【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】   作:『代行さん』

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ー『有名人と遭遇』

◆◇◆◇◆

 

緑谷の片腕が長さと太身を増したある日、廊下の向こうから歩いてくるその人を目撃した。今にも死にそうな程痩せ細ったその男性ー眼下は窪み、頬は痩せこけていた。

 

緑谷の目にはその歩く姿があまりに危なく見えたーその危なさの"所以"片足を庇っている様な歩き方が明らかな不調見せていた為だった。剥き出しの歯は言ってしまえば『食いしばっている様』にも見えた。

 

緑谷は初めこそ気にしていなかった。目に入る体調不良の年長者、病院にはそんな患者が五万といる。それ程珍しい光景でもなかったーしかしある時、その御仁が目の前で吐血した。真っ白な床に不規則な軌道をとって血液が広がった。

 

地面に触れた血液が四方八方に飛び散る程の勢い、口の中を切ったという軽症ではなく、体内で溜まった血液を体外に無理やり排出させる生理現象。緑谷は驚き駆け寄った。

 

緑谷出久

「だ、大丈夫ですか?」

 

骸のような人

「ん?すまないね、少年」

 

緑谷はその人に触れて驚き固まった。服の上からは分からなかった身体の欠損、脂肪が殆どなくー骨張った四肢に乗っかっているだけの筋肉と必要最低限の身体構造に低体温、病人そのものだった。

 

 

 

骸のような人

「すまないね、ちょっと無理をし過ぎたみたいだ」

 

緑谷出久

「あ、分かります。その気持ち」

 

咳き込む人に肩を貸していた緑谷は近くの休憩所まで肩を貸した後、骸のような人を休憩所の椅子に座らせた。改めて見ても何故これで生きているのか不思議な程ー座ったその人を注視すれば不調が"有り有り"と確認できた。

 

緑谷出久

「こちらをどうぞ」

 

骸のような人

「すまない」

 

緑谷は自販機から『ミネラルウォーター』を買うと骸のような人に手渡した。病衣の隙間から確認できた手首も指の一本一本まで四肢と同じように骨張っていた。

 

骸のような人

「おや、君のその身体は」

 

緑谷出久

「これは、色々ありまして」

 

緑谷が『ミネラルウォーター』から手を離し頭を掻いた。流石に『何か変な人達と争って無くしました』なんて言えるわけがなかった。言葉を濁した緑谷はついでに自分の飲み物も買った。

 

骸のような人

「…すまない」

 

緑谷出久

「いえ、僕も飲みたかったので」

 

緑谷は自販機から『ヒーローコラボの缶々』を見つけると透かさず買って後悔した。片手で開けることができないことを買った後に気がついた。緑谷は自販機の取り出し口から《ウキウキ》で取り出して固まっていた。

 

骸のような人

「少年」

 

緑谷出久

「はい?」

 

緑谷はその後骸のような人に缶を開けて貰った。

 

◆◇◆◇◆

 

それが数分前の出来事であり、現在その骸のような人は緑谷に寄り掛かっていた。

 

世間話をしていた折《うつらうつら》としたその人は支えられた直後に窪んだ眼下から鋭く除いていた眼光を失った。最初は緊急事態かと考えた緑谷は心臓に手を置き、ただ目を閉じているのだと安堵した。

 

手のひらに感じる鼓動と聞こえる寝息に緑谷はしばしば"その人"の休息を手助けした。

 

緑谷出久

「何をしていた人なんだろう?」

 

緑谷はその人を眺めながら疑問が生まれた。これ程までに衰弱した身体、何かの毒物に侵されたのか、個性による事件や事故の後遺症なのかー尽きない疑問に気がつけば数時間をその人に費やしていた。

 

 

 

骸のような人

「すまない少年」

 

緑谷出久

「ゆっくり休めたようでよかったです」

 

緑谷の太腿の上、萎れた金髪の骸のような人は目を開いた。窪んだ眼下に光が灯ったのを見て緑谷が「おはようございます」と言った後、飛び起きるように身体を上げた。その速さたるやとても死にかけているようには見えなかった。

 

骸のような人

「疲れが溜まっていたのかな?」

 

《ハハハ》と笑ったその姿に何処か見覚えー既視感を受けた。何か有名人に似ている様な雰囲気に仕草と言った内容に緑谷はふと、湧いた疑問を口にした。

 

緑谷出久

「そう言えば、名前は?」

 

骸のような人

「…」

 

緑谷出久

「?」

 

緑谷は目の前の人の雰囲気が僅かに強張ったことを見逃さなかった。確かに死にかけての人のはずなのにも関わらず、何処か隙を見せないーある種の他人を信頼していない、信用するのを躊躇っている様子が見られた。

 

緑谷出久

「何か不都合があれば別に」

 

骸のような人

「いや、そうではないのだが」

 

その人は口元に手を当てると少し考え込み、言った。

 

骸のような人

「私は八木俊典、少年は?」

 

緑谷出久

「僕は緑谷出久って言います」

 

緑谷は差し出された手を握り返し驚いた。『力強い握力』手のひらと手の甲に受けた骨の感触と確かな膂力、再び感じた生命力の強さ、とても死にかけているとは思えなかった。

 

緑谷出久

「失礼ですがご職業は?」

 

八木俊典

「ヒーロー科の教師をしているよ、非番だけど」

 

緑谷出久

「そうなんですね」

 

緑谷は腑に落ちた様子を見せた。

 

緑谷出久

「あの」

 

若い男の声

「見つけましたよ!八木さん」

 

八木俊典

「ゲッ」

 

緑谷出久

「この声!貴方は!」

 

二人の会話を遮るように若い声が2人を叩いた。八木はそれに渋い表情を浮かべた。緑谷は声の先に目をやって驚き感嘆を口にした。

 

緑谷出久

「サーナイトアイ!」

 

サーナイトアイ

「誰だね君は」

 

緑谷出久

「僕は緑谷出久と言います!えっと、貴方がどうしてここに?」

 

サーナイトアイ

「それは」

 

八木俊典

「…佐々木君、すまないね」

 

佐々木未来

「いえ」

 

佐々木、サーナイトアイは八木の元に向かった。その姿から身体の不調を知っている関係であることが伺えた。緑谷は興奮を無理やり鎮めるとその場を後にしようとした。

 

佐々木未来

「ちょっと待ちたまえ」

 

緑谷出久

「はい?」

 

佐々木未来

「八木さんがお世話になった。本来なら私が彼をサポートしないといけなかったところをだ」

 

緑谷出久

「い、いえ気にしないで下さい」

 

佐々木未来

「この御礼はいつかさせて頂きます。何かお困りになりましたらこちらまでお電話下さい」

 

緑谷は彼の事務所、サーナイトアイ事務所の連絡先が入った名刺と佐々木未来の電話番号の書かれた2枚を受け取り固まった。

 

佐々木未来

「では、これで」

 

緑谷出久

「へ?」

 

佐々木は八木を連れて何処かへと行ってしまった。そんな様子を他所に1人取り残された緑谷は目の前の名刺が何かのドッキリの小道具に見えて仕方がなかった。

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