ"少人数"しか居らずー成り行きでここまで来てしまったは良いものの未だ信じられていない緑谷出久はひたすらに天井を眺めていた。
緑谷出久
「現実味がないなぁ〜」
手元にあるIDカードを眺め、ひたすらに考えて搾り出した上で吐露した。
緑谷出久の心配を他所に飛び立って数時間の飛行機は『人工島ーアイ・アイランド』の空港に到着したー緑谷出久は制服を整えると持ち込み鞄を片手に飛行機を降りた。
緑谷出久
「ほ、ほ、ほ、本当にアイ・アイランドに来ちゃった」
アナウンス
『只今より入国審査を開始します』
緑谷出久は保安検査室の『コンベアー』に流されていた。『X線』『赤外線』の『スキャニング』ー『本来大勢を確認する上で最も効率的で信頼性の高いセキュリティ』ながら少人数に対してここまで厳重体制ともなると馬鹿馬鹿しくなる。
しかしそれもこれも"この"先に保管されている物を守る場合、足りないくらいのセキュリティだった。キャリーケースを持って人通りの少ないラウンジを抜けー緑谷出久を出迎えたのは見るも珍しい奇抜な建物の数々だった。人工島とは思えない景色。
『例えるなら街とテーマパークの融合』ー快晴の下、舗装された道路には"人だかり"ができており空を見上げれば車が飛んでいる。『パビリオン』ー展覧会、博覧会などの為に設けられる建物が所狭しと建てられており、緑谷出久の気持ちの昂りは天井知らずだった。
緑谷出久
「先ずはホテルに預けないと」
ガイド
「アイ・エキスポへようこそ、何かお困りですか?」
緑谷出久はガイドから大まかな位置の説明を受け、ガードロボを目印に居住施設まで向かうこととなった。
緑谷出久
「本当にここが人工島だなんて信じられない」
華やかなエキスポ会場から居住施設へー緑谷出久は普段テレビでは見られない、取り上げられないシンプルなデザインの居住施設に着くと設定されていた一室で荷物を下ろした。
第一期プレオープンのアイ・エキスポ会場は行きの飛行機の時からは考えられない程"ごった"返していた。道行く人々は笑顔で周囲を見回し、緑谷出久もまたその一員となった。
緑谷出久
「レーダーヒーローのデアデビルに怪獣ヒーローゴジロまで!」
道行く人々は一般客だけでなく有名どころのヒーローもまた集まっていた。見れば見る程見たい所が増えていくエキスポに昼を迎えた頃には心身ともに興奮疲れを起こしていた。
緑谷出久
「午後にはヒーローのサポートアイテム実演もあるのか」
緑谷出久は今日死んでも悔いのない程に楽しんでいた。しかし、疲れというのは万人に共通する生理現象。比較的落ち着きのあるパビリオンを訪れた緑谷出久はパンフレットを片手に休憩を行なっていた。
パビリオンの中は邪魔をしない程度の音楽と水色の落ち着く照明で照らされており、『最新鋭のヒーローアイテム』が奥までズラりと並んでおり、それを眺める物になっていた。まだ世に出回っていない展示物の数々は休憩に訪れていた緑谷出久の興奮を更に高める結果になった。
緑谷出久
「凄すぎて首が痛いな…ん?」
展示物ひとつひとつに体力を持って行かれている緑谷出久は息も絶え絶えの中、ひとつの展示盤の前で立ち止まった。そこには『何もなかった』
緑谷出久
「これはなんだろう?完全迷彩?」
緑谷出久はできる限りの角度から展示物を観察したものの何も発見できず驚愕した。
緑谷出久
「完全迷彩なんて凄いな〜カメレオンの個性をそのまま再現できるなんて、いや、ここまで行くと個性を複数持っているのと変わらないな、それにしてもどんな構造をしてるんだろう?どの角度から見ても違和感がないや」
飯田天哉
「そこの君」
緑谷出久は肩を叩かれ振り返った。そこには長身で黒髪の男性が立っていた。やや警戒を感じる雰囲気に緑谷出久はそれを見て固まり"なぜ声を掛けられた"のか考え始め、その間身動きを止めていた。
飯田天哉
「早く答えたらどうだい」
緑谷出久
「あぁあ!すいません、お邪魔でしたか?」
飯田天哉
「そうではない、"何分"不審な行動が目立ったので声を掛けさせてもらった。先程から何も展示されていない場所を見つめ何をしている?」
緑谷出久
「何…も?」
緑谷出久は展示盤と男性を交互に見つめた後『極度の疲労状態により倒れた』
飯田天哉
「君!?大丈夫かい!」
緑谷出久
「ありがとうございます」
飯田天哉
「気分が優れないとは自己管理を怠っていては楽しめるものも楽しめないぞ君」
緑谷出久
「すみません」
緑谷が倒れた後、運び出される形でフードコートに来ていた。最初は"病院"果ては"ドクターヘリ"まで呼ぼうとしていた男性ー緑谷はそこまで深刻でないことを説明した上で代替案として"提案した結果"であった。
飯田天哉
「君は見たところ一般客かね?」
緑谷出久
「そうです、緑谷出久っていいます」
飯田天哉
「僕は飯田天哉だ」
男性ー飯田天哉は自己紹介と共に素早い動作で手を差し出した。緑谷は差し出された手を握り返すことで返事をした。それと同時に『飯田』という苗字に聞き覚えがあり記憶を遡っていた。
緑谷出久
「飯田ってプロヒーローと同じ苗字だ」
飯田天哉
「む?何か言ったか?」
記憶の中の『情報』から『飯田家』が代々【エンジン】という個性を持ってヒーロー活動に勤しむ『ヒーロー"一家"』のことを思い出した。緑谷の《ブツブツ》とした独り言を聞き取れなかった飯田は眉をひそめて聞き返した。
緑谷出久
「ターボヒーローインゲニウムと同じ苗字だなって」
飯田天哉
「インゲニウムは兄のヒーロー名だ」
緑谷出久
「えぇ!!」
『緑谷出久はアイ・アイランドでプロヒーローの兄弟と思いがけない出会いをした』
◆◇◆◇◆
緑谷出久
「ば!爆発!」
飯田天哉
「何かの催し物だろうか、だがあの方向には何も無い筈だが」
爆発の起きた方を見ると黒煙が上がっており、瞼の裏に見える『既視感』もより一層濃くなり居ても立っても居られなくなった緑谷は走り出した。
飯田天哉
「緑谷君、どうしたんだい?」
緑谷出久
「ちょ、ちょっと気になっちゃって、またね飯田君」
飯田天哉
「緑谷君!」
緑谷の目には『火の海の中、オールマイトが横たわる姿』が見えていた。無論、現実ではないことは緑谷自身がよく分かっていることながら"この"『既視感』においてそれは見過ごすことのできない物だった。
緑谷出久
「あそこだ!」
居住施設やエキスポのある場所とは違う施設。『開発施設』ー道路に面している場所。黒煙は"そこ"から上がっていた。緑谷が到着したその時には既に火の手も上がっており、無数のガードロボットが薙ぎ倒されていた。
緑谷出久
「…ッ」
首謀者に対し声を掛けようと飛び出し掛けた緑谷の身体が後方へと引っ張られ物陰に連れ込まれた。それに反撃をしようとした緑谷は続く声掛けに警戒を解いた。
飯田天哉
「緑谷君、君はなんて無謀なことを」
緑谷出久
「飯田君!?」
焦りを露わにした飯田が緑谷の元に駆けつけていた。