完結したという事は自由という事だ。
だからこんな時間にも投稿するし、深夜に投げる事も出来る。
クックック。これが完結した作者の特権よ!
聖剣
パラーを象徴する質実剛健な城。飾り気は一切無く、どちらかと言うと前線基地のような印象を受けるその場所で、俺は騎士団長の隻眼の後ろをゆっくり歩いていた。
あの後の事を軽く説明しておこう。
レーヌを解放した俺はその場で領地に関する全ての権利を放棄し、パラー公爵に代わりの報酬として装備を求めた。
ヘルプとしてやって来ていたレッジも同様に権利を放棄した。あちらは俺とは違い、普通に飛び地を嫌がっただけだが。
幾ら冒険者といえど南部と西部では距離があるからな。当然と言えば当然だ。
パラー公爵の反応は半々といったところか。優秀な人間を自身の派閥に取り込めなかった事を惜しむ気持ちと、パラーから最も近い漁港を何の問題もなく再び支配下に置ける嬉しさ。
その狭間でかなり迷っていたのは記憶に新しい。
「ここだ。──御客様をお連れしました」
『入れ』
騎士団長が扉を開けば、その先には顔に傷のある老齢のドワーフの姿が。重厚な机の上に積み上げられた書類を捌く手の動きは淀みなく、内政もしっかり行っている事が遠目からでも良く分かる。
「来たか。待っていたぞ」
「本日はお招き頂き──」
「ハッ!猫を被るなら初対面からするべきだったな。さっさと口調を戻せ。堅苦しい」
「……一応、言い訳しておくが、あの時の俺は率いる側の人間だったんだ。だから冒険者達に情けない姿を見せる訳にもいかなくてな」
「だろうな。根なし草の冒険者を纏めるならそれが一番手っ取り早い。儂でもそうするだろう」
声色から察するに怒りは無いらしい。というか見た目通り豪快な爺さんだ。
「ところでお前の友人はその日に受け取りに来たというのに随分時間が空いたな?何かあったのか?」
返事の代わりに
「……なるほど。親は誰だ?」
「レッジ男爵とカト侯爵だ」
「ほう。友人はともかく南部の大領を治めるカト侯爵か。……いや、そうか。レッジ男爵の親もカト侯爵だったな」
納得した様に頷いたパラー公爵に対し、念のため否定しておく。
「たぶん想像とは順序が違うぞ。帝都の服屋と商人ギルドから話が漏れ、その後に子から報告が上がった感じになる」
「む?そうなのか?」
「
「……なるほど。それは確かにカトー侯爵の領域だな」
実はカトー侯爵は帝国にある戦士ギルドを管理する側の一人だったりする。そこさえ押さえれば、基本的に暗殺者に成れんからな。
そこで降って湧いたイレギュラーが俺であり、確認の為に接触してきたというのがオークションでかち合った原因だ。
ほんと貴族が優秀な国は困るぜ。悪い事が出来やしねぇ。まぁ、するつもりもないが。
「ところで今度はこっちから質問しても良いか?」
「答えられる質問なら構わんぞ」
「俺の記憶違いでなければ迷宮討伐に成功すると、近隣の迷宮は探索中の階層が最終階層になる*1よな?にもかかわらず、なんでレーヌの第一や第二はあそこまで潜る必要があったんだ?」
「ああ、その事か。簡単な話よ。入り口にいる案内人に素直に報告する探索者が少ない。それだけの話だ」
「…………なるほど。レーヌが空くのを待っていた訳か」
七十を越える階層まで辿り着けるならば、レーヌが陥落した後に再度解放する事には苦労はしないだろう。
あそこは領地として魅力的な立地だし、貴族になる事を真剣に考えているならば、
まぁ、貴族になったとしてもパラー公爵からの心証は最悪だろうが。
「別に帝国の法を犯した訳でもない。我らの先祖もやってなかった可能性がゼロでは無いしな。だからこそ法で縛れぬのが現状よ」
「まぁ、法で縛れるならクーラタルの探索者を動員しない理由が無いわな」
「貴様もそうだが、自由民は神に認められた権利を持つ。故に国としても手を出せんのだよ。精々、便宜を図って動いてもらう事しか出来ん。口惜しいがな」
深く溜め息を吐き出し、再び顔を上げた時には、パラー公爵は貴族としての威厳を纏っていた。
ここら辺の割り切りも貴族には大切なんだろう。
「長々と話してしまったが、こちらが貴様への報酬となる。確認しろ」
差し出された紙を受け取り、目を通す。……うん?
