【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】 作:『代行さん』
◆◇◆◇◆
誰かの話し声が聞こえ、緑谷出久は顔を上げたー『バーの様な雰囲気の一室、カウンター内では黒いモヤがコップを磨いており、バーカウンターを挟んで向かいの席には痩せかけた人間が座っていた』異様な雰囲気が漂う中、痩せかけた人間は何やら誰かと話しているのが聞きとれた。
穏やかな声
「それを取ってきて欲しいんだ」
しわがれた声
「何だってこんなガキとガラクタを?」
どこか聞き覚えのある声
「ガラクタとは何だ!それは個性因子を過度に活性化させるだけではなくアルファ細胞の活性化も…」
しわがれた声
「わかる様に説明しろドクター」
ドクター
「ック」
穏やかな声
「そのガラクタはね、弔。僕にとって特別なものになるんだ。でもそれは未完成品でね、そこでその娘だ。その装置を完成させるためには彼女の【個性】が必要になるんだよ。近々アイ・アイランドが接近するみたいでね、その2つが揃うんだ。だから頼んだよ、弔」
ドクター
「くれぐれもしくじるんじゃないぞ」
弔
「分かった」
それ以降、ドクターと呼ばれた男と穏やかな声は聞こえてこなくなった。深いため息が聞こえ弔と呼ばれた痩せかけた人間がカウンターに肩肘をつき、持っていた資料と写真を見て呟いた。
弔
「ドクターは相変わらず難しい言葉ばかりで説明が下手くそだ」
弔はカウンターにその両方を雑に置いた。
弔
「黒霧、脳無。お前らに任せた、しくじるなよ」
黒霧
「分かりました」
『緑谷の意識はそこで途絶えた』
◆◇◆◇◆
飯田天哉
「何!!」
飯田は瞬きの間に空中へと投げ出され、抱えていた二人諸共空中に放り出され、体勢を崩していた。
落下に至るまでそれ程長い時間は掛からなかった。自由落下を認めつつも僅かばかりの滞空時間が設けられた後に落ち始め、暴風に晒される3人の呼吸が次第に弱まっていくー飯田の絶叫により緑谷は辛うじて目を覚ました。
緑谷出久
「飯田君?」
飯田天哉
「緑谷君!大変なことになった」
意識の乱れる中、飯田の慌て様に緑谷は辺りを見回した。広がる青空と傾き始めている太陽、下を見ればアイ・アイランドの全体が見えた。
飯田天哉
「すまない緑谷君、逃げ損ねてしまった」
緑谷出久
「ううん、僕の、我儘に付き合わせちゃってごめん飯田君」
緑谷は手を伸ばし飯田に触れると、3人の落下スピードが段々と緩やかになっていった。
飯田天哉
「これは!?」
緑谷出久
「飯田君、あの建物に向かって」
緑谷はもう一方の手でアイ・アイランドにある一番高い建物を指差した。しかし飯田は緑谷に言った。
飯田天哉
「いや、この状況は僕達の手に余る!プロを呼びにいくべきだ」
緑谷出久
「…僕は」
飯田はここまでよく頑張ったと言い、この場からの撤退を勧めた。緑谷は
飯田天哉
「緑谷君?」
《ガクッ》と落下に勢いが生まれ、飯田は咄嗟に何かに捕まった。飯田の腕が上空から海に勢いよく下がりはしたものの落下の勢いはそれ以上の悪化は見せず"事なきを得た"。
飯田天哉
「いきなり何をするんだ」
呼吸と精神が落ち着いた飯田は掴んでいた手を引き上げ、いるであろう緑谷に視線を送ったが『そこには黒い腕だけが残っていた』
飯田天哉
「緑谷君…?」
エアロダイナミックフィールドの周りに生じた黒い影、緑谷は他2人を突き飛ばした。エアロダイナミックフィールドの拡大ーその瞬間は戦闘において弱点となってしまう。既存の空間を徐々に広げ、対象に付与するこの時、既存の空間は希薄になり本来の防御性を発揮できなくなってしまう。移動に使用するならいざ知らず、攻撃を防ぐ事は先ずできなかった。
突き飛ばした腕は肘の付近で切断され、自由落下する緑谷と飯田に掴まれた腕に分かれてしまった。
緑谷出久
「考えろ、考えろ!考えろ!!」
助けて貰おうにも既に手の届かない広さまで拡大した距離を前に緑谷は考えるのを放棄した。身を翻した緑谷は件の建物に向かっての着地体勢たるー拳を構えた。
緑谷出久
「これしか方法はない!」
迫り来る建物の屋上、それは瞬く間に拡大して行きー緑谷に"あわや"接触するとなった寸前にそれよりも速く放たれた拳により『盛大な崩壊音と共に屋上に入った亀裂ーそれは瞬く間に波及し、屋上全体を一層下へ運んだ』
上がる土煙と警報機、回る赤色灯により点滅するように光る土煙の中、《フラフラ》の緑谷が居た。
不時着に拳が先着したはいいもののその勢いは凄まじく、エアロダイナミックフィールドのない身体にとっては多大なダメージとなった。出血は至る所からしており、右脇と肩甲骨は呼吸を繰り返すたびに握り潰されるような痛みを伴った。引き摺る足に力が入っているのが奇跡な程だった。
黒霧
「まさか生還するとは少々みくびっていたようですね」
緑谷出久
「お前」
土煙の中、黒霧が装置を手に緑谷の到着に驚きを見せた。
黒霧
「ですがその傷で何ができるのでしょうか?」
黒霧の指摘通り、引き摺っていた足に力が入らなくなった緑谷は倒れ込んだ。膝をつき、辛うじて片手で地面を捉えー這い寄ろうと踠いていた。
黒霧
「やはり貴方は何処かおかしいのではありませんか?」
その異常な執念に黒霧は『眉をひそめた』ー"一挙手一投足"にでも死に絶える重症の少年が不気味でならなかった。そんな異常者を前にー黒霧は後退りをしていた。