【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】 作:『代行さん』
緑谷出久
「おはよう」
目の玉
「…」
緑谷出久は丘を歩き始めていた。気がつけば目の玉が手の甲に現れているのに気がつくと振っていた手を止め、目の玉を目の前に持ってきる姿勢で歩いた。
SFでよく見かける腕の通信機に話しかける様な姿勢だ。
緑谷出久
「…」
目の玉
「…」
話しかけた緑谷出久だったが目の玉は返事をすることなく緑谷出久を凝視していた。それが何とも言えないシュールな絵面なままに目を逸らし、クスッと笑ってしまった。目の玉はいつもの様に少し辺りを見回し、消えていった。
◆◇◆◇◆
工事現場とは別の帰り道を通る中、街頭演説をする集団に出会した。
ヒューマライズ穏健派A
「個性についてもっと知りましょう!」
緑谷出久
「何だ?」
ヒューマライズ穏健派B
「おはようございます」
緑谷出久
「お、おはようございます」
緑谷出久がその活動家達を眺めているとその内の一人が気がつき緑谷出久に駆け寄ってきた。マスクで下半分を隠しているその人物は抱えていた『個性終末論』に関するやや厚みのある書籍を緑谷出久へと差し出した。
ヒューマライズ穏健派B
「興味があればどうぞ」
緑谷出久
「どうも」
緑谷出久は慌ててその本を両手で受け取った。活動家のひとりは会釈をすると活動家達の元へと戻っていった。『QUIRK DOOOMSDAY THEORY』と書かれているその本は現在噂になっている【人類の救済】を掲げて活動する宗教の様なものが『聖書』としている著書である。
◆◇◆◇◆
QUIRK DOOOMSDAY THEORY
『個性とは人類の進化であり、その行き着く先は破滅…』
というやや物々しい主張を主軸に執筆されたそれは世間を騒がせている活動家『ヒューマライズ』とは異なり化学的根拠に基づく論調と"締めくくりに"
QUIRK DOOOMSDAY THEORY
『個性とは人類の進化であり、その行き着く先は破滅ではなく最適化なのである』
という内容が読み取れるものだった。読み進める内に緑谷出久は全てに目を通し歴史の内容の一節を口にした
緑谷出久
「個性終末論か」
個性は世代を経るごとにその複雑性を増していっている。始まりの光る赤子"しかり"ーその世代における個性というのは単純なものー体の一部が盛り上がる、爪の伸びが早い、人より大食いなどだった。
しかし、現在の個性は爆発を引き起こす、全身が異形、変形を含めた非一致性を有する人体の構造、進化という言葉で片付けていいものだろうかー説明できる自信がない程に複雑化している。
ヒューマライズはそんな【個性】は「ある日を境に自分達に牙を向く」と考えている集団であり、昨今の活動において過激派な面が見られる準要注意集団である。しかし緑谷出久は街中で声を出している人達を見て少なからず彼女らは過激派ではないことを確信した。
緑谷出久
「個性ってまだ未知な部分が多いからな」
緑谷出久は本を閉じると天井の照明に向かって手を伸ばし、黒い両腕を探す様に眺めると、手の甲ー手のひらを交互に見つめた。
緑谷出久
「君は何だろうね」
自分の腕ながら緑谷出久は自分の腕ではないそれに向かって話しかけた。しかし返事が返ってくることはなかった。