勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレム   作:Lilyala

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勝ち組男の異世界迷宮で奴隷ハーレムを

 

 

 消えていく迷宮を涙を流しながら喜ぶレーヌの人々。誰も彼もが泣きながら笑い、まるで神に祈るように俺達に感謝と祈りを捧げている。

 

 

「やったなッ!ミツル!」

 

 

 突然の肩への衝撃。視線をそちらへ向ければ、嬉しそうに笑いながら俺の肩に手を回すレッジの姿が。

 

 故郷が似たような状況になっていたらしいからな。村だったら迷宮一つでも大惨事だろうし、まだ一つとはいえ解放されたレーヌの気持ちが分かる故に、まるで自分の事の様に喜んでいる。

 

 とはいえ、俺はここで喜んでばかりは居られない。後の為にも手を打つべき場面であり、その為にも現状を利用する必要がある。

 

 

「レッジ。悪いが少し付き合って貰うぞ?」

 

「あん?何に付き合えって言うんだ──」

 

「────皆、聞いてくれ」

 

 

 軽く手を上げ、視線を引き付ける。声量はそこまで大きくないが、腹に力を入れて、重く響く声で声を隅々まで通す。

 

 

「俺には目的がある。弱体化を利用して第一迷宮で威霊仙を稼ぐという目的がな」

 

 

 ちなみに威霊仙はエリクシールの素材だ。五十六層から六十六層に湧くハートハーブのドロップであり、原作ではゴスラーが確保の為に周回したという内容の苦労話を語っている。

 

 貴族にとってスキル付き装備や自爆玉、エリクシールの確保は仕事の一環になってる訳だ。……レアドロ周回……うっ、頭が。

 

 まぁ、出るまで回れば実質百パーセントなんだが。

 

 

「つまり、その手伝いを俺達にしろと?」

 

 

 尋ねてきた冒険者の問いに首を横に振る。

 

 

「俺達はこれから第三迷宮を十日で落とす。その次は騎士団と協力して第二迷宮も落とす。だから潜るなら第一が良いぞっていう善意の忠告だ」

 

「……なるほど。つまりアンタは、無駄足になるから流れ者は第一迷宮の探索をしてろって言いたい訳だな?」

 

「まぁ、それもある。あるが、それ以上に時間が無いんだよ」

 

「時間?」

 

「推定七十層クラスの迷宮を潰せるチャンスなんだ。ここまで条件が揃えば()()()()()()()()()()()()?下手すれば国も動くだろうしな」

 

「……それがあったか」

 

 

 周辺全てに影響を与える高層の迷宮討伐は、年に数回しか行われないと小説版で語られている。

 

 そのチャンスが唐突に現れたのだ。周辺を抑える貴族としても、国としても見逃す理由が無い。

 

 

「討伐前のレーヌの情報を掴み、ここに稼ぎに来れたのは優秀な冒険者だけだ。だから、そんな優秀な冒険者達へ俺からする提案はこうだ。──お前らの衣食住は俺がレーヌと交渉してやる。薬品関係もな」

 

「アンタに出来るのか?」

 

「余裕だぜ。んで、第三、第二は俺達が潰すから、貴族が来る前に第一の道を空けてくれ。せっかくのチャンスなんだ。手を取り合って派手に稼ごうぜ?」

 

「…………乗ったッ!お前らもそれで良いなッ!?」

 

 

『『『おうっ!』』』

 

 

 よしよし。これで本命への道は開かれる。後はギルマスを通して町と交渉すれば良い。

 

 通らなかったら俺が薬を提供するかね?強壮剤の材料は雑魚狩りで確保してるし、第二を攻略する頃には滋養剤の素材も確保出来てるだろう。

 

 

「おい、ミツル。最初からこの絵図を描いていたのか?」

 

「んな訳無いだろ。ノリだ、ノリ」

 

「ノリかよ!」

 

 

 突っ込みを入れたレッジに肩を竦めてみせる。

 

 

「まぁ、南部だと他の冒険者は競争相手になるが、他の地方だと出稼ぎにくる冒険者も多いからな。条件次第で協力出来る事は分かってはいた。だから今回みたいな大規模討伐を主導する事を考えなかった訳じゃない」

 

 

