──春の季節 七日目
受付で鍵を返却し、荷物を背負って街を出る。人目が無くなったらワープで移動。飛び込んだのは比較的大きな街の近くに出来た迷宮だ。
適当に魔物をしばいてMPを回復。魔法使いや英雄のレベルが上がっているお陰で、この程度の移動では問題にならないが、念のために、というやつだ。
回復を終えたら予め見つけておいたスラム街の内側にワープで潜り込む。目撃者は無し。ベイルの街と同じく川の下流側にあるせいで、ドブと淫臭が凄い。
悪臭に顔をしかめながら視線を上に向け、大きめの煙突を壁代わりに屋根の上にワープ。これは小説十二巻で主人公が行ったワープの利用法だ。
探索者の『ダンジョンウォーク』は迷宮内の壁を使い、既知の魔物の存在しない小部屋に繋がるゲートを作り出すスキルであり、冒険者の『フィールドウォーク』は既知の壁や木にゲートを開くスキルだ。
それぞれ『遮蔽セメント』に妨害されるという欠点こそあるが、便利な移動スキルという認識で問題無い。
それに対して『ワープ』は違う。驚いた事に遠目で辛うじて見える島にすらゲートを開ける。つまり、目視さえ出来れば、理論上、辿り着けない場所は無い。
やっぱりこのスキル、ぶっ壊れでは?
「お、居た居た」
現代とは違い、カンテラが無ければ一寸先すら闇の世界。玄関口に掛けられたカンテラが唯一の光となって妖しくスラム街を照らし、薄着の娼婦が男を誘う光景を浮かび上がらせている。
そんな夜の街で息を潜めて影に溶け込む男が居た。鑑定してみれば、案の定『盗賊』持ち。
人数は──八人。レベルはバラバラ。最低は6で、最高は38。そのまま眺めていると、人目を気にしながら街の壁側にある狭い通路を通り、裏口と思われる扉を潜って建物の中に消えていった。
「……家に明かりが着かない。って事は地下か?」
念の為ワープを使って屋根の上を移動し、盗賊の消えた建物を正面から眺めると、入り口近くの明かりを頼りに娼婦が客を誘っていた。
ぼんやり眺めていると、上手く客を掴めたのであろう娼婦と男が館の中に消える。それから少しして三階の一室に明かりが灯った。
「地下で確定か」
街の中に居る盗賊達も知恵を絞ってるな。いや、これは街に手引きしてる奴が居るか?
さらに暫くその場で眺めていると、盗賊が一人、裏口から千鳥足で出てきた。狭い通路にぶつかりながら歩き、その先でお花摘み。狙い時か。
ワープを背後の壁に開いてそのまま侵入。デュランダルを振り抜ける広さは無い。なので首を一突き。その後すぐに左腕を切り落とし、遺体を近くの迷宮へ捨てる。
直前に見た鑑定結果はレベル17の盗賊だった。懸賞金が懸かってると良いんだが。
「さて。突入するか、近くに潜んで次の奴が現れるのを待つか。悩ましい所だな」
デュランダルを振り抜ける広さがあるなら突入しても問題無いんだが……この世界の技術力で地下にそんな広さの部屋を作れるとは思えない。あるとしたら貴族の館か城ぐらいだろう。
盗品の倉庫兼寝床辺りが限界か。上に建つ娼館の広さと同等の広さは間違いなく無い。
「んー……行くか」
覚悟を決めたら即座に実行。裏口の扉を開くと、目の前には盗賊の姿が。
「×──」
何かを叫ぶ前に首を一突き。そして左腕を切り落とし、遺体を迷宮へ送る。 ……ここで待ってれば良いのでは?
一度扉を閉め、その横で待機。戦いは賢くやらないとな!
それから数分ほど待っていると、再び扉が開いた。それに合わせて
扉の先はすぐに階段だ。俺に突き刺された上、扉に強打されて転げ落ちた盗賊の末路は言うまでも無い。
ここからは時間との勝負になる。これだけ派手に騒いだ以上、盗賊の取るであろう選択肢は二つ。
一つは侵入者を殺す為に迎撃準備をする事。こちらの場合は特に問題無い。
もう一つは──脇目も振らず逃走する事だ。俺としてはこちらを選ばれると辛いのだ。
立て付けの悪くなった扉を強引に開き、階段を飛ぶように駆け降りる。そこまで深く掘っていなかったらしく、階段はすぐに終わりを迎えた。というかここって──
「×××××!」
意識が逸れた一瞬を油断だと思ったのか。頭目と思われる男の号令で、残る四人の盗賊達が一斉にこちらに斬りかかる。
それに対して俺は安心のオーバーホエルミングを発動。盗賊達の間を抜け、頭目の男の首を切り飛ばした。さらに出口にウォーターウォールを発動する。
「×××××!?」
「すまんな。日本語しか分からないんだ」
武器を捨て、命乞いを始めた男を切り捨て、そのままオーバーホエルミングを再発動。残りの盗賊も処理した。
戦闘終了、お疲れさまでしたっと。
ここからは楽しい報酬集めの時間だ。まずは装備を遺体から引き剥がし、左腕を切り落とす。外に置いておいた腕も一度取りに行き、纏めて部屋の隅に置いておく。
これで後はインテリジェンスカードが出てくるのを待つだけだ。
続いて行うのは、この盗賊のアジト──
大方、拐ってきた人間を娼婦として利用してるってところか。店主が盗賊だったら追加ボーナスなんだが、脅されている可能性もあるし、そこまで興味がある訳でも無い。
証文や契約書辺りが出てきたら、カードを渡すついでに騎士へ渡すぐらいで十分だろ。
「……予想以上に稼げたな」
懸賞金を含めて一回十五万ナール前後のつもりが、すでに盗賊の金庫から二十万ナール近く出てきた。これに加えてカードの換金もあるので、もしかしたら三十万ナールを超えるかも知れない。
他にも外套やら盗品と思われる装備を回収出来たのは嬉しい誤算だ。流石にそこまで高く売れないと思うが、奴隷に渡す装備として取っておくのもアリだろう、うん。
「…………はぁ」
大きく溜め息を吐き出し、どう考えても
まぁ、頭目のお気に入りの一人や二人ぐらい居るよな。アジトなんだし。
「生きたいか?それとも楽になりたいか?──好きな方を選べ」
「──────」