──春の季節 八日目
予想外の収入で財布が潤ったという事もあり、宿泊をもう一日延長。落ち着いて考える時間を確保する。
「まずは購入する奴隷の種族決めからだな」
狼人族が全員ロクサーヌと同等なら迷わず選択肢に入れたが、残念ながら
安い買い物でも無いし、当たりを引くまでガチャを回す訳にもいかない。それを踏まえて考えると狼人族の優先度は少し下がる。
続いて、セリーと同じドワーフの場合はどうなるか。
鍛冶師は欲しいし、丁度良くモンスターカードも手に入れた。だから選択肢としてはアリなんだが……
「筆頭奴隷で鍛冶師は権力が集まり過ぎか」
従順な子なら過労死しそうだし、権力に溺れるならお局様になりそうだ。理想は原作通り二人目かねぇ?
「猫人族は筆頭奴隷としては論外。選ぶなら三人目以降だ」
猫人族は原作で管理が得意そうな情報が一切出てきていない。というかミリアが基準値なのか外れ値なのかすら不明だったりする。
流石に筆頭奴隷枠でギャンブルは厳しいもんがあるし、今回はご縁が無かったという事で。
「エルフを筆頭奴隷にする気は無い。となると俺の筆頭奴隷は竜人族がベストか」
ただ竜人族にも問題はある。原作だとオークションに出品されたベスタ以外は男の竜人族しか登場しておらず、下手すればエルフ以上に見掛けない種族の可能性が高いのだ。
一年という準備期間があるとはいえ、主人公の先輩になる為にも奴隷選びに時間を掛け過ぎる訳にはいかない。
貴族となる為の領地候補も考える必要があるしな。
「一度『カッシーム』に行ってみるか?」
ペルマスクより先にある他国と明言されていたし、まだ見ぬ種族と会える可能性があるならここだろう。
「いや、そもそも原作で帝国の全てが描かれていた訳ではないし、もしかしたら原作に登場しなかった未知の種族が国内に居る可能性もあるか」
これはワープの登録地を増やすついでに奴隷商を訪れるべきかね?大した手間では無いし。
ある程度の方針が決まったので、次はアイテムボックスの整理に移る。
「金貨は65枚、銀貨はたくさん。銅貨はもっとたくさん。装備は……」
盗賊の装備していた皮装備が七人分と、頭目が装備していた硬革一式。たぶん獲物の探索者だった奴等の鉄製装備に剣と槍と盾。
おお、レイピアやシミターもあるな。原作の武器をこの目で見れるとは……ちょっと感動。
「スキル付きは無し。強いて当たりの品を選ぶとしたら──これか」
絹のローブ 胴装備
スキル 空き 空き
スロット二つは硬革と同レベル帯の装備の証*1。たぶん神官か僧侶の装備だったんだろう。すでに売り払った巫女が着ていた可能性もあるが。
魔法使いだけは有り得ない。魔法使い = 貴族のこの世界では、兇賊でも無いと貴族が率いる探索者パーティーに挑むとは思えん。
俺が保護した二人のエルフも魔法使いでは無かったし、もしパーティー内に貴族が居たならゴスラーが
ちなみに装備の性能は木=皮=布<鉄(硬革、絹)<鋼鉄(竜革)<ダマスカス鋼<聖銀<オリハルコンの順に強くなると勝手に思っている。
原作に登場した武具の中で、スロット数が五つあるのは聖槍のみだし、皇帝が装備していた聖銀のメッシュウェアなる防具もあるからな。たぶん、そこまで間違ってはいないだろう。
ついでに説明しておくと、後衛系の装備は絹のローブの上に『アルバ』と『ダルマティカ』まで確認されている。
とはいえ現実となった以上、別の装備*2もあるかも知れないが。
スロットは木、皮、布を
たぶん最大値じゃなかっただけなんだろうが……どういう扱いになるのかは
深く考えても答えが出る問題でも無いし、諦めて次に進もう。
「盗賊の金庫に置かれていたカードは『コボルト』『つぼ式食虫植物』が二枚ずつ。そして『牛』と『豚』が一枚ずつ……豚?」
というか何だこのラインナップ。何か見覚えが──
「ああ、あそこの街の迷宮か」
十層がミノ、十一層がコボルト、十二層がサラセニア、十三層がピッグホッグ。
この並びのせいで、十一層に上がった探索者達がすぐに十二層へ向かうと聞いた覚えがある。あの盗賊達が
原作でも十二、三層は盗賊がよく居ると言われていたしな。
「豚が混じってるのは食料として
丁度良くコボルトソルトも落ちるし、固く焼いたパンと水を持ち込めば、少なくとも数日は職場で粘れるだろう。
仲間の探索者を派遣して買い出しを頼む事も出来るし、昨日みたく人目を避けて抜け出しても良い。娼館の地下にアジトを構えた以上、部下の慰安にも苦労しない。
盗賊という立場だと、あそこは最高の職場だったんじゃないか?滅ぼしたが。
「しかし盲点だったな。
特に十一層がコボルトの迷宮は盗賊としても狙い目の迷宮だろう。本来なら長い時間を掛けて磨く筈の腕を育てず、十層レベルの力量で十二層に獲物がやって来るのだ。
それに加えて食料まで稼げるなら言うこと無し。近くの街が程々に大きく、スラム街があるなら盗賊人気はさらに上がる。
今後はそういう街を狙っていくかね?
「……大体こんなところか?」
筆頭奴隷は竜人族、購入は『トロムソ』へ向かいながら道中の奴隷商の館で。不要な装備は『買取価格三十パーセント上昇』を付けて明日捌く。……うん、大丈夫そうだ。
「キャラクター再設定だけ先に弄っておいて──よし」
少し早いが今日は寝るとしよう。護衛も無しに酒を飲む勇気も無いしな。
それではまた明日。おやすみなさい。