【R18個性】も『クソナード』に掛かれば【強個性】 作:『代行さん』
顔の見えない怒り心頭の男
「どいつもこいつも、親父が後でうるさくなるんだよ」
顔の見えない気だるげな男は緑谷出久の足に触れる。緑谷出久に僅かな痛みを与えた後、気だるげな男は手袋をはめると言った。
顔の見えない怒り心頭の男
「…これで貸し借りなしだ、行くぞ壊理」
緑谷出久は手を繋ぎ去っていく2つの影を眺めながら意識を失った。
◇◆◇◆◇
数分前より、それは起こった。夏休みの前日から日課にしようと決めた散歩の2日目、緑谷出久は街中を歩いているとそれがいた。
一般人A
「何あれ?」
一般人B
「映画の撮影か?」
一般人C
「見に行こう!見に行こう!」
街行く人々が携帯電話を片手にひと方向へ向けて流れを作っていた。散歩の帰り緑谷出久は興味を惹かれーひとの流れに身を任せて歩き始めた。
歩き始めて数分とせずに目的の場所まで到着した。人々を含む緑谷出久の目的地に佇む何か
緑谷出久
「個性かな?」
佇むそれは"身長が2メートルを超えの筋骨隆々、肌は黒に近い紫、上半身は裸で下半身を辛うじて隠している黄色のパンツは膝の辺りから"ちぎられた様な"見た目をしている。極め付けは特殊メイクだろうかーピンク色、具体性を述べるなら脳みそが露出しており、見開かれたというにはあまりに剥き出しの眼球は目尻から鼻先にかけて突き出た嘴の様なもので分断され、鳥というより魚の様な顔をしていた"
緑谷出久
「異形系の個性にしてはまとまりがない、増強系にしては見た目が釣り合っていない」
佇む何かを眺めながら緑谷出久は遠目に分析を行う。そうしている内に脳裏に浮かぶ人物と重なるというより、意図して似せている見た目に不快感が込み上げてくるのが分かった。
緑谷出久
「いい気分じゃない」
沸々と湧き出る怒りを押し殺す様に緑谷出久は深呼吸をすると、佇む何かについて改めて考え始めた。"あれ"の存在が何を指しているのか。緑谷出久の脳内に"映画"の文字が残っているが故か『オールマイトを卑下する内容の映像』がちらついていた。頭から追い出す様に目を閉じ頭を振る。
一般人D
「あれ?動き出した」
一般人E
「なんかやばくね?」
一般人F
「でもヒーローは来てないし」
緑谷出久の瞼の先では人々が騒ぎ出していた。それは先刻の佇む何かに"変化"が起きたことを抽象的に教えていた。佇む何かは一般人の肩幅と同じ太さをした腕を2つ頭より高い位置まで振り上げていた。
緑谷出久
「え?」
『振り下ろされた拳に潰されるオールマイトの映像』
直後、緑谷出久の目の前で起こった惨劇は筆舌に尽くし難いものだった。最初に聞こえたのはトマトの様な『液体を含む固形の何か』が力任せに潰された"音"とコンクリートの粉砕音。立て続けに上がった誰のものか分からない悲鳴が辺りに響いた。
緑谷出久は逆走を始めた民間人に何度もぶつかり尻餅をつきそうになるが先についた手がそれを防いだ。
緑谷出久
「に、逃げないと!!」
尻餅をついた体勢から体を捻り緑谷出久は佇んでいた何かに背を向け走り出した。
緑谷出久
「ヒーローを呼ばないと」
腕を全力で伸ばし、少しでも早く現場から近い事務所に向かって走り出した緑谷出久だったが聞こえた"うめき声"に足は進む方向を反転した。
緑谷出久
「何やってんだ僕は!」
分け目も降らず走り出した。緑谷出久に勝算はなく、作戦もなくー自分のとった行動に不合理を説きながらも走り続けていた。振り上げられた拳は振り下ろされそうになっていた。
緑谷出久
「ッグ」
運動後、足に溜まった疲労が災いし地面から僅かに足が離れるのが遅れた。勝算は元より皆無だったが救出もこの時を持って怪しくなった。しかし、緑谷出久の足は止まらずー『振り下ろされ始めた拳』の先目掛けて力任せに突っ込んだ。