 自分の金は出来るだけ使わず、相手を動かしてWin-Winの関係を構築するのは交渉の基本だ。レーヌの町は冒険者を支援するだけで迷宮が消え、冒険者達はこの場の滞在費を気にしなくて良い。

 

 迷宮のドロップが冒険者ギルドに運ばれる以上、最も利益を得るのは冒険者ギルドだけどな。だからこそ薬代や滞在費を出したところで問題無いし、交渉は成功すると確信している。

 

 レーヌの町としても、各地に散った民衆がすぐに戻ってくる訳でも無い。空き家を有効利用するだけで迷宮が無くなるなら喜んで支援するだろう。

 

 

「ま、今はそんな事はどうでもいい。()()()()()()()()、まずは第三迷宮を攻略しようぜ?俺は先に交渉からだけどな」

 

「あいよ。ったく、ミツルと居ると本当に退屈しないな!」

 

 

 

 

 気が付けば季節は変わり、夏になっていた。俺とレッジの目的は無事に達成。後は最後の()()()()を終えるだけ。

 

 

『────それではレーヌの完全解放を祝して。──乾杯』

 

 

『『『乾杯ッ!!』』』

 

 

 木製のジョッキをぶつけ合い、生ぬるいエールを飲み干す。

 

 ぶっちゃけた話、壇上に立って挨拶したパラー公爵の話なんざ誰も覚えてないだろう。俺らにしてみれば、彼らは今回の宴の資金を出してくれる貴族に過ぎない。

 

 それよりも今は共に迷宮を攻略した仲間達と親睦を深め、苦労を慰め合う時間だ。奴隷だろうと、今日ばかりは椅子に座り、共に食事が許されている。まぁ、俺が念押しして無理矢理通したんだが。

 

 

「ミツルッ!飲んでるか!?」

 

「おう。見ての通りだぜ!」

 

 

 何度も共同で探索を行い、同じ目的で同じ魔物を周回した冒険者と意味もなくジョッキをぶつけ合う。

 

 そして同時に飲み干し、また新たな杯を手に取った。

 

 戻ってきたレーヌの町人達が忙しそうに駆け回る中で、探索に貢献した冒険者達は町の真ん中に置かれた席で楽しそうに飲み食いし、好き勝手に歌っている。

 

 それだけの功績はあるのだ。俺達にはな。

 

 

 まずは俺が冒険者達を纏め上げた後の話をしよう。

 

 

 レッジに探索を依頼していた第三迷宮は七日で討伐を終えた。レッジ達が強運を発揮しまくり、一日二層ペースで進めたのだ。

 

 最終階層こそ案内された俺達が討伐したが、ギルド神殿はレッジに渡した。殆どレッジ達が攻略したようなもんだったしな。

 

 第二迷宮は十日で済ませた。この頃になると、投入される騎士も増員され、噂を聞き付けた冒険者やレーヌの元町人もちらほらやって来るようになった。

 

 イザベラを俺に託した奴隷商は男泣きしていたし、冒険者ギルドのギルドマスターが、涙を流しながら皺だらけの顔で嬉しそうに笑っていたのは印象に残っている。

 

 自分が生きてる間に取り戻せるとは思っていなかったんだろう。まぁ、全ては偶然だが。

 

 

「ふむ。せっかくの祭だ。儂も今日ぐらいは無駄遣いしても良いじゃろ」

 

「私も手伝おう。今日は探索する予定も無いしな」

 

「そうですね。祝いの席を涼しくする程度は許されるでしょう」

 

 

 不意にやって来た冷たい冷気が体の熱を奪う。夏に入ってから暑い日が続いていたが、それを忘れさせる涼しさだ。

 

 

「魔道士が多いと快適で良いな!」

 

「普段ならこんな無駄遣いは出来ねーからな!」

 

 

 次々と町中にアイスウォールが現れ、夏の熱気を冷やす。俺も紛れるように展開して自分用の氷を確保。

 

 それを砕いてジョッキに突っ込めば、真似する様にアイスウォールが砕かれ、それぞれのジョッキに突っ込まれていく。

 

 

「これッ!せっかくの涼を壊すな!」

 

「固いこと言うなよ!冷えたエールが美味いのがいけねーんだ!」

 

『『『ちげぇーねぇ!!』』』

 

 

 宴が進むにつれて酔っ払いが増え、あちらこちらで騒がしさが増してきた。

 

