勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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迷宮討伐Ⅳ

 

 

「今までで一番苦労したな……」

 

「強かったですね……」

 

 

 ドロップ品を拾い上げながらボヤけば、即座にグロリアが同意する。回復魔法のお陰で肉体的な疲労は全く無いが、精神的な疲労が凄まじい。正直、このまま帰って寝たいぐらいだ。

 

 

「鈍重な相手なら私でも盾になれますが、高速で動く敵は厳しいですね。それを今回は思い知らされました」

 

「次は私かイザベラ様が正面に立った方が良いかも知れませんね。少なくとも追い付けますし」

 

「そやな。わっちらのがまだマシかも知れんね」

 

 

 メローが自身の感想を述べれば、サギニとイザベラが自身の意見を述べる。

 

 何というか今までで一番探索者っぽい事をしてる気がするな。いや、今までが違うって訳じゃないんだが。

 

 

「ま、お陰で対策を思い付いたし、次からは多少マシになるだろ」

 

「何か解決手段があるのですか?」

 

「ずっと後回しにしていた蜘蛛と牛のカードだよ」

 

 

 器用さ二倍を狙える蜘蛛と、戦闘中に限るが速度二倍のスキルが付けられる牛。この二つを付ければウサギ相手でも戦える筈だ。

 

 これで足りなかったら?もう打つ手は無い。

 

 

「確かにその二つがあれば善戦出来そうですね」

 

「全ては討伐後の話になるがな。流石に今は討伐優先だ」

 

 

 装備に頼った戦いをしている以上、装備を破壊してくる五十六層以降には挑めない。

 

 だから成長する前に第四は潰す。これは絶対だ。

 

 幸いな事に速度自慢のコウモリには風魔法が通るし、同じ飛行型のハチはそこまで速くない。

 

 ボーパルラビットは周回でもしない限り、この迷宮で戦う必要が無いしな。装備を後回しにしても大丈夫な筈だ。

 

 

「さて、そろそろ休憩を切り上げて探索に戻るか。午後の為にも出来るだけ地図を埋めておきたい」

 

 

『『『かしこまりました』』』

 

 

 あっさりボス部屋が見つかってくれると助かるんだが……最近の俺達の運じゃ望み薄か。チクショウ。

 

 

 

 

 三十七層の敵はスパイスパイダーだった。コイツは通路に居る事が少なく、基本的に天井や壁に張り付いて奇襲してくる魔物だ。

 

 ただ、コイツを含めて迷宮に現れる魔物の中には、()()()()()()()が合わない奴が何体かいる。

 

 コイツの場合、せっかく天井に張り付いていても、

 

 

「……可哀想ですね」

 

「せっかくの努力を見事に無駄にされてますね」

 

 

 他の魔物が堂々と通路に立っているせいで、常に居場所がバレるのだ。ここまで環境に殺される魔物は他に居ない──いや、高く飛べないドラゴン系列の方が酷いか。

 

 

「外で会うと意外に厄介やで?魔物は永遠に待てるから年単位で隠れとるし」

 

「だな。俺も盗賊のアジトを潰しに行った時、上からいきなり降って来て焦ったぞ」

 

 

 想像してほしい。深夜の薄暗い森の中で、いきなり小型犬程度の蜘蛛が降ってくる恐怖を。

 

 デュランダル一発で仕留められるとはいえ、あの時はマジで心臓が止まるかと思ったぜ。

 

 

「そう聞くとレーヌの町が少し心配ですね。戦いやすい大通り以外は余り人の手が入っていない様ですし」

 

「そうですね。たぶん狼人族の皆さんの出番になるでしょう」

 

「いえ。スパイスパイダーは()()()()()()()()()せいで、狼人族の鼻でも見付けるのは大変だと思います」

 

 

 グロリアとメローの言葉を否定したのはサギニだ。視覚では捉えられるのに嗅覚では捉えづらいのか、先程から鼻をヒクヒク動かしている。

 

 

「竜人族の私には分かりませんが、そんなに分かりづらいのですか?」

 

「迷宮ですらこの薄さだと、人の体臭や炊事の匂いに混じってしまう町ではかなり厳しいと思います」

 

「それにレーヌには潮風もあるからな。鼻の利く狼人族でも厳しいと思うぞ」

 

 

 と言いつつも、ロクサーヌさんなら余裕な気がするのは何故だろうな。作中の描写が強すぎるからか。納得。

 

 

「つまり、レーヌは迷宮討伐した後も前途多難って事ですか」

 

「ああ。現状だと悩む事すら出来ないけどな」

 

 

 杖を抜き、構える。それに合わせてグロリア達も武器を抜いた。

 

 それじゃそろそろ戦闘開始と行こうか。

 

 

 

 

──春の日 七十五日目

 

 

 三十七層の攻略には二日掛かった。踏破した際の地図の完成度は驚きの100%だ。

 

 つまり、最後の最後までボス部屋を引けなかったという訳だな。その割にボスは早々に石化し、十分ほどで片付いたせいで、こちらは不完全燃焼気味だが。

 

 

(……いや、石化してなくても雑魚だったか)

 

 

 第四ランク、蜘蛛層のボスはスパイクスパイダー。全身に毒針を生やした面倒な敵だ。

 

 注意して攻撃しないと棘から毒を貰うし、ノーモーションからの飛び掛かりもある。

 

 この為だけに大盾を買おうか迷ったぐらい面倒なボスだ。

 

 ただ、こういう敵に対して強気に出れる様になるのが麻痺になる。睡眠は一度攻撃したら目覚めてしまうが、麻痺は最低でも魔法のクールタイム一回分の時間を稼げるからな。

 

 

「──だからこそ我々貴族は灌木のカードを欲しているのだよ。君ならそれが分かるだろう?」

 

「もちろん。──それでも灌木は譲らんが」

 

 

 オークション会場で出会ったカト侯爵に金貨を三枚見せ付ける。すまんが灌木を譲るつもりはないぜ。

 

 スパイクスパイダー?早々に二匹とも石化したぜ。

 

 

「……ふむ。意思は固そうか。理由を聞いても?」

 

「今、レーヌの迷宮討伐を引き受けていてな。現状でも討伐出来ると思うが、戦力を強化出来る手段があるなら見逃す必要も無いだろう?」

 

「確かにそうだな」

 

 

 苦笑いを浮かべたカト侯爵(イケネコ)が席を立つ。

 

 

「今回のカードは君に譲る事にしよう。迷宮討伐、頑張ってくれたまえ」

 

「感謝する」

 

 

 背中を見せたまま手を振る侯爵が堂々と会場を後にする。そのやり取りを見ていた周囲の商人や探索者達が遠慮したのか、三枚出品されていたカードを全て五千ナールで落札出来た。

 

 鳥、灌木、芋虫か。悪くない。

 

 

 

 

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