勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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ガンマ線バースト

 

 

──春の季節 八十七日目

 

 

 朝食はスクランブルエッグと卵とベーコンを柔らかいパンに挟んだ物。スープは昨日の残りのシチューで、サラダはトロムソの八百屋で買った野菜を適当に切った。

 

 食後は未だ何のお茶か不明なお茶を飲み、グロリアの膝に頭を預けながらキャラクター再設定を弄る。

 

 

「いつもと何も変わりませんね」

 

「変える必要も無いからな」

 

 

 左の頬に乗っかるグロリアの胸が柔らかく、思わず悪戯したくなるのが困りもの。いや、別にしても良いんだが、悪戯で止まれる自信が無いので今日は止めておく。

 

 

「主様と二人でこの家に来たのがつい最近に思えます」

 

「俺より早く起きられなくて泣きそうだったのは今でも鮮明に覚えてるぞ」

 

「……うぅ、それは忘れてください!」

 

「モガっ」

 

 

 おっと、これは予想外の幸せプレス。グロリアが俺の顔を覗き込もうとすれば自然と発生するラッキースケベ(ラキスケ)イベントだ。

 

 ちなみに発生率はほぼ100%。奴隷の誰かに膝枕を頼めば大体発生する。まぁ、そういう奴隷を集めてるから当然なんだが。

 

 とはいえこのまま窒息死する訳にもいかず、仕方なくグロリアの膝から転がり落ちて床に胡座をかく。

 

 

「ま、その程度のデメリットなんて問題無いぐらいお前は役立ってるよ。それこそ六人目を迷うぐらいにはな」

 

「……竜騎士を探すのでは無かったのですか?」

 

「二人居れば安定するってのは間違いないし、今でもその考えは変わっていない。ただ、残り一枠を育成枠に使う為に空けておくのも悪くないと思うようになった」

 

 

 迷宮食材を保管する冷蔵庫代わりの料理人に、グロリア達が帝都へ気軽に遊びに行く為の冒険者。俺以外の薬師を確保しておけば、間違いなく貴族となった後にも役立つし、思い切って第二の探索パーティを作るのもありだろう。

 

 四十五層にコボルトが湧く迷宮なら安全に30まで上げられる事は確認済み。昨日の四十九層の狩りで50まで上がる事も確認した。

 

 装備や奴隷本人の代金にさえ目を瞑れば、今の俺なら中級職Lv40を量産出来る。それを上手に活用するとなると、枠を空けておいた方が何かと都合が良い。

 

 

「ま、全てはレーヌの件が片付いてからの話になるが」

 

「その為にも頑張らないとなりませんね」

 

 

 ふんすっ!と気合いを入れるグロリアには悪いが、決戦仕様でごり押せる事が分かった以上、勝負は一瞬で決まる。

 

 むしろ今日は第三迷宮の探索がメインになる筈だ。というか、武具を壊されない魔物なら六十層でも勝てるだろう。

 

 俺の()()()()()()は、そういう類いの物だ。

 

 

「御主人様。食器の洗浄と昼食の仕込みは終わりましたサギニさん達も洗濯を干し終えたようです」

 

「じゃ、着替えていくか」

 

 

『『『はいっ!』』』

 

 

 これで一区切りか。何とか夏前に間に合ったな。

 

 

 

 

 レーヌの冒険者ギルドに飛び込むと、いつもの様にギルドマスターが受付に座っていた。

 

 ただいつもとは違い、ギルド内にはそれなりの数の冒険者の姿が。パーティを連れて来ている人間は居ないようだが、どいつもこいつも三十を越えているベテランばかりだ。

 

 

「おや?そんなところに突っ立ってどうしたんだい?」

 

「このギルドで知り合い以外を見たのは初めてだからな。少し驚いちまった」

 

「ああ。もうすぐ一つ目が討伐されるってんで、各地から腕自慢が集まってんだよ。背伸びも出来るしね」

 

「背伸び?」

 

「普段なら苦戦するレベルの魔物と弱くなった状態で戦えるからね。ドロップも変わらないし、討伐後の迷宮は向上心のある冒険者に人気なんだよ」

 

「なるほど」

 

 

 ギルドマスターの言葉に顎に手を当て、少しだけ考える。

 

 

(この恩恵を利用して俺も賭けに出るべきか?失敗したら装備を失うが、育てたジョブを失う訳じゃないからリカバリーは利く)

 

 

 壊されるとしたらメローとグロリアだろう。サギニやイザベラの二人は壊れない可能性の方が高い。

 

 魔物のレベルが下がる以上、メイン火力は俺だし、クールタイムの時間を稼いで貰えればどうにかなるか……?

