【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】   作:『代行さん』

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夏休み前日『瘡蓋』

一日の過ぎる早さに変わりはない。しかし、緑谷出久は日々過ぎていく時間の流れが僅かでも"早く"なっているんじゃないかと錯覚を受けていた。昨日いつ寝たかも定かではない早朝は、鳥の囀りと共に訪れていた。

 

緑谷出久

「日曜…」

 

寝ぼけ眼の中、不意になった時計の鈴の音に身体をビクつかせ、少し不満そうに時計を持ち上げ止めた。『オールマイト』世界でその名を知らない人がいない程の人物、ヒーローの代名詞的人物ーそれが印刷された時計の針は『5:30』を指し示していた。

 

その形を見て"ふと"窓の外、曇りガラスの向こうを確認したくなりカーテンを徐に開けた。日差しが昇る前、静かな青色に包まれた景色を認めた緑谷出久は呟いた。

 

緑谷出久

「少し外を歩こうかな」

 

 

 

澄んだ空気が漏れ出る玄関の扉の先を眺めながら靴を履き踵を整えた緑谷出久は玄関のドアノブに手を掛けると振り返り、まだ灯るには早いリビングに向かって「行ってきます」と言って外へと出ていった。ドアノブが捻られ、玄関の暗闇から明るい外へと飛び出した緑谷出久は高層ビルの上部がやや黄色の橙に染まっていることにため息を漏らしつつ静かに扉を閉めた。

 

普段使いのスニーカーがコンクリートを《タンタン》とならす中、気がつけば一階の駐輪場に到着していた。澄んだ空気を名一杯吸い込み、吐き出した。夏というにはやや肌寒い空気は乾燥気味の緑谷出久の鼻腔を僅かに刺した。

 

緑谷出久

「…」

 

そう、肌寒い筈の空気は両腕で感じられなかった。そのことに物悲しくなりながらも緑谷出久は慣れないフォームで小走りを始めた。スニーカーが偶に地面を蹴り上げる音が何度か聞こえていた。

 

 

 

遠くに見える高層ビルの橙色の染め上げは、大凡2倍程の面積になっていた。慣れないフォームと使い慣れていない筋肉がやや引きつりを起こすと歩き、十分に休めることができればまた走り始めるを繰り返した。別段走ることや運動が好きなわけでもなかったが緑谷出久は気がつけばかなり遠くまで走っていた。

 

そこは通学路の近く、心の行先、見上げれば仕切りで視界が隠れた。工事の音が聞こえる。いつかの日には屋上があったそこは既に、仕切りで隠れて見えなくなっていた。

 

工事現場の人

「おはようございます」

 

緑谷出久

「あ、おはようございます」

 

工事現場の人

「何か御用でしょうか?」

 

緑谷出久

「いえ、この建物が気になっただけです」

 

工事現場の人

「そうですか」

 

緑谷出久は慌てて返事をし、工事現場の男性はヘルメットのつばを軽くつまみ会釈をすると工事車両の誘導を始めた。緑谷出久は今立っている場所から歩き出すと振り返ることなく歩き始めた。

 

 

 

高層ビルは中腹まで染め上がり、そうすると街の至る所でも黄色が目立つ様になっていた。やや盛り上がりのある丘の上、息を切らした緑谷出久は少しの間それを眺めていた。

 

緑谷出久

「こんなに走ったのはいつぶりだろう」

 

歳を重ねるごとにやめていった無意味なことがこれ程気持ちのいいことなのかと手のひらを必死に脈打つ心臓に起き目を閉じた。

 

緑谷出久は大きく息を吸い込むと顔を出した朝日に向かって大きく吐いた。

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