「随分多いな?俺が討伐した迷宮は一つだけだぞ?」
「弱体化していない迷宮を踏破し、残る三つの迷宮でも目覚ましい活躍をした
「ドワーフはこういう時、強いよな」
受け取った紙をそのまま騎士団長に渡す。このまま案内して貰う為だ。……っと、そうだった。
「最後に一つだけ聞いておきたい」
「言ってみろ」
「貴族では無い者がギルドを作るのは、この国の法的にどうなんだ?」
「違法になる*2。何処かの国に所属しているなら他国でも同様の扱いだった筈だ」
ここまでは予想通り。大切なのはこれからだ。
「じゃ、ついでにもう一つ。
「…………!」
俺の言葉の意味が分かったのだろう。一瞬だけ驚いた表情を見せた後、すぐに思案し始めたパラー公爵の答えをじっと待つ。
「……法はそこまで想定していない、という答えが正しいだろう。
「……なるほど。つまり今なら
軽く頭を下げ、部屋を出る為に出口へ向かって歩き始める。するとすぐにパラー公爵から声を掛けられた。
「待て。何故その話をここでした?」
「貴族になるつもりなのに、ドワーフに恩を売れるタイミングを逃す馬鹿は居ない。それが答えだぜ」
◇
城内の道を覚えられる事を避ける為に、わざとジグザグに進む騎士団長の後ろをゆっくり歩く。
ぶっちゃけた話、脳内で勝手に地図を作っているし、外観からある程度の間取りは想定出来るんだが。
現代に残る城塞と設計思想は大して変わらんしな。答えを知って、細部を修正するだけで良いのだから、俺でなくても旅行が趣味の現代人なら出来るだろう。
「少し待っていろ」
門番として立っている普人族の騎士に紙を手渡した後、小声で言葉を交わす騎士団長。その姿をぼんやり眺めていると、門番の騎士達が二人掛かりで扉を開き始めた。
「規則なんでな。選んでる最中は閉じさせて貰うぞ」
「あいよ」
騎士団長と共に室内へ入ると、すぐに重厚な音を響かせながら扉が閉じられた。蝋燭の火が揺れている事から空気は通っているみたいだが、窓が無いせいで少し薄暗い。──それが気にならないぐらい、宝物庫の中は豪華絢爛だが。
「オリハルコンに聖銀、金や宝石を使ったアクセサリー。最低ラインがダマスカスや竜革とは流石ドワーフの宝物庫だな」
「当然だ。それが我らの誇りだからな」
「羨ましい限りだぜ」
少しは普人族にも分けて欲しい。色魔は俺にとって最高のジョブだが、複数ジョブなきゃゴミだろ、これ。
「貴殿がこの宝物庫から持ち出しを許されているのは五つだ。選び終わったら見せに来い」
「自由に見て良いのか?」
「構わん。私が合図を出さなければ、この扉は開かれんからな」
「なるほど。そういう事なら後学の為にも見学させてもらうとしよう」
という訳で散策開始。まず始めにやって来たのは、大量の剣が壁に飾られている一角だ。
スキル 空き 空き 空き 空き 空き
これがなんと十本近く壁に飾られている。ちなみに無造作に木箱に突っ込まれている聖剣ですらこれだ。
スキル 空き 空き 空き
多くの探索者達が血涙を流す光景過ぎる。雑に扱っていい品じゃないだろ、これ。
オリハルコンの方はさらに数が多く、二十本近くの最高傑作と、三十本を超える傑作と、数えるのが馬鹿らしい量の良品がありとあらゆる場所に置かれている。
ここだけで白金貨換算、百枚を余裕で超えそうだ。いや、ドワーフ領の公爵という立場を考えると当然なんだが。
続いて聖槍の方を見に行くと、当然の様に最高傑作が堂々と鎮座していた。ただこちらはそこまで数が無く、代わりに人気の無い?品も纏めて置かれているので、個人的には見ていて楽しい区画だったりする。
スキル 空き 空き 空き 空き 空き
スキル 空き 空き 空き 空き 空き
スキル 空き 空き 空き 空き 空き
うーん、壮観だな。ちなみにコリシュマルドはエストックの上の片手剣だ。刀身の輝き的に素材はオリハルコンだと思う。
聖銀の片手剣はフランベルクだった。こちらはデュランダルに負けず劣らず、神秘的な輝きを放っている。
……まぁ、どちらも普通にロングソードverがあるんだが。
刺突だけじゃ扱いづらいもんな、等と考えつつ、アクセサリーが展示されているコーナーに向かう。
アクリルなんて物が無い為、ガラス製のケースに納められた多種多様な素材で作られたアクセサリー。
それを一つ一つ鑑定しながら眺めていると、俺の目に留まったのは素人でも絶対に高いと確信出来る腕輪だった。
スキル 空き 空き 空き 空き 空き
聖銀製と思われる腕輪に、大きめなダイヤモンドが嵌められているだけのシンプルな作り。他にも同型の宝石違いが複数あるところを見ると、ほぼ同じレシピで作られているらしい。
