【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】   作:『代行さん』

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ー『カゲり』

緑谷達はすっかり日の沈んだ夜のエキスポに来ていた。昼間の雰囲気から《ガラリ》と変化した風景は人通りが少なく、エキスポに出展されているパビリオンや飾り付けばかりが派手に光るばかりで何処か『寂しさ』を孕んだ物だった。

 

そんな中をメリッサ、八百万を先頭ー2列目を波動、甲矢、緑谷の順番で歩いていた。それぞれが昼間とは違った表情を見せるエキスポ内を眺めていた。

 

通形ミリオ

「お〜い、皆」

 

波動ねじれ

「あ、通形!天喰君は、体調大丈夫?気持ち悪くない?」

 

天喰環

「うん、大丈夫」

 

そんな折、通形が天喰を連れて緑谷一行に合流した。天喰の顔色はやや良くなっているものの本調子という訳ではないーそれでも到着当初から見れば良くなったといえば良くなったといった様子だった。

 

メリッサ

「緑谷君の周りは忙しいわね」

 

八百万百

「ですね」

 

緑谷出久

「あはは」

 

反論の余地がない緑谷は苦笑いを溢した。通形との合流を境に『寂しさ』は何処かへと消えていった。通形が場の空気を明るくする中、メリッサが懐から携帯を取り出した。

 

電話の類ではないようでひとしきり目を通した後、皆から一歩離れて振り返り際ー両手を合わせた。

 

メリッサ

「ごめんなさい。急用ができちゃった」

 

八百万百

「あら、そうなんですの?」

 

波動ねじれ

「残念、それじゃあまた明日」

 

メリッサ

「うん、それじゃあ」

 

そう言ってメリッサが移動用の『形状記憶デバイス』を取り出し、パネルを押し、淡い発光と共にそれは『ポゴスティック』の形状に変形すると跨ったー皆が見送る姿勢をとる中、緑谷の背中が押された。

 

緑谷出久

「おわ!?甲矢先輩何を」

 

甲矢有弓

「送ってあげなよ緑谷君」

 

緑谷出久

「え?でも急用って」

 

甲矢有弓

「あの手の言い訳は方便よ、それに本当だったとしたら尚更心細いでしょ、という訳で」

 

甲矢が緑谷をふん捕まえて説教をした後、踏み込もうとしたメリッサに声を掛けた。

 

甲矢有弓

「メリッサさん!緑谷君が送ってくって」

 

メリッサ

「え?でもエキスポは…」

 

甲矢有弓

「緑谷君」

 

緑谷出久

「えっとぉ」

 

急な振りに緑谷は焦りに焦ると口が止まった。"しどろもどろ"を極力表に出さないように配慮しているものの冷や汗が"ひっきりなしに"溢れ出ていた。

 

怪訝な表情を浮かべるメリッサから『不安』を見た緑谷は取り繕おうとする態度を改め真っ直ぐメリッサを見ると"毅然とした態度"で言った。

 

緑谷出久

「不安そうだから」

 

メリッサ

「…」

 

 

 

メリッサと緑谷が歩く夜道は酷く寂しいものだったーエキスポの光から離れたこの路地では、対照的に必要最低限の灯りしかなく歩くのに不便はないものの華やかさという点では皆無だった。

 

メリッサは先ほどまで出していた『デバイス』を仕舞い込み、肩肘を抱くようにして緑谷の横を歩いていた。緑谷は静かに並走していた。

 

メリッサ

「そんなに分かりやすかった?」

 

自嘲気味に笑顔を溢したメリッサが沈黙を破って緑谷に語り掛けた。緑谷は"何か"を言いかけ様として、無言のまま頷いた。緑谷の行動を真似する様にメリッサもまた無言になった。

 

二人が歩く傍らには度々車が通るもののそれ以外は特に変わりなく時間と景色が過ぎていくだけだった。

 

メリッサ

「サムさんからね。お父さんの研究、止まっちゃうって」

 

緑谷出久

「それは」

 

再び沈黙を破ったのはメリッサからだった。『携帯』の中身、メリッサが不安真っ只中な理由は『個性増幅装置』の研究が上層部より『凍結』されるという旨をサムから受けたからだったことを知らされた緑谷は、一拍置くと質問で返した。

 

緑谷出久

「装置が見つからないからですか?」

 

メリッサ

「あ、違うの!凍結の件は元々上がってたみたいなの」

 

緑谷が地震に引っかかりを残していた『失態』について話した。しかしメリッサはそれを否定し、『凍結』自体は元々議題として上がっていたことで弁明した。

 

メリッサ

「個性の増幅が現実味を帯びるほどに今のヒーロー社会の仕組みが瓦解するんじゃないかって上の人達は気にしてるみたいなの」

 

緑谷出久

「それは、そうですね」

 

メリッサ

「それで今回みたいに奪われたり、無くしたりしちゃったら大変だからって」

 

メリッサの声が少しずつ俯きと共に小さくなっていった。やがて歩く速度が空に浮かぶ星の様に動いているのか分からなくなるほど遅くなったと同時に立ち止まり、両目の涙を手で拭った。

 

メリッサ

「あの研究は、パパが、とても大切に長い時間を掛けて、進めて来たものなの」

 

メリッサは最初指の背で涙を拭って話し続けていた。緑谷はそれを相づちで聞き続けていた。

 

メリッサ

「食べるのも眠る時間も惜しんで研究していたの、必要になるものだからって」

 

メリッサの拭う仕草が手の甲になり、流れる涙が大粒に変わっていった。

 

メリッサ

「けど、もう」

 

メリッサは両手で顔を覆うとその場に泣き崩れた。皆の前では平然としていたものの、緑谷と話す度に歯止めが効かなくなっていき、やがてそれは涙となって溢れ出した。

 

緑谷が"どうしようか"と右往左往し、メリッサに近づいた瞬間抱きつかれた。

 

慰めようと"ホバーハンド"気味になっていた所にメリッサが入り、胸を貸す形になった。最初こそメリッサの行動に驚き慌てふためいたものの、弱々しい彼女を見てどうしようともなかったため、"ぎこちなく"胸を貸し続けた。

 

ただ、泣きじゃくる女性の声だけがエキスポの陰の中で響き続けていた。

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