勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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迷宮討伐Ⅲ

 

──春の季節 七十二日目

 

 

 午後の探索でもボス部屋は見付からず、予想通り二日目に突入。地図の埋まり具合は六割程度。運が良ければ午前中、悪ければ午後にボス部屋到達になりそうだ。

 

 

「ちょっと不思議な気持ちになりますね」

 

「んあ?」

 

 

 前を歩くグロリアの呟きが気になり、地図から顔を上げて尋ねてみれば、返ってきたのはこの世界の住人らしい感想だった。

 

 

「戦闘より探索に悩んでる事です。普通は魔物への対処に苦労しますから」

 

「確かに。御主人様のお陰で他の魔物が乱入してくる前に決着がつきますからね。流石に三十六層でこの速度は異常です」

 

「あー……お前らだとそういう感想になるか」

 

「というと?」

 

 

 こちらに振り向いたグロリアに前を向く様に手を振りつつ、レッジ達の動きを語る。

 

 

「俺の持つデュランダルをレッジ達に貸せば、たぶん単体相手なら俺より火力出るぞ。自分からの攻撃以外にも敵の攻撃を見切って最小限の動きで反撃するし、麻痺するかどうかを先読みしてスキルを叩き込んでたからな」

 

「…………私達と同じ人間ですか?」

 

「たぶん?というか探せばそれ以上のビックリ人間も居るんじゃないか?」

 

 

 魔物三体の攻撃を避けながら詠唱出来るロクサーヌさんや勘だけで麻痺を先読みしてスキルを叩き込める百獣王が居る世界だ。

 

 それ以上の人間が居ても何らおかしくないし、法服貴族は大なり小なりそんな英雄候補達の群れな気がしている。

 

 

「世界は広いですね。主様の御力を超える方々がたくさん居ますか」

 

「あー……これは他言無用の話だが、実はこの力、俺専用じゃないぞ」

 

 

『『『そうなんですか!?』』』

 

 

 流石に想定外だったのか、サギニを除く三人が驚きの声を上げた。サギニは動じず、鼻を動かして警戒中。

 

 ここらへんは年季の入った熟練者らしい動きで頼りになるな。流石、俺のサギニだぜ。

 

 

「たぶんな。俺の予想通りなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ゴスラー配下の僧侶がレベル90だった事を考えると、その可能性はゼロじゃない。

 

 ギルド神殿でジョブを固定すれば自動でBPの割り振りが行われるのだ。

 

 大抵はステータスに吸われるだろうが、運が良ければボーナススキルに振られる事もあるだろう。少なくともボーナス武器に振られる事は確実だし。

 

 世に広まってない理由は単純で、貴族なら隠すし、それ以外なら()()()()()()()()()()()という常識を破れないからだ。

 

 キャラクター再設定なんて間違いなく言葉自体が思い浮かばない筆頭だろう。

 

 

「ま、もし居たとしても俺と同じように詳細は話さないと思うぞ。聞かれても()()()()()でやり過ごせば良いだけだし」

 

「わざわざ赤の他人に語る意味は無いですからね。当然だと思います──」

 

「お話の途中にすいません。敵です」

 

 

 サギニの警告と共に意識を切り替える。グロリアも即座に剣を抜き、前方に意識を向けた。

 

 

「構成はアリ5牛1ですね」

 

「グロリア。三体抱えられるか?」

 

「頑張ってみます」

 

「よし、任せるぞ。残りは一体づつ頼んだ。──それじゃ行くぞ」

 

 

『『『はい!』』』

 

 

 俺のアクアストームが火を吹くぜ!水だけどな!

 

 

 

 

 午前の探索を切り上げようかというタイミングでボス部屋を発見。とりあえず待機場で軽く休憩を取りつつ作戦会議だ。

 

 

「最初に言っておくが、三十四層からボスが二体湧く。慣れてるグロリアならともかく、メローはボスを抱えるのが初だからな。フォローを意識してやれ」

 

「皆様、よろしくお願いしますね」

 

 

 ペコリと頭を下げたメローに残る三人が無言で頷く。

 

 

「それじゃ改めてボスの説明に入る。三十六層のボスはボーパルラビット*1。ラピッドラビットと同等の速度で動き、時々強力な一撃を放つ魔物だ。スキルは各種魔法と()()()()の効果付きの蹴り。前者はともかく後者は致命傷になるから注意してくれ」

 

「……私はかなり相性が悪そうですね」

 

「いえ、メローさん。私も似たようなものですよ」

 

「コイツに相性の良い奴なんて居ないだろ」

 

 

