勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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迷宮討伐Ⅷ

 

 

 ドロップ品を二人一組でこちらに運んでくるという非現実的な姿を眺めながら、ぼんやり記憶の奥の情報を思い出す。

 

 材木業界で丸太の取引は一立米(1m3)単位で行われている。それを参考にしたのか知らないが、ドロップ品の丸太もたぶん同じ重さとなっていると思う。

 

 もちろん、普通なら一人で持ち上げられる重さでは無い。……無いのだが、戦闘中にイザベラが邪魔だと部屋の隅に蹴り飛ばせた事から()()()()()()()()()()魔法の力で軽くなっているらしい。

 

 ファンタジーかな?ファンタジーだったわ。

 

 

「不思議な光景ですね」

 

 

 持ち上げた丸太をボックスに押し込んでいるグロリアが珍しい物を見たような声を上げた。それに同意する様に続いたのはメローだ。

 

 

「槍より長くても関係ないのですね」

 

「重さも感じないし、アイテムボックスが一番不思議の塊だよな」

 

 

 一立米は1000Lと同等の重さだ。キロ換算なら約1500kg。それを二本入れても重さを感じない凄さよ。

 

 膜が割れたら潰されるけどな!

 

 

「上の階層ではこれ以上の大きなアイテムも落ちる事があるのでしょうか?」

 

「どうだろうな?ありそうな気もするが、後半は魔道具っぽいアイテムが多いと聞いた事があるぞ」

 

「マドウグ?」

 

 

 微妙に発音のずれた返事がグロリアから返ってきた辺り、どうやら翻訳に失敗したらしい。

 

 

「魔法効果のあるアイテムの総称だ。って言っても、俺が勝手にそう呼んでるだけだが」

 

 

 正式な呼び方は原作でも不明なんだよな。下手すれば特に区別を付けずにアイテム呼びかも知れん。

 

 

「なるほど。魔法の道具で魔道具ですか」

 

「おう。スカラップシェルが落とすスカラップエキスは火属性魔法を打ち消す効果があるらしいし、自爆玉の入手経路は迷宮っぽいからな。たぶん、そういったアイテムを落とす様になるんじゃないか?」

 

「そういえば浄水石*1も迷宮産のアイテムでしたね」

 

「あれは亀の上位種のドロップ品*2らしいぞ?」

 

「って事は最低でも五十六層以降ですか。自力で獲得出来るのはまだまだ先になりそうですね」

 

「まぁ、千ナールの為に命を捨てるのも馬鹿らしいし、しばらくは経費として割り切るさ」

 

 

 五十六層に挑むのは、六人目の仲間と予備の装備を作ってからになるだろう。

 

 それまでは五十五層までが狩り場となる。また都合の良い狩り場を探さないとな。

 

 そんな事を考えながら次の層へ進む。隊列は相変わらずサギニが先頭だ。

 

 

「えっと、この匂いはパームバウムですね。数は四。ウドウッドの匂いはしますが、ホワイトキャタピラーは居ないと思います」

 

「って事は五匹か?」

 

「たぶんそうだと思います」

 

 

 その報告を聞いたグロリアがポツリ。

 

 

「何というか生活用品を稼げる層ですね」

 

 

 ウドウッドの落とす薪は毎日の食事作りに使うし、パームバウムの落とすパームオイルは地球で一番使われている油だ。

 

 それはこの世界でも変わらず、主に揚げ物料理等に使われている。

 

 パームオイルはトランス脂肪酸の代替として注目されている一方、大量摂取は生活習慣病や肥満に繋がるとされ、さらには輸送時に良く添加される酸化防止剤BHA*3に発ガン性*4が疑われている関係で()()()()()として別の意味で有名なのだが……この世界だと使うまで常に新鮮な油として保存出来るから余り関係無い話だったりする。

 

 そもそも酸化防止剤(BHA)なんて存在すらしてないし。

 

 

「んー……美味しい物を食べたい奴は手を挙げろ」

 

 

 何となく尋ねてみれば、サギニが『()』の段階で手を挙げた。グロリアとメローは『しい』の段階だ。

 

 イザベラは俺が言い終えてから手を挙げた。慣れの問題だろうが、判断が遅いぜ。

 

 

「それなら五十個集まるまで乱獲するか。サギニ、案内よろしく」

 

「了解しました!」

 

 

 嬉しそうに尻尾をピクピクさせながらサギニが歩き出す。この世界の音楽であろう鼻歌混じりなところを見ると、かなり機嫌は良さそうだ。

 

 この時間だと海鮮類は全滅だろうから白身と野菜の天ぷらかね?豚肉でカツを揚げても良い。

 

 後はノリと勢いで勝負だ──

 

 

「……ん?」

 

 

 敵が居ないという事もあり、放置した小部屋を覗き込んだイザベラが何かを見付けたらしい。

 

 

「主人さま。あそこボス部屋と違う?」

 

 

 指差す方向を見れば、小部屋の先に待機部屋へと続く扉が。

 

 

「なんつーかアレだな。迷宮には本当に神が居るのかも知れん」

 

 

 物欲センサーという邪神がな!

 

 

「えっと、どうしますか?」

 

「オイルは帰りに集めるか」

 

「了解です」

 

 

 グロリアとそのような会話を交わし、待機部屋に向かう。いつもの様にウォーターウォールで水を確保した後、軽く作戦会議だ。

 

 

「四十二層、パームバウムのボスはカナリアカメリア。特徴は特に無し。正確にはボス部屋だと特徴が死んでいるから気にしなくて大丈夫だ」

 

「参考までにお聞きしますが、どのような能力なのですか?」

 

 

 尋ねてきたのはメローだ。知識欲も兼ねた情報収集の一環だろう。こういう積み重ねが貴族の強さなのを良く理解しているな。

 

 

「戦闘中にダメージを受けると周囲に落ち着いた甘い匂いを撒き散らし、周囲の敵を誘因するんだ。そのせいで乱入が意図的に引き起こされ、対処が遅れると地獄が生まれるらしい」

 

「……えっと、上の階層では雑魚として湧くんですよね?」

 

「おう。そのせいでカナリアカメリアが湧く六十七層から七十七層は時々地獄絵図になるみたいだな。ただ、そこまで成長した迷宮を討伐するのは年に数回らしいが」

 

 

 逆を言えば、年に数回地獄を解体するのも貴族の義務なんだろう。

 

 皇帝から勅令が出され、全戦力を以って攻略に挑む、みたいな感じになるのかね?

 

 原作でも九十層に辿り着けたのは初代皇帝だけだから、八十になる前に討伐するしか無いもんな。

 

 

「……私達も強くなれたと思いますが、まだまだ頂きは遠いですね」

 

「まったくだ」

 

 

 メローと二人で苦笑いを浮かべ、お互いを慰め合う。

 

 その後の話は語るまでも無い。カナリアカメリアは特に苦もなく仕留めて終わり、俺達は四十三層に辿り着いた。

 

 

 

 

 

*1
忘れてる人も多いだろう独自設定のアイテム。水を綺麗にする効果がある。

*2
もちろん独自設定。

*3
ブチルヒドロキシアニソールの略称。

*4
1998年に食品衛生調査会がラットを使った実験で確認した。

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