『頭を抱えて震える被害者を抱え込み振り下ろされた拳に身を差し出す形で間に合った』ー響くコンクリートの破砕音を後ろ手に被害者を抱えた緑谷出久は吹き飛ばされた。
緑谷出久
「ガッハ!」
背中に受けた強烈な一撃の余波、それだけでも緑谷出久を戦闘続行不可へと追い込むには十分だった。元より戦う意志がない緑谷出久にとって些細なことである。
緑谷出久
「大丈夫?」
腕の中の被害者に声を掛けるー酷く傷ついた子供、腕の包帯に白髪と"たんこぶ"と放っておける訳もなく、無理矢理に立ち上がった緑谷出久は上がった土煙を目隠しに"佇んでいたそれ"から逃げる様に歩き始めた。
緑谷出久
「痛ッ」
立ち上がり一歩目の踏み込みに走った激痛はつった足を無理矢理に動かした反動なのか、見た目に変化こそないものの"明らかに"動かせる状態ではなかった。緑谷出久は膝をつくと被害者を腕から解いた。
緑谷出久
「逃げて」
緑谷出久は被害者に背を向けると足を引きづりながら佇んでいた何かに向けて歩き始めた。片足が確実に肉離れを起こした緑谷出久は早々に歩くのをやめると両手を構えた。拳ではなく手を開いた状態で頭の横で構えた。
緑谷出久
「一撃目と二撃目の行動に差はなかった。明確な意思があるというよりロボットみたいに何かの行動を繰り返しているのかもしれない。行動を起こす上での切っ掛けが分からないから、だとしたら確実に一撃を防げるこの行動が、うん、最善だと思う」
煙の中から現れた"佇む者"は緑谷出久が想定していた行動をー案の定実行に移した。振り上げた拳は土煙に隠れ『小指側の側面にはベッタリと血糊が付着している』のが見えた。
轟音と共に振り下ろされた両拳は緑谷出久の想定を遥かに超えた速度で振り下ろされ、"今の緑谷出久"では知覚することは不可能な程だった。しかし、攻撃を受けた位置の予測は正しく『土煙を』割いて現れた拳は緑谷出久の"両手"に触れたー爆ぜる様な破裂音を上げた。
それと同時に不完全な両足では踏ん張りが効かず緑谷出久は弾き飛ばされた。周囲に木霊した破裂音は時間差で周囲のビル群の窓という窓を"ひび割れさせ"、砕け散らせるとコンクリートの道路に散乱した。
緑谷出久
「え」
尻餅をついた緑谷出久は霞む視界で辛うじて"佇む者"を見た。その両腕は弾き返せており、皮膚はずる剥けになりー筋繊維は輪ゴムの束が千切れた様な傷を僅かに作り出していた。
緑谷出久
「よかっ…!!」
しかしその傷は瞬く間に回復を見せるとー四度目の振りかぶりを見せた。緑谷出久は何とか立ち上がろうと踠くが両足が痺れて叶わなかった。倒れ込み、拳の着地点が不鮮明になった今緑谷出久が"これ"防ぐ手段を失っていた。
霞む視界、意識を必死に繋ぎ止めるー今意識を失えば確実に死が待っていることが容易に想像できた緑谷出久は呼吸を整え振り下ろしに備えた。
気だるげな男
「どっちだ?壊理」
壊理
「倒れてる人!」
気だるげな男の一撃は"小煩いハエ"を払うが如く軽い動作だったが"佇む者"の拳が豪快に爆ぜ、辺りに血飛沫を撒き散らした。
顔の見えない気だるげな男
「汚いな全く」
佇む者
「クロロロ」
鳴き声にも聞こえる呼吸音が聞こえた緑谷出久だったが、それは忽然と姿を消した。気だるげな男は苛立ちを露わにして周囲を見回した。
顔の見えない怒り心頭の男
「どいつもこいつも、親父が後でうるさくなるんだよ」
顔の見えない気だるげな男は緑谷出久の足に触れる。緑谷出久に僅かな痛みを与えた後、気だるげな男は手袋をはめると言った。
顔の見えない怒り心頭の男
「…これで貸し借りなしだ、行くぞ壊理」
緑谷出久は手を繋ぎ去っていく2つの影を眺めながら意識を失った。
◇◆◇◆◇