【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】   作:『代行さん』

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院内の幕間『それから』

◆◇◆◇◆

 

緑谷出久

「…」

 

緑谷は病院食を口に運び、ゆっくりと咀嚼した。しかし"食べども食べども"胃に溜まる気配がなかった。その理由は現在病院食を掬っているスプーンを持っている手が緑谷の年齢と照らし合わせて明らかに小ぶりで弱々しいことに原因があった。

 

それというのも元々運び込まれた緑谷は両腕欠損状態だった。その後のきっかけにより隻腕となった。その生えている片腕でさえも前述の通り大変使い勝手の悪い状況だー先の戦いにおいて負傷と原因不明な事態のせいで消失したものと考えられた。

 

きっかけというのは飯田が引子に渡していた『緑谷の一部だった物』によるものであり、緑谷にこれを見せたところ立ち所に生えてきたのであった。

 

◆◇◆◇◆

 

その後、数日経った頃ー緑谷の元を訪れたとある医者の勧めるところで入院生活を続けることとなった。医者の言い分は『欠損部位を補う個性というのが大変珍しく是非回復するまでサポートをさせて欲しい』とのことだった。入院生活により多少腕が太みと長さを取り戻しつつも未だ生えてこない片腕のこともあり緑谷出久は"これ"に了承した。

 

 

 

緑谷出久

「お〜い」

 

誰もいない病室で緑谷自分の腕に対して声を掛けていた。決して気が触れたのではなく、【個性】の特性について必要な確認作業だった。しかし、声掛け、時間経過のいずれを待ってみたものの『手に目玉が出現することはなかった』

 

【個性】の消失、それが一瞬過ぎったものの"ふた通り"緑谷の中で飲み込む準備ができていた。

 

ひとつは『そもそも無個性』だったことによる『諦め』ー個性消失を受けたところで元に戻ったに過ぎない。当初より考えていた『サポート系』学校への進学を固めるだけだった。

 

ふたつは『個性の回復期やそれに類する何らかの理由』ー黒い何かの消失は前回を含めて2回あった。1回目は自宅の台所でー2回目は院内とそれぞれ個性の残穢が確認できたこと。そして2回目に至っては片腕が生えてきたこともあって個性が『回復段階』に入っており『現在』は返事をできるだけの余裕がない可能性だった。

 

緑谷自身はふたつ目を推していた。黒い塊の消失はともかくとして、医者も驚愕する欠損部位の回復速度ー数日前まで幼子と見紛う程弱々しかった腕は現在『やや痩せているものの長さとしては元々生えていた腕』と大差のない様子を見せていた。これを『無個性』や『個性の消失』と片付けるには余りに異常性が強いと見えた。

 

緑谷出久

「それでも勉強はしないとな」

 

緑谷はペンを持ち上げ勉強に移りつつ、"このこと"について思い出していた。

 

◇◆◇◆◇

 

緑谷引子

「出久、話があるの」

 

緑谷出久

「どうしたの母さん?」

 

病室での一件、引子はいつになく真面目な顔で出久を見ていた。最早睨みつけていると言っていい程ー真剣な表情をとっていた。

 

緑谷引子

「出久?貴方の腕についてお母さんに黙ってることはない?」

 

緑谷出久

「そ、それは」

 

出久は話題を逸らそうとした所、引子は出久の細い手を両手で包み込んだ。細身ながらしっかりした母親の手に包み込まれた手に体温を僅かに感じ《ピクッ》と指が反応した。

 

緑谷引子

「お母さんも出久に言えなかったことがあるからそれと交換じゃダメ?」

 

緑谷出久

「…」

 

出久は涙を溜める引子を前に『苦虫を潰した様な表情をとった』ー緑谷は【個性】をなぜ今まで隠していたのか、それは個性発現の経緯からだった。『無個性』を苦にビルからの飛び降りを考え、実際に落ちたことを包み隠さず、ましてや一部を濁して伝えるにはあまりにも"荒唐無稽"だったからだ。

 

出久のそんな様子を見て引子の手は力をより緩めた。

 

緑谷引子

「分かった、お母さん待つからいつか教えてね」

 

緑谷出久

「ごめんね母さん」

 

◇◆◇◆◇

 

『緑谷は確固たる意思を持って回復に努め、個性について理解することを決意した』

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