【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】 作:『代行さん』
緑谷出久の入院生活が1週間を経とうとしていた頃ー病室をノックする音が聞こえた。緑谷出久はその行動により『母親』では無いことを理解する。特に断る理由もないため返事をした。
緑谷出久
「どうぞ」
男の声
「失礼致します」
引き戸の先の男の声、緑谷出久にそのような知人や知り合いはいなかった。スライドして開く扉から現れたのは短く切り揃えられた黒髪が覗く『警察帽』を身につけた男性だった。腕には果物が入ったバスケットー見るからにお見舞いをしに来たと言った風貌だった。
緑谷出久
「えっと?」
緑谷出久は『記憶』を辿ってみたものの、再度そのような知人、知り合いがいないことを確認した。男性が頭を深々と下げ自己紹介を始めた。
男の声
「回復して何よりです。私は警察の塚内と申します」
そう言った男は警察手帳を広げ顔写真と共に確認してみせた。緑谷はそれに頷き返事をすると塚内は改めて緑谷に話を始めた。
塚内直正
「本日はアイ・アイランドで発生したヴィラン襲撃事件についての状況確認のためお伺いさせて頂きました。ご協力を」
緑谷出久
「分かりました」
断る理由がない緑谷はペンを置くとベッドの横にある椅子に腰掛けた塚内に向き直った。状況確認ー不思議なことに目撃者は少なく事件全体像すら掴めていない状態のようで緑谷を含む、被害者の女性、飯田天哉、現場に駆けつけたヒーローへの聴取を他にも行っていることを伝えられた。
塚内直正
「つかぬことをお伺いしますが緑谷さんは無個性で届出をされていましたよね?」
緑谷出久
「はい」
塚内直正
「ですが今回の件において個性の解析や現在の状態を見る限りとてもそうは見えないのですが」
緑谷出久
「それについては色々ありまして」
塚内直正
「そうですか、状況が落ち着き次第『個性変更届』を出すことをお勧めします。今回のことであらぬ疑いをかけられないとも限りませんので」
緑谷出久
「ありがとうございます」
緑谷は『そんなものがあるのか』と思いつつ聴取を受け続けた。
時間にして1時間程で聴取は終わり、昼食時を迎えたー塚内警部が手帳と睨めっこを続ける傍で昼食を食べる緑谷はふと、ある事を思い出した。
緑谷出久
「塚内さん、脳無はどうなってますか?」
塚内直正
「のう…む?」
緑谷出久
「えっと、こう大きくて鳥っぽい口に剥き出しの歯、脳みそが出ていて」
塚内直正
「なるほど、彼なら刑務所の隔離病棟で拘束してるよ」
緑谷出久
「他には」
塚内直正
「他?」
緑谷出久
「何というか、モヤモヤしていて煙が人型をとっているような」
塚内直正
「君が話していた黒霧って奴かい?」
緑谷出久
「はい」
塚内直正
「残念ながら彼は逃げたものと思われる、痕跡もなく追跡は不可能だった」
緑谷出久
「そうなんですね」
塚内直正
「君の言っていた『空間移動』が彼の個性ならある程度絞れるかもしれない、君はよく頑張ったよ」
そう言った塚内警部は腕時計を確かめると帽子と上着を手に取ると緑谷に挨拶をした。帰り側何かあったらと電話番号を受けとった。味の薄いスープを飲みながら緑谷は塚内の出ていった扉を《ボーッ》としながら見ていた。