【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】   作:『代行さん』

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ー『圧倒的』

◆◇◆◇◆

 

飛んできた護送車を前にした引子は咄嗟に手を前に出そうとし、両肩に掛けていた鞄の紐に邪魔されてしまった。

 

呆然と眺めている息子を前に引子は衝撃に備え、目を瞑った。あわや真正面から車の衝突を受けんとしたその時、鳴り響くに留まった轟音に目を開けると出久が間に入って片腕で護送車の正面ー装甲板を掌で貫通させ、止めて見せた。

 

装甲板が左右に裂けた様はあり得ずー『裂けるチーズ』の様に予め裂け易いように細工が施してあったのではないかと思う程に見事に両断されていた。

 

緑谷引子

「い、出久?」

 

引子の搾り出した言葉に出久は応えることなく拳を引き絞り、護送車に向けて放った。

 

◆◇◆◇◆

 

緑谷出久

「お前」

 

緑谷は怒りを露わにしていた。一度成らず二度、三度『脳無』の騒動に巻き込まれ今回に至っては身内への不幸が未遂とはいえ"起こり得た"状況。緑谷の怒りは最もだった。

 

緑谷は繰り返しの戦闘で『脳無』がこの程度でやられないことは分かっていた。緑谷は護送車を止める為に拡張していたエアロダイナミックフィールドをそのままに手を振り切ると土煙を押し出し視界を確保した。

 

緑谷の予感は的中していたー護送車を破壊して現れた脳無に傷は1つもなく明らかな戦闘の意思を全身で表していた。両腕を地面に当てた威嚇からのひと掻きは出久と脳無との離れていた距離を瞬間的に縮めた。

 

ふた掻き目には脳無の間合いとなり、緑谷に目掛けて脳無は『成人男性の胴回りより太い両腕』を組み、凄まじい速さで振り下ろした。その威力たるや視界に入る街中のビル群ーその窓という窓を揺らしに揺らした。

 

しかし、《ガタガタ》となった窓が静まるよりも速く窓ガラスを叩き割るほどの衝撃が同程度の広さに走った。ひび割れてから砕けるのではなくー瞬間的に砕け散ったのだった。

 

再三の展開『エアロダイナミックフィールドによる衝撃無効』ー脳無の両腕は自身の強烈な一撃により破裂し、またも"花が咲いた"。これにて決着かに思えた。

 

天を仰ぎ見るように仰け反った脳無は『その視線を緑谷に向ける』と手の吹き飛んだ手首だけの両腕を拘束に用いた。

 

緑谷出久

「ック!」

 

知ってか知らずか脳無は『エアロダイナミックフィールドの弱点』特定の部位にしか展開できない点をついて、緑谷よ拘束に成功した。万力の如く締まっていく両腕の中、《ミシミシ》と緑谷の身体が締め上げられていく

 

緑谷出久

「まっ…ずい」

 

身体全体が締め付けられていき、肺の圧迫から呼吸も浅くなり始め、あわや気絶一歩手前といったところで急に締め付けが緩んだ。

 

緑谷引子

「出久!」

 

思わぬ手助けー引子の【引力】により、両腕が外側へと引っ張られ、締まっていく筈の腕が僅かに緩み出久は逃れることに成功した。しかし、引子は両手を地面につき疲労を露わにした。

 

緑谷出久

「母さん」

 

そんな様子を放って置けるわけもなく出久は引子の元に駆け寄った。【個性】の許容値を超えた弾みで引子は身動き、身じろぎ"ひとつ"取れない様子だった。

 

緑谷引子

「逃げて、出…久」

 

緑谷出久

「そんなこと」

 

2人の言い争いの内にも脳無の破裂していた両手は徐々に回復を見せていた。出久は"守りに徹すれば"と考え右手を構えたが『頭痛』により膝をついた。この時、右手の黒色化も解け『震えが絶え間なく現れていた』

 

緑谷出久

「?、??」

 

緑谷引子

「出久!」

 

身体の制御を失った出久の目の前で脳無は両腕を青空に向け振り上げると指を組みー体重を乗せた一撃は出久に向けて振り下ろされた。

 

緑谷引子

「出久!!」

 

不調の最中ー充血しつつある目を無理矢理にでも広げた引子が脳無の全身を捉え、力を振り絞って【引力】を使った。僅かばかりの後退を見せるも勢いは衰えることなく出久の頭部に拳が迫っていった。

 

◆◇◆◇◆

 

このまま拳が直撃すれば出久の頭部は叩きつけられたトマトの様に道路一面に真っ赤な液体を撒き散らすであろう。しかし、そうはならなかった。

 

◆◇◆◇◆

 

『颯爽と現れた何かは』脳無の間合いに入ると拳を跳ね除け、返す拳で下がった頭部目掛けて透かさず拳を貯めると

 

力みのレベルが違う声

「デトロイト!」

 

目にも止まらぬ一閃にて捉え、一撃で脳無を遥か彼方へと吹き飛ばした。

 

力みのレベルが違う声

「スマァッシュ!!」

 

拳の風圧でビルのコンクリートにヒビが入り、道路は踏み込みにて砕け踊る。脳無は拳の威力を相殺しきれずに雲を跳ね除け青空のシミの一つとなった。

 

大惨事と日常の喧騒が渦巻く中、警察が程なくして到着した。

 

『この脳無を一撃で"のした"御仁は出久と引子を抱えて病院へと消えていったのだとか』

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