【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】 作:『代行さん』
メリッサ
「緑谷君」
メリッサがふと時計を見ると『8:50』を指していた。再び眠気に襲われるかと思いきや気がつけば日が昇る時間帯になっていたことに驚いた。椅子から立ち上がり緑谷の近くに屈み込むと緑谷の肩を優しく揺さぶった。
緑谷はその揺れを受け重そうに瞼を持ち上げると半開きの口と共に周囲を見回した。続け様になどの瞬きと小さな欠伸をすると揺さぶられた肩の方に視線を向け、眉を歪めた。
緑谷出久
「ん…?メリッサさん?どうしてここに?」
メリッサ
「寝ぼけてるのね緑谷君」
雨音響く研究室の中、メリッサは緑谷のそんな姿を見て顔を下に向け笑えるのを堪えていた。
緑谷出久
「すみません、寝ちゃってたみたいで」
メリッサ
「それを言うなら私の方よ、送ってくれてありがとう」
緑谷出久
「いえ、そんな」
メリッサ
「お休みの時でも一階はレストランになってるから営業してるんだけど、どう?」
緑谷出久
「そうなんですね、ぜひ」
キャンパスの中を並んで歩く2人は一階のレストランへと向かった。その道中はと言うと『窓に当たる大粒の雨が窓ガラスを揺らし、地面に溜まる様子』が見られた
表現するならなら『叩きつけるように激しい暴雨』である。階段を降りる時そんな様子が見られ、緑谷は何ともなしに見送ったがメリッサは驚いた様子を見せていた。
メリッサ
「珍しく土砂降りね」
階段を降りる中、緑谷は立ち止まったメリッサを見上げる形で止まった。外を珍しそうに眺めるメリッサを見て同じように外を見た緑谷。
緑谷出久
「アイ・アイランドでも珍しいんですか?」
メリッサ
「えぇ、セキュリティシステムが進路を調節してくれるから余程のことがない限りは雨は降らないの」
緑谷出久
「余程って言うのは?」
メリッサ
「基本的には貯水槽の水が足りなくなった場合ね、偶に予想を外しちゃうって時もあるけど」
緑谷出久
「そうなんですね」
メリッサが一通り話し終え歩き始めると緑谷もまたそれに合わせて歩き始めた。
レストランで注文をする2人は《ガラン》としている店内で2人で座れる窓際の席で注文が届くのを窓の景色を見ながら待った。
2人して積極的に話すような性格でも間柄でもないために沈黙が続いた。窓ガラスに当たる水滴は触れると同時に弾けて留まる。
弾けて留まり、弾けて留まる。繰り返すそんな光景の折、溜まりに溜まった雨水が垂直な窓ガラスの上を勢いよく滑り始めた。途中にある雨水を巻き添いにする様にして…。
緑谷はふと、メリッサに対して質問が見つかり「メリッサさん」と前置きをとって声をかけた。椅子に深く腰掛けたメリッサが『幼い少女の様に足を揺らしていた』状態から向き直る様にして緑谷を見やった。
緑谷出久
「メリッサさんはデヴィッド博士…お父さんのところに行かなくても良いんですか?」
机の下ではメリッサが数度、右足のつま先を別々の位置で叩き少し考える素振りを見せた。それ程長くない思考時間の後「そうね」と緑谷の発言に対して答えが出たことを前置きに会話を返した。
メリッサ
「そうね、サムさんがついててくれるから大丈夫よ。本当に問題がある時は電話が掛かってくるから」
緑谷出久
「そうなんですね」
緑谷が《ホッ》と胸を撫で下ろし安堵を表した。何分デヴィッドの容態を見ていた緑谷にとってメリッサのこの返事は安心に足る情報だったからだ。
その後、エキスポに関するお知らせが『アナウンス』により『一時的に開催の調整を行う』旨が告げられた。相当な雨雲の様で回避が間に合わなかったことを知った。
メリッサ
「そうだ、緑谷君」
緑谷出久
「はい」
メリッサ
「その、先輩方には連絡しなくて良いのかしら?」
緑谷出久
「あ"」
《ガキン》と硬直を見せた緑谷は席を急いで立とうとしたが『とある理由』でその行動を中断した。緑谷が考え込む中、運ばれて来た料理により立つに立てない状況となった。
緑谷出久
「えぇっと、どうしよう心配させてるかもしれない。かと言って席を立った場合料理が下げられてしまうし…」
メリッサ
「ふふ、私から有弓さん達にメール送っとくわね」
緑谷出久
「あ、すみませんよろしくお願いします」
メリッサ
「分かったわ」
食事を終えた2人は外に出るのも億劫な状況に研究室へと再び戻ることにした。緑谷はこのまま宿泊先まで戻ることを考えたもののメリッサの提案と説得により研究室まで戻ることにした。
メリッサ
「緑谷君、この後時間ある?見て欲しいものがあるから研究室に来て欲しいんだけど」
緑谷出久
「え?あ、はい、構いませんが」