 すでに椅子から転げ落ちて爆睡してる奴も居る。虹を吐いてる馬鹿は無視だ。

 

 全く……ゴーストタウンだった時が懐かしいぜ。あの頃は哀愁漂う幻想的な町だったのに。

 

 ただ、この活気は嫌いじゃない。人が喜びを露に出来るのは良いことだ。それを迷惑だと断じてしまう国は、ディストピアよりもディストピアと呼ぶに相応しい。

 

 子供が公園で遊ぶと怒られる国の少子化対策が上手く行く訳が無いだろう。本気で取り組むなら国民全員で生まれる子供を育てていく意識が必要だ。

 

 それが出来ないなら──おっと、意識が逸れた。もう俺には関係無い話だったな。

 

 

「ん?いきなり席を立ってどうした?」

 

「出すもん出して、ちょっと風に当たってくる」

 

 

 同じ席に座っていた冒険者を適当に誤魔化し、席を立って町外れへ向かって歩き出す。

 

 

「……ごめんね。婆ちゃんを置いて出ていって」

 

「良いんだよ。ここに残ったのは私の我儘なんだから。……だから安心してお入り。ここはあんたの家だろう?」

 

「婆ちゃん……!」

 

 

 町を捨てた者。町に残った者。表通りの宴会場とは違い、民家が立ち並ぶ区画では感動の再会が繰り広げられていた。

 

 もちろん、全てが上手くいってる訳では無い。中には戻らぬほど壊れてしまった関係もあるだろう。

 

 それでも滅びはすでに去ったのだ。俺が彼ら彼女らに出来る事はもう無いし、後は時間が解決する事を祈るしかない。俺の領地じゃないしな。

 

 民家の集まる区画を抜けると、波の音が聞こえてきた。ザクザク音を鳴らしながら砂浜を歩き、流れ着いた流木に腰を降ろす。

 

 

「………………どうするかねぇ」

 

 

 夕焼けに染まる海をぼんやり眺めながら考える。

 

 この世界に転移した事を後悔した事は一度も無い。俺はこちらの方が生きやすいし、グロリア達も居るのだ。今更帰ろうとは思わん。

 

 転移当初に設定した目標も、そう遠からず達成できるだろう。

 

 こちとら二つの迷宮を潰し、多くの冒険者を率いて滅びを待つ町を解放した立役者様だ。

 

 帝国解放会の理念を体現したとも言えるし、貴族としての義務を果たせるだけの力を見せ付けた。だから待っていれば向こう側から接触があると思う。

 

 

 次の目標()()()グロリアの怪我もすでに解決済みだ。

 

 

 何の物語も無く、感動も無く、苦労する事すら無く、目的の為に第一迷宮を登ってる途中で狩ったハートハーブが普通に威霊仙を落としたのだ。

 

 俺も含めて全員が微妙な顔になったのは言うまでも無い。

 

 グロリア自身もどう反応して良いのか迷った末に『主様が高層では回復薬になると仰った理由が良く分かりました……』と困り顔で言ったぐらいだ。さもあらん。

 

 

──つまり、だ。

 

 

(メインストーリーをクリアしちまったゲームみたいな状況なんだよな……)

 

 

 次のメインストーリーは加賀道夫(主人公)待ちであり、今の俺には貴族になる為の準備(サブクエスト)装備を整える(やり込み要素)ぐらいしかやることがない。

 

 それはそれで大事な事だが、別に急いでやる意味も無いのが困る。部下のレベル上げは四十五層のコボルトで上げた後、五十五層に連れていけば終わってしまうし、温泉の湧く領地の探索もワープを駆使すればすぐだ。その為に帝国各地に出向いた訳だし。

 

 

 そこまで考えたところで──ふと気付く。

 

 

「…………いや、何でこんな真面目に考えてんだ?」

 

 

 巨乳美女ばかりな奴隷達の仲は良好。

 

 親友と呼べる人間もいる。

 

 金銭面で困る事は無いし、社会的地位はこれから手に入れる。

 

 何故、ここまで持っておきながら頭を悩ませる必要があるのか。地球に居た頃とは違うのに。

 

 

「つまり、これからが俺の異世界迷宮で奴隷ハーレムを(どれハ)の始まりか」

 

 

 名付けるなら──

 

 

 勝ち組男の異世界で奴隷ハーレムを

 

 

──ってところだな、うん。

 

 

 

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