生まれ変わった魔術師は普通の暮らしを求めます   作:みなかみしょう

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第52話:色々な人たち

 ヴェオース大樹境の中頃。何もないように見える森の中、妙に段差の多い地域の一画に入り口がある。

 テオハルトと会った翌日、私はそこに突入した。勿論、彼も一緒だ。

 ぽっかりと口をあけた入り口の向こうに、破棄された古い工房がある。

 状態はいい。綺麗な通路を歩く。地下工房で規模が大きい。私が眠っていた小さなものとは全然ものが違うな。

 周囲に異常はない。いや、奥の方から魔力を感じる。

 警戒しながら進むと、テオハルトが口を開いた。

 

「綺麗なもんだ。なんでこんなわかりやすい場所が今まで見つからなかったんだ?」」

「魔術で隠蔽されていたからだよ。この規模の研究施設だ、念入りに隠されていた。その上で、大魔術師ミュカレーも見つからないよう手を加えたようだね」

「……全く、どうせなら潰しておいてくれれば良かったのによ。なんでそんな手間をかけたんだ?」

「そこは、本人にでも聞かないとわからないね」

「生きてるなら是非聞いてみたいとこだ」

「同感だね」

 

 ミュカレーは生死不明ということになっている。私も会ってみたいが、居場所がわからないので何ともいえない。

 

「静かなもんだ……。他の冒険者やら魔術師はいないのか?」

 

 杖で周囲を探りながらテオハルトが言う。

 

「どうかな。奥の方から魔力を感じる。何かあるのは間違いないんじゃないかな?」

「マナール、お前、何が見えてるんだ? 探知魔術を使ってるようにも見えねぇんだが」

「秘密だよ。私だって、人に教えていない魔術の一つや二つは持っているということさ」

「そんな少ないようには見えねぇけどな」

 

 そう言いつつも、テオハルトは追求しないようだ。今は共闘関係だから、余計なことは言わずにいるということだろう。なかなか、道理をわきまえているというか、本当に悪そうなのは名前だけみたいだな、闇の魔術師。

 

「ついたぜ。ここが最奥か。……たしかに、あの魔術陣だな」

「そのようだね」

 

 そこそこ広い部屋に、魔術陣があった。稼働を停止しているけど、先日みたものと同じだ。

 

「あいつらはこいつを写して、自分達で実験場を作ったわけだ。迷惑な話だぜ。いや、少し形が違うな」

「そうだね。生命力を魔力に変換する箇所に手を加えた跡がある。最初は生き物を使う予定だったんだけど、後から別の魔力源の目処でもたったのかな」

「あいつら、わざわざ魔術陣を劣化させてたのかよ」

 

 舌打ちしながらもテオハルトは魔術陣をメモしている。それを止めるつもりはない。恐らく、似たようなものを見た時に対応できるようにしたいのだろう。

 

「おかしいね。魔術陣はあるけど、資料のあった形跡がない」

「情報通りだが、やっぱりげせねぇな……」

 

 テオハルトが聞き出したところ、この工房には魔術陣と少しの資料しか無かった。だから、彼らも上手く扱えなかった。

 

「ふむ…………なるほど…………」

 

 魔力感知の精度をあげるとすぐにわかった。

 

「どうした?」

「扉が隠されているね。ここに」

 

 何もない壁を軽く手で振り払って、魔術を解除。隠蔽の魔術で隠されていた扉が現われる。魔術で閉じられているけど、ついでに解除しておく。

 

「隠蔽の魔術は古いけど、施錠していた魔術は少し新しかったね」

「つまり、元々魔術のかかっていなかった扉に、最近来た奴が施錠したってことか」

 

 頷く。この隠蔽の魔術は師匠の施したものだろう。扉に刻まれた魔術陣の癖に覚えがある。ここは再利用したわけか。

 

「さて、私が扉を開けたことは、この先にいる人々も気づいているだろうね」

 

 扉を開いたおかげで、魔力感知の精度が上がった。五名ほど、奥の方にいるようだ。

 恐らく、テオハルトが相手をしていた連中の残党だろう。あるいは、別口かもしれない。つまり、彼らもまた不完全な魔術陣を渡されて、実験させられていたというやつだ。

 

「つまり、手っ取り早く話を聞けるわけだ」

 

 杖で肩を叩きながら、不適に笑うテオハルト。好戦的な顔が似合うね、まったく。良い人なのに。

 

「一応聞くけど、それなりの魔術師が相手になる。危険だよ?」

「それなり、くらいなら問題ねぇよ。ここまで関わって帰るわけにもいかねぇだろ」

「それもそうだ。組合には君の分まで報酬を出すように頼んでみるよ」

「ありがたいねぇ」

 

 にやりと笑ったテオハルトと共に、奥に向かって歩き出す。

 少し下がった先にある扉。特に罠はない。

 目配せして互いに頷いて、一気に開く。それぞれ、防御魔術を張り巡らせながら。

 

 明けた直後、周囲に魔力の光が散った。威嚇の攻撃だ。

 

「おっと、動かない方がいいぞ! 次は当てるよ」

 

 扉に向かって、四人の魔術師がこちらに杖を向けていた。

 

「まあ、こうなるとは思ってたけどよ。お前ら、なにもんだ?」

 

 テオハルトが聞くと、リーダーっぽいのがククッと笑って、酷薄な口調で言う。

 

「我々は魔術結社『わくわく実験室』。ようこそ、我らの秘密工房へ!」

 

 両手を広げて歓迎された。

 魔術結社って、色々な名前があるんだなぁ。

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