レッジと二人掛かり──いや、2パーティー掛かりで回収してきた物もあるし、最後の一つはこれで決まりだな。
「決めたぞ」
「そうか。それでは案内しろ」
騎士団長を連れて選んだ装備品を回収。諸々の手続きを終えたら宝物庫の外でボックスに収納し、本日の用事は終了。後は公爵に挨拶して帰るだけだけ──と思ったら。
「……差し支えがなければ聞きたいのだが、宜しいだろうか?」
執務室へ向かう途中、人の気配が無くなったタイミングで騎士団長が問い掛けてきた。
「別に構わんぞ。答えられる質問ならな」
「先程の閣下とのやり取りにはどういう意味があったのだ?」
「ああ、その事か」
これに関しては喋ってしまっても構わんだろう。パラーの歴史を考えると、考え付いた奴は俺の他にも居ただろうしな。
「公爵ですら法によって鍛冶師ギルドを自由に立てられず、そのせいで鍛冶師に成れなかった者達は断腸の思いで奴隷に落とすしかない。ここまでは良いな?」
「ああ。それがパラーを維持する為の鉄の掟だ。この領なら子供でも理解している事だろう」
「だろうな」
鍛冶師ギルドで転職に挑戦する為に必要なのは、金と探索者のボックス数が十になる事の二つだけ。これに失敗した場合、再度の挑戦は許されず、多くの人間は別の道を探す事になる。
探索者のレベルが11以降になった場合の挑戦権の有無や他の鍛冶師ギルドで転職に挑戦する事が許されているのかは不明。
個人的にレベルが見えないこの世界の住人は一度の失敗で才能無しと勝手に落ち込み、再挑戦しないだけな気がしている。
鍛冶師ギルドでは転職出来ず、その後エレーヌ神殿で鍛冶師になれた奴が居ると原作で明言されているからな。
転職が完全不可能って訳では無い筈だ。
「だから俺は公爵にこう言ったんだよ。
「…………!」
再度、挑戦して転職出来るかは分からない。そもそも転職出来ない可能性も無くはない。
だが、やる事に意味があるのだ。愛する我が子を奴隷に落としたい人間なんて居ないのだから。
「出来るのか……?」
「正直言えば分からん。それを試す為に動く訳だからな。ただ、俺は成功すると思っているよ」
「何故だ?」
「他のギルドに条件が無いからだ」
例えば、戦士になって十年以上鍛練した人間だけが騎士の転職に挑戦出来るとしよう。もちろんチャンスは一度だけ。当然、騎士になりたい奴は死に物狂いで鍛える事は言うまでも無い。
そんな奴が戦士30丁度で止まると思うか?転職のチャンスは一度だけなんだから直前まで迷宮に潜り続けるのが普通だろ?少なくとも俺ならそうする。
さらに原作でハルツ公爵が主人公を騎士団に誘った事も、騎士ギルドが何度も転職に挑めるという推測を補強してくれる。
戦士では無く、迷宮討伐に成功しそうな優秀な
「ならば、何故鍛冶師ギルドにはそのような制限が付いている……?それが無ければ我が子も──!」
抑えようとして尚も止められぬ、憤怒の感情。それを己の理性で押し止めた騎士団長に対して、俺は冷静に自分の考えを告げた。
「たぶん、魔結晶が理由だろう。転職に神殿が貯蔵している魔力を使うと仮定した場合、探索者や冒険者ギルドなら神殿を維持する為の魔力に困らないから挑戦回数を制限する意味が無い。騎士ギルドもな。だが鍛冶師を始めとする製造系は高位のギルド員ほど迷宮に潜らなくなる。必然的に魔力不足に喘ぐ事になり、
色魔ギルドが少数精鋭っぽいのはこれが理由だろう。どう考えても毎日潜れんスキルだしな。
「そして鍛冶師ギルドの設立は国が制限を掛けている。盗賊に武器が流れない為の対策なのかも知れんし、流通を把握する為かも知れん。国の思惑は分からんが、それが合わさった結果、生まれたのがパラーの掟なんじゃないか?」
「……なるほど。確かに貴殿の言葉には説得力がある。閣下が珍しく驚きを表に出した訳だ」
話している最中に執務室についた。その扉を開く直前、騎士団長がこちらを真っ直ぐ見据え、深く頭を下げる。
「これから生まれるだろう子の為にも、貴殿の活躍には期待している」
「任せておけ。これでもレーヌ解放の英雄らしいからな。五十五層までの迷宮なら余裕だぜ」
◇
次回作はガンダムの初代とシードをクロスオーバーさせた連邦スタートの話とか考えてたりする。作者はGジェネ程度の知識しか無いけどw
コロニー落とされた後、NJも落とされた地球が舞台。地球連邦vsジオンvsプラントの三つ巴だ!地獄かな?
MSの設定とか年代合わせとか組み立てるのは楽しいんだけど、ガンダムは有識者多くて作者的に敷居が高いのだ。
連邦の量産機は初代のジムと種のダガーをチャンポンしたジムダガーって名前に決めてるし、書くとなったら文句は全部スルーだけどな!