メリッサ
「ありがとう」
緑谷はこの時、メリッサの後ろ姿に違和感を感じた。後ろ手に纏められた長髪とヘアピンー歩く度に左右に揺れるポニーテールは緑谷の記憶ではなかったものだった。
研究室に戻る道すがら『そのことに』言及した
緑谷出久
「メリッサさん、ずっと作業をされてたんですか?」
メリッサ
「バレちゃった?」
緑谷出久
「一度倒れているんですから安静にしてないと」
緑谷が登り階段の途中で数段飛ばしになると、先を歩いていたメリッサの隣に移動し、体調の心配を口にした。しかし、当のメリッサは緑谷に笑顔を見せた。
メリッサ
「それがね、疲れが吹き飛んじゃって」
緑谷出久
「…」
メリッサ
「嘘じゃないわ」
階段の途中でメリッサが緑谷の心配に対してジェスチャーを返した。力こぶを作る様な姿勢を見せた
その直後、地面が僅かに揺れた直後『メリッサは足を踏み外した』ー揺れに加え、結露により階段の摩擦係数が著しく下がった場所、そこに普段通りメリッサが足をつけ、力を加えた瞬間に前方へと勢いよく倒れ込んだ。
緑谷出久
「少し揺れましたね」
メリッサ
「え?えぇ」
メリッサは眼前に迫る床に手を突こうとした『先のジェスチャー』により肘から地面に着地することが半ば強引に決まっていた為、衝撃に備え目を瞑っていた。
しかし、予想よりも長く訪れない衝撃に目を開くと『空中に静止していた』メリッサの「え?」っという呟きよりも速く緑谷の右手がメリッサの身体に触れ、支えていたのだった。
メリッサ
「これ、緑谷君が?」
緑谷出久
「え?っとはい…」
メリッサ
「超再生って言うのは」
緑谷出久
「話せば、長くなります」
緑谷に隠す気はなかったものの『すれ違い』の様なものが発生した結果『エアロダイナミックフィールド』などの情報が抜け落ちてしまっていた。苦笑いを浮かべる緑谷と《ポカン》としたメリッサは緑谷の【個性】に抱えられる形で研究室へと戻った。
メリッサ
「使った後に食事をしないといけない個性ね…」
緑谷出久
「はい」
メリッサ
「さっき食べた食事は駄目なの?」
緑谷出久
「先に食べていても駄目でした」
メリッサ
「益々不思議ね」
緑谷出久
「(非常に食べづらい)」
緑谷が鞄の中から取り出した食事をする中、メリッサはその光景を"まじまじ"と観察していた。片手の『黒色化』が解けた直後に飲食、咀嚼を行う緑谷、僅かに垂れた汗が"こめかみ"から頬を抜け、顎から緑谷のズボンまでをなぞった。
緑谷出久
「ふぅ」
メリッサ
「…」
その光景を見たメリッサは意を決して、机の上に置いていた『赤い塊』を手に取り緑谷の元に戻った。
緑谷出久
「メリッサさん?」
メリッサ
「ちょっと試して見て欲しいものがあるの」
困惑する緑谷を他所にメリッサは緑谷の左肩に何かを装着した。それは緑谷の肩を大きく包み込む形をしており、緑谷の重心をやや左に傾けるものになった。
メリッサ
「使い方はフル・ガントレットと同じ」
メリッサの真剣な面持ちに緑谷は『パネル』を探し、押し込んだ。
『赤い塊が淡い発光を伴い変形を始めた』ー淡い発光の後、解ける様にして赤い塊が無数の帯の集合体へと変化を始め、緑谷の肩を包み込むとーそこから瞬く間に腰を超えた位置まで拡張を行うと螺旋を描き始めた。
徐々に発光が大人しくなるのに合わせ、赤い塊だったものが『特殊な形』までその全体像を縮小させていき、引き絞られていった後、緑谷の左肩より先に『真紅の左腕』擬きが生成されていた。
緑谷出久
「これ!」
『緑谷の左腕』ー無数の螺旋が束なって編み込まれた集合体、その模様は『鱗』の様に見えた。肩、二の腕、上腕と続きー手首の先には指が2本あり、肩関節の筋肉の動きに合わせて開閉が行われてる様に設計された。それは緑谷の肩に《ガッチリ》と固定されていた。
メリッサ
「名付けるならスケイルアーム」
緑谷出久
「スケイルアーム…」
メリッサ
「緑谷君の腕見た時に思ったの上手に鍛えてるけど歪だなって、きっと身体の方も」
緑谷出久
「そこまで分かるんですね」
メリッサ
「お手本が近くにいたから」
メリッサがひと呼吸置いて、緑谷に向き直った。
メリッサ
「そのスケイルアームは今までのアンバランスさを矯正する様にわざと重く設計したの、もし元の腕が戻って来ても良い様にね」
緑谷出久
「そうなんですね。でも矯正が終わった後は…」
メリッサ
「そのことで一つ提案があるの」
メリッサは再び呼吸を整え、意を決して緑谷に言った。
メリッサ
「緑谷君が定期的にアイ・アイランドに来て、私に調整させて欲しいの」
緑谷出久
「え?えぇえ!」
緑谷は左腕を下にする形で盛大に横転した。