 

 

「御主人様?どうかなさいましたか?」

 

 

 ふと思考の海から現実に意識を戻すと、心配そうに俺の顔を覗き込むメローが居た。……そうか、別に今の装備でやる必要は無かったな。

 

 

「悪い。ちょっと待っててくれ。所用を思い出した」

 

「え、あの、御主人!?」

 

 

 メローの引き留める声を無視して、ワープを発動して目的地へ飛ぶ。

 

 やって来たのは──()()()()()()()()()だ。

 

 

「ん?誰だ?まだ開店前だぞ──って、小僧か」

 

 

 カランカランとドアベルを鳴らしながら扉を開ければ、そこには目的の人物が。今更ながら早朝という事に気付いたが、おくびにも出さず、何食わぬ顔で話を切り出す。

 

 

「おっす。ちょっとした依頼とついでにお誘いしに来たぜ」

 

「……ほう?とりあえず聞くだけ聞いてやろう」

 

 

 腕を組み、こちらの話を聞く姿勢になった爺さんに計画を話す。断られても問題無いが、出来れば受けてくれると安上がりで助かるんだが。

 

 

「──なるほど。お前の考えは分かった。だが、それに対する返答はノーだ」

 

「……そっか。まぁ、それなら正攻法で挑んでくるさ。邪魔したな」

 

「まぁ、待て。儂自身はついていくつもりは無いが、貴様が条件を満たせば条件付きで援助してやらん事もない」

 

「条件?」

 

 

 出口に向かって動かしていた足を止めて振り向くと、ニヤリと笑う爺の顔があった。相変わらず悪餓鬼みたいな笑みを浮かべてやがる。

 

 

「これから討伐しに行くのだろう?だったらワシの下に討伐した証のギルド神殿を持ってこい。それさえ果たせば貴様に援助してやろう。お前の計画は巡り巡ってメローの為になるしな」

 

「その程度で良いのか?」

 

「……ほう?」

 

「悪いがその条件なら余裕だぞ?」

 

「吠えたな?小僧。一度口にした言葉は取り消せんぞ?」

 

「事実を言ったまでだ。──とは言っても、今の俺には説得力が無いか。昼前にまた来る。その時に見せてやるよ」

 

 

 それだけ言い放ち、ワープを開いてレーヌに戻ると、心配そうな表情でこちらを窺うグロリア達が待っていた。

 

 

「待たせて悪かったな。それじゃ行くか」

 

「もうよろしいのですか?」

 

「ああ。全て解決した」

 

 

 グロリア達を引き連れて第四迷宮へ向かうと、迷宮前に人だかりが出来ていた。

 

 町人、冒険者、レッジ達のパーティや騎士まで揃い踏みか。大層なお見送りだな。

 

 

「よう!これから討伐しに行くって聞いたから見送りに来てやったぜ!」

 

「そんな大袈裟にする必要は無いんだけどな。切り札を切るからすぐに終わると思うし」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。──っと、丁度良いか」

 

「あん?」

 

 

 不思議そうな表情をこちらに向けるレッジに対して、特に気合いを入れる事もなく依頼する。

 

 

「レッジ。迷宮討伐終わったら第三迷宮の案内を頼んで良いか?」

 

「おいおい、休まないでそのまま潜るつもりか?」

 

「この町の人間にとっては宴会を開く理由になるんだろうが、俺はその間に弱体化を利用して稼ぎたいんだよ。第三、第二の順番で落とせば、第一もかなり劣化するだろう?」

 

「何を狙うつもりだ?」

 

「────と──と─────だ」

 

 

 その言葉にグロリアがピクリと反応するが、今は無視する。

 