 防御半減付き高火力高速アタッカーは殺られる前に殺るしか対処手段が無い。

 

 野生の英雄二人(レッジ達)は余裕だったと言っていたが、残る面子が首を横に振っていたのは印象的だったな。

 

 

「とりあえずメローの方に二人付けるから頑張ってくれ。最悪スキルさえ止めれば何とかなる筈だ」

 

「分かりました」

 

 

 突入前にデュランダルをグロリアに渡し、経験値十分の一を切ってセブンスジョブを発動。付けるのは、もちろん博徒だ。ついでに薬師を暗殺者に変えておく。

 

 

「よし、行くぞ」

 

 

 グロリアを先頭にボス部屋に侵入すると、黒い靄が別々の場所に二つ収束する。

 

 

ボーパルラビット Lv36

ボーパルラビット Lv36

 

 

 現れたのは、大型犬ほどの黒いウサギ。まるで刃物の様に尖った耳が──

 

 

「主様ッ!」

 

「いきなりかよッ!」

 

 

 初手オーバーホエルミング。遅くなった時間の中で、前衛を抜けてこちらに襲い掛かるウサギを躱す。

 

 

(ついでに食らっておけ……!)

 

 

 二重にサンダーストームを発動したところで効果時間が終了。時間の流れが元に戻った。

 

 

「ご無事ですかッ!?」

 

「何とかな!それより来るぞ!」

 

 

 目の前から俺が消えた事に動揺は見せず、即座に反転してグロリアに襲い掛かる黒ウサギ。

 

 メローもすぐに二体目に向かうが、それより早く動いた二体目は横からグロリアに強襲を仕掛けた。

 

 

「……舐めるなッ!」

 

 

 グロリアが体勢を崩されながら鋼鉄の剣の切り上げでボスを空高く打ち上げると、イザベラの槍と飛び上がったサギニが即座に追撃を仕掛ける。

 

 そして吹き飛んだ先で待ち構えていたメローが金砕棒を振り下ろした。

 

 

「今までとは比べ物になりませんね……!」

 

 

 戦きつつもメローが金砕棒を短く握り、敵の妨害に専念する。そうして生まれた隙をサギニ達が突いていくが、有効打を三回に一回の割合で回避されている姿がやけに目立つ。

 

 これ、蜘蛛のカード必須だな。器用さが無いと当てる事すら満足に出来ないとは。

 

 心の中でメモを取りつつサンダーストームを二連発。ついでに視界に影響の出ないブリーズストームを放ち、メローの抱えるボスの耐性を下げる。

 

 するとその動きに苛立ったのか、グロリアの抱えるボスがグロリアにフェイントを仕掛けて抜けてきた。

 

 

「なんつーか楽しいなオイ!」

 

 

 殺人キックはしゃがんで回避。そのままグロリアと立ち位置を変更すると、今度はメローのボスがこちらに体当たりをしてきたので、落ち着いてスタッフで受け流す。

 

 

「油断も隙もねぇな!」

 

「申し訳ございません!」

 

「謝るのは後だ!とにかく攻めていけ!」

 

 

『『『はいっ!』』』

 

 

 謝るグロリアに叱咤を飛ばし、二匹を視界に納めつつ三巡目。最後にグロリアのボスの耐性を下げれば、後は回避を重点的に行いながら魔法を回すだけだ。

 

 全体大回復を飛ばした後に四巡目に入る。先程から麻痺ってくれれば楽になりそうな気配はあるのだが、残念ながらご都合主義は全く起きず、サギニ達の石化も入らない。

 

 というか、さっきからスキルの発動兆候が一番殴れる機会な気がする。それ以外は速度に翻弄され、軽い牽制を入れるのが精一杯だ。

 

 

「今まで一番の強敵ですね……!」

 

「弱点も無いしな!」

 

 

 五巡目、六巡目と回すが、未だ麻痺は入らず。ここで再び全体大回復を使い、ついでに強壮剤を飲み干す。

 

 

「大技行くぞ!」

 

 

 一言だけ注意を呼び掛け、メテオクラッシュを発動。ついでに七巡目も放つ。

 

 MPを消費した事により、心の内から不安が漏れ始める。それを何とか耐えていると、やっと心待ちにしていた言葉が耳に飛び込んできた。

 

 

「漸く石化しましたか」

 

 

 軽く溜め息を吐き出したサギニが即座にグロリアの方へ向かう。もちろんメロー達もだ。

 

 

 そこから先は消化試合──になる筈も無く。

 

 

 時々こちらを襲ってくるウサギを躱しながら、何とか討伐する事に成功した。

 

 

 

 

*1
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