 

「……なるほど。確かに狙い時っちゃ狙い時か」

 

「運が絡むから何とも言えんが、どれかを手に入れるだけで迷宮探索が楽になるからな。狙わない理由が無いだろ」

 

「確かにそうだな。分かった。ミツルが討伐を終えたら案内させる。……だから無事に戻ってこいよ」

 

「おう。それじゃ行ってくる」

 

 

 軽く手を振り、迷宮に門を開く。そしてそのまま五十層へ飛んだ。

 

 

「最終層はこんな風になってるんですね」

 

「人の出入りの無い迷宮は育たないからな」

 

 

 最初の待機場を出ると、目視出来る距離にボス部屋へと続く扉が。そこを五人で通り抜け、さっそく作戦会議だ。

 

 

「最後のボスはデスワスプ*1。キラービーの上位で、確定クリティカルと確定毒付与を同時に行ってくる強敵……なんだけどな。今回はすぐに終わるからグロリアとメローは回避と防御に専念してくれ。サギニとイザベラはいつも通り雑魚を頼む」

 

「えっと、攻撃しなくてもよろしいのですか?」

 

「ああ。スキルを止める時以外は命を優先で大丈夫だ」

 

 

 俺の切り札にはそれだけの力がある。MP消費が激しすぎて常用は今でも無理だけどな!

 

 

「分かりました。最初のスキル止め以外は防御に専念します」

 

「おう。それじゃ行くぞ」

 

 

 開かれている扉に五人で潜る抜けると同時に、グロリア達がボス目掛けて一直線に走り出す。今回は俺も途中までついていき、ボスの直前で真横へ回り込むように移動した。

 

 そして、そのタイミングで現れる二匹のデスワスプ。もはやランスと呼べるほど巨大な針を持つ、真っ黒な蜂。

 

 鋼鉄装備ぐらいなら貫けそうだな、などと頭の片隅で考えながらオーバードライブを発動。

 

 加速した時間の中で詠唱するのは──最後のボーナス呪文。原作に登場した中で、最も強力な魔法。

 

 

「星の息吹を焼き尽くし、光の域に加速して。────爆動。ガンマ線バースト

 

 

 体から大量の()()が抜けていく。それと同時に俺を責めるのは──過去の亡霊()達。

 

 人類の為にと願い、作り上げた物が。俺の幼稚な夢のせいで、幸せを壊された人々の怨みが。

 

 耳を塞いでも決して消える事の無い罵声(幻聴)が心を抉っていく。

 

 

────お前は死ぬべきだったんだ!

 

 

 否定するつもりはない。

 

 

────返してよ!お父さんを私に返してよ!

 

 

 忘れるつもりもない。

 

 

「……だけど悪いな。死んでやるつもりもないんだ」

 

 

 ポケットから取り出した強壮錠を二つばかり噛み砕き、MPを全回復。そして再びオーバードライブを発動。

 

 加速した時間の中で再び詠唱開始。──そして二発目のガンマ線バーストを発動した。

 

 ひもろぎのスタッフから伸びた青白い閃光が二匹目のデスワスプを貫く。一匹目と同様、一撃でHPが消し飛んだデスワスプが徐々に霞へと変わっていく過程を眺めながら、幻聴を消す為に強壮錠を飲み込んだ。

 

 魔道師、魔法使い、遊び人、勇者、英雄のMPで六割か。威力は凄まじいが、こんな場面じゃなきゃ使えんわ。特に俺のような人間は。

 

 

「い、いったい何が……?」

 

「気を抜くな。まだ雑魚が残ってるぞ」

 

「はっ、はいっ!すいません!」

 

 

 驚きの余り固まったグロリアを再起動させ、雑魚へと向かわせる。

 

 その間にデスワスプの落としたドロップをアイテムボックスに投げ込み、壁際まで歩いて背中を預けた。

 

 

(……後はグロリア達に任せるか)

 

 

 強壮錠のお陰で精神力は回復したが、イマイチやる気が出ない。やっぱ躁鬱を反復横飛びは駄目だ。俺の様な人間には致命的過ぎるぞ、これ。

 

 

 

